インド準備銀行(RBI)は先日、中央銀行デジタル通貨(CBDC)「eルピー」の段階的な試験導入計画を発表しました。
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デジタル通貨の新時代
RBIが「コンセプトノート」として公開した文書では、デジタルルピーの構想と導入根拠、そして段階的なテスト方法について詳細が示されています。世界的に見ても、オーストラリアから米国まで多くの国々が紙幣に代わる選択肢としてCBDCへの関心を高めています。RBIは特に、中国を含む16カ国がすでに独自のCBDCを試験運用していることを挙げ、インドも早急に対応する必要性を強調しています。
「私たちは今、通貨の進化における歴史的転換点に立っています。CBDCは革新的な発明であり、各国の通貨が次のステージへ進む重要なステップです」とRBIは説明しています。
実装計画と目的
RBIは現在の紙幣と並行して、限定的な形でeルピーのテスト展開を計画しています。これは追加的な通貨形態として導入され、暗号資産に代わる選択肢としての役割も担うことになります。
中央銀行によれば、暗号資産の無制限な使用はインドの金融・マクロ経済の安定性を脅かし、政府の金融政策や規制能力を弱める恐れがあると指摘。CBDCはこうした問題を回避しながら、デジタル通貨の利便性を国民に提供するものとしています。
「CBDCは民間の仮想通貨がもたらす社会的・経済的リスクから消費者を守りつつ、デジタル通貨のメリットを安全に提供します」とRBIは述べています。
二つのバージョン
RBIは二種類のCBDC導入を検討しています。一つは一般消費者が日常の小売決済に使用するリテール版、もう一つは銀行間送金や卸売取引の決済に使用する機関向け版です。長期的には、CBDCが決済システム全体をより効率的で堅牢、そして信頼性の高いものに変革する可能性があるとしています。
プライバシーの課題
少額取引における匿名性の重要性を認識しつつも、RBIはデジタル環境での完全なプライバシー確保の難しさを指摘しています。
「匿名のデジタル通貨は闇経済や違法取引を助長する恐れがあるため、現金と同レベルの匿名性をCBDCに実装する可能性は極めて低い」と中央銀行は述べています。
国際的な競争
インド政府は今年2月に初めてCBDC計画を公表し、この技術が国の経済に大きな推進力をもたらすと説明しました。
この動きの背景には、中国のデジタル人民元の着実な展開に対する危機感があると見られています。米国でも、ドルの基軸通貨としての地位が脅かされるのではないかという議論が政治家の間で高まっています。
パウエルFRB議長は6月、CBDCの発行についていずれ米連邦準備制度から指針が示されるだろうと述べ、2017年からデジタルドルの可能性を研究してきたことを明らかにしました。
「これは国家として真剣に取り組むべき課題です。すべてのアメリカ国民に影響を与える、極めて重要な金融イノベーションとなるでしょう」
(元記事:https://decrypt.co/111542/india-will-soon-test-an-e-rupee-digital-currency)