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総額5000万円以上のNFTアートを売った「onigiriman」とは何者?

解説系記事

NFTは2021年から急速に市場が拡大し、「高額取引!」「今、NFTが熱い!」などの文句をメディアで見かけるようになりました。

日本ではアニメやマンガの文化が根強く、「可愛い女の子」のイラストには一定の需要があります。NFTアートでも「可愛い系」は人気があり、大きなジャンルのひとつに育っています。

2021年のNFTブームで注目されて一躍「時の人」となったうちのひとりが「onigiriman」を名乗るイラストレーターです。

引用元:ANIFY

「小学生のNFTアーティストのZombie Zoo Keeperのニュースを見て、そういや自分も発表していたなと思ってマーケットプレイスをチェックしたら作品が売れていた」と語るonigiriman氏は、会社員をしながら副業としてNFT作品を発表しています。

この記事では、まさに「先行者利益」を獲得したonigiriman氏のNFTアーティストとしての経歴や作品の魅力を紹介します。

onigirimanとは?

「日本のNFTに関わる人で、知らないものはいない」とまで言われるほどのトップクリエイター「onigiriman」氏。

いくつかのコレクションを展開していますが、最も有名なのはマーケットプレイス「OpenSea」で公開している「onigiriman’s cute girl Collection」です。

どの作品を見ても一目で他のクリエイターの作品と違うと分かるほど特徴的なコレクションです。

作品を見てみよう

2021年に大きなブームとなった日本のNFT市場ですが、2022年に入って過熱感がやや冷めてきており、買い控えムードが出ていると言われています。

そのようななかでも、onigiriman氏の作品の二次流通は2022年10月末で最高「7.8ETH」で売りに出されています。

また、売りに出ていることを示す「Buy Now」の作品が少ないというもの特徴で、購入した人が気に入ってなかなか手放したがらないというのも作品の魅力を示していると言えます。

引用元:OpenSea

一見して分かるように、「cute girl Collection」はジェネラティブアートではありません。1枚ずつ手描きされており、自動作成ツールを使った形跡は認められません。

とはいえ、どの作品も1人の女性キャラを中心に描かれていることは理解できるでしょう。

この女性キャラは「賑崎結(にぎさき ゆい)」という名前を付けられており、通称「ニギちゃん」と呼ばれています。

引用元:Twitter

作者自身の紹介によると、年齢は19歳という年齢が設定されています。大学生でダンスサークルに所属していることになっています。

日本では可愛い女の子のNFTアートの人気が高い傾向がありますが、onigiriman氏の「ニギちゃん」は実写的でもなく、かといって萌えキャラでもなく、デフォルメも強すぎず弱すぎずという絶妙なラインで描かれています。

若干タレ目ぎみなクルミ型の目が印象的で、まぶたの上の線が濃く描かれているために「ちょっと眠そう」に見えるところも可愛らしさにつながっています。

NFTプロジェクトの完成度

2022年に入って多くのインフルエンサーたちが「NFT始めました!」と言って次々に人気のコレクションを購入するという動きが見られるようになりましたが、話題の中心となるのは主に「自動生成システムを使ったジェネラティブアート」です。

引用元:Twitter

ビジネスコンサルタントとして、またYouTuberとして有名な鴨頭嘉人さんが「NFT買います」という企画で購入した1つ目は「Neo Tokyo Punks」で、ジェネラティブアートNFTです。

2022年の日本のNFT界隈は、主に「ジェネラティブアートで盛り上がった」と言ってもいいほどの状態です。

onigiriman氏の作品はジェネラティブアートではなく、1枚ずつ描かれています。そのことは逆に強みでもあります。

日本は元来アニメやマンガなどのサブカルチャーの文化が根強い国です。そのため、NFTでも可愛い女性キャラを描いたNFTは高い人気があります。

onigiriman氏は、「ニギちゃん」を中心にしたコレクションの作風に高い統一感があります。どれを見てもしっかりと「ニギちゃん」であって、しかも1枚ずつ背景になっているストーリーを感じさせます。

引用元:OpenSea

こちらは「Bitcoin Cash」という名前のエナジードリンクを飲みながらスマホを見ているニギちゃんです。ニギちゃんはいつも「何かをしている」状態で、大学生の女の子がやりそうなことを可愛らしい様子で描いています。

ニギちゃんのイラストは1枚絵ながらデザインが統一されており、デザインのことが分からない素人にも他のコレクションと見分けがつきます。そのため、「自分はonigirimanの作品を持っている」という確かな実感があります。

ニギちゃんは1枚ごとにシチュエーションが変わり、表情も様々です。1枚買ったらまた欲しくなるという不思議な魅力にあふれており、NFTコレクションとしての完成度は極めて高いと言えます。

人気のクリエイターであるほど、「コレクションのカラー」が強く出てきます。上手いイラストを描ける人はたくさんいますが、かといってあまりにテイストの違うイラストが混じっているコレクションの人気は出ません。

ニギちゃんは「ちょっとツンデレ」「ちょっとエロい」というギリギリのラインを狙った絵になっていて、アニメやマンガなどのキャラクターが好きな人にとっては心をくすぐられる作風が貫かれています。

たった一晩で約4,000万円を稼いだことがある

onigiriman氏はNFT業界ではすでに知られた存在でしたが、2021年12月にリリースしたコレクションが「4時間で完売」「約4200万円を売り上げた」ことで話題になりました。

引用元:tofuNFT

NFTプラットフォーム「tofuNFT」とのコラボ作品「Tokyo Pop Girls Collection」は2021年12月3日20時に販売が開始され、わずか4時間で完売しています。

引用元:Twitter

このNFTは1枚が0.2BNB(時価:約1万4,000円)で、3000枚ですので「1万4,000円×3000個=約4,200万円」となります。

日本のクリエイターで短時間の売上高としては最高額と言われています。

Tokyo Pop Girls Collectionはコレクティブル系のNFTで、3000枚を一気にmintで放出しました。海外では良く行われている手法ですが、日本ではあまり成功事例がない方法でした。

NFT業界では快挙として受け止められましたし、「日本でもNFTで大儲けしているアーティストがいる」ことを印象づけることに成功しました。

onigirimanの経歴

日本のNFTクリエイターとして最も有名なひとりと言っても良いほどのonigiriman氏ですが、イラストレーター専業ではなくサラリーマンとして働きながらイラストを描くという生活を送っています。

2022年6月にはいったん退職していますが、イラストレーターとして独立するつもりはないとのことです。

ここまで大きな人気を獲得したonigiriman氏はTwitterやブログサービス「note」などで折に触れて自身の来歴に触れています。

ここでは、onigiriman氏がどのように成功を手に入れたかという経歴を紹介します。

暗号資産界隈に参入してから作品発表まで

onigiriman氏は2022年5月18日のnote投稿で、「24歳」と年齢を公表しています。1998年もしくは1997年生まれと推測されます。

絵を描くこと自体は子供の頃から好きで、本格的に描くようになったのは大学生から。好きなイラストレーターとして「sashimi・檸檬茶・yuyuharu」の各氏を挙げています。どの人も「他の人とは違う確かな個性がある」「可愛らしい絵柄」「アート性も高い」という特徴があり、この点もonigiriman氏と共通するものを感じさせます。

引用元:sashimi

引用元:Twitter

引用元:foundation

onigiriman氏は2017年に暗号資産(仮想通貨)界隈に参加したと語っています。暴落や高騰を繰り返して暗号資産界隈に残りながらイラストを様々な人に提供するという時代があり、新卒で就職しています。

初のNFT作品を発表したのは2021年3月ですが、全然売れず放置していたそうです。その後作風を改良して現在の画風に落ち着いています。放置していたNFTが5月に売れていたことに8月になって気が付きました。

ここまでのストーリーは「NFTアーティスト」には良くある話で、作品を発表してはみたが、全然売れないのでほったらかしにするというのは数多く見られる事例です。

onigiriman氏の成功の要因は、「2021年3月」という早い時期にすでに作品を発表していたことと、その後に画風を練り直して再度チャレンジしたという点です。

「可愛い系」NFTをいち早く発表する

onigiriman氏の転機は2021年8月にやってきます。2021年3月に出品したNFTが5月に売れたことに8月なって気づきます。

引用元:Rarible

上記は最初に売れたNFです。後の「cute girl Collection」を彷彿とさせるデザインですが、まだ際立った特徴のないイラストです。

画風を練り直していたonigiriman氏は、小学生ながらNFTの総取引額が4,000万円を超えたZombie Zoo Keeperの記事を目撃し、NFTの可能性への認識を新たなものにし、OpenSeaに出品マーケットプレイスを移してニギちゃんのコレクションを発表し始めます。

ここで注目しておきたいのは、onigiriman氏の認識では「当時(2022年8月時点)では可愛い系のイラストでNFTを出品していた人はほとんどいなかった」と発言していることです。

今では日本のNFTといえば可愛い系・アニメ系は当たり前のようになっていますが、このときonigiriman氏のような可愛い女の子をNFT作品として発表していた人は少なかったという証言です。

onigiriman氏の成功の要因のひとつがここにあります。onigiriman氏のニギちゃんのイラストは当時、「新しい手法」だったということで、爆発的に売れたことは、「元から需要があったのに、それに応える供給者がいなかった」ことを意味します。

潜在的な需要をいち早く掘り起こした点に「cute girl Collection」の成功の要因があったと言えます。

tohuNFTとのコラボで爆発的人気コレクションに

OpenSeaで始まった「cute girl Collection」は爆発的に売れていきます。それまでになかった「日本らしい可愛い系イラスト」「ちょいエロ」「アート性も感じられる」という絶妙なデザインのNFTコレクションは、は2021年10月には総取引量が100ETHを超えています。

2021年12月にはtofuNFTとのコラボで、たった4時間で約4,000万円を超える売上を記録します。「cute girl Collection」の総取引量も200ETHを超えました。

「SPA!」などの雑誌にも取り上げられたほか、渋谷で「アドトラック」が走るなど、onigiriman氏は一躍「時の人」となります。

その後も「一目で特徴が分かるイラスト」を武器に、スピーディにNFT作品を出品して順調に売れています。

NFTコレクションのなかには、ある時期一斉に作品を出品するものの後が続かないコレクションは数多くあります。一定のペースを保ちながら、次の作品を発表していくというのは、NFTにおける成功の秘訣のひとつですが、onigiriman氏はこの基本に忠実なクリエイターです。

「cute girl Collection」はなぜ高く評価されたのか?

onigiriman氏がOpenSeaで展開している「onigiriman’s cute girl Collection」は、2022年10月現在総取引量が332ETHに達する人気コレクションに成長しています。

引用元:OpenSea

オーナー数は341人ですが占有率が68%と高いため、「一定数のオーナーが複数の作品を買っている」ことが分かります。少数の熱烈なファンを獲得しているというコレクションです。

このような成功を収めた要因を分析してみましょう。

ポップで現代風の絵柄

onigiriman氏の作風は「現代的」「ポップ」「キャッチー」「クール」などの言葉に集約できるでしょう。

インタビューによると、「電車での通勤などで見かける『東京の女の子』から受ける印象を大切にしている」と語っています。「今の東京」の空気感が感じられるのが大きな特徴と言えます。

NFTアートでは「限られたスペース」に「あまり多くの情報量を詰め込めない」という制約があります。「cute girl Collection」はニギちゃんという19歳という設定の女の子が様々なアイテムを持っていて服装も様々ですが、そこから感じられる「東京らしさ」は特別な印象を与えます。

引用元:OpenSea

海外では、おおよそ以下のように評価されています。

onigiriman作品の評価

  • onigirimanは日本における初期のインフルエンサーの一人
  • 大胆なラインと鮮やかなソリッドカラー
  • 表情を注意深く調整している
  • デザインセンスを感じさせる「クールさ」と「可愛らしさ」をバランスよく表現している

可愛らしさとクールネスやアート性のバランスの良さが大きな強みであると言えます。

「一点モノ」の強さ

NFTアートといっても様々な種類があります。一般的には「ジェネラティブアート」か「一点物のアート」かという区別があります。ジェネラティブアートは基本的なパーツを複数用意して、それらを自動生成ツールで組み合わせて大量のNFT作品を生み出すものです。一方、一点物はイラストレーターや画家が1枚ずつ描く作品です。

ジェネラティブアートのなかには「投機性の高い」コレクションが多い傾向があります。mint(新規発行)で大量に発行して、先行予約などで入手できた人が転売することで利益を得るものです。こういったコレクションは一気にブームを巻き起こしますが、以後は尻すぼみというものが少なくありません。

日本のNFT業界では、ジェネラティブアートよりもイラストレーターが1枚ずつ描く「一点物作品」のほうが向いているとする意見が多く、実際にひとつの潮流として定着しつつあります。

日本のNFT市場は「平和」「仲間意識が強い」「短期トレード目的の人が少ない」という傾向があり、海外NFTアートコレクションにあるような「インパクトを与えて初期セールで多数の利益を得る」という手法が根付きにくいと言われています。

MetaSamuraiなどのプロジェクトも成功を収めており、今後はまた違う傾向が出始める可能性は常にありますが、日本のNFT市場は「アーティスト志向」が強い傾向があります。

「cute girl Collection」が売れている背景には、こういった日本らしい「一点物を好む傾向」があると言えるでしょう。

onigiriman氏は「一目で他とは違う」作品をスピーディに発表できるという強みがあります。そのため、多彩なプロジェクトに並行的に参加しています。そのため、なおのこと知名度が上がるという好循環に入っています。

onigiriman氏の感じた「手応え」

onigiriman氏が作品を発表していくなかで「手応え」を感じたのは2021年9月とインタビューで答えています。

すでに絵柄についても練り上げており、いかにも「日本のイラスト」らしいテイストの作品がNFT市場に多くないことを理解していたonigiriman氏は、あえて「ポップな感じ」「力のある太めの線を使う」ことを目指します。

NFTアートは「アート」であって、繊細な細い線で描くものと考えているアーティストは今でも多く、一定の評価を受けています。onigiriman氏はあえて繊細なタッチではなく大胆なラインを選んだということです。

ここにもonigiriman氏の成功の要因が見て取れます。日本のアニメやマンガで使われている「太い線」を選択して、可愛らしくちょいエロなイラストをいち早く発表しています。日本発の作品らしいオリジナルの「ニギちゃん」というキャラクターを生み出し、ちょっとエロい感覚を付加して1枚ずつマイペースで発表していくというスタイルを確立した点に、onigiriman氏の卓越した先見性が見て取れます。

2021年9月、普段のイラストよりもエロティックな要素が強めの作品を出品したところ、二次流通で1ETH(当時約35万円)で取引されました。onigiriman氏は「ここが転機だった」と語っています。

引用元:OpenSea

この作品のオーナーは2022年10月になっても、まだ作品を手放していません。よほど気に入っていると考えられます。

「cute girl Collection」は二次流通市場では主に「1ETH」前後で取引されています。国内クリエイターの作品は、「0.01ETH以下」で取引されるケースが多いというなか、高い評価を保ち続けていると言えるでしょう。

まとめ

日本のNFTクリエイターのなかで最も有名なひとり「onigiriman」氏の経歴や作品について紹介しました。

最後に記事をまとめます。

  • onigiriman氏は「onigiriman’s cute girl Collection」で大きな成功を収めた
  • コレクションは「一点物」ながら「ニギちゃん」という女子大生を主に描いている
  • 統一感があり、他のアーティストとの違いも際立っている
  • onigiriman氏はたった一晩で約4,000万円を売り上げたこともある
  • 2021年8月に大きな転機を迎え、人気アーティストになった
  • 「onigiriman’s cute girl Collection」はキュートでキャッチー、クールという特徴がある
  • 日本らしい「一点物を好む傾向」が背景にある
  • 悩んだ末の絵柄の変更に成功した

onigiriman氏は他のコレクションとのコラボも多いアーティストです。今後の活躍が期待されます。

Spritz

Spritz

Web3領域を専門とするライター。DeFiやNFT分野への投資経験をもとに、クリプトに関する記事を発信しています。これまでに執筆した暗号資産に関する記事は70本以上。特に関心の強い分野は、セキュリティトークンです。ブロックチェーンによってもたらされる社会変革に焦点を当て、初心者にもわかりやすい記事を心がけています。
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