国産ジェネラティブNFTやブロックチェーンゲームなど、多方面で様々な動きが日々生まれている日本のNFT界隈。
しかし、日常的にNFTに触れている人の数は、今なお極めて少ないと言わざるを得ません。
そんな中、非常に多くの日本人が利用している2大プラットフォームがこの2022年、NFTの世界に参入しました。
それが「楽天NFT」と「LINE NFT」です。
ともに数千万人規模のユーザー数を誇るサービスですが、参入にあたっては賛否両論がありました。
この記事では、リリース当初に話題を集めたこれら2社のNFT関連サービスの現状について、最新の状況を踏まえて解説します。
この記事の構成
楽天NFTとは
引用元:楽天NFT
楽天NFTは、数々のインターネット事業を手掛ける楽天グループ株式会社の事業の1つとして2022年2月にサービスを開始しました。
楽天は「楽天市場」「楽天モバイル」「楽天証券」など非常に多岐に渡るサービスを展開しており、利用したことがある人も多いのではないでしょうか。
国内でも有数の大手企業であるため、楽天がNFTへの参入を表明した際には大きな話題となりました。
楽天NFTの特徴
楽天NFTは独自のNFTマーケットプレイスを運営しており、他のNFTマーケットプレイスと同じようにNFTの売買などができます。
加えて、楽天NFTが持つ独自要素として以下の3点が挙げられます。
- 楽天IDで簡単に利用できる
- クレジットカードを利用して日本円決済ができる
- 楽天ポイントが貯まる&使える
1つめの特徴は、楽天IDで簡単に利用できることです。
「楽天市場」や「楽天トラベル」などの楽天グループのサービスを利用したことがある人は、それらのサービスと共通で利用できる楽天IDを使って楽天NFTも利用できます。
2つめの特徴は、日本円でNFTを購入できることです。
購入にはクレジットカードが利用でき、普段の買い物と同じ感覚でNFTを購入することが可能になっています。
一般的にNFTの売買には暗号資産(仮想通貨)が必要になりますが、楽天NFTの場合はクレジットカードを用いて日本円で決済ができるため、暗号資産に馴染みがない人も手軽に利用できるマーケットプレイスだと言えるでしょう。
3つめの特徴は、楽天ポイントを貯めたり、NFTの購入に楽天ポイントを使ったりできることです。
楽天のサービスの利用経験者ほぼ全員が知っているであろう楽天ポイント。
このポイントは楽天NFTでも他のサービスとまったく同じように機能します。
- NFTを購入してポイントを貯める
- 貯まったポイントを楽天の他のサービスで使う
- 他のサービスで貯めたポイントを使ってNFTを購入する
このように、楽天が提供する他のサービスと何ら変わりなく楽天ポイントを利用することができます。
ローンチ直後に話題となったニュース
引用元:楽天NFT
国内大手企業である楽天がNFTに参入するというだけでも大きな話題を呼びましたが、特にサービス開始当初に注目を集めたのは、初めて提供するコンテンツのキャラクターに「ULTRAMAN」(ウルトラマン)を選んだことでした。
2022年2月のサービス開始とともに、株式会社円谷プロダクションが製作するアニメ「ULTRAMAN」から、「ULTRAMAN」「SEVEN」「ACE」の楽天NFT限定ビジュアルとオリジナルエフェクトを楽しむことができる「高画質エフェクト付きプレミアムデジタルアート」のNFT全3種が発売されました。
多くの日本人が利用している楽天グループのサービスで、日本人に知名度が高いウルトラマンをコンテンツとして選んだことで、暗号資産やNFTにまったく関わったことがない層にもNFTという新しい技術を認知してもらうことにつながりました。
懸念される楽天NFTのデメリット
暗号資産やNFTについてあまり知らない層にもリーチできるように見える楽天NFTですが、NFTに見識がある人からはデメリットも指摘されています。
具体的には以下の3点があります。
- プライベートチェーンを使っている
- 中央集権的である
- 外部ウォレットでNFTを保管できない
まずは、利用しているブロックチェーンがプライベートチェーンである点です。
ブロックチェーンには大きく分けて「パブリックチェーン」「プライベートチェーン」「コンソーシアムチェーン」の3種類があります。
この中で、特定の管理者によって中央集権的に管理されることなく、分散的に機能しているのはパブリックブロックチェーンだけです。
一方、楽天NFTが用いているプライベートチェーン、そしてコンソーシアムチェーンには特定の管理者が存在します。
ブロックチェーンの本質的な役割を果たせないと言われているプライベートチェーンを用いて独自チェーンを開発していることで、楽天NFTが提供しているサービスは「本物のNFTではない」と言われることもあります。
このことは、2つめのデメリットである「中央集権的であること」にもつながります。
イーサリアムなどのパブリックブロックチェーンに情報が刻まれているNFTの場合、そのNFTを削除したり改ざんしたりすることは誰にもできません。
ところが、楽天が管理をしている独自チェーンに存在するNFTは、楽天側が恣意的に特定のNFTを削除したり、場合によってはサービスそのものを終了することで、そこで提供されているNFTもろとも消滅させられる可能性があります。
プライベートチェーンを利用しているということは、そこに存在するNFTやトークンは「誰かの管理下に置かれている」ことを意味します。
管理者の判断次第で消滅する可能性があるNFTが「本当のNFTではない」と言われる所以です。
デメリットの3つめは、NFTを外部のウォレットに保管できないことです。
楽天NFTで購入したNFTは、あくまで楽天NFTのサービス内で閲覧できるのみであり、MetaMaskのような外部のウォレットに保管することができず、他のマーケットプレイスにて転売することもできません。
この点も「NFTの保管場所さえもが楽天の中央集権的な管理下に置かれている」として、楽天NFTがあまり評価されない一因となっています。
LINE NFTとは
引用元:LINE NFT
LINE NFTは2022年4月にサービスを開始したNFTマーケットプレイスです。
楽天同様、大半の日本人が利用している(月間アクティブユーザー数は約9,200万人)サービスですので、LINEによるNFT参入が公表された時は大きな話題になりました。
LINE NFTの特徴
LINE NFTも独自のNFTマーケットプレイスを運営しており、独自要素としては以下のような点が挙げられます。
- LINEアカウントがあれば利用できる
- LINE Payを通じて日本円決済ができる
- LINE上の「友だち」とNFTの交換や送受信ができる
1つめの特徴は、LINEアカウントがあれば利用できることです。
NFT取引をしたいと考えている人で、LINEを使ったことがないという人はおそらくほとんどいないでしょう。
つまり、まさに誰もがすぐに使えるNFTマーケットプレイスであると言えます。
2つめの特徴は、LINE Payを通じて日本円で決済ができることです。
β版サービスとして展開していた「NFTマーケットβ」では、LINEの暗号資産「LINK」での決済のみが取り扱い可能でしたが、LINE NFTになったことで日本円決済にも対応しました。
3つめの特徴は、LINEの「友だち」とNFTの交換や送受信ができることです。
LINEでつながっている他のユーザーは「友だち」と呼ばれますが、その友だち同士でNFTを送り合うことが可能になっています。
ローンチ直後に話題となったニュース
LINE NFTにおいてコンテンツ面で当初取り上げられたものには、スクウェア・エニックスによるNFTデジタルシール「資産性ミリオンアーサー」などがありました。
しかし、それ以上に「そもそも日本において圧倒的なユーザー数を誇るLINEがNFTに参入した」という事実自体が話題となりました。
日本におけるLINEの利用者数は約9,200万人。つまり国民の4人に3人、あるいは日常的にスマホを利用している年齢層に限ればそれ以上の割合の人がNFTを手にする可能性があるということで、「NFTの間口を広げる」という点で大きな注目を集めました。
懸念されるLINE NFTのデメリット
LINE NFTも楽天NFT同様に広く多様なユーザーにアプローチできる可能性がある一方で、ほぼ同じデメリットを抱えています。
- プライベートチェーンを使っている
- 中央集権的である
- 外部ウォレットでNFTを保管できない
上記以外にも「LINE NFTで購入したNFTは他のNFTマーケットプレイスで売ることができない」「主要な暗号資産で取引ができない」などといったマイナス要素があります。
楽天NFTの現在
引用元:DEA
ここまで、楽天NFTとLINE NFTのそれぞれの特徴、及び当初から言われていた両者のデメリットを考察してきました。
しかしサービス開始から半年が経った今、楽天NFT、LINE NFTともにNFTプラットフォームとして魅力的な要素が徐々に現れ始めています。
まずは楽天NFTについて、直近で公表されたニュースを元に楽天NFTの魅力について見ていきましょう。
直近のニュース
楽天NFTに関する最近のニュースで注目すべきものには、以下の2点があります。
- イーサリアム決済に対応
- DEAとweb3領域で業務提携
まずはイーサリアムでの決済を導入する点です。
楽天NFTは2022年秋から、従来の決済方法に加えてイーサリアムによる決済を導入します。
コンテンツを発行・販売する一次販売において導入し、決済には暗号資産ウォレットのMetaMaskを利用します。
楽天グループの国内サービスで暗号資産決済を導入するのはこれが初めてです。
今後は、二次流通以降においてもイーサリアムでの決済・売上代金の受領を検討していきます。
ブロックチェーンを利用したサービスに関心が高まったユーザーや、従来から暗号資産に親しんでいるユーザーに向けて決済方法を拡充することで、さらに多くのユーザーが利用しやすい体制を構築しています。
そしてもう1つは、GameFiプラットフォームを運営するDigital Entertainment Asset Pte. Ltd. (以下DEA)とWeb3領域における協業推進に向けた覚書(MOU)を締結した点です。
DEAは、全世界100カ国に250万人のユーザーを有するGameFiプラットフォーム「Play Mining」を運営する企業です。
そのDEAと楽天が手を組み、それぞれのサービス向上に向けた連携をしていくことが発表されました。
協業内容の詳細はまだわかりませんが、GameFi領域で大規模に事業を進めているDEAとの提携は、今後の楽天のNFT事業において大きなプラスとなることが見込まれます。
楽天NFTの魅力
楽天NFTの魅力は、元から存在する楽天経済圏の各種ツール(楽天IDや楽天ポイント)を活用することで、NFT初心者にも易しいプラットフォームになっている点です。
加えて、今後はイーサリアム決済に対応していくことや、web3領域の先駆者であるDEAと手を組むことでさらにサービス拡充していくことが期待される点も注目すべきでしょう。
LINE NFTの現在
引用元:LINE
リリースから半年が経ち、楽天NFTとは異なる路線でLINE NFT独自の魅力が見え始めるようになりました。
直近のニュースの内容を確認しながら、LINE NFTのプラスの側面を見ていきましょう。
直近のニュース
LINE NFTに関する最近のニュースで注目すべきものには、以下の2点があります。
- NFT無料配布機能(エアドロップ)の提供開始
- CNP Villains、3DCNPのリリース
まずはNFT無料配布機能(エアドロップ)の提供を開始する点です。
エアドロップ(Airdrop)とはNFTを無料で配布する機能を指します。
NFTをユーザーにプレゼントするという意味から「Giveaway(ギブアウェイ)」とも呼ばれています。
新規ユーザーの呼び込みを目的に、NFTマーケティングでは多く利用されている機能です。
もう1つは、国内で最大の規模を誇るジェネラティブNFTコレクション、CryptoNinja Partners(CNP)の派生コレクションである「CNP Villains(ヴィランズ)」と「3DCNP(正式名称未定)」のリリースが決まったことです。
派生元のCNPは現在、時価総額約90億円の国内最大のジェネラティブNFTコレクションです。
その派生プロジェクトである2つのコレクションが、LINE NFTからリリースされることが発表されました。
すでにLINEのオープンチャットではCNP Villainsの公式チャットができ、多数のCNPファンが参加しています。
OpenSeaでは「CNP」「CNP Jobs」「CNP Rookies」「Very Long CNP」など多くの派生コレクションが展開されていますが、他のプラットフォームでは初めてのリリースとなります。
LINE NFTの魅力
LINE NFTの魅力は、スマホで手軽にNFTを楽しめる点にあります。
「友だち」とのNFT交換機能など、モバイル端末で利用されることを前提としたサービスの拡充が期待されます。
また、CNPシリーズのリリース以外にも、Move to Earn のNFTゲーム「STEPN」の開発が進んでいることや、個人で活動する日本のNFTクリエイターの作品も取り扱うなど、コンテンツの内容面の充実を図っている点は見過ごせないポイントになりそうです。
楽天NFT・LINE NFTの今後の展望まとめ
楽天NFT、LINE NFTとも、パブリックブロックチェーンではないがゆえに中央集権的な要素が残る点は否めません。
しかし、いずれも大規模な潜在的ユーザーを抱えていることや、リリースから半年が経過し、それぞれ独自の強みを模索し始めている点は十分に評価できます。
今後はコンテンツの内容を充実させつつ、よりブロックチェーンの本質に迫ったサービス展開を切り開けるかが重要になってくるでしょう。