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Dynamic NFTの可能性について解説

解説系記事

NFTのブーム後、様々なコレクションが誕生しその種類も複数誕生し、常に進化し続けています。

そのような中、日本でDynamic NFTという技術を用いたサービスが誕生しました。

どのようなサービスでどのような未来が待っているのか、少し難しい内容ですがわかりやすく解説していきます。

Dynamic NFTとは

一般的に取引されているジェネラティブNFTなどは、作品にトークンIDを紐づけてその唯一性を証明する技術で、NFTの購入者は作品を所有していることを証明することが可能になります。

これらNFT作品のデザインや形状は、オンチェーン、オフチェーン問わず変更することができず、デザインが変更される場合は新たな作品として市場に出す必要があります。

一方、Dynamic NFTは特定の状況に基づいて変化させることができるNFTのことで、何らかの条件により内容が変更された場合でも、トークンIDは維持されたままアイテムを変更させることが可能です。

一番わかりやすい使用例が「会員証」です。

あるスポーツクラブの会員証がNFTとして発行されているとします。

その所有者である会員の住所が変更になった場合、新たなNFTを発行させるのではなく、持っている会員証NFTの住所のみを更新させることができます。

このように変更可能なDynaminc NFTを動的NFTと呼び、ジェネラティブNFTなど、変更できないNFTは静的NFTと呼ばれます。

どちらのNFTもブロックチェーンの外であるオフチェーンから情報を取得してNFTが発行されていることが多いのですが、その橋渡しを行うのが「オラクル」と呼ばれるサービスで、特にDynamic NFTにおいてはオラクルの技術がとても重要になります。

オラクルについて

ここからは、オラクルがどのような役割をしているのか、その技術について簡単に紹介していきます。

ブロックチェーン上で動いているスマートコントラクトは、外部からの情報を取得する事ができません。

そこで、外部から情報を得る必要があるときに使用されるのが「オラクル」というレイヤーです。

オラクルはブロックチェーンである「オンチェーン」に外部データが存在する「オフチェーン」から情報を提供する橋渡しの役割を担っています。

例えば、イーサリアムブロックチェーンのスマートコントラクト上に、天気や温度などの情報を取り込もうとした場合、オラクルを橋渡ししてそのデータを取得します。

(引用元:https://chain.link/

このようにDynamic NFTに限らず、スマートコントラクトが外部から情報を入手する場合は必ずオラクルを利用することになります。

オラクル問題

オラクルのサービスは多数存在しますが、管理者が運営する「中央集権的」なオラクルと、管理者が不在の「非中央集権的」なものがあります。

ご存知の通り、中央集権的なネットワークは管理者次第でネットワークが止まってしまうなどのリスクがあります。

一方非中央集権的なネットワークは完全に分散化され、ネットワークが止まるなどのリスクがほとんどありません。

しかし、オラクルには中央集権的な方が多いと言われています。

その理由は「オラクル問題」と言われる懸念事項があるためです。

ここではあまり詳しく触れませんが、簡単に説明すると「オフチェーンである外部の情報が本当に正しい情報であるのか」という問題です。

先ほど挙げた天気の情報を例に取ると、万が一間違った天気の情報をそのままオンチェーンのスマートコントラクトに渡してしまうと正しく機能しない可能性があるだけでなく、間違えた情報のまま結果を通知してしまうことになります。

つまり、オラクルでは情報の正確性を検証する必要があるため、どうしても中央集権的なサービスになってしまいます。

しかし先述したように、中央集権的なサービスはリスクがあります。

chainllinkを使用したDinamic NFT

そこで、分散型オラクルの必要性が重要になってきますがその代表が「Chainlink」と言われるサービスです。

ChainlinkではLINKと呼ばれるネイティブトークンを発行しており、Chainlinkを運用しているノードに支払われています。

Chainlinkに情報を提供するノードオペレーターは正確な情報を提供することにより、報酬であるLINKトークンを受け取ることができます。

さらに、Chainlinkは信頼性を保つために様々な技術を活用しており、その中の一つがオフチェーンコンポーネントと言われる技術です。

オフチェーンコンポーネントは誰でも簡単にChainlinkネットワークに接続させ、ノードとして参加することが可能になる技術で、その結果、様々な業界にノードが存在するようになりました。

例えばニューヨーク証券取引所もノードとして運営しており、リアルタイムで取引情報をChainlinkに提供しています。

また、Chainlinkにはレビュテーションコントラクトという技術を採用し、正しい情報を提供したオラクルノードには評価スコアをあげていく評価システムが導入されています。

この評価が高いほどスマートコントラクトの開発者から選択されやすくなり、採用されたオラクルノードはLINKを受け取ることができます。

それだけでなく、スマートコントラクト開発者は情報の正確性を担保するため、オラクルノードに保証金としてLINKをデポジットすることを要求できます。

つまり、オラクルノードは保証金をデポジットしなければ情報提供することができません。

この保証金は、不正行為や誤った情報を提供した場合などにペナルティとして没収されます。

このような機能によって、Chainlinkは高い信頼性を保っており、下記の通り多くのネットワークで橋渡し役を担っています。

(引用元:https://chain.link/whitepaper

今後もDynaminc NFTで使用する際にはchainlinkを採用したケースが増えると予想されます。

ユースケース

Dynaminc NFTのユースケースは非常に少ないのですが、検証段階も含めた日本での事例を紹介します。

ゆるNFTハッカソンで発表された「Magic Plank」について紹介

solidity-jpのコミュニティで開催された「ゆるNFTハッカソン」に参加したArita Tomoki(@allgory_white)氏が発表した「Magic Plank」というサービスについて紹介します。

Magic Plankとは、文字通り「魔法の板」であり、所有者によって反映される情報が変化するNFTです。

会員証のコンセプトと、その会員証を誰が見るかによって反映される情報が変わる魔法の鏡のコンセプトを組み合わせたものです。

Aliceが所有している会員証がBobに受け継がれると、会員証のある部分が発光し、新たな所有者のMagik Plankへと姿を変えます。

(引用元:
https://angry-fuel-87d.notion.site/Magic-Plank-958d316891954d2fbd1885e228b00fc1

会員証が引き継がれる際に、新旧の所有者で設定する作業は一切なく、インターネット情報に保存されている情報から自動的に生成されます。

Magic Plankの技術

インターネット情報から自動的に生成されると説明しましたが、この部分を詳細に説明します。

Magil Plankでは、インターネット情報はNFTマーケットプレイスのOpenSeaから取得します。

その際に活用するのが先述したChainlinkというオラクルです。

NFTが継承される際に、Chainlink NodeはOpenSeaに接続しユーザーデータを取得します。

そのデータをExtenalAdapterと呼ばれる変換アダプターのような機能で画像データに変換したのち、スマートコントラクト内に格納し、新たな所有者の会員証として発行されます。

(引用元:https://angry-fuel-87d.notion.site/Magic-Plank-958d316891954d2fbd1885e228b00fc1

Magik PlankのホワイトペーパーによるとArita Tomoki氏は、このMagik Plankを販売する予定はないとのことですが、技術応用と展望について以下のように挙げています。

  • 市場価値のあるオーダーメイドアート
    フィジカルな美術品に作者ではなく、所有者の名前が刻まれた作品が多く存在しますが、それらの作品は市場価値がつきません。
    そこで、Magic Plankの技術を応用して、所有者の名前を刻印できるなどのオーダーメイドの特徴を持たせ、さらに市場価値のあるアートを実現させることが可能になるとしています。
  • 自動署名システム
    先述した会員証など継承に応じて情報を自動的に書き換えることができるシステムは、信頼性の高いデジタル署名としても活用が期待できます。
  • トレーサビリティNFT
    物の流通経路についての情報をNFT化する際に、Magic Plankの技術で経路ごとに変化する情報をNFTに継承していくことが可能になります。

このように3つの応用例をあげていますが、自動署名システムとファッションにおけるトレーサビリティNFTでは既に開発が進められているとのことです。

株式会社PitPaが開発したDinamic NFTの会員証

2022年3月7日、株式会社PitPaがDynamic NFTを使用したNFT会員証「HENKAKU Membership NFT」の発行サービスを開始したことを発表しました。

Dynamic NFTの実用化としては日本初の試みとなります。

どのようなサービスなのか、紹介していきます。

(引用元:https://blog.pitpa.jp/archives/418

株式会社PitPaとは

株式会社PitPaは以下の3点についての事業を行っています。

  • Podcastマーケティング事業
  • オウンポッドキャスト制作支援事業
  • Web3(Dynamic NFT)を活用したカスタマーエンゲージメント事業

上記のようにメディア業界でのコンテンツ制作などのサポート事業に、Dynamic NFT技術を掛け合わせた新しい世界が体験できるサービスを提供しています。

同社では、自社で制作するPodcast「JOI ITO’S PODCAST ー変革への道ー」においてブロックチェーン技術などについて積極的に配信しております。

このPodcastを運営しているのが元MITメディアラボの所長で、現在は千葉工業大学変革センター所長を務めている伊藤穣一氏です。

そしてWeb3事業の最初の試みとして取り組んだのがこのPodcastでのメンバーシップ会員証です。

(引用元:https://blog.pitpa.jp/archives/760

さらに、2021年の年末からオリジナルのトークン「HENKAKU」を発行し、コミュニティアプリのDiscordで「HENKAKU Discord Community」を立ち上げ、コミュニティ内トークンとして活用されています。

番組の聴取回数が多くなると報酬としてもらえるトークンが増えるなど、いわゆる「Listen to Earn」の仕組みも取り入れています。

なお、伊藤穣一氏は千葉工業大学の学修歴証明書をNFTで発行したことでも話題になり、先述したMagic Plankの発表者であるArita Tomoki氏も、伊藤穣一氏に影響を受けDynamic NFTの開発に取り組んでいると語っています。

Dynamic NFT開発の背景

株式会社PiaPaでは、情報が激しく飛び交う現在において企業などが生き残るためには、ファンやコミュニティを醸成し、エンゲージメントを向上させることが大事なポイントだとしています。

そのためには、ブロックチェーンを活用することにより、一方通行であったエンゲージメントをきめ細やかなコミュニケーションにすることが可能になると考えています。

そのような中でDiscordコミュニティ内のメンバーの中から、有志で集まったエンジニアを中心に開発が検討され今回の発表に至りました。

Dynamic NFT会員証の特徴

「HENKAKU Membership NFT」はPodcastとリスナーが双方向でのコミュニケーションを可能にし、2022年3月7日よりサービスを開始しています。

PitPa社のPodcastである「JOI ITO’S PODCAST ー変革への道ー」の聴取回数やお便りの採用頻度が多いリスナーは「称号」と呼ばれるステータスが上がっていきます。

このように会員証であるNFTを変化させることを実現させたのがDynamic NFTで、従来のNFTでは成しえなかった大きな特徴です。

この会員証は入場券としての役割も担い、NFTを提示することによりDiscordコミュニティである「HENKAKU Discord Community」の特定チャンネルに出入りすることが可能になる他、会員限定のイベントの入場券としても使用できます。

このNFT会員証はGithaubでソースコードが公開されており、該当技術を利用したり、応用したい開発者に共有しながらプロジェクトの波及を広げていきたいとしています。

尚、当NFTはOpenSeaでも確認することができます。

(引用元:https://opensea.io/collection/henkaku-v0-1

Dynamic NFT会員証を活用したイベントの開催を実施

2022年3月、同社と伊藤穣一氏で運営するPodcast「JOI ITO’S PODCAST ー変革への道ー」で、リアルイベント「HENKAKU」を開催しました。

入場の際に「HENKAKU Membership NFT」で認証を行うことを試みただけでなく、入場料はコミュニティ内トークンである「HENKAKU」にて事前決済を実施しました。

(引用元:https://blog.pitpa.jp/archives/443

また、このNFTには属性を設定することができ、事前にイベントへの参加権利を取得したメンバーには「HENKAKU Dopes(最高なやつ)」という属性が付与されました。

(引用元:https://blog.pitpa.jp/archives/443

Propertiesを見ると下記の通りHENKAKU Dopesが付与されています。

(引用元:https://blog.pitpa.jp/archives/443

まとめ

Dynamic NFTは個人を証明する手段の1つとしてとても使い勝手がよく、私たちの生活においても利点があると考えられます。

今後、様々な場面でDynamic NFTを活用した会員証などが登場してくるのを期待したいと思います。

Yukimasa

Yukimasa

ブロックチェーン歴6年のライター。ブロックチェーンは必ず新しい時代を築き上げると確信し、その一躍を担うべく本格的に執筆活動中。とどまる事なく進化し続けるNFTやCryptoに関わる情報を初心者にもわかりやすく、そして的確に伝えていく。
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