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次世代レイヤー1プロジェクト比較!元Facebookスタッフが立ち上げたAptos・Sui・Lineraについて比較解説

解説系記事

マーク・ザッカーバーグ氏が率いるMeta社(旧Facebook)がかつて力を入れて開発していた暗号資産(仮想通貨)プロジェクト、Diem(ディエム、旧名Libra)をご存知でしょうか。

暗号資産の可能性を早くから見出してDiem開発に取り組んでいた旧Facebookですが、2022年1月、その完成を見ることなくDiemプロジェクトはサービス提供の断念が発表されました。

その後、旧Facebookから独立したスタッフがこぞって立ち上げているのがレイヤー1ブロックチェーンプロジェクトのAptos(アプトス)、Sui(スイ)、そしてLinera(リネラ)です。

この記事では以前開発が行われていたDiemの目的について確認した上で、その流れを汲む各レイヤー1チェーンの特徴について、共通点・相違点の両面から比較解説します。

なお、本記事ではMeta社について、Diem開発が盛んに行われていた当時の社名である旧Facebookの名称で記載します。

旧Facebookの暗号資産プロジェクトDiem(ディエム)とは

引用元:コインデスクジャパン

Diemは、ステーブルコインの一種として開発されていたプロジェクトです。

ステーブルコインとは暗号資産の一種であり、一般的な暗号資産と違って価格の変動が比較的安定しています。

具体的には、法定通貨等と価値を連動させることで価格を一定の水準に保っています。

暗号資産の時価総額ランキングでも上位に食い込んでいるUSDTやUSDC、BUSDなどは、アメリカの法定通貨であるドルに連動した値動きをするステーブルコインです。

Diemの前身であるLibra時代には「通貨バスケット制」という構想を採用し、単一の通貨ではなく複数の通貨と価格を連動させることによって、国際的な通貨を作ることを目指していました。

Diem開発の目的

Diemの最大の目的は、インターネットを通じて誰もが金融サービスを享受できる社会の実現でした。

世界には銀行口座を持てない人が17億人超も存在すると言われています。

その主な原因は、発展途上国やインフレが激しい国では金融インフラが整っていないためです。

そこで、世界中の誰もが手軽に送金や決済ができるサービスとして、Diemの開発が行われていました。

IP売却、そして開発断念へ

しかしDiemはその後、規制面での壁に直面します。

消費者保護や詐欺被害の防止、テロリストへの資金提供やマネーロンダリング防止の観点から、Diemは対処が不十分であると判断されました。

この頃までは開発名称はLibraで通っていましたが、規制が厳しくなったことを受けて方針を転換、この時点で名称をDiemに変更してリブランディングを図りました。

しかしその後もDiemはローンチに至ることなく、2022年2月に米シルバーゲート・キャピタル社へIP(知的財産権)をすべて売却し、Diemの開発は断念されました。

その後、Diemプロジェクトに関わっていた旧Facebookスタッフが独立し、各々立ち上げたのが、レイヤー1ブロックチェーンとして2022年現在、注目を集めているAptos、Sui、Lineraです。

レイヤー1ネットワークとは

引用元:Binance Academy

Aptos、Sui、Lineraはいずれもレイヤー1のブロックチェーンプロジェクトです。

これらのプロジェクトについて詳細を解説する前に、まずは「レイヤー1ブロックチェーンとは何か」を確認しておきます。

レイヤー1ネットワークに関する基礎知識

レイヤー1ネットワークとは、Bitcoin、Ethereum、BNB Chainなどのベースネットワークと、その基盤となるインフラストラクチャーを指します。

また、レイヤー1は「ブロックチェーン」ですが、レイヤー1と対比的に語られるレイヤー2は「ブロックチェーン以外のオフチェーン」を指しています。

レイヤー1は他のネットワークを必要とせず、レイヤー1のみで取引を検証し確定することが可能です。

また、レイヤー1の特徴としてBitcoinに顕著に見られるように、スケーラビリティの向上が難しいということが挙げられます。

そこで、レイヤー1のメインチェーン上にレイヤー2のソリューションを構築することでスケーラビリティの向上を図っているプロジェクトがこれまではよく見られました。

Ethereumと、そのレイヤー2ソリューションであるPolygonの関係などが有名です。

Diemの流れを汲む3つのプロジェクトの共通点

Diemの流れを汲む3つのプロジェクトは、いずれも共通点と相違点があります。

ここでは共通点として、開発言語のMove、スケーラビリティの向上に取り組んでいること、コンセンサス・アルゴリズムとしてPoSを採用している点について解説します。

開発言語「Move」

Moveは旧Facebookで開発されていた、スマートコントラクトのプログラムを記述する言語です。

Moveは高い安全性と表現力を兼ね備えており、ブロックチェーンのトリレンマにおけるセキュリティとスケーラビリティの両面に対応できるため、ブロックチェーンのプログラミングに最適であるとも言われています。

2022年現在、最も広く利用されているスマートコントラクト用のプログラミング言語であるSolidityは、一定の条件下においてセキュリティが弱くなるという欠点もあり、これと比較してもMoveのセキュリティ性能の高さは大きな強みであるとされています。

スケーラビリティの向上

2つめは、3つのプロジェクトがいずれもスケーラビリティの向上に力を注いでいる点です。

ブロックチェーンにおけるスケーラビリティの問題とは、ブロックチェーンを利用するユーザー数の増加や処理すべきトランザクション数の増加によって、処理が追いつかなくなってしまうという事象を指します。

そして、多くのブロックチェーンがこの課題の解決に取り組んでいます。たとえばEthereumではチェーンを複数に分割したり、処理能力そのものを上げるなどして、ネットワーク自体を拡張することで問題の解決を試みています。

一方、Diem系の3プロジェクトはいずれも「トランザクションを並行処理する」ことで、この問題に対処しようとしています。

同時に何個ものトランザクションを実行することで、1秒間あたりに実行できるトランザクション数を増やそうという考え方です。

代表的なレイヤー1チェーンの秒間トランザクション処理数がBitcoinで7、Ethereumで12〜15、Solanaで約3,000と言われているのに対し、開発者から数字が公表されているAptosとSuiはそれぞれ、Aptosが最大で秒間16万、Suiが12万以上の処理が可能とされています。

コンセンサス・アルゴリズム

3つのプロジェクトはいずれもコンセンサス・アルゴリズムにPoS(プルーフ・オブ・ステーク)を採用している点が共通しています。

そのため、​​「どのようにトランザクション実行者を決定するか」については大きな差は見られません。

一方、トランザクション実行後に「実行されたトランザクションが正当であると誰がどのように決定し、どうやってネットワークの総意を形成するのか」という段階はそれぞれ異なっています。

各プロジェクトの特徴

ここからは、Diemの流れを引き継ぐ3プロジェクトの相違点を中心に、それぞれの特徴について解説します。

Aptos

引用元:Aptos

Aptosを開発しているのはAptoslabsです。

Aptoslabsは、DiemチームのメンバーであったMo Shaikh氏とAvery Ching氏の2名によって創業されました。

2人はDiemプロジェクトがシルバーゲート・キャピタルに売却される前にすでに旧Facebookを離れています。

直近では1.5億ドル(約205億円)の資金調達を成功させたAptosの特徴について見てみましょう。

Aptosの最大の特徴は、Block-STMと呼ばれるエンジンによるトランザクションの並行処理技術です。

トランザクションを並行処理する際、通常はどのプロトコルでも「互いに関連性のない」トランザクションを並行処理しています。

たとえば、

  • AさんからBさんに1ETHを送金する
  • CさんからDさんに1ETHを送金する

この2つは、互いに影響を与えることがないトランザクションであり、並行処理することが可能です。

一方、

  • AさんからBさんに1ETHを送金する
  • AさんからCさんにも1ETHを送金する

この2つは、互いに影響がないとは言えません。

この2つのトランザクションを並行処理する場合、Aさんが必ず2ETH以上を保有していないといずれの取引も成立しません。

このようなケースがあるため、一般的なブロックチェーンでは並列処理ではなく、順序立てて1つずつ処理をする方式を取っています。

ところがAptosでは、Block-STMを活用することで「ブロック内のトランザクション同士は基本的に互いに関連はない」ものと仮定することで同時並行の処理を実現しています。

もちろん、実際には上記のような並行処理が成立しないケースもあります。その際は再度トランザクションが実行・検証され、ブロック内のトランザクションがすべて完了するまでこの過程が繰り返されます。

Sui

引用元:Sui

Suiの創業メンバーは、Evan Cheng氏、Adeniyi Abiodun氏、Sam Blackshear氏、George Danezis氏、Kostas Chalkias氏の5人です。

彼らはMysten Labs(ミステンラボ)という研究開発会社を立ち上げ、直近では3億ドル(約430億円)の資金調達を成功させました。

Suiの特徴は、並行処理を実現するためにトランザクションの種類を2つに分けている点です。

Aptosの解説で触れたような他のトランザクションと関連が薄いと見なされるトランザクションは、PoSの合意形成の過程を経る必要がありません。

トランザクションの内容がネットワーク内の他の参加者に伝達された後、他のバリデータの承認を受けることで即座に取引が完了します。

つまり、簡単な取引については簡易的に処理してしまおうという発想に基づいています。

一方、複雑なトランザクションの場合は、他のブロックチェーンと同様に通常のコンセンサス・アルゴリズムを経て処理がなされます。

このように、トランザクションの種類によって処理方法を変えることで並行処理を実現し、処理の高速化を図っています。

Linera

引用元:Linera

Lineraの創設者であり、CEOを務めるのはMathieu Baudet氏です。

Baudet氏はDiemプロジェクトにおいて、暗号資産ウォレット「Novi」の開発に従事していました。

Lineraは他の2プロジェクトよりも後に公表され、現段階でも情報はあまり開示されていません。

しかし、a16zなどから資金を調達するなど、すでに注目を集めています。

Lineraの特徴はプロジェクト名の由来にもなっている「Linear Scaling(線形スケーリング)」です。

「線形にスケールする」とは、ノードの数を増やせば、それに比例して(=直線的に)処理能力が向上するという考え方です。

従来のEVM互換チェーンなどでは、トランザクションの処理はあくまで順番に行われるため、ノード数を増やしたところで処理の速度は変わりませんでした。

しかしLineraでは、異なるユーザーアカウントに対する処理は同時に実行される仕組みになっているため、ノードを増やすほど同時に処理できるトランザクションの件数が増えるとされています。

Diem系レイヤー1プロジェクトの今後の展望まとめ

本記事ではDiemに起源を持つ3つのプロジェクト、Aptos、Sui、Lineraについて解説しました。

いずれも開発段階としては初期のステージにありますが、すでに大型の資金調達を完了させるなど、業界内からの注目度も高いプロジェクトばかりです。

スケーラビリティの向上など、私たちが普段から利用する各種dAppsの処理速度に直結する要素も多いため、今後もこれらのプロジェクトの動向はぜひ注視していきましょう。

Sparrow

Sparrow

フリーランスのWebライター。ブロックチェーンの非中央集権的な世界観に惚れ込み、暗号資産・NFT・メタバースなどのWeb3領域に絞って記事を執筆。自らの暗号資産投資やNFT売買の経験をもとに、難しいと思われがちなブロックチェーンについて、初心者にもわかりやすい記事を書くことを心がけています。好きなNFTクリエイターは「おにぎりまん」氏。
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