2009年1月にビットコインが誕生して以降、暗号資産(仮想通貨)業界は大きな成長を遂げてきました。
そんなビットコインをはじめとしたブロックチェーンで採用されている通信方式がP2P(ピアツーピア)であり、特定のサーバーを経由せず、複数の端末が直接データのやりとりを行う通信技術となっています。
この記事では、P2Pの特徴やメリット・デメリット、クライアント・サーバー型の通信システムとの違いなどについて解説していきます。
また、ビットコイン以外にP2Pネットワークを活用している事例もご紹介していくので、興味のある方はぜひ最後までご覧ください。
この記事の構成
P2P(ピアツーピア)とは?特徴やクライアント・サーバー型との違いなどを解説
まずは、P2Pという通信システムの概要や特徴について解説していきます。
また、P2Pの3つの種類についても詳しくご紹介していくので、詳しく確認していきましょう。
中央集権的なサーバーを経由せず、個々の端末が直接通信を行うネットワーク
P2P(ピアツーピア)とは、中央集権的なサーバーを介さず、個々の端末がデータを直接通信したり、ファイルの共有を行うことできる通信技術です。
正式名称は「Peer to Peer」となっており、Peerという単語には「対等なもの、同等な人」といった意味があります。
P2Pに参加しているPeer(対等な立場の端末)は「ノード」とも呼ばれており、暗号資産に触れている方は一度は聞いたことがある言葉なのではないでしょうか?
このノード同士が繋がりあい、データの通信を行っているネットワークが「P2Pネットワーク」と呼ばれています。
画像引用元:Wikipedia「Peer to Peer」
P2Pはそれぞれ端末が分散してデータの管理を行っているため、特定の端末にアクセスが集中することはありません。そのため、対極となるクライアント・サーバー型と比べると通信スピードも速く、サーバーのダウンタイムが発生しないという特徴を持っています。
しかし、データの所在がわかりにくいため、データ管理をしにくいという側面があります。また、悪意を持った端末がネットワークに参加した場合、ウイルスが入り込んでしまうといった危険性も考えられるでしょう。
P2P(ピアツーピア)とクライアント・サーバー型との違い
そんなP2Pと対比される通信技術としては、クライアント・サーバー型の通信システムが挙げられるでしょう。
画像引用元:Wikipedia「クライアントサーバモデル」
クライアント・サーバー型とは、非常に多くのサービスで使用されている通信モデルであり、クライアント側が中央のサーバーに情報を要求(リクエスト)することで、それに対してサーバー側が情報を返答(レスポンス)する形で通信が行われます。
データが1箇所に集中して保管されているため、データを紛失してしまうといった心配はありません。しかし、多くのアクセスが集中すると負荷がかかり、サーバーダウンを起こす可能性があります。
両者それぞれにメリット・デメリットがありますが、現在のところクライアント・サーバー型が通信システムの主流になっていると言えるでしょう。
P2P(ピアツーピア)ネットワークの3つの種類
ここまでP2Pの特徴を解説してきましたが、P2Pにもいくつか種類があります。ここでは、以下の3つのP2Pについて、確認していきましょう。
- ピュアP2P
- ハイブリッドP2P
- スーパーノード型P2P
ピュアP2P(ピアツーピア)
ピュアP2Pとは、ここまで解説した中央集権的なサーバーを介さず、個々のノードが情報のやりとりを行う通信システムのことです。
最もスタンダードな通信方式であり、P2Pと呼ぶ際はこのピュアP2Pを指すことが一般的となっています。
ハイブリッドP2P(ピアツーピア)
ハイブリッドP2Pは、P2Pネットワークにサーバーを取り入れた通信方式です。
具体的には、「どのノードがどういったデータを持っているのか」といったことをサーバー側で管理し、直接的なやりとりはノード同士で行う形になります。
サーバーを活用してはいるものの、データの管理自体はサーバーで行っていない点がポイントと言えるでしょう。
スーパーノード型P2P(ピアツーピア)
スーパーノード型P2Pは、ハイブリッドP2Pのサーバーにあたる作業を高い処理能力を持つ特定のノードが行う通信方式です。
複数のスーパーノードが作業を分担することで、高速でデータのやりとりを行うことができる特徴を持っています。
P2P(ピアツーピア)ネットワークの3つのメリット
次に、P2Pネットワークが持つ、以下の3つのメリットをご紹介していきます。
- 通信スピードが速く、ダウンタイムが発生しない
- 低コストでネットワークを運用できる
- 匿名性が高い
それぞれ順番に確認していきましょう。
通信スピードが速く、ダウンタイムが発生しない
P2Pネットワークのメリットとして、通信スピードが速く、かつダウンタイムが発生しないという点が挙げられます。
ここまでご紹介したように、P2Pは中央のサーバーを介さずに通信を行うため、接続するユーザーの数が増えたとしても特定の機器に負荷が集中しません。
そのため、常に速い通信スピードを提供できるだけでなく、サーバーがダウンすることがない「ゼロダウンタイム」を実現しています。
一方、クライアント・サーバー型では、ユーザーの増加によってアクセスが集中することで回線が重くなり、通信速度が遅くなったり、場合によってはサーバーがダウンしてしまう可能性が考えられるでしょう。
低コストでネットワークを運用できる
P2Pネットワークは、低コストでネットワークを運用できるというメリットがあります。
そもそもP2Pでは、それぞれのノードが直接データの通信を行うため、高性能な通信回線やサーバーを準備する必要がありません。
また、これらを管理するエンジニアを雇用する必要もないため、運用コストを大幅に削減することが可能です。
匿名性が高い
P2Pネットワークの最後のメリットとして、匿名性が高いというポイントが挙げられるでしょう。
P2Pでは、各ノード間の通信を暗号化したり、データの中継回数を多くすることで、もともと誰がデータを公開したのか?ということをわかりにくくすることが可能です。
実際、後にご紹介するP2Pのファイル共有ソフト「Winny(ウェニー)」では、匿名性を保持して利用できたことから、多くのユーザーに使われていたという特徴がありました。
P2P(ピアツーピア)ネットワークの2つのデメリット
上記でご紹介したように、様々なメリットがあるP2Pの通信モデルですが、反対にデメリットも存在しています。
ここでは、以下の2つのデメリットについてご紹介していきます。
- セキュリティリスクがある
- ネットワークでやりとりされる情報の質の問題
セキュリティリスクがある
P2Pネットワークの注意点として、セキュリティ関係のリスク・危険性が挙げられるでしょう。
P2Pでは、ノードが直接データのやりとりを行えるため、悪意を持ったユーザーが意図的にウイルスを拡大させることも不可能ではありません。
また、クライアント・サーバー型と比較しても、どこからウイルス感染が発生したのかを特定することも困難となっています。
ネットワークでやりとりされる情報の質の問題
P2Pの問題点として、ネットワークでやりとりが行われる情報の質の問題があります。
特にP2Pを使ったファイル共有ソフトでは、ユーザーが自由にファイルを公開できたため、映画や音楽といった多くの著作権に違反するものが共有されていました。
また、一度ネットワークに情報が拡散されると完全に削除するのは非常に難しく、悪質な情報が出回った際の対処が難しいというネガティブな側面があります。
P2P(ピアツーピア)ネットワークの活用事例4選
最後に、P2Pネットワークを活用している以下の4つのサービス事例を確認していきましょう。
- Bitcoin(ビットコイン)
- LINE(ライン)
- Skype(スカイプ)
- Winny(ウィニー)
Bitcoin(ビットコイン)
Bitcoin(ビットコイン)は、2018年にSatoshi Nakamoto(サトシ・ナカモト)という人物によって構想され、2009年から運用が開始されたブロックチェーンおよび暗号資産です。
Bitcoinはどこかの中央集権的な管理者を経由することなく、ユーザー間で直接資金のやりとりができる仕組みとなっており、過去の取引は全てブロックチェーンと呼ばれる分散型台帳に記録されています。
このブロックチェーンは、BitcoinのP2Pネットワークに参加しているノードによって分散的に管理されており、悪意を持ったユーザーによる取引履歴の改竄を困難にしています。
LINE(ライン)
多くの日本人が利用しているコミュニケーションツール、LINE(ライン)でもP2Pの通信技術が使用されています。
LINEでは、ユーザーのアカウント情報などはサーバーで一元管理されていますが、ユーザー同士がチャットで送信する写真・動画はP2Pで共有が行われており、中央のサーバーを介していません。
このように、P2Pの通信技術によって大規模なサーバーを用意する必要がないため、運営コストを大きく削減していると言えるでしょう。
Skype(スカイプ)
世界的に有名なコミュニケーションツールのSkype(スカイプ)でも、創業当初はP2Pの通信システムが使われていたことで知られています。
Skypeでは、スーパーノード型P2Pを採用し、選ばれたノードがサーバーで管理されている情報を参照する形式を取っていました。
しかし2011年5月、マイクロソフト社に買収されて以降はクラウドを使ったシステムに変更されているため、現在はP2Pの技術は使用されていません。
Winny(ウィニー)
Winny(ウィニー)とは、2002年5月にリリースされた、P2Pの通信技術を使用したファイル共有ソフトです。
金子勇氏という日本のプログラマーによって開発され、中央のサーバーを必要としないピュアP2P方式を採用していました。
しかし、その匿名性の高さから著作権法に違反する様々なファイルが共有されてしまい、金子氏も「著作権侵害行為幇助の疑い」で逮捕されるなど、一種の社会問題となります。
最終的に金子氏は無罪を勝ち取ったものの、2013年7月に急性心筋梗塞で死去し、現在ではサービスの開発は終了しています。
P2P(ピアツーピア)の特徴やメリット・デメリットまとめ
今回の記事では、P2P(ピアツーピア)の特徴やメリット・デメリットなどを詳しく解説してきました。
ご紹介したように、P2Pとは中央のサーバーを介さず、個々の端末が直接データの通信をしたり、ファイルの共有を行うことができる通信技術のことです。
クライアント・サーバー型のように「ダウンタイム」が発生しないといったメリットがある一方、セキュリティリスクが生じる可能性などはデメリットと言えるでしょう。
現在、大きな成長を見せているビットコインをはじめとしたブロックチェーンにも活用されており、今後さらに注目を集める技術になると考えられます。