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ティファニーによるNFT「NFTiff」から見るファッションとNFTの親和性

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ティファニーがクリプトパンク所有者向けのNFT「NFTiff」を販売し、約15億円を売り上げたことが大きな話題となりました。ファッション業界では近年、大手ブランドを中心にNFTへの参入が相次いでいます。本記事ではその流れの一つである「NFTiff」についての概要を紹介し、ファッションとNFTの親和性について考察していきます。

「NFTiff」とは

CryptoPunks所有者向けのNFT

「NFTiff」は、有名ブランドのティファニーにより販売されたデジタルパスのNFTです。ニューヨークの企業「Larva Labs(ラルバ・ラボ)」より発売され、最古のNFTアートとして高額で流通している「CryptoPunks(クリプトパンクス)」の所有者向けのNFTで、2022年8月5日に30ETHの価格で250個発売され、約20分で完売しました。販売時のイーサリアム(ETH)の価格は約20万円だったため、ティファニーは約15億円を売り上げた計算となります。

「Chain社」とのパートナーシップ

ティファニーのプロダクト&コミュニケーション部門のエグゼクティブ・バイスプレジデントであるアレクサンドル・アルノー(Alexandre Arnault)は2022年4月7日に、「CryptoPunks #3167」を元に作成されたペンダントを試作品としてツイッター上で公開していました。このクリプトパンクはアルノー氏自身が購入したもので、自身のツイッターのアイコンに設定しているものです。

そしてそのツイートの2日後に、彼は「クリプトパンクの所有者が1週間の期間限定で購入できるペンダントをカスタムで作るというのはどうか?」というツイートでアンケートを実施し、フォロワーの約8割が賛成しました。

このツイートにクラウド・ブロックチェーン・インフラストラクチャ企業「チェーン(Chain)」のCEOであるディーパック・タプリャル(Deepak Thapliyal)が反応し、ティファニーに呼びかけたことがきっかけとなって企画が実現。そしてティファニーは7月31日に、「NFTiff」を発売することを正式に発表しました。タプリャルは、クリプトパンクの10,000個ある作品のうち9個しかないエイリアンをモチーフにした「CryptoPunks #5822」を、2021年2月にシリーズ過去最高額の8,000ETH(約27億円)で購入した人物です。

「NFTiff」の企画から発売までの流れを見ると、一流ハイブランド企業とブロックチェーン企業のトップ同士がクリプトパンクのホルダーであり、コミュニティ意識を持っていること、クリプトパンクをNFTにおけるハイブランドとして認識していることが分かります。NFTと物理的なアイテムとの接点を見出し、クリプトパンクのホルダー同士のさらに強い繋がりを構築していこうとする姿勢も感じられます。

ペンダントとNFTのセット

「NFTiff」はデジタルパスのNFTで、クリプトパンクのホルダーが購入することで、保有しているクリプトパンクと同じビジュアルデザインの物理ペンダントを入手することができるものです。

ペンダントはそれぞれのクリプトパンクのさまざまな特徴に合わせて、サファイア、アメジスト、スピネル、ダイヤモンドなど、厳選された宝石を少なくとも30個ほど使って作られた贅沢な仕様となっています。ペンダントチェーンは18Kローズゴールドまたは18Kイエローゴールドで、18〜22cmまで調整可能となっており、ペンダント裏側にはエディション番号が刻まれています。

「NFTiff」の価格である30ETHには、ペンダントと引き換えできる権利としてのNFT、物理的なペンダントのほか、デジタルレンダリング、鑑定書、配送料がすべて含まれています。250セットのみの限定で、一人あたり最大3セットまで購入可能なNFTとして発売され、20分ほどで完売となりました。ペンダント自体は2023年初頭に各購入者へ発送される予定となっています。

クリプトパンクが商品化された背景には、2022年3月にBored Ape Yacht Club(BAYC)の運営元のYuga Labsが「CryptoPunks」の知的財産権を取得したということが関わっています。その際Yuga LabsはNFT所有者に対し、それぞれが持つNFTの知的財産権、商権、独占権を譲渡することを発表したため、クリプトパンクの所有者には、所有しているNFTをベースにした製品を作り、販売することが許可されています。今回のティファニーによる「NFTiff」のコレクションは、このような背景から生まれたものであると言えます。

ファッションとNFT

ここまで、ティファニーによるNFT活用事例としての「NFTiff」について見てきました。これはNFT界でもファッション界でも大きな話題となりましたが、実はすでに多くのハイブランドがNFTに参入し、積極的に活用しています。この章ではハイブランドのNFT活用事例を簡単に紹介し、「NFTiff」の事例を踏まえてファッション界がNFTを活用するメリット、そしてファッションとNFTの親和性について考察していきます。

ハイブランドの参入事例

ティファニーの事例に先立ち、ハイファッションブランドの業界ではすでにNFTは一つのトレンドになっていたようです。ここでは代表的なファッションブランドの参入事例と概要を紹介します。

・Louis Vuitton(ルイ・ヴィトン)
2021年8月4日、NFTを利用したゲーム「LOUIS THE GAME」をリリース。ルイヴィトンのモノグラムが施されたキャンドルを集めていく3Dアクションゲーム。他のプラットフォームでも利用でき、ソーシャルネットワークでアバターとしても使用できるNFTを獲得できる。

・GUCCI(グッチ)
2022年2月1日に初のNFTコレクション「SUPERGUCCI」を発表。3つのシリーズが展開されていく予定で、現在展開されている第1弾はグッチと「SUPERPLASTIC」が共同でデザインを手がけた10種類の限定NFTと、セラミックフィギュアのセット。

・Burberry(バーバリー)
NFTゲームのスタートアップ企業である「Mythical Games(ミシカル・ゲームズ)」と提携し、2021年8月に「Blankos Block Party(ブランコス・ブロックパーティ)」というブロックチェーンゲーム内でNFTコレクションをリリースすることを発表。プレイヤーはバーバリーのアームバンド、シューズなどさまざまなアイテムをゲーム内で購入し、アバターに着せることができる。

・Dolce&Gabbana(ドルチェ&ガッバーナ)
ブランド初のNFTコレクションとして「Collezione Genesi(ジェネシス コレクション)」を2021年9月に発表。デジタルマーケットプレイス「UNXD」でオークション販売。販売された高級オートクチュール品のNFT全9点のうち5点がリアルとデジタルの両方に対応。2022年2月には、独自のNFTコミュニティ「DGFamily」が立ち上がる。

これらのハイブランドの取り組みを見ると、ゲームを開発してブランドの世界に誘いつつNFTを提供するものや、バーチャル空間内のおしゃれを楽しめるようなもの、物理のアイテムと組み合わせたものなど、多様な形でNFTが活用されていることが分かります。

NFTファッションのメリット

前述したように、一部のファッションブランドではすでにNFTをさまざまに活用しています。ファッション業界でNFTを活用することには、主に以下のようなメリットが挙げられると考えます。

  • 偽造品対策になる
  • 希少価値を付与できる
  • 二次流通時にロイヤリティが発生する
  • 販売を効率化できる

ファッションアイテムには、特にハイブランドであるほど偽造品の製造・流通という問題が付きまといますが、NFTはブロックチェーン技術でデジタルデータの唯一性を付与できるため、アイテムが本物かどうかを証明・確認することができます。これによってアイテムの希少価値も高まるため、ブランドのイメージや信頼度を高めることも可能です。

また、NFTは発行時に二次流通時のロイヤリティを設定することができるため、アイテムが転売されるたびに発行者にロイヤリティが還元されます。物理アイテムでは転売されてもブランドやデザイナーが収入を得ることはありませんが、NFTではそれが実現できます。

また、本記事で取り上げた「NFTiff」の事例では、「所有するクリプトパンクを物理ペンダントとして具現化・交換できる権利」を数量限定のNFTとして発行することで、実質的に受注販売の形態をとっています。アイデアの段階から発売まで4ヶ月ほどで実現したこのプロジェクトのスピード感は、NFTという媒体で販売したことに起因していると言えます。また、NFTというデジタルデータと物理アイテムをうまく活用することで、既存のコミュニティだけでなく、新しい層のコレクターにリーチするきっかけにもなるという点で、「NFTiff」の事例はNFT界にとってもファッション界にとっても、重要なケーススタディとなったと言えるでしょう。

ファッションとNFTの親和性

VRやAR、メタバースやNFTの領域が世界的にトレンドになり、今や多くの人がデジタルの世界に自身の生活の一部を投入しています。この流れは今後も加速していくことはほぼ間違いなく、デジタルの空間内で自己表現をし、アイデンティティを確立していきたいという需要はさらに高まっていくはずです。NFTとファッションの掛け合わせは、そんな需要に応えることができる可能性を大いに秘めているという点で、親和性が非常に高いと言えます。

また、ファッション分野の環境汚染問題が長年叫ばれている中で、物理的な素材を必要としないデジタルファッションは、サステナブルな社会の希求にも応えるものです。ハイブランドの相次ぐNFTやメタバースへの参入は、こうした社会のニーズを捉え、未来を見据えた結果であると言えます。

さらにNFTは活用次第で強く大きなコミュニティを形成する性質を持っています。特定のNFTを保有することでコミュニティに参加でき、さまざまな特典や恩恵が受けられるというメリットは、コレクターの心を大きく揺さぶります。ファッションブランドの元々のファンも、このような点は魅力的に感じるはずです。NFTのコミュニティ形成の性質をうまく活用することができれば、ブランドを支えるファンも自ずと増えていくと考えられます。

まとめ

「NFTiff」の発表と完売は大きな話題を呼びましたが、ファッション業界のNFT活用事例としては一例に過ぎません。事実、ティファニーは公式ツイッターで次のNFTの展開を示唆しています。ティファニーのみならず、多くの一流ハイブランドがすでにNFTに取り組み、積極的な活動を続けていることから考えても、ファッションとNFTの親和性は高く、新しいファッションの流れを生み出していると言えます。NFTの活用の流れは今後も勢いを増していくことはほぼ確実のため、注目しておいて損はありません。

春眠

shunmin

アート関連の仕事をしながら副業ウェブライターとして活動。NFTコレクション運営においては、企画、マーケティング、コピーライティング、情報発信などを担当。NFTによってアートの世界がどのように変化していくかに興味があり、日々情報を収集している。毎日の読書によるインプットを欠かさず、読みやすい文章で丁寧に執筆することを心がけている。
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