イーサリアムでNFTをレンタルできる規格「ERC-4907」が承認され、NFTの幅広い活用が期待されるようになりました。
従来のNFTレンタルと比較しながらERC-4907についての説明と、レンタルサービスの使い方について解説します。
この記事の構成
ERC-4907とは
はじめにイーサリアムで使用される用語である「EIP」と「ERC」について簡単に説明します。
「EIP」とは
EIPは「Ethereum Improvement Proposal」の略で、日本語で説明すると「イーサリアム改善提案」のことです。
イーサリアムコミュニティ内で、イーサリアムに関する新しい機能案やプロセス案が議論され、「EIP-〇〇〇」として提案されます。
「ERC」とは
ERCは「Ethereum Request for Comments」の略で、トークンの規格のことです。
議論された改善提案「EIP-〇〇〇」が承認されると、「ERC-〇〇〇」として規格化され実際に使用されるようになります。
今回であれば「EIP-4907」の提案が承認され、「ERC-4907」というトークン規格が使用できるようになりました。
ERC-4907とは
ERC-4907とは、NFTトークンである「ERC-721(非代替トークンの標準規格)」の拡張版として承認され、NFTのレンタル機能が追加されたトークンです。
議論の提案者はNFTレンタルマーケットプレイスである「Double Protcol」で、同時に開発も行いました。
「Duble Protcol」についての詳細は後程紹介します。
ERC-4907の特徴
大きな特徴として、「user」と「expries」という二つの機能を持たせたことです。
それぞれ説明していきます。
「user」について
NFTには必ず「所有者」が存在します。
ERC-4907はその所有者のNFT(ERC-721)に、アドレスを付与できる「user」という機能を追加しました。
これは所有者が自身のNFTに「使用する権限」を与える機能で、「user」となった使用者はあくまでも「使用する権限」を得ただけなので売買することはできません。
「expieres」について
さらにレンタルの使用期限として設けた機能が「expires」で、設定した期限のタイミングで自動的にレンタル機能を失効することになります。。
つまり、NFTの所有者は「user」機能でNFTをレンタルし、「expires」機能で期限を設定することができるようになりました。
ガス代の節約
今までの一般的なNFTのレンタルは、所有者がレンタル開始時と終了時、それぞれでトランザクションが必要なため、ガス代も2回分発生していました。
しかし、「EIP-4907」では「expires」機能により終了時は自動的に処理されるため、2回目のトランザクションを必要としないのでガス代の節約にもつながっています。
ゲームにおけるNFTレンタル
NFTのレンタルといえば、ゲームでの利用価値が高いと考えられています。
現在「Axie Infinity」や「元素騎士ONLINE META WORLD」などで行われているNFTレンタルが「スカラーシップ」です。
「Axie INfinity」のスカラーシップ
Axie INfinityの例を紹介すると、NFTであるアクシーを所有しているマネージャー(雇用主)がスカラー(労働者)にアクシーを貸し出て、その運用益をマネージャーとスカラーで分配するシステムです。
このシステムが、アクシーを購入する元手がないユーザーでも稼ぐことができ、コロナウイルスで大打撃を受けたフィリピンで大成功を収めた理由の一つとも言われています。
(参考記事:https://note.com/crypto_club/n/nfb40f81abd93)
しかし、Axie Infinityにおけるスカラーシップの運用にはとても複雑で面倒なプロセスがあります。
- マネージャーになるためには、スカラー用のサブアカウントを作成する必要があり、以下の設定を行う。
- Roninアカウントと通常のメールアドレスを準備する。
- 任意だがこの二つを利用する為にGmaiのエイリアス機能の設定も行う。
- サブアカウントの設定が終わったらスカラーを探す。
- 公式Diccordやtweetでの募集がメインで、英語での記事が必要。
無事スカラーが見つかったとしても、スカラーの違反行為が発生するリスクがあるため、写真付きの身分証の提出と業務委託契約を結ぶことを推奨しています。
しかし、身分証の提出や契約書を交わしても持ち逃げされるなどのリスクは完全に防げるものではなく、万が一被害にあった場合でも泣き寝入りせざるを得ない可能性が高いです。
「ERC-4907」を採用する効果
このような複雑で手間のかかるレンタル手続きも、今回の「ERC-4907」では不要になり、持ち逃げなどのリスクもかなり軽減されます。
ただし、実際にゲーム内で「ERC-4907」を使用するには運営側でインターフェースや機能を実装する必要がありますが、現状のスカラーシップでのトラブルは運営側にとってもイメージダウンにつながるので近日中に実装されると期待されています。
NFTレンタルの使い方
実際にNFTレンタルを行っているサービスを紹介します。
「Double Protocol」の特徴と使用方法
(引用元:https://double.one/)
今回の「ERC-4907」の提案者であり、開発者でもある「Double Protocol」を紹介します。
完全に分散化されたWeb3NFTレンタルのプロトコルで、Metaverse及びGameFiにおけるアセットのマーケットプレイスです。
特徴
- 担保は不要
- オンデマンドでレンタルが可能(借りたら直ぐに利用が可能)
- 自動返却の有効期限
- Subletting(また貸し)が簡単にできる
- 対応チェーン
- Ethereum
- BSC
- Plygon
- Avalanche
- Fantom
- Arbitrum
- PlatON
- OKXChain
- 展開しているコレクション
- ENS
- Decentralamd
- Warena
- Migrate Decentralamd
(引用元:https://double.one/collection/list)
- 今後展開が予定されているコレクション
- DeHorizon
- PlayerOne
- Tollan Worlds
- Fluffy Polar Bears
- Kyberdyne
- DragonKart
- Cyber City
- Ragw on Wheels
- Evo Surfers
(引用元:https://double.one/collection/list)
- ウォレット
- MetaMask
- WallerConnect
購入方法
公式サイトにアクセス
TOPページで「Explore」をクリック
コレクション一覧が表示されるのでレンタルしたいコレクションを選択する。
今回は「Decentraland」を選択。
出品されているNFT一覧が表示されるのでレンタルしたいアイテムを選択する。
各アイテムに1日あたりの費用が表示されている。
アイテムをクリックするとOpenSeaと同じような画面の詳細ページに移行する。
ウォレット(今回はMetaMask)を接続させる(TOP画面でも接続が可能)。
ウォレットを接続させると下記の画面になるので「Rent」をクリック。
レンタルの詳細画面が表示されるので、下記の手順で進める。
- レンタル日数を記入する(このアイテムの場合は1~138日)
- 記入したレンタル日数に応じた金額が表示されるので間違いなければ「Rent」をクリックして完了
「Lend(貸し出す)」方法
TOP画面で「Lend NFTs」をクリック。
他にもTOP画面には同様のボタンが複数あるが全て要領は同じ。
NFTをもっていないので下記のような画面になっているが、貸出するNFTがある場合は下記にアイテムが表示される。
「Rilascio」の特徴
2022年7月5日、日本のWEB3スタートアップ企業である「synschismo(シンシズモカ)株式会社」が公式サイト、及びPRTIMESにて無担保型NFTレンタルサービス「Rilascio(リラシオ)」のテストネット版の公開を発表しました。
また、ERC-4907の正式サポートについても併せて公開いたしました。
尚、現在はテスト版のため実際に触ることができませんが、機能的な詳細は公式ドキュメントに記載されています。
「Rilascio」の意味
Rilascioはフランス語で「解放する」という意味で、ウォレットに眠っているNFTを解放し、NFTが抱える機能不全の解消を目指しています。
Rilascioが問題提起している機能不全とは
- 同一コレクションのNFTを一人が複数保有している状態
- NFTのユーティリティを使用しないが、人気になったがゆえに高価になったNFTを心理的に手放したくない状態
- 高価なNFTが担保に預け入れられることでNFTの機能が停止している状態
などの事例をあげています。
また、高価なNFTは新規参入者の大きな障壁となっている現実も指摘し、これらの課題を解決するためのプラットフォームであると位置づけをしています。
特徴
レンタル取引時に下記3点のNFTが発行されるのが最大の特徴です。
WrappedNFT
NFTレンタルサービスでは、貸出したNFTの債務不履行が発生した場合に備え担保が必要になる場合があります。
Rilascioでは、貸し手のオリジナルのNFTをWrapした「WrappedNFT」としてレンタルします。
これにより、無担保のレンタルでも持ち逃げされるなどのリスクを最小限にすることを実現しました。
OwnershipNFT
オリジナルNFTの所有者を証明するものです。
貸し手がNFTをレンタル(コントラクトに預け入れる)する際、該当NFTがロックされ、先述したWrappedNFTが発行されます。
そしてNFTの所有者にOwnershipNFTが発行されます。
OwnershipNFTの所有者は、NFTのロック期間が終了したあとに貸し出したNFT(WrappedNFT)をBurnすることで、オリジナルNFTを所有者に戻すことができます。
YieldNFT
NFTのロック期間(貸し出し期間)中の収益を回収するためのNFTで、3つのNFTの中で最も特徴のあるNFTです。
ロック期間が終了した際に、レンタルしたWrappedNFTをBurnした後に、レンタル期間中の利益をYieldNFTの所有者にTransferします。
OwnershipNFTとの違いを説明すると、OwnershipNFTはNFTの現在の価値を示し、YieldNFTはロックされたNFTの将来の価値を示しています。
将来の価値というのは、ロック期間中(レンタル期間中)に得られる収益が増えていくに従い、そのNFTが外部の人の目に触れて注目される機会がふえ、将来の価値が高まることを意味しています。
つまり、ただ持っているだけのNFTが、レンタルという形で外部の人の目に触れることにより価値が高まり収益として還元されることになります。
公式ドキュメントにこの流れを図にしたものが紹介されています。
(引用元:https://docs.rilasc.io/v/japanese/)
現在はDiscordでコミュニティに参加することでテストに参加出来るようになりますので興味のある方は参加してみてはいかがでしょうか。
まとめ
ERC-4907により、レンタルにおけるトラブルなどの軽減が期待され、NFTレンタルの用途がより身近になることが予想されます。
特にGemeFiでの使用については期待が大きいので、GemeFiプラットフォームの動向には今後、更に注目していきたいと思います。