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JPYCとは?日本円ステーブルコインについて解説

解説系記事

暗号資産(仮想通貨)の市場価値は、変動が大きく安定しません。そのためブロックチェーンにおける安定した価値基準として、ステーブルコインが用いられます。このステーブルコインは、現実世界の法定通貨の価値と連動したトークンです。

ブロックチェーンの世界では、主にアメリカドルと連動したステーブルコインが用いられます。そのような中、日本円のステーブルコインとして登場した銘柄が、JPYCです。この記事ではJPYCの特徴や使い方に焦点を当てつつ、日本におけるステーブルコインの現状を紹介します。

JPYCとは?

JPYCは、日本円ステーブルコインの中で最も普及している銘柄です。このJPYCには以下の特徴があり、大きな注目を集めています。

民間企業が発行する日本円のステーブルコイン

JPYCは、日本円と連動したステーブルコインです。「1JPYC=1円」の価値を持ち、ブロックチェーン上で日本円を取引する手段として用いられます。対応するブロックチェーンは、以下の6種類。

  • Ethereum
  • Gnosis
  • Avalanche
  • Polygon
  • Shiden
  • Astar

JPYCはERC20規格で発行されたトークンであるため、メタマスクなどのウォレットでも保管が可能です。

このJPYCを発行するのが日本のスタートアップ企業、JPYC株式会社。日本円ステーブルコインの普及に取り組んでいます。ブロックチェーンの世界ではUSドルのステーブルコインが主流です。このような市場環境で、JPYC株式会社は日本円のステーブルコインを流通させようとしています。

プリペイド制の通貨建資産

JPYCは暗号資産ではなく、プリペイド式の支払い手段として開発されました。そのため、プリペイドカードと同様の仕組みが採用されています。つまり、ポイント制のプリペイドカードの場合、預け入れた金額と同価値のポイントしか発行できません。つまり、日本円預入れ金によってプリペイドカードの価値を使用前に担保しています。この仕組みと同様に、JPYCも預け入れられた日本円と同価値のトークンのみが市場へ放出される仕組みです。

ステーブルコインの中には、アルゴリズムによって価格を調整する無担保型のコインも存在します。しかし無担保型のステーブルコインは資産価値の裏付けがないため、突如として暴落することも。これに対してJPYCの場合は、日本円預入れ金によって価値が担保されています。

資金決済法に則り利用者保護が図られている

JPYCは日本の資金決済法に基づいて、「前払式支払手段(プリペイド)」と呼ぶ形式で発行されました。このプリペイド式通貨を発行する場合、発行元は市場に流通させる金額の一部を第三者機関に預け入れる必要があります。まさしくこれが担保金となるわけです。この預け入れ資金’(≒担保金)のおかげで、万が一発行主体が破産した場合でも、利用者に対する日本円の返還が可能です。

JPYCも同様に、発行元であるJPYC株式会社が破産した場合でも、トークンの保有者に対して担保金から日本円の払い戻しが実施されます。このように、JPYCは既存の国内法に沿って発行されたトークンであり、一定の安全性を確保しています。

JPYCのメリット

ブロックチェーン上で日本円を利用できるようになると、さまざまなメリットが生まれます。ここではJPYCを用いるメリットについて、紹介します。

実社会のモノやサービスと交換できる

JPYCは、電子マネーのように実社会の商品やサービスとの交換が可能です。資産価値が安定しているため、企業への支払い手段としての利用が期待されています。

暗号資産の場合、メジャーな銘柄であっても暗号資産自体が有するそもそものボラティリティが高いことから、価値が安定しません。そのため、企業の決済手段として使いにくいのが現状です。これに対してJPYCは、日本円と連動しているため、企業にとっても導入のハードルが下がります。

すでにJPYC建てのギフト券が販売されている他、ホテルの宿泊費としてもJPYCを利用できます。

日本円を用いてブロックチェーンで取引ができる

JPYCは、ブロックチェーン上で日本円を操作したい局面で役に立ちます。従来の暗号資産市場でステーブルコインを扱う場合、USドルしか選択肢がありませんでした。しかし日本円を使えるようになれば、個人間の送金やNFT取引で重宝します。

また、JPYCはプログラマブルマネーとしての役割も期待できます。プログラマブルマネーとは、コンピューター上のプログラムによって返済日や送付先を設定できるお金です。取引を自動化できるため、金融業務の効率化ができると期待されています。スマートコントラクトにJPYCを組み込むとプログラマブルマネーとして機能するため、金融分野でよりスムーズな取引が実現するでしょう。

DeFiによる運用も可能

JPYCは暗号資産ではないものの、DeFiによる運用も可能です。DeFiでは、通貨ペアとしてステーブルコインが用いられます。現状のステーブルコインではUSドルが主流となっており、日本円の選択肢はありません。しかしJPYCがさらに普及すれば、日本円によるDeFi運用が実現します。

自国通貨建てで通貨ペアが組めれば、一般のユーザーも気軽にDeFi市場に参入できるようになるでしょう。

日本円ステーブルコインの現状と今後の見通し

ステーブルコインの扱いについて、日本国内でも急速に法整備が進んでいます。ここでは、日本円ステーブルコインにおける法規制の現状と今後の見通しを紹介します。

ステーブルコインに関する法規制が参議院を通過

「令和4年資金決済法等改正」によって、日本におけるステーブルコインの位置付けが定義されました。この法改正によると、ステーブルコインは暗号資産ではなく「デジタルマネー」として扱われます。したがって、交通系電子マネーやプリペイドカードのように、日本円と連動した「電子決済手段」のひとつと見なされます。

加えて法改正によって、ステーブルコインを扱える事業者の制限が設けられました。具体的に、以下の2種類の事業者が規定されています。

  • 発行者・・・ステーブルコインを発行できるのは銀行や信託銀行、資金移動業者のみ
  • 仲介者・・・ステーブルコインの交換業を営むには金融庁への登録が必要

事業者の制限が加えられた結果、誰でもステーブルコインを発行できる環境ではなくなりました。今後は金融機関など、一定の資金力と信用力を持つ国内の組織のみがステーブルコインを発行することとなります。

加えてステーブルコインの取引にあたっては、厳しいマネーロンダリング対策が求められます。本人確認が厳格になり、海外との自由な取引も事実上困難となりました。

なおJPYCは資金決済法等の改正に対応しており、今後もステーブルコインの発行を続けることができます。

暗号資産とステーブルコインは決別する可能性も

現在の一般的なステーブルコインは、暗号資産における分類の一つとして存在しています。しかし将来的にステーブルコインは、暗号資産とは別の「デジタル通貨」へ枝分かれするかもしれません。

ステーブルコインには、スマートコントラクトとの連携など新たな可能性が広がっています。しかし現状のステーブルコインは暗号資産市場の中に組み込まれており、とても不安定な存在です。加えて、マネーロンダリングの温床にもなりかねません。

そこで現在の日本では、ステーブルコインを暗号資産市場とは切り離して扱おうとする動きがあります。これから登場するステーブルコインは、企業内での金融業務に用いられるなど、現在の用途とは異なってくるでしょう。

JPYCの特徴や注目される理由のまとめ

本記事では、JPYCの特徴や注目の理由について解説しました。現時点でJPYCは、最も普及している日本円ステーブルコインです。今後一般の人にもブロックチェーンが浸透すると、日本円を軸にした取引のニーズも高まるでしょう。したがって、JPYCにも大きな注目が集まると予想されます。

日本国内でもステーブルコインに関する法整備が進んでいます。現状はまだ流動的であるものの、今後は法律に準拠した形でステーブルコインが登場するでしょう。今後も、日本円のステーブルコインに関する動向に注目してみてください。

段巴亜

dan

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