Andreessen Horowitz(アンドリーセンホロウィッツ)は、Web3の世界において強大な影響力を持つ機関投資家です。巨額の資金をWeb3分野に投資しており、その影響力は新たなトレンドを生み出すほど。よって、多くの投資家がAndreessen Horowitzの動向に注目しています。
この記事では、Andreessen Horowitzの特徴や注目を集める理由について紹介します。
この記事の構成
Andreessen Horowitz(アンドリーセンホロウィッツ)とは?
Andreessen Horowitzは、アメリカを代表するベンチャーキャピタルです。頭文字のAと末尾のZの間に16文字のつづりがあるため、「a16z」と表記されます。
Andreessen Horowitzの誕生は2009年。Marc Andreessen氏とBen Horowitz氏という二人の創設者によって、シリコンバレーに設立されました。このAndreessen Horowitzは、以下の理由によりWeb3業界において大きな注目を集めています。
テック企業へいち早く投資をしてきたベンチャーキャピタル
そもそもAndreessen Horowitzは、バイオやフィンテックなどの先端分野への投資によって規模を拡大してきた投資会社です。数多くの投資案件を成功させ、創業からわずか20年ほどでアメリカを代表するベンチャーキャピタルにまで成長しました。この成長を牽引した原動力が、テック企業への投資です。
Andreessen Horowitzの投資を受けて、世界的なテック企業がいくつも誕生しました。たとえば、以下のIT企業が挙げられます。
- airbnb
- Robinhood
- Slack
- GitHub
- Skype
これらの巨大IT企業を誕生させた実績から、Andreessen Horowitzの規模は急拡大。アメリカの老舗ベンチャーキャピタルに並ぶ投資会社となります。このような輝かしい実績があるため、Andreessen Horowitzの投資先は資本家たちの注目の的です。
「a16z crypto」を立ち上げWeb3分野への投資に注力
先見の明により、数々の投資案件を成功させてきたAndreessen Horowitz。このベンチャーキャピタルが、次なる成長産業としてWeb3に注目しています。本格的にWeb3市場のスタートアップ支援に乗り出すため、a16z cryptoというWeb3専門の投資組織まで立ち上げました。
a16z cryptoが持つ投資資金の総額は、2022年10月時点で76億ドル以上。その出資先は、暗号資産(仮想通貨)取引所やDapps開発者、NFTプロジェクトなど多岐にわたります。また、Web3に関する調査機関を立ち上げたり業界のルール作りに取り組んだりと、会社を挙げてクリプト分野に注力しています。
このようにAndreessen HorowitzがWeb3に対して積極的に投資しているため、一般の投資家もクリプト分野に注目するようになりました。
Web3のトレンドに影響を与える存在となっている
Andreessen Horowitzが持つ資金と影響力は絶大で、Web3業界のトレンドを生み出すほどです。例えばAndreessen Horowitzの出資先には、世界中の投資家からの注目が集まっています。結果として出資先の企業に巨額の資金が流れ込み、覇権を握りやすい状況が生まれました。
また、Andreessen Horowitzは情報発信にも熱心に取り組んでいます。この情報に業界が呼応するため、Web3における将来の方向性が定まっていきます。他にもAndreessen Horowitzは、業界のガイドライン作りやWeb3の政策提言にも積極的です。
Andreessen Horowitzは、混沌としたWeb3分野で未来のビジョンを示す役割を果たしています。
Andreessen Horowitzが過去に出資してきた主要プロジェクト
Andreessen Horowitzは、Web3業界における様々な企業に出資してきました。ここでは、その中でも代表的なプロジェクトを紹介します。
Compound
Compoundは、イーサリアムにおいて歴史のある分散型取引所です。Andreessen Horowitzは、早期からCompoundへの出資を行っていました。加えて、2019年の時点で1億ドル以上の資産をCompound上にて運用しています。
Coinbase
Coinbaseは、Andreessen Horowitzの手厚いサポートによって成長を遂げた暗号資産取引所です。2013年から2020年までの間に、Andreessen Horowitzから8回の融資が行われました。
Coinbaseは黎明期から規制やコンプライアンスを重視してきた取引所であり、この点が高く評価されて投資の対象となりました。
Handshake
Handshakeとは、自律分散型のネームサービスです。
インターネットの世界では、ユーザー名やURLといったアクセス先を表す情報が欠かせません。これらのアクセス先の情報は特定企業によって管理されているため、ハッキングやシステム障害の際に影響を受けます。これに対してHandshakeでは、アクセス先の情報をブロックチェーンで管理するため、トラブルに強くなる点が特徴です。
Andreessen Horowitzは、Handshakeの株主としてネームサービスの普及に貢献しています。
Andreessen Horowitzに対する批判
Andreessen Horowitzの投資によって、多くのプロジェクトが急速に立ち上がりました。一方で、その強すぎる影響力には批判の声も。ここでは、Andreessen Horowitzの負の側面を取り上げます。
脱中央集権のWeb3において影響力を強めている
Andreessen Horowitzの投資したスタートアップが、数多く台頭し始めています。しかしその結果として、株主であるAndreessen Horowitzへ権力が集中するようになりました。加えてAndreessen Horowitzはロビー活動も積極的に行っており、アメリカのクリプト政策にも大きな影響を与える存在となっています。
もともとGAFAのような特定の巨大テック企業に権力が集中したため、そのアンチテーゼとして誕生したWeb3。そのためWeb3の世界では、権力の分散化が実現されると期待されていました。しかし結果として、Web3においても特定企業が支配する構図が現れ始めています。
NFTやトークンにおいて投機的なトレンドを生み出している
Andreessen Horowitzは、Web3に関して積極的に情報発信をしています。この発信活動によって、多くの投資家をブロックチェーンの世界に引き連れてきました。結果としてWeb3の世界に、潤沢な投資資金が流れ込んでいます。
しかし一方で、一般投資家による近視眼的な短期トレードが絶えず、たびたびバブルが発生するようになりました。特にNFTやトークン価格の急騰は一般投資家の注目を集めやすく、投機的な取引が繰り返されています。
また、Andreessen Horowitzが「お金儲け」のできる分野ばかりに言及している点も問題です。Web3はもともと「公共インフラ」として提唱された概念です。つまり元来のWeb3では特定の人ばかりが儲かるものではなく、お金儲けの色合いは薄くなるはずでした。
しかしAndreessen Horowitzが喧伝するWeb3は、トークンやNFTなどお金を稼げそうな分野が中心です。この主張に一般投資家も追随し、ブロックチェーンの世界ではたびたびバブルが発生します。特にイーサリアムの市況は、Andreessen Horowitzによって翻弄されてきました。
このようなAndreessen Horowitzの姿勢は、敬虔なWeb3信奉者から批判の対象となっています。例えばTwitter創業者のJack Dorsey氏は、Andreessen Horowitzとしばしば対立しています。
Andreessen Horowitzの次なる動き
Andreessen Horowitzは、長期的なスパンでWeb3事業に関わっていくために、さまざまな施策を打っています。ここでは、Andreessen Horowitzが進めているプロジェクトについて紹介します。
クリプトに特化した人材の育成
Web3事業における起業家を育成するため、Andreessen Horowitzはクリプトに関する教育に力を入れています。そのプロジェクトの名が、「Crypto Startup School」。
Crypto Startup Schoolでは、世界中から数十名の起業家が選抜されます。起業家たちは数ヶ月の間、クリプト分野における起業のノウハウを学びます。その講義内容は、ビジネス戦略や法規制、ブロックチェーンの設計などさまざま。起業にあたっては資金面の援助も得られるほか、ベテラン起業家からの助言も受けられます。加えて、Andreessen Horowitzが持つ人脈や情報網を活用できる点も大きな魅力です。
このようにAndreessen Horowitzでは、クリプト分野で起業できる人材の育成を進めています。
NFTプロジェクトとビジネスの連携の促進
Andreessen Horowitzは、NFTプロジェクトとビジネスの連携にも取り組んでいます。
現状のNFT取引では著作権や商用利用に関するルールがプロジェクトごとに異なり、購入者には何の権利が与えられるかが不明確です。その結果として画像データの取引のみに終止し、実社会でのビジネスに発展しないケースも。このような背景から、商用化に成功した事例はわずかしかありません。
そこでAndreessen Horowitzは、実社会でのビジネスを見据えたNFTプロジェクトを支援しています。具体例として、以下のプロジェクトへの出資を行いました。
これらのプロジェクトではオンラインコミュニティやアーティストによるグッズ制作、Web3向けツールの開発などビジネスを見据えた展開が考えられています。
他にもAndreessen Horowitzでは、NFTをビジネスに展開しやすくするルール作りにも取り組んでいます。その一環として提唱されたものが、NFTの商用ライセンス。Andreessen Horowitzは、NFTにおける商用利用の範囲を定めたガイドラインを提唱しました。まだ業界には浸透していないものの、実社会でのビジネス展開を見据えた取り組みです。
このようにAndreessen Horowitzは、画像データの取引に留まらない産業を構築しようとしています。
Andreessen Horowitzの特徴や注目される理由のまとめ
本記事では、Andreessen Horowitzの特徴や注目の理由について解説しました。Andreessen HorowitzはWeb3に対して巨額の資金を投じており、今やWeb3を語る上で無視できない存在です。その投資先にも大きな注目が集まっており、Web3のトレンドを左右するほどの影響力があります。
Andreessen Horowitzは数多くのWeb3スタートアップに投資をしているため、今後も投資先の起業が頭角を現すでしょう。Web3に関する情報を集める際には、Andreessen Horowitzの動向に注目してみてください。