Web3が話題になる中「コンポーザビリティ」という概念にも注目されています。
今回はWeb3の仕組みを作り上げる上でとても重要な用語である「コンポーザビリティ」について解説していきます。
この記事の構成
コンポーザビリティとは
専門的な言葉で表現すると「あるシステムが構成されている要素をより大きな構造体へと組み替える」と説明され、日本語に直訳すると「構成可能性」となります。
これだけでは難しいのでこれからわかりやすく説明していきます。
レゴと同じ役割を果たすという意味
コンポーザビリティは「レゴブロック」に例えられます。
これは部品であるコンポーネントを組み合わせることにより他の用途に転用したり、新しいものを生み出すことが可能であることを意味します。
新しいサービスを作る時に、一から作成する場合と既に存在するコンポーネント(部品)を利用できる場合を比較すると、当然後者の方が都合が良いはずです。
これを可能にしたのがコンポーザビリティという概念です。
Web2におけるAPIなどとの違いについて
では、コンポーザビリティがなぜWeb3において大事な概念になるのかを説明していきます。
コンポーザビリティにおける最も大事なポイントは「オープン」であることです。
そこで現在私たちが使用しているWeb2のサービスにおけるコンポーネントの代表としてあげられるAPIを例に説明していきます。
APIとは、Application Programming Interface(アプリケーション・プログラミング・インターフェイス)の略で、ソフトウェアやプログラムなどをつなぐインターフェースのことで、身近な例をあげるとログイン機能の連携です。
あるWebサービスの新規アカウントの作成をする際、既に使用している下記のようなサービスのアカウントと連携することができます。
- フェイスブック
- 楽天
- Yahoo
などです。
この機能はとても便利である一方、Webならではのデメリットがあります。
それは、これらWeb2のAPIは企業が管理しているサービス(中央集権)であるため、管理者の権限でいつでもクローズにすることができてしまうことです。
クローズされてしまうとレゴの機能はその瞬間に機能を失い、利用していたサービスも使用できなくなってしまいます。
その例が「Twitter」です。
かつてTwitterには、自らの機能を利用したアプリが存在していました。
例えばインスタグラムの初期には、Twitterと連携して(TwitterのAPIを利用していて)Twitterのフォロワーから友達検索ができるシステムがありましたが、TwitterがAPIの利用を停止したことによりこの機能が利用できなくなりました。
これがWeb2におけるコンポーザビリティの問題点です。
しかしブロックチェーンを利用したDecentralized(非中央集権)なネットワークではこのようなリスクがないため、コンポーザビリティが維持されます。
コンポーザビリティを実例で紹介
では、ブロックチェーンを活用したコンポーザビリティがどのような場面で機能しているか具体的に説明していきます。
Loot
NFTにおいて一番わかりやすい例が「Loot」です。
Lootは2021年8月にローンチされたNFTプロジェクトで、8つのアイテムが書かれた文字列だけのNFTです。
(引用元:https://opensea.io/ja/assets/ethereum/0xff9c1b15b16263c61d017ee9f65c50e4ae0113d7/764)
Lootとは「戦利品」という意味で、8つのアイテムには以下のカテゴリーが含まれています。
- ChestArmor(胸部の武具)
- FootArmor(足の防具)
- HandArmor(手の防具)
- HeadArmor(兜)
- NeckArmor(首飾り)
- Ring(指輪)
- WaistArmor(腰の防具)
- Weaon(武器)
これら8つのアイテムが書かれたNFTをバッグと呼び、8,000個のバッグが販売されました。
Lootの最大の特徴は、このNFTをどのように使うかの決まりがなく、コミュニティで自由に決めることができます。
従来のNFTは、ホルダーが使用する範囲をオーナーやプロジェクトで決められているものがほとんどです。
しかしLootは保有しているNFTを自由に使用し、組み合わせる事ができることを前提にしているため、世界中のクリエイターが参加したことにより、多くのプロジェクトが誕生し、現在でも増え続けています。
Lootをコンポーザビリティの観点から考えたときに得られる答えは、「Lootの機能の全てを自由に活用し、新しいプロジェクトを構築できる」ということです。
レゴで例えると、既にあるLootのレゴを誰にも許可を取る必要もなく活用することができ、自分なりのレゴを追加して新しい製品が完成するようなイメージです。
日本のLoot派生プロジェクトの紹介
Lootローンチ後、間もなく日本でも派生プロジェクトが誕生していますので簡単に紹介します。
Gakuen Loot
(引用元:https://opensea.io/collection/blockchain-gakuen-loot)
double jump.tokyo株式会社のCEOである上野広伸氏が始めたプロジェクトで、文字通り学園をテーマしており、「生徒の名前」「学年」「所属クラブ」「能力」がかかれたものが一つのバッグになりNFT化されています。
(引用元:https://opensea.io/collection/blockchain-gakuen-loot)
Anime Loot
(引用元:https://opensea.io/collection/animeloot)
オタクコイン協会が手掛けた、異世界転生アニメを作る目的で作られたNFTで、「種族」「性別」「出身」「性格」が書かれています。
(引用元:https://opensea.io/collection/animeloot)
Ramen Loot
(引用元:https://hide.ac/articles/Yg1JPU3Hq)
zk-haruxx(@harukatarotaro)さんがLootブームに乗って作成したプロジェクトです。
その名の通りラーメンの材料などである「スープ」「麺」「トッピング1」「トッピング2」の4つが書かれています。
(引用元:https://opensea.io/collection/ramen-loot)
コミュニティでパラメーターを決めて発行したそうで、作り方がharuさんのhideページに記載しています。
Defi
コンポーザビリティが顕著なのはDefi(Decentralized Finance:分散型金融)の領域です。
DefiとはCompound、Uniswapなどに代表されるような、銀行のような金融機関を経由することなく、ブロックチェーン上で暗号資産の取引ができるサービスです。
DeFiの最大の特徴は他のDappsやウォレットなどのサービスと相互連携されているという点です。
これを「マネーレゴ」と言われており、コンポーザビリティが最大限に活用されています。
そのおかげで、新たにDappsのサービスを構築する際、資産取引などの部分を一から作成する必要がなく短期間で完成させることができます。
Andrew Hong氏の記事にそのイメージが図で紹介されています。
ベースレイヤーに各ブロックチェーンがあり、その上にDefiやウォレットなどが相互連携されています。
このように、コンポーザビリティがDeFiサービスだけでなくそれに付随する多くのDappsの誕生を実現しています。
Web3やNFTにおけるコンポーザビリティの重要性
先述したように、コンポーザビリティの機能性はオープンな市場であるWeb3の世界で活用されます。
その理由として
- 管理者に左右されない非中央集権であること
- オープンな状態が半永久的に持続すること
があげられます。
先ほどTwitterがインスタグラムに対してAPIの使用を止めたことを紹介しました。
これは競争に勝つための対策でTwitterに限った話ではありません。
Web2の世界ではどの企業でも起こりうることで、競争に勝つためにクローズドに向かうのもやむを得ない一面と言えます。
しかし、Web3は理念が異なります。
中央管理者が不在のため止めるものが存在せず、常にオープンな形でコミュニティで作り上げていく世界です。
NFTにおいても最近は著作権について緩和される傾向にあり、CC0(シー・シー・ゼロ)と言われる、著作権の完全放棄を宣言するプロジェクトも誕生しています。
このようなオープンな世界でこそコンポーザビリティが生かされて、より良いサービスが数多く、そしてスピーディに誕生することが実現しています。
まとめ
世界では、コンポーザビリティを活用して既にたくさんのWeb3の事業が展開されています。
これから日本でもWeb3の議論が多くなってくると予想されますが、コンポーザビリティの側面からも注目していただけるとより理解が深まると思います。