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Instagramの「NFT」シェア機能で何が変わる?

解説系記事

InstagramはLINEやTwitterなどと並んでユーザー数の多いSNSで、日本国内でのアクティブユーザー数は2022年9月には約3300万人を超えています。世界でのユーザーは10億人とも言われ、主要なSNSとしての地位を確かなものにしています。

Instagramで見栄えが良い画像を「インスタ映え」と呼ぶ習慣が定着したように、Instagramの特徴は写真や動画の投稿に特化しているという点です。加えて2016年にリリースされた「ストーリー機能」によって気軽に投稿を行えるようになったことも人気を後押ししています。

Instagramは新しい機能の追加が頻繁に行われるツールでもあり、次々に新しい楽しみ方が提案されています。2022年にはライブ配信でモデレーターを設定できる機能が導入され、リールの尺が最大90秒に延長されるなど、活発にアップデートしています。

そうしたアップデートの一環として、2022年5月にNFTの「デジタルコレクティブル機能」が導入されました。動画や音楽、アート作品などのNFTを表示できるサービスです。

この記事ではInstagramの「デジタルコレクティブル機能」の特徴や使い方、メリットを紹介します。

InstagramにNFTを投稿・共有できる

アメリカ「Meta」社が運営する「Instagram」は2022年5月にNFTシェアの試験運用を開始しました。限られたユーザーがデジタルウォレットを接続して、自分が作成したり購入したりしたNFTを紹介できる機能です。

2022年8月にはNFT連携機能の提供国を日本を含む100ヶ国に拡大しました。Instagramは写真や動画が中心となるSNSですので、「投稿した写真をNFTにできるのか」「インスタのなかでNFTを売ったり買ったりできるのかな」などと想像が膨らみます。

ここでは、Instagramに実装されたNFTをシェアする機能について解説します。

2022年5月に開始されたテスト

NFTはアートや音楽などのコンテンツのデジタルデータを売買するものです。暗号資産(仮想通貨)と同様にブロックチェーン上で発行され取引されます。

従来、デジタルデータはコピーや改ざんが容易にできるので、現物の絵画などのような資産価値はないものとみなされていました。ところが、イーサリアムやポリゴンなどのブロックチェーン上で発行されたデジタルデータとしてのNFTは、「この画像はオリジナルで、唯一無二である」ことを証明できます。そのため、資産価値も生まれますし、クリエイターが自分の作品をNFTとして発表することで販売もできます。

アメリカのMeta社のInstagramは早くからNFTに注目しており、2022年5月9日にNFTの投稿や共有できる試験運用をアメリカの一部のクリエイターを対象に開始することを発表しました。

クリエイターはサードパーティのデジタルウォレットをInstagramでリンクすると、無料でNFTを投稿できます。NFTは「デジタルコレクティブル」として表示され、クリエイターやオーナーなどの詳細データも表示されます。

引用元:ITmediaNEWS

「クリエイターやコレクターのサポート」が理念

今のところ、InstagramのNFT機能は「NFTの販売」「NFT取引」を促進するものではありません。静止画や動画を共有するという方法に限定されています。ただし、「デジタルコレクタブル」タブが付いていて、タップすると作品に関する詳細情報を共有できるようになっています。

InstagramのCEO「アダム・モッセーリ」氏が語ったところによると、今回の機能追加は「クリエイターが好きなことで生計を立てることを支援したいというInstagramの考えから生まれた」とのことです。

引用元:Instagram

NFTは2021年に爆発的な成長を遂げました。ただ、2022年に入って成長は伸び悩んでいると言われています。ツイッター創業者ジャック・ドーシーの最初のツイートは2021年3月には300万ドル近くの値を付けて大きな話題となりましたが、1年後には10分の1程度の価格に下落しています。

InstagramはこうしたNFTの伸びの鈍化に対応しようとしていると考えられます。Instagramのユーザーに「NFTという新しいコンテンツが生まれている」と認知させ、NFT業界の発展に寄与したいという考えが見て取れます。

モッセーリ氏は「Instagramの新しいNFT機能はまだ限定的で、NFTへのサポートをより強固にするためにはまだやるべきことがたくさんある」と語っています。

2022年8月4日から日本を含む100ヶ国で一般の利用を開始

アメリカなどの試験的な運用を経て、2022年8月4日から日本を含む100ヶ国でInstagram上でのNFT投稿機能が実装されました。

Instagramは、写真の投稿が中心のSNSですので、NFT連携というと「投稿した写真をNFTにできるのか」「NFTをインスタで売れるのか」と期待してしまいますが、実際に可能なことは限られています。

InstagramのNFT機能でできること

  • 暗号資産用ウォレットを接続
  • ウォレットのなかにあるNFTをインスタ内でシェア投稿

ウォレット接続は、「プロフィールページ」からメニューを開いて「デジタルコテクティブ」という新しいメニューから行います。「次へ」をタップしていくとウォレット選択ページが表示されますので、自分が使用しているウォレットを選択します。

引用元:HatenaBlog

ウォレットに入っているNFTを選ぶと、インスタ内に通常の写真を投稿するのと同様にNFT画像を投稿できます。NFT投稿をすると「所有者」「制作者」「NFTの解説文」も分かるようになっています。

Instagram「デジタルコレクティブ機能」でNFTをシェアする

上記の手順でNFT投稿が完了するとプロフィールに「デジタルコレクタブル」というセクションが現れます。このセクションでは、従来の投稿とは別にNFTだけを表示します。「NFTのポートフォリオ」をインスタ内に作成できるというのが「デジタルコレクティブ機能」です。

デジタルコレクティブ機能では、購入したNFTでも配布で受け取ったNFTでも投稿できますし、自分が作成したNFTでも投稿可能です。ただし、以下の状況では投稿できないので注意しましょう。

投稿できないNFT

  • 未出品作品
  • 自分が作成した出品中の作品
  • サムネイル未設定の動画NFT
  • 自分のウォレットに入っていないNFT
  • 未対応のブロックチェーン上のNFT

未出品作品というのは、「Mint(作成)」しただけの状態も含みます。Mintだけではまだ「仮の状態」であって、「List(出品)」または「Transfer(配布)」をすることによって正式にNFTとしてリリースされるためです。

また、自分が作ったNFTでも「出品中」のものはコレクションページに表示されないのでInstagramに投稿することができません。この他、サムネイルが設定されていない動画NFTは表示できないケースがあると報告されています。

NFT投稿機能ではウォレット内からNFTを選択するため、すでに他人に売ったり譲渡したりしたNFTはコレクションページに表示されず、Instagramに投稿はできません。

また、現在Instagramではイーサリアムやポリゴン、ソラナといったブロックチェーンで作成されたNFTのみと連携しており、テゾスなど対応していないものもあります。未対応のブロックチェーン上のNFTは投稿できないので注意しましょう。

Instagramの「デジタルコレクティブル機能」は何に役立つ?

InstagramでNFTが投稿できるようになったとはいえ、機能は限られています。とはいえ、Instagramで「こういうNFTを持っているよ」「こんな作品を作ったよ」とアピールできるのは大きな前進と言えます。

ここでは、Instagramの「デジタルコレクティブル機能」が現時点でどのような役割があり、何に貢献するのかを解説します。

作品の宣伝効果

InstagramのNFT機能では、ウォレットをアカウントに紐付けします。投稿を見て興味を持った人は、投稿された作品を手掛けたアーティストがすでに作成したNFTや、購入・保有しているNFTをプロフィール画像やフィード投稿として表示させることができます。

そのため、単に「こういうNFTを買ったよ」「NFT作ったよ」という報告だけでなく、NFT作品の宣伝に役立ちます。アーティストとしては、より多くの人に作品を見てもらうことができます。

今までは、OpenSeaなどのマーケットプレイスにNFTに出品してもその後の宣伝戦略が少なく、マーケットプレイスにログインしているコレクターにしか見てもらえませんでした。アーティスト自らTwitterなどを駆使して宣伝するしか作品を知ってもらう機会はありません。

Instagramのデジタルコレクティブル機能では投稿から直接情報を表示できるので、より効果的に宣伝できるようになります。

次世代のポートフォリオが期待される

引用元:Yahoo News

InstagramはSNSのなかでも「画像主体」という傾向の強い仕様になっています。そのため、アーティストが自分の作品の「ポートフォリオ」のためのツールとして活用されてきた経緯があります。

とはいっても、今まではプロフィールなどの一部を除くとURLを直接貼り付けることはできませんでした。そのため、アーティストにとっては「集客ツール」として使うにはもうひとつ足りない部分があります。

NFTを宣伝するにあたっても、InstagramではNFT宣伝そのものではなく「作品の画像をJPEGなどに変換してアップロードする」という回りくどい方法を取らざるを得なかったため、宣伝ツールやポートフォリオとしては使いにくいものでした。

今後はNFT共有機能が付加されるので、より直接的にマーケットプレイスへの誘導を促すことができます。アーティストにとってはNFTを一括で紹介できるポータルとなり、「集客のためのポートフォリオ」として活躍することが期待できます。

NFTの売買・取引は?

InstagramのNFTデジタルコレクティブ機能は、アーティストのポートフォリオとして使うことができ、宣伝に大いに貢献することが期待されます。

ただ、やはり「NFTを投稿できる」という機能に限定され、Instagram上でNFTを売買することはできません。「InstagramのNFTマーケットプレイス化」を期待している人も多くいることが推測されますが、今のところ投稿機能に留まっています。

ただ、今後はInstagramもOpenSeaのようなマーケットプレイスとして進化する可能性は高いと言えます。Instagramの親会社のメタ社はweb3に積極的な参入を公表しており、メタバース事業に注力するとしているため、Instagram上でのNFT取引も期待されます。

自分の所属コミュニティをアピールできる

NFTは単なる画像という以上の意味合いを帯びていることが周知されつつあります。

NFTホルダーがディスコードなどでコミュニティを形成して情報を交換し合ったり、今後のプロジェクトについて話し合ったりするなど、NFTは新しいコミュニケーションツールとして機能しつつあります。NFTがコミュニティの会員証に似た存在になっていることはコレクターの間では常識化しつつあります。

引用元:Twitter

NFTはプロジェクトごとやコミュニティなどの「派閥」を構成しているので、自分が何に興味があってどのコミュニティに所属しているのかをアピールすることができます。

Instagramを含む様々なSNSでNFT表示機能がサポートされていけば、SNS全体でNFTを中心とした横断的なコミュニティを作ることができるようになるかもしれません。

InstagramのNFT戦略とは

Instagramを運営するMetaは、2021年10月に社名を変更した際に「メタバース領域への本格的な参入」「NFTへの注力」を発表しています。

ここではInstagramの今後のNFT戦略について解説します。

NFTをより多くの人に提供する

NFTは「一点もののデジタル資産」として評価されつつあり、現代アートやポップアート、映像のコレクションとして人気が高まっています。

仮想世界での所有権を主張することが可能なのでメタバースを普及させるためのツールとしても有効です。

フェイスブックの創業者であるマーク・ザッカーバーグ氏は「会社をメタバースの中心的な企業に成長させる」ことを将来の野望としており、メタバース世界で大きな役割を果たすことが期待されるNFTの普及を目指していることは明らかと言えます。

2022年時点では「より多くの人々がNFTにアクセスできる方法を模索している」と発表されているに過ぎず、今のところは「こういうNFTを持っています」とアピールする機能に限られていますが、大手のIT企業がSNSを支配するのと同様にメタバースにも積極関与しようとしていると考えられます。

InstagramがNFT展示ツールに?

Meta社は、InstagramにNFT投稿機能を実装し、デジタルウォレットを接続してNFTを投稿したりクリエイターやコレクターのタグ付けをしたりできるようにしました。

この機能は「NFT機能」という名称ではなく「デジタルコレクティブル」と表現されています。現時点で対応しているブロックチェーンはイーサリアム、ポリゴン、フローですが、今後はソラナも追加され、サードーパーティウォレットのレインボーやメタマスク、コインベースなども選択できます。

デジタルコレクティブルの投稿にはチェックマークの機能があり、NFTの公開情報も表示できます。

こうした機能が目指しているのは「InstagramをNFTの展示ツールにする」ということと推測されます。

InstagramでNFTを表示しているコレクターは「他にこういうNFTを持っています」とアピールでき、それを見た人はURLをたどってアーティストの他の作品を見ることもできます。

NFTが何だかわかっていない人も、「この作品は面白そうだ」と思ったら、作品のホルダーが何をコレクションしているのかを見ることもできますし、アーティストの他の作品をチェックすることができるので、NFTが普及していくことが期待されます。

「いいね」が価値を生む可能性とは?

Instagramは主に画像中心のSNSです。綺麗な風景やおいしい料理の写真などを競うようにアップしていくスタイルのメディアです。

Instagramで価値があるのは「いいね」をたくさん集めることです。多くの人から認められたいという承認欲求が「いいね」という数値化によって満たされます。ここにNFTが導入されることで「いいね」が新しい価値を生み出すことが期待されます。

Instagramはアクセスが集まることで収益を生むシステムですので、「いいね」が多い投稿は価値があることになります。ただし、投稿はデジタルデータですので簡単にコピーされてしまいます。ところがNFTは「オリジナル」がはっきりしています。「いいね」をたくさん集めた「オリジナル」はさらに価値を高めます。

今後はInstagramに投稿されたNFTのなかで「いいね」が多いものは高値で取引される可能性があります。

今までにないインセンティブが働くようになり、ユーザーの投稿モチベーションも上がるでしょう。SNSの新しい運営方法としてNFTの活性化につながる可能性を秘めています。

まとめ

InstagramがNFTを投稿できる機能を導入し、今後のNFT普及に寄与することが期待できることを紹介しました。

最後に記事をまとめます。

  • 早くからNFTに関心を寄せていたMeta社はInstagramでNFTを投稿できる機能を導入した
  • NFTを投稿できる「デジタルコレクティブル」機能には作品の宣伝や次世代のポートフォリオなどの役割が期待できる
  • NFTならではの「コミュニティ会員証」として機能することが期待できる
  • 今のところ売買や取引はできない
  • Meta社はより多くの人にNFTに触れてもらいたいと考えている
  • 「いいね」を集めたNFTの価値が上がる可能性がある

後々はInstagram内でNFTの売買ができるようになる可能性があると推測されており、今後の動向が注目されます。

Spritz

Spritz

Web3領域を専門とするライター。DeFiやNFT分野への投資経験をもとに、クリプトに関する記事を発信しています。これまでに執筆した暗号資産に関する記事は70本以上。特に関心の強い分野は、セキュリティトークンです。ブロックチェーンによってもたらされる社会変革に焦点を当て、初心者にもわかりやすい記事を心がけています。
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