NFTレンディングは、DeFiに続く金融サービスとして期待されています。
NFTレンディングとは、NFTを担保にして暗号資産(仮想通貨)の融資を行うサービスです。このNFTレンディングを活用すれば、NFTが有する市場価値の一部を再投資に回すことができます。。
世界の投資家は、数千万円を超える価値のNFTコレクションを数多く保有しています。しかし、これらのNFTはただ保管されるのみで、十分に活用されているとはいえない状況です。そのため、既持資産を投資する機会の損失につながっています。
このような背景から、NFTを担保としたNFTレンディングに注目が集まっています。この記事では、NFTレンディングの特徴や注目されている理由を解説しましょう。
この記事の構成
NFTレンディングとは?
NFTレンディングとはそのNFTを担保として預け入れ、暗号資産を借りる金融サービスです。NFTを保有しつつ、効率よく資産運用できる点が魅力といえるでしょう。
このNFTレンディングには、以下の特徴があります。
NFTを担保に暗号資産の借入ができる
NFTレンディングは、NFTの預け入れによって暗号資産を借り入れできる金融サービスです。
預け入れたNFTは担保として機能し、暗号資産の返済が滞った場合には、差し押さえの対象となります。借入契約はスマートコントラクトによって実行されるため、NFTを持ち逃げされる恐れはありません。
加えて、NFTレンディングで暗号資産を借り入れる際には、個人情報や信用情報も不要です。つまりブロックチェーン上でNFTの所有権さえ証明できれば、すぐに融資を受けられるのです。
貸し出し機関型と個人貸与型がある
NFTレンディングでは、貸し出し機関型と個人貸与型の2種類のサービスが存在します。
貸し出し機関型の特徴は、暗号資産取引所が貸し手となる点です。
貸し出し機関型では、暗号資産取引所がNFTの評価額や利率などの貸出条件を定めています。そのため借り手が融資を希望する際には、暗号資産取引所による貸し出し審査を受けなければなりません。したがって、貸出条件が明確化されており、初心者でも扱いやすい点が特徴といえます。
これに対して個人貸与型では、個人投資家同士による取引が行われます。NFTレンディングサービスは貸し手と借り手の仲介役となり、個人間での融資が行われることになるのです。
個人貸与型サービスの魅力は、貸出条件を当事者同士で決められる点。利率や融資額の希望を提示し、相手が同意すれば契約成立となります。
個人貸与型サービスは自由に貸出条件を設定できる一方で、NFTの市場価値から乖離した条件を提示すると不利益を被ることも。そのため、NFTマーケットに関する知見が浅い投資家には不向きです。
数多くのサービスが登場している
昨今では、NFTレンディングに関するサービスが次々と登場しています。なぜなら投資家の間で、保有しているNFTを有効活用したいというニーズが存在するからです。
NFTは換金までのハードルが高く、流動性の低い資産です。そのため、複数の高級NFTを保有している状態では、手元の資金が不足しがちになることも。特に、高級NFTを長期間に渡って保有する場合には他の投資案件に参加できないというデメリットもあります。そのため大きな機会損失につながりかねません。
NFTレンディングのメリット
ここまで、NFTレンディングに関する概要や特徴を解説してきました。次にNFTレンディングのメリットをご紹介していきます。
遊休資産のNFTを有効活用できる
NFTレンディングの最大のメリットは、保有中のNFTを有効活用できる点でしょう。
従来は、一度NFTを購入すると売却しない限り、購入資金は戻ってくることはありませんでした。加えてオリジナル性のある高級NFTは手放すと再取得が困難であり、放出できないことも。
そのため投資家は、NFTの市況価格が上昇するまで長期間にわたってNFTを保管しているのが常です。高級なコレクションを保有するには、数千万円分の資金を投じなければなりませんから、NFTの保管期間中は、その多額の資金が活用できない状態となってしまいます。
こうした場合にも、NFTレンディングを活用すれば、NFTの所有権を維持しながら投資資金を借り入れすることができます。そのため、借り入れた暗号資産を元手としたDeFiへの再投資や、次なるブルーチップの購入が可能となるのです。
貸し出し条件を契約者が設定できる
個人貸与型のNFTレンディングサービスでは、当事者同士の合意によって貸し出し条件を決定することが可能。そのため、貸出期間や利率を自由に設定でき、投資家の事情に合わせた融資を実行できます。
ただし、貸出条件を設定するにあたっては、個別のNFT価格やマーケットの動向に関する知見がどうしても欠かせません。融資案件の一部では、市場のNFT相場と著しく乖離した条件を提示する投資家もいるため注意が不可欠です。
DeFiよりも簡単にレンディングできる
NFTレンディングの操作は、DeFiよりも簡単です。
従来のDeFiでは、通貨ペアやLPトークンを用意しなければなりません。加えてマイナーな銘柄への両替が必要であったりと、初心者には不向きなサービスでした。
これに対してNFTレンディングでは、NFTを預け入れるだけで暗号資産の借り入れができます。そのため、NFTをきっかけにブロックチェーンに興味を持ったユーザーにとっても、扱いやすいサービスとなっています。
NFTレンディングが抱える課題
NFTレンディングは、登場して間もない未成熟なサービス。そのため、予想外のトラブルが発生する可能性もあります。
NFTレンディングを利用するにあたっては、事前にリスク面を十分に理解するようにしましょう。
レンディング対象のコレクションが限られる
担保の対象として認められているコレクションは、NFTのごく一部に限定されています。なぜなら多くのNFTコレクションは、今後もその価値を維持し続けられる保証がないからです。
担保として預け入れできるコレクションには、CryptoPunksやBAYCなどの有名NFTが挙げられます。これらのコレクションは数千万円を超える値段が付いているため、一般の投資家にとって馴染みがありません。したがって、NFTレンディングは一部の大口投資家しか利用できない状況が続いているのが現状です。
NFT産業はまだ黎明期にあり、NFTの価値が今後も認められるかはわかりません。NFTの市場価格が揺らいでしまうと、NFTレンディングの仕組みは維持できなくなることでしょう。
NFTの市場価値が安定しない
担保であるNFTの価値が乱高下する点も、NFTレンディングにおける懸念材料です。
NFTの世界では、作品の評価額が常に大きく変動します。たとえ時価総額で上位に入る人気プロジェクトであっても、半年後には忘れ去られているケースも珍しくありません。
そのため、NFTが担保としての役割を果たせるのか懸念が残ります。
NFTの市場価格は、NFTレンディングにおける貸し出し額を左右する重要な項目。しかし、暗号資産の貸し出し期間中に担保の評価額が下落すると、NFTレンディングの仕組みが正常に機能しなくなりかねないことも知っておきましょう。
貸付合意に法的な位置づけ拘束力が発生しない
暗号資産の貸し借りに関して法的な拘束力が発生しない点も、懸念点です。
NFTレンディングでは、スマートコントラクトを介して暗号資産の貸し借りが行われます。NFTの所有権はスマートコントラクト上で管理されるため、持ち逃げや所有権の偽造が発生する恐れはありません。
一方で、暗号資産の受け渡しは匿名で行われ、契約書も交わされません。加えてスマートコントラクト上の契約について、契約者を法的に保護する仕組みがないのです。
そのためDeFiと同じく、自己責任のもとで利用しなければなりません。このように、NFTレンディングを利用する際には、事前にリスクの高さを十分認識する必要があります。
債務不履行が多発している
NFTレンディングにおいて、債務不履行が多発している点も問題です。
借り手が計画どおりに暗号資産を返済しない場合、担保であるNFTは貸し手の所有物となります。この担保の存在によって、返済の強制力が働きます。
ところが、貸出期間中に担保の評価額が下落するような場面では、借り手が意図的に暗号資産の返済を中止するケースが後を立ちません。なぜなら価値の下落したNFTを放棄し、暗号資産を手元に残したほうが、借り手にとってメリットが大きいためです。
このように債務不履行が多発する環境では、健全なNFTレンディングサービスが存続できなくなってしまいます。
NFTレンディングの代表的なサービス
それでは、ここから代表的なNFTレンディングサービスをご紹介していきます。
昨今、いくつものNFTレンディングが登場しました。それぞれに特徴があるため、自身にあったサービスを選ぶようにしてください。
NFTfi
NFTfiは、暗号資産の貸し手と借り手を結ぶマッチングプラットフォームです。
融資を受けるには、まず借用人が担保として差し出すNFTをリストアップします。このリストアップされたNFTに対して、暗号資産の貸し手が融資額や金利などの条件を提示。借用人が条件に同意すれば、めでたく契約成立となります。
NFTfiでは、以下のNFTコレクションを担保にwETHやDAIを借り入れできます。
- CryptoPunks
- Bored Apes
- Art Blocks
- Mutant Apes
- VeeFriends
- Autoglyphs
担保にできるNFTコレクションの種類も豊富であり、利便性の高さが強みです。
nexo
nexoは、貸し出し機関型のNFTレンディングサービスです。
nexoでは金融機関と同様に担保の審査が行われ、借入できる金額が通知されます。プロの査定によってNFTが評価されるため、借り入れ条件には一定の妥当性があります。
加えて暗号資産の貸し手を探す必要がなく、審査完了とともにnexoから暗号資産を借り入れできる点も魅力です。
Arcade.xyz
Arcade.xyzは、個人間の融資を仲介するプラットフォームです。
Arcade.xyzでは、暗号資産の借り手側が貸し出し条件を設定可能。加えて貸し手による条件提案もできるなど、お互いに条件を提示できる仕組みです。
また、複数のNFTを担保として預け入れできるなど、柔軟性の高い担保設定が可能です。
BendDAO
BendDAOは、貸し出し機関型のNFTレンディングサービスです。
NFTの保有者は、BendDAOへ担保を預け入れると同時に暗号資産の融資を受けられます。貸出条件はBendDAOによって規定されるため、NFTの市場価値に見合った条件が適用されます。
一方で暗号資産を持つ投資家は、BendDAOへの資金提供が可能です。預け入れた資金はプールされて、NFTの保有者へ貸し出されることに。借り手が支払う利息の一部が暗号資産の貸し手にも還元される仕組みとなっています。
BendDAOではNFTが担保として預け入れされている間、貸し手にはレプリカのNFTを供与このレプリカのNFTによって、NFT保有者に与えられる特典を継続して享受できます。
Pine Protocol
Pine Protocolは、個人間の融資プラットフォームです。
Pine Protocolでは個人同士の契約でありながらも、プラットフォーム側による貸出条件の設定が行われているのが特徴。くわえて、運営者による査定により、公平な取引環境を維持しています。
加えてPine Protocolでは、精度の高いNFT査定が可能です。というのも、直近の取引状況や価格推移を分析することで、適切な評価額を算出するためです。
これらの理由から、個人間の取引であっても不当な条件にならない仕組みになっています。
NFTレンディング(NFT-fi)の特徴や注目される理由のまとめ
本記事では、NFTレンディングの特徴や注目の理由について解説しました。このNFTレンディングには、以下の特徴があります。
- NFTを担保として、暗号資産を借り入れできる金融サービス
- 従来、いわゆる遊休資産となっていたNFTを有効に活用NFT価格の乱高下が懸念材料
NFTレンディングはまだ黎明期のサービスであり、多くの課題を抱えています。一方で、保有するNFTを有効利用したいというニーズは市場に強く存在しています。そのため、NFTレンディングのサービスが次々と登場しました。
今後の発展が期待される一方で、懸念点も多く残っているため、NFTレンディングを利用する際はリスク面について十分に留意しましょう。