2022年10月5日、日本発の暗号資産(仮想通貨)決済システム「Slash Web3 Payments」の「QRコード決済機能」のリリースを発表しました。
この発表は昭和的な演出をした動画を用いて紹介されており、Twitter上でとても話題になりました。
今回は海外の決済サービスの紹介も含めて、Slah Web3 Paymentsのサービスを解説していきます。
この記事の構成
海外での暗号資産決済サービスについて
海外では既に暗号資産決済サービスが複数ありますので、代表的なサービスをいくつか紹介します。
bitpay
2011年5月に米国でスタートしたサービスで、世界で最も長く使用されている暗号資産決済サービスの1つです。
アプリとプリペイドカードを使用した決済だけでなく、PCでのWeb決済にも対応しています。
決済可能な暗号資産は、ビットコイン、イーサリアムを含む8通貨の他、6つのステーブルコインに対応しています。
これらの暗号資産をbitpayウォレットにて即座に米ドルに変換し、オンライン決済や実店舗で使用できる他、アプリでギフトカードを購入してウォルマートやUberなどでも使用できます。
また用途に問わず使用した通貨の量に基づいたキャッシュバック機能も備えています。
bitpaの特徴として公式サイトでは以下の点をあげています。
- 暗号資産取引において最も使用されているウォレットである
(引用元:https://bitpay.com/stats) - 決済成功率で最も高い成功率を誇っている
(引用元:https://bitpay.com/stats)
他に、決済に使用されている暗号資産は圧倒的にビットコインであるとのデータが紹介されています。
(引用元:https://bitpay.com/stats)
Paypal
米国決済サービス大手のペイパル・ホールディングスは、2020年10月に暗号資産の取扱いを開始しました。
取扱い当初はビットコインキャッシュとライトコインを売買できるだけの機能でしたが、2022年6月に、他のウォレットや取引所間での入出金が可能になりました。
PayPalが対応している暗号資産はビットコイン、イーサリアム、ビットコインキャッシュ、ライトコインの4通貨です。
米国ではPayPalで暗号資産決済の活用が増えてきており、コロラド州では2022年9月からPayPalを使用して税金の支払いができるようになりました。
Cash App
Twitterの共同創業者であるジャック・ドーシー氏がCEOを務める決済企業であるBlock社が運営する決済アプリです。
2018年1月にビットコインの売買サービスから始まり、ビットコインにこだわるサービスの展開を進めています。
最近では2022年2月に「Lightning Network(ビットコインの取引を高速化し、手数料を抑えるためにビットコインのセカンドレイヤーとして動いているネットワーク)」に対応したことを発表しました。
2022年4月には給与を自動的にビットコインに投資できる機能の提供も開始しました。
また、ジャック・ドーシーが提唱する「Web5」に対する取り組みも進んでおり、Block社の子会社である「TBD」が2022年7月にWeb5に関する構想をスライドにまとめた資料を公開し、大きな話題を呼びました。
クレジットカードとの連携
クレジットカードとの連携も進んでおり、米大手決済サービスの「VISA」と「Mastercard」についての取組を紹介します。
VISA
2021年3月に「VISA」がステーブルコインである「USDC」で支払えるサービスを開始しました。
提携する取引所の暗号資産ウォレットにひも付けたデビットカードやプリペイドカードを使用し、世界中の加盟店で利用できます。
Mastercard
2022年1月、米ナスダック上場の大手暗号資産取引所コインベースとの提携を発表しました。
同年5月にβ版として公開したコインベースのNFTマーケットプレイスである「CoinbaseNFT」において、Mastercardでの決済に対応できるようになりました。
その後もNFTマーケットプレイスへの導入に取り組んでおり、「Immutable X(イミュータブルエックス)」、「Candy Digital(キャンディデジタル)」、「The Sandbox(ザ・サンドボックス)」、「Nifty Gateway)などが挙がっています。
Slash Web3 Paymentsの特徴
暗号システムサービスである「Slash Web3 Payments」は、2022年10月に「QRコード決済の開始」を発表しました。
発表の際に使われたTweetの動画は、インパクトのある昭和的な雰囲気を醸す画像を用いて大変話題になりました。
(引用元:https://twitter.com/SlashWeb3/status/1577889588495933440?s=20&t=1G-ccsh11SQuQFvo_3G2tA)
Slash Web3 Paymentsは「スラッシュ(Slash)」とも呼ばれ、冒頭の画像やTwitterにもスラッシュの文字が表示されています。
Slash Web3 Paymentsの特徴の1つは、DEX機能を備えているため、決済画面上で自動的に最適なレートでスワップしてくれることです。
これにより、ユーザーが決済する前にDEX(分散型取引所)でトークンをスワップ(交換)するなどの手間をかけずに決済を即時に行うことを可能にしました。
QRコード決済機能
QRコードの決済機能の特徴を店舗側(受取側)とユーザー側(支払側)それぞれを紹介します。
- 店舗側
- QRコードをコーディングすることなく発行可能/ダウンロードが可能
- 決済手数料は0.2~0.6%
- ユーザー側
- QRコードをスマホなどで読み込み、決済金額を入力するだけで決済完了
- 支払いは1400以上の銘柄が使用できる
対応チェーン
2022年10月5日時点の対応チェーンは以下の通りです。
- イーサリアム
- BNBチェーン
- Polygon
- アバランチCチェーン
今後予定されているチェーンは以下の通りです。
- Fantom
- Arbitrum ONE
- Solana
通貨の選択と自動レート
先述したように、Slash Web3 PaymentではDEX機能を備えており、自動でスワップしてくれます。
これは、決済時にDEXルーター(Uniswap V2 specification)へSlash Web3 Paymentが自動的に接続することで、決済時点での最適なレートと暗号資産を提示してくれる機能です。
例えば、決済時に店舗側(受取側)からUSDTを提示されたとします。
この時、ユーザー側はETHしか保有していなくても、Slash Web3 Paymentの決済画面上でETHをUSDTにスワップして決済することができるのです。
従って、従来の決済のように店舗側の支払可能な通貨を用意するため、事前にDEXでスワップするといった面倒な手間が不要になります。
Slash Web3 Paymentは「暗号資産+Defi」の機能を持ち、保有している暗号資産に関わらず多様な決済手段を可能にしている、今までにない暗号資産決済サービスであると言えます。
法定通貨とステーブルコイン
暗号資産の最大の弱点は「ボラティリティ(価格変動)の高さ」です。
これが受取側である店舗やECサイトなどで、暗号資産での決済サービスが進まない大きな理由になっています。
そこで、Slash Web3 Paymentではステーブルコインの受取のみを設定可能にし、受取側が大きな損失を受けないように配慮した設計になっています。
決済可能な法定通貨とステーブルコインは以下の通りです。
法定通貨(ユーザー側のみ)
- USD
- JPY
- EUR
- AED
- SGD
- HKD
- CAD
- IDR
- PHP
- INR
- KRW
ステーブルコイン(ユーザ側、店舗側)
- USDT
- USDC
- DAI
- JPYC
利用方法
店舗側に該当するQRコードの作成方法とユーザー側の支払方法を公式サイトに掲載されている手順でそれぞれ紹介します。
QRコード作成方法
TOPページから「Enter APP」をクリック
ウォレットを接続(2022年10月30日時点でMetaMaskのみ)
ウォレットに接続するとダッシュボード画面になるので、チェーンを変更する場合は右上のチェーン表示をクリックして変更する。
受取トークン(ステーブルコイン)の設定を行う。
なお、一度決めたトークンは変更することができず、別のトークンを設定する場合は別のウォレットでの設定が必要になります。
「Go Settings」をクリックし契約設定画面に移動する
使用ネットワークの「Create」をクリック、続いて「Create Contract」をクリックしてコントラクト作成を行う
コントラクトが作成できたら「QR Payment Setting(QR決済設定)」をクリックし、対象チェーンの「Created」をクリック
Payment URLが発行されるので「Show QR Code」をクリックし、QRコードを表示させる
QRコードが表示されたらダウンロードしてスマホなどに保存しておく
ユーザー側での決済方法
次にユーザーがスマートフォンでQRコードを読み取ってから決済するまでの操作を説明します。
法定通貨の金額を入力するとステーブルコインの最適なレートが表示される
ウォレットを接続し、支払トークンを選択する
選択したトークンの最適なレートが計算されるので結果が出るまで少し待つ
レートが確定したら「Go Payment」をタップし「Confirm Wallet」でウォレット側で承認させ決済完了
まとめ
暗号資産決済は様々な障壁があり、なかなか進まない現状があるなかで、Slash Web3 Paymentsはそれらの問題点を解決しました。くわえて使用方法も簡単さにこだわり、Web3にふさわしい決済方法が実現しました。
リリース後より導入する店舗が増えてきており、今後もさらに増えてくることが予想され、日本だけでなく世界中での使用も期待されています。