日本発のNFTコレクション「Neo Samurai Monkeys」が人気を集めています。2022年5月に3600枚がリリースされ、パブリックセールは1分で完売し、コミュニティは2022年11月10日時点で5000人を超える規模にまで成長しました。
大きな盛り上がりを見せているNeo Samurai Monkeysですが、プロジェクトは確かな計画性を持っており、「コミュニティを盛り上げる」ことに注力しています。
日本でも多くのNFTコレクションが立ち上がっていますが、「最初は良かったのにしばらく経つと楽しみがないので面白くなくなった」というものが少なくありません。
Neo Samurai Monkeysの戦略は巧みで、今後の日本発NFTプロジェクトの成功の雛形になる可能性があります。
この記事ではNeo Samurai Monkeysの概要と戦略、今後の展開について詳しく解説します。
この記事の構成
Neo Samurai Monkeysの概要
「Neo Samurai Monkeys」は、すでに複数のNFTプロジェクトを成功させているクリエイターユニットの「Big Hat Monkeys」が2022年5月19日にリリースしたコレクションです。
5月19日のプレセールと翌20日のパブリックセールで即日完売するほどの人気を博しました。現在は二次流通が活発に行われています。
Big Hat Monkeysの第4弾のNFTコレクション
Neo Samurai Monkeysを運営する「Big Hat Monkeys」はクリエイティブプロデューサーやイラストレーター・サウンドクリエイターなどで構成されるクリエイターユニットです。
これまでも「可愛さとカッコよさが同居する」猿のNFTコレクションを成功させてきました。
Big Hat Monkeysの実績
- 2021年10月・NFTコレクション「Big Hat Monkeys」を発行
- 2021年11月・音楽NFTを販売開始
- 2022年1月・NFTコレクション「Samurai Monkeys」を発行
- 2022年11月・「Neo Samurai Monkeys」を発行
引用元:OpenSea
第1弾のコレクション「Big Hat Monkeys」は帽子をかぶった猿のイラストを使ったNFTアートです。一見するとジェネラティブアートのようですが、実際には1枚ずつ描かれています。
引用元:OpenSea
第2弾のコレクションは音楽NFTです。人気NFTアーティストのonigiriman氏や人気コレクションのNeo Tokyo Punksなどのコラボ作品があり、人気を博しています。
引用元:OpenSea
第3弾は「Big Hat Monkeys」と同様に帽子をかぶった猿のイラストを中心にしたコレクションです。「進化」をテーマにしたコレクションで、Big Hat Monkeysを入手できなかったファン向けにリリースされました。
Big Hat Monkeysは「夢を見れない人間よりも夢見る猿になりたい」という宣言を発しています。
描かれている猿たちは創作を楽しむ人類の比喩で、「支え合う生物」「誰もが進化する希望」を表しています。猿たちのコミュニティには支配者はいないことになっており、否定もマウンティングもない「フリースタイル」を思想としています。
Big Hat Monkeysは「いろんな猿がいて良く、誰かの発想が誰かの出発点になれば良い」と自身の活動のコンセプトを語っています。
運営メンバー
「Neo Samurai Monkeys」のファウンダーは、「Neo Samurai Monkey」と名乗っているクリエイターです。個人なので「s」は付きません。自身のTwitterアカウントを開設しており、フォロワーは2022年12月で3万4000人を超えています。
引用元:Twitter
Big Hat Monkey氏はイベントをプロデュースする広告会社の経営者で、広告で得た知見や経験をNFTコレクションの運営やプロモーションなどに活かしています。NFTコレクターでもあり、海外で高い人気のある「Clone X」のホルダーで「敬愛している」とコメントしています。
もうひとりの重要人物は「Developer(開発者)」として公式に紹介されている「0vSumo」氏です。
NFTエンジニアとして「Neo Tokyo Punks」にも関わっており、Big Hat Monkey氏とは「Samurai Monkeys」「Neo Samurai Monkeys」で共同してコレクションを運営しています。
「Neo Samurai Monkeys」のコンセプト
プロジェクトのコンセプトは「自分の夢に向かって戦っている人を応援する」というものです。Neo Samurai Monkeysに投資することで得た利益によってホルダーの夢をかなえる手伝いをするとディスコードのコミュニティで宣言しています。
「夢に向かって戦いを続けていたSamurai Monkeysが立ちはだかる大きな壁を乗り越えるために修行することで、隠されていた能力が覚醒する」というストーリー設定があり、コミュニティのコンセプトにも合致しています。
ファウンダーの「Big Hat Monkey」氏はNFTプロジェクト「Clone X」の運営モデルを参考にしており、ホルダーへの様々なエアドロップやフリーミントを行うと発表しています。実際に姉妹IPの発行もされており、順調にロードマップをこなしています。
掲げるコンセプトの実現として、2022年9月から「Neo Samurai Monkeysのホルダーにトークンを配布する」というプロジェクトを開始しています。トークンはNeo Samurai Monkeysを保有しているだけで貯まる仕組みになっており、新しいコレクションをmintするのに使えますし、グッズとの交換なども予定されています。
「NFTを保有することでホルダーにベネフィットをもたらす」というのがNeo Samurai Monkeysの方針です。メタバースへの参加や姉妹コレクションのホワイトリストなど様々な特典が予定されています。
Big Hat Monkey氏が敬愛している「Clone X」にも、「メタバース上で自分の分身のアバターとして活動できる」「NFTの無料配布」といった特典が用意されています。保有者に次々と特典を提供することでコレクションの価値を高めるというのは、NFTプロジェクトで主流となっている手法で、王道のやり方と言えます。
Neo Samurai Monkeysプロジェクトの経緯
引用元:OpenSea
Neo Samurai Monkeysは「Big Hat Monkeys」が手掛けた第4弾のNFTコレクションです。大きな人気を獲得しているプロジェクトですが、そこに至るまでには確かな計画性があり、巧みな戦略が取られています。
NFTは2021年の夏頃から世界的なブームが起きましたが、その後は沈静化しつつあります。市場は毎日激しく変動しており、盛り上がりを継続させているプロジェクトは多くありません。
ここではNeo Samurai Monkeysがどのように人気を維持するプロジェクトとなったかという経緯を紹介します。
「猿のNFTプロジェクト」として進化させた
Neo Samurai Monkeysのファウンダーのひとりである「Big Hat Monkey」氏は明快なコンセプトを持ってNFTプロジェクトを始めています。コンセプトは最初のコレクションである「Big Hat Monkeys」というNFTアートプロジェクトから一貫しています。
Big Hat Monkeyがテーマとして持っているのは「人間の成長」です。猿のビジュアルが表現しているのは「人間未満の存在」ではなく、「これから進化していく人」をシンボル化したものです。「夢に向かって頑張るお猿さん」がプロジェクトのテーマです。
第1弾の「Big Hat Monkeys」は夢を持って努力する猿を描いたコレクションです。音楽NFTに続いて発表した「Samurai Monkeys」は、第1弾のコレクションが「1点物」であったため希少性が理由で価格が上昇し、新規購入者から「手が出せない」という声があったために発行数を増やしています。
第4弾となる「Neo Samurai Monkeys」は「最初のMonkeysが成長してSamurai Monkeysになり、それが覚醒してNeo Samurai Monkeysになる」というストーリーを持ったコレクションです。今後はフュージョンして「ヒューマンらしいサル」に進化させる予定です。
2体以上のNeo Samurai Monkeysを融合させて新しいNFTアートが創出されるというのが「フュージョン」です。
認知度を上げるための工夫
Big Hat Monkey氏は、第1弾のコレクション発表時にはTwitterのスペースでの音声配信やNFTファンのツイートに作品をアピールするといった地道な活動をしていました。
活動しているなかでNFTインフルエンサーの目にも留まることとなり、広報のような活動を支援してくれています。認知が高まったところでディスコードでコミュニティを立ち上げています。
コミュニティの立ち上げにあたっては、Neo Tokyo Punksなどのコミュニティマネージャーを務めているTOMO氏からの声掛けがあったとのことです。最初のチャンネル作りやシステム整理などのベース部分の作り込みはTOMO氏が手掛けています。
NFTプロジェクトには、1人のアーティストが地道に様々な役割をこなしながら進めているものもありますが、個々に不得意な分野もあるため単独でプロジェクトを推進していくのはかなりの困難を伴います。
この点、Big Hat Monkey氏は上手に仲間を増やしていきながら任せられるところは任せるというスタイルを採っています。
第3弾のSamurai Monkeysを準備しているとき「0xSumo」氏と出会います。0xSumo氏は若くして多くのNFTコレクションに「デベロッパー」として関わっており、アイデアマンとしても知られています。
0xSumo氏はBig Hat Monkey氏に「リビール」を提案します。リビールとは「ジェネラティブNFTを一次購入したタイミングでは全員が同じ絵柄だが、後日一斉に開封するとそれぞれの絵柄に変化する」という演出方法で、コレクターに期待感を抱かせる手法です。
Neo Samurai Monkeysは個人が頑張って成長させたコレクションではなく、Big Hat Monkey氏に共鳴した人たちの技術やアイデアが込められています。
日本語での展開
Neo Samurai Monkeysの戦略では、地味なようですが特筆すべきこととして「日本語で展開している」ことが挙げられます。シンプルで分かりやすいコミュニティを作るという発想です。
日本発のNFTプロジェクトも多くありますが、そのほとんどは「海外展開」を最初から視野に入れており、ディスコードのコミュニティも英語オンリーまたは英語チャンネル・日本語チャンネルの2つを設けるという方針を採っています。
Big Hat Monkey氏は、「海外NFT業界は投機目的の人が多い。NFTをすぐに手放す人が多い市場にアプローチしたくない」と語っています。Big Hat Monkey氏自身も英語は話せません。
NFTプロジェクトでのディスコードのコミュニティでは多くが英語のチャンネルも設けていますが、日本語コミュニティと英語コミュニティでは多かれ少なかれ「温度差」が生まれます。英語のコミュニティと日本語コミュニティで同じものが話題になるとは限りません。
Big Hat Monkey氏はプロジェクト第4弾となるNeo Samurai Monkeysでは思い切ってディスコードのチャンネル名から日本語にしてホルダーとのコミュケーションも日本語中心で行うようにしています。
チャンネル数も少なくしてシンプルなものになっています。この戦略が功を奏していると考えられます。徹底的に「日本のホルダーを大切にする」という方針が伝わります。
引用元:Twitter
Neo Samurai Monkeysが人気の理由
NFTプロジェクトは2021年頃から次々と開始されるようになりました。とはいえ、生き残っているものは戦略的に優れていてNFT業界とファンの動きに敏感に反応できるものに限られます。
「売って終わり」ではなくホルダーに貢献するプロジェクトはコミュニティも安定しますし、NFTの価値も安定・成長しています。
Neo Samurai Monkeysも「NFTプロジェクトを成功させるための戦略」に優れており、ファンやホルダーを満足させる結果を出しています。NFTプロジェクトの典型的成功事例としてのNeo Samurai Monkeysの活動を紹介します。
長期保有者向けのトークン発行
Neo Samurai Monkeysは2022年5月にNFTがリリースされましたが、9月にはNFTを長期保有しているホルダーに向けて独自のポイント制度「SALトークン」を実装しました。
SALは今後5年間にわたりNeo Samurai Monkeysを1体保有につき毎日5個ずつ自動的に貯まり続けます。貯めたトークンは2体以上の保有を条件に新しい限定NFTを無料で発行するときに消費できます。2023年には「Baby Monkeys」NFTのmintでも消費できるようになります。
また、今後はTシャツやパーカーなどのフィジカルグッズも徐々に販売される予定となっており、SALトークンによって交換できます。
引用元:Twitter
コミュニティが盛り上がっている
Neo Samurai Monkeysのホルダーは2022年12月20日時点で1137人、ディスコードのコミュニティメンバーは1万人を超えています。
プロジェクトの実質的リーダーである「Big Hat Monkey」氏は、プロジェクトの成否はコミュニティにかかっていること、コミュニティを盛り上げることがコレクションの価値を上げることにつながるだけでなく、NFTの楽しさを伝える手段として適していることを理解しています。
ディスコードのコミュニティは「モンキーズコミュニティ」と呼ばれています。モンキーズコミュニティでは、多くの人が発信していますが誰かがコメントすると必ず応答があります。誰かが行動すればコミュニティで応援が送られます。「居心地が良くてあたたかい」コミュニティと評価されています。
引用元:Twitter
Big Hat Monkey氏もコミュニティ内で多くのコメントをしています。ファウンダーと気軽に交流できるコミュニティです。
コミュニティ内では「モンキーズ部隊」という集団が結成されています。各部隊に方針があり、プロジェクトを盛り上げるための活動を行っています。
引用元:Twitter
「NFTを発行する→ディスコードのコミュニティで交流する→ホルダー内でグループを結成する→各グループ内での交流がまた活発化する」という流れでプロジェクトが成長していく手法は、2022年にすっかり定着したと言っていいでしょう。
フィジカルなグッズを投入
充分な人数のホルダーがいてコミュニティが安定して盛り上がっているNFTプロジェクトでは「NFTアートをフィジカルグッズ化して販売する」のが定番の展開となっています。
たとえば「Otaku Culture Studio」が手掛けるNFTプロジェクト「MEGAMI」はフィギュアプレートや缶バッジ、アートボードなどのフィジカルグッズを販売しています。人気アニメのグッズに良く見られるスタイルの商品展開です。
Neo Samurai Monkeysでもフィジカルグッズが商品化されています。モンキーズ部隊に所属する「いなみかずや」氏が担当してTシャツやパーカーなどをプロジェクトリーダーのBig Hat Monkey氏のオフィシャルグッズオンラインショップで販売しています。
引用元:OFFICIAL GOODS ONLINE STORE
トートバッグやグラス、キーホルダー、ステッカーなど豊富な種類が用意されています。Neo Samurai Monkeysのホルダーにはサウナ好きが多いことから、「サウナキャップ」も販売されています。年末にはA4サイズで出力できる「お年玉袋」も配布されます。
「モンキーズ部隊」は1万人程度のファンコミュニティですので、ファンの意見を聞きながらグッズ展開できる点もNFTプロジェクトならではの強みでしょう。
エアドロップがある
ある程度の人数のファンを獲得したNFTプロジェクトが「ホルダーへの特典」としてよく使う手法に、「別のNFTや協力してくれているプロジェクトのNFT獲得の優先権を与える」というやり方が挙げられます。
本体となるプロジェクトにホルダーとして参加しているだけでNFTを優先的に獲得することができるので、新しいNFTを売却して利益を得ることもできます。ホルダーとしては「持っててよかった」と考えますし、プロジェクトの宣伝としても高い効果を発揮します。
Neo Samurai Monkeysでもホルダー向けにメタバース上で使える音楽NFTの無料配布や、人気タレントのレイザーラモンさんが手掛けるNFTプロジェクト「HAG」の優先購入権(ホワイトリスト)が配布されました。
また、Neo Samurai Monkeysを保有していることで得られるSALトークンを貯めておくと、「Neo Samurai Monkeys Fusion」の新規発行に参加できるという特典も提供されました。
引用元:Twitter
「NFTの保有」と「保有期間によって配布量が決まるトークン」を合わせると「新しいNFTが手に入る」という企画です。NFTは2022年12月時点で、高価なものは「1ETH(時価約15万円)」の価格がついています。
ゲームに参加できる
引用元:NFT Wars
「NFT」というシステムとゲームは相性が良く、多くの「NFTゲーム」「Play To Earnゲーム」がローンチされています。
Play To Earnゲームの開発を行うCryptoGames株式会社がローンチしている「NFT Wars」は「すべてのNFTで遊べる世界を作る」ことを目指しています。CryptoGamesはユーティリティトークンの発行やフュージョンシステムの実装を予定しており、その一環として「Neo Samurai Monkeys」の参加を発表しています。
Neo Samurai MonkeysのNFTホルダーはNFT Warsのゲーム内でカードゲームをプレイすることができ、プレイすることでNFT Warsのガバナンストークン「TCGCoin」を獲得できます。プレイすることでNeo Samurai Monkeysへの収益還元も予定しています。
まとめ
豊富なユーティリティを持つNFTプロジェクト「Neo Samurai Monkeys」について紹介しました。
最後にこの記事をまとめます。
- 「Big Hat Monkey」氏による第4弾のNFTプロジェクト
- 「夢に向かって戦っている人を応援する」というコンセプトがある
- Big Hat Monkey氏は「猿」をモチーフにしたNFTプロジェクトを成功させてきた経緯がある
- コミュニティを日本語で展開するといった工夫が見られる
- 保有者向けのトークン発行・グッズ展開・ゲームに参加できるといった豊富なユーティリティがある
コミュニティメンバーの熱意が高いプロジェクトです。今後の展開に注目しましょう。