Polkadotは、異なるブロックチェーン同士を接続するプロトコルです。
従来のブロックチェーンは設計段階で他のブロックチェーンと円滑に接続できるような規格になっておらず、ゆえにブロックチェーンをまたいでスムーズに運用することが困難でした。
そこで各ブロックチェーンを独自の技術によって接続し、大規模・シームレスな運用を目指して作られたのがPolkadotです。
この記事では、ブロックチェーン同士を接続するPolkadot独自の技術や、それによって実現する高度な相互運用性の仕組みについて重点的に解説します。
この記事の構成
Polkadotとは
引用元:Polkadot
Polkadotはリレーチェーン、パラチェーンなどの独自の仕組みを用いてブロックチェーン同士を接続し、ブロックチェーン間のなめらかな運用を実現するシステムです。
まず初めに、プロジェクトの概要と創設者について説明します。
Polkadotが生まれた背景
Polkadotは、親チェーンにあたるリレーチェーンと小チェーンにあたるパラチェーン、およびチェーン同士の接続を円滑に行うブリッジという機能を用いてブロックチェーン同士を接続するプロトコルです。
プロトコルとは、ブロックチェーン業界に限らず一般的な用語として「規格」と呼ばれます。
例えば、電化製品の電源の差し込みプラグは、日本では縦に細長い2つ穴の規格ですべて統一されています。
規格が統一されていることによって、どの電機メーカーも同じ仕様の電源プラグを用いて製品を作ることができます。
一方、海外に行けば電源の差し込み口は3つ穴になっていたり、特殊な形状の差し込み口になっていたりすることから、日本の製品は海外でそのまま使うことができない場面も少なくありません。
これと同様の事象が従来のブロックチェーンでは起こっています。つまり、ブロックチェーン同士の規格が異なるため、相互に接続することが難しくなっています。
その状況を解消するために統一した規格を提供しているのがPolkadotであると言えます。
Polkadotが提供する規格を用いてブロックチェーンを作れば、他のブロックチェーンとも円滑に接続できるようなブロックチェーンを作ることができます。
これは相互運用の可能性拡大やセキュリティ強化の面から、各ブロックチェーンにとって大きなメリットになります。
創設者について
Polkadotの創設者は、イーサリアムを共同で創設し、イーサリアム財団のCTOでもあった_ギャビン・ウッド氏です。
Web3 Foundationというスイスの財団の長でもあるギャビン・ウッド氏は、他のメンバーと共にPolkadotを設立しました。
ギャビン・ウッド氏は、イーサリアム上で頻繁に使用されているスマートコントラクトの言語「Solidity」を作った人物でもあります。
イーサリアムの開発に取り組んでいた頃にPolkadotの構想を思いつき、その6年後の2020年にPolkadotの稼働が実現しています。
Polkadotの仕組み
引用元:Polkadot ライトペーパー
Polkadotは異なるブロックチェーン同士を接続するプロトコルであり、その実現のために独自の技術を用いています。
ここからはPolkadotの機能を支えている個々の技術や仕組みについて解説します。
リレーチェーン
引用元:Polkadot ライトペーパー
Polkadotがブロックチェーン同士の相互運用を可能にしている仕組みの根幹には「リレーチェーン」「パラチェーン」「ブリッジ」の3つの技術があります。
リレーチェーンはPolkadotのメインチェーンにあたります。
リレーチェーンはそこにつながるパラチェーン同士を接続することだけを目的としており、リレーチェーン自体で利用できる機能は最小限にとどめられています。
スマートコントラクトもサポートされていないため、Polkadot自体でアプリケーションを開発することはできません。
あくまでリレーチェーンは、Polkadotのネットワーク全体を連携・統合することを目的としたチェーンとして存在しています。
リレーチェーンによって各ブロックチェーンがつながることにより、例えばAというブロックチェーンのトークンをBというチェーンのトークンに変えることができたり、またその逆も可能になります。
また、リレーチェーンはそこに接続するパラチェーンのセキュリティも担保しています。
新しく作られたばかりのブロックチェーンの場合、プロジェクトの価値が低いうちはセキュリティも弱く、簡単にハッキングされてしまう可能性があります。
ところが、各ブロックチェーンはPolkadotのリレーチェーンに接続することでPolkadot本体と同等のセキュリティを獲得でき、容易にセキュリティを強化することができます。
パラチェーン
パラチェーンは、Polkadotの規格に合わせて作られたそれぞれのブロックチェーンを指します。
並行を意味する「パラレル」という言葉に由来している通り、リレーチェーンと並行しているため、トランザクションの並列処理が可能となっています。この点はスケーラビリティの向上にも貢献しています。
パラチェーン自体は独自のトークンやコンセンサスアルゴリズム、プラットフォームを持つ個別のチェーンであり、どのチェーンがパラチェーンとしてPolkadotのリレーチェーンに接続できるかはオークションによって決定されました。
これをパラチェーンオークションと呼び、このオークションを勝ち抜いてリレーチェーンへの接続が可能になったブロックチェーンの1つが日本発のパブリックブロックチェーンであるAstar Network(アスターネットワーク)です。
リレーチェーン自体は最小限の機能しか持っていませんが、そこに接続するパラチェーンはNFT、ブロックチェーンゲーム、DeFiなど多様な領域のチェーンが接続可能になっています。
ブリッジ
これから新しく作られるブロックチェーンは、Polkadotが提供する規格に合わせて開発をすることで、Polkadotに接続し、他のブロックチェーンとも円滑につながることができます。
一方、ビットコインやイーサリアムなど、以前から存在しているブロックチェーンの多くはこの規格に沿って作られているわけではないため、そのままPolkadotに接続することはできません。
この問題を解消するのがブリッジという機能です。
ブリッジを用いて各ブロックチェーンの規格をPolkadotの仕様にあわせることで、そのままではリレーチェーンにつなぐことが出来なかったブロックチェーンも接続が可能になり、他のブロックチェーンともつながるようになります。
ビットコインやイーサリアムがブリッジによってPolkadotに接続することになれば、例えばAさんがビットコインを送り、それが自動的にイーサリアムに変換されてBさんに届くというようなことが今よりも遥かに簡単な操作のみで行えるようになります。
サブストレート
引用元:Polkadot
リレーチェーン、パラチェーン、ブリッジといったPolkadotの主要な特徴を踏まえた開発を行うためのフレームワークがサブストレートです。
サブストレートはエンジニアのための開発キットのようなもので、Polkadot本体もサブストレートを利用して作られています。
これは、Webサイトを制作する際のWordPressのようなものだと考えることができます。
かつてのWebサイトは、HTMLやCSSといったコーディング用の言語を用いて作らねばならず、非常に手間がかかっていました。
ここにWordPressという一種の「Webサイトを作るためのツール」のようなものが登場したことで、Webサイトの制作は以前に比べて遥かに簡単になりました。
サブストレートはブロックチェーン開発におけるWordPressのようなものだと考えることができ、これを用いることでブロックチェーン開発が容易になり、また規格を最初から揃えて作り始めることも可能になりました。
NPoS
引用元:Polkadot
Polkadotが採用しているコンセンサスアルゴリズムは、NPoS(Nominated Proof-of Stake)です。
コンセンサスアルゴリズムとは、ブロックチェーン上の取引の承認方法を指します。
例えば、Aさんがブロックチェーン上で暗号資産(仮想通貨)を送金する場合、「◯◯さんにBTCを送金する」という指示を出しさえすればすぐに届くわけではありません。
その取引に不正や間違いがないかを第三者が確認し、承認をすることで初めて送金は実行され、その情報がブロックチェーンに書き込まれるという流れがあります。
そして、承認方法として多く採用されているのがPoSです。
PoSは、トークンをたくさん保有・ロックしている人が承認をする仕組みになっており、この仕組みにおいて承認作業を行う主体のことをバリデータと呼びます。
PolkadotにおけるNPoSも基本的な仕組みはPoSと同様で、バリデータが取引の承認を行っています。
しかし、NPoSではバリデータに加えて「ノミネーター」と呼ばれる主体も取引の承認に参加しています。
ノミネーターは信頼しているバリデータに対してトークンをステークすることで、良いバリデータを選び、投票するという形で取引の承認作業に参加しています。
Kusama
Kusamaとは、Polkadotの実験的なメインネットです。
Kusamaはテストネットではないため、実際に価値を持ったネットワークとして、リレーチェーンとパラチェーンの接続等の実験が行われています。
KusamaのネイティブトークンであるKSMも暗号資産取引所で売買が可能になっています。
DOTトークン
引用元:Polkadot ライトペーパー
PolkadotのネイティブトークンはDOTです。
DOTはBTCのように決済目的等で広く使われるわけではなく、Polkadotのネットワークを成立させるために利用されることが多くなっています。
DOTの役割
PolkadotのエコシステムにおけるDOTの役割の中で代表的なものについて解説します。
DOTの役割の1つめはガバナンスです。Polkadot上でアップデートや改善案があった時に、賛成・反対を示す投票権として用いることができます。
2つめがステーキングです。DOTをステークすることで、先ほど述べたように取引の承認に参加できるようになります。
3つめがPolkadotのエコシステム内での利用です。トークンの送金時にDOTで手数料を支払う場面などがこれにあたります。
4つめがボンディングです。新しいパラチェーンがリレーチェーンに接続する時は、一定額のDOTを預け入れる必要があり、これをボンディングと呼びます。
古くなったり有用ではなくなったパラチェーンは、ボンドされたDOTを取り除くことでリレーチェーンへの接続が解除されます。
DOTを取り扱っている暗号資産取引所
DOTを取り扱っている暗号資産取引所は、国内でもその数が増えてきました。
DOTの取り扱いがある日本の取引所の中で代表的なものをご紹介します。
- Coincheck
- bitFlyer
- bitbank
- GMOコイン
- BITPOINT
- フォビジャパン
一部の暗号資産取引所では「取引所形式」での取り扱いもありますが、多くは「販売所形式」となっており、手数料が若干割高になっています。
ご自身でDOTを購入する際は、どの暗号資産取引所を利用するかとあわせて購入の形式にも注意してください。
Polkadotの今後の展望まとめ
Polkadotはリレーチェーン、パラチェーンなどの技術を用いて異なるブロックチェーン同士を接続するプロトコルです。
これから誕生する新しいブロックチェーンはサブストレートというキットを利用することで、Polkadotの規格に沿う形で開発ができます。
すでにあるブロックチェーンもブリッジの機能を使えばPolkadotに接続できるため、これらによりブロックチェーン間の相互運用性は飛躍的に向上します。
ネイティブトークンのDOTはステーキングにも利用できるため、私たちがDOTを保有するメリットも十分にあります。
国内の暗号資産取引所でも購入できるため、Polkadotの将来性に魅力を感じた方はぜひ購入を検討してみてはいかがでしょうか。