ブロックチェーンやスマートコントラクトの技術をビジネスに導入すれば、業務を効率化できると考えられています。しかし、既存のブロックチェーンはガス代の高さやデータ処理の遅さが足かせとなっており、ビジネスへの利用には不向きといえるでしょう。そこで、さまざまな組織がビジネス専用ブロックチェーンの開発を進めています。いくつかのビジネス用ブロックチェーンが登場しているなかで、最も高いシェアを誇るのがR3社が提供するCorda(コルダ)です。
この記事ではCordaの特徴について焦点を当てつつ、ブロックチェーンのビジネスへの展開について解説します。
この記事の構成
Corda(コルダ)とは?
Cordaはビットコインやイーサリアムとは異なり、特定の組織のみが利用できるコンソーシアム型ブロックチェーンです。そのため、一般の投資家がCordaやそのトークンを目にする機会はありません。しかし、今後も大きな規模となりうる可能性を秘めたブロックチェーンです。
このCordaは、以下の理由により大きな注目を集めています。
R3が開発したビジネス特化型のブロックチェーン
Cordaは、ビジネス環境に特化したブロックチェーンです。特定の企業や業務ごとに、関係者しか閲覧できない閉鎖的なブロックチェーンを構築します。また、複数の企業にまたがる業務プロセスも、Cordaを用いればワンストップで処理できます。
このCordaを開発したのが、アメリカのIT企業「R3社」です。2015年ごろから、金融機関の内部では銀行業務へのブロックチェーンの応用が検討されていました。しかし情報セキュリティの観点から、既存のブロックチェーンは銀行業務には利用できません。そこでR3社が主体となり、金融プラットフォームの開発に乗りだしました。今では、45以上の金融機関がCordaプロジェクトを支援しています。
業界の規制に対応したプラットフォーム
ビジネスのプラットフォームとして利用するには、各業種における法規制の要件を満たす必要があります。例えば金融システムの場合では、情報セキュリティやシステムトラブルへの対応基準が定められています。しかし、一般的なブロックチェーンでは法規制をクリアできる設計思想および仕様にはなっておらず、ビジネスへの展開ができません。
これに対してCordaでは、法規制への対応も万全です。そもそもビジネス用プラットフォームとして設計されているため、各業界の法令を反映したシステムになっています。
ビジネスユースで最もシェアが大きい
Cordaは、ビジネス用途において最大のシェアを誇るブロックチェーンです。Corda以外に、ビジネス用ブロックチェーンを手掛ける企業には「Hyperledger Fabric」や「Quorum」が挙げられます。これらの競合を抑え、Cordaは市場の4割ほどのシェアを維持しています。
Cordaが高いシェアを維持できる理由は、大手の金融機関の支援を受けているからです。HSBCやCiti Bankなどの他に、国内では三菱UFJ銀行や三井住友銀行からの支援を受けています。大手の金融機関でCordaが採用されると、Cordaを中心としたアプリ開発が行われており、開発コストなどを抑えることができるため、他の企業も採用する流れが生まれます。
今では金融分野を中心に製造業や建設業まで、Cordaが幅広く普及するようになりました。
Corda(コルダ)のメリット
一般的なブロックチェーンでは、ビジネスの現場で要求される基準を満たせません。一方で、Cordaの場合はビジネスに特化して設計されているため、他のブロックチェーンには無い強みが存在します。
情報の共有範囲を細かく設定できる
Cordaでは、データの共有範囲を細かく設定できます。
一般的なブロックチェーンでは、参加するノードは全ての取引データを閲覧できます。つまり特定の企業間の取引内容でさえ、すべてのノードに公開されてしまいます。これではプライバシーが保てず、金融取引には使えません。
これに対してCordaでは、ノードごとに情報権限の細かい設定が可能です。例えば、指定したノードに対してのみ、非公開の設定もできます。これによりブロックチェーンでありながら、閲覧できる情報の管理ができる仕組みになっています。
スケーラビリティに優れる
Cordaは、スケーラビリティに優れています。トランザクションの同時並行処理も可能であり、大量のデータ処理をしても遅延が発生しにくい設計になっています。
特に金融分野では、大量のデータを遅滞なく処理しなければなりません。Cordaは、このような金融業界のニーズにも対応できる仕組みになっています。
Java言語によるプログラミングが可能
Cordaは、ビジネス現場で用いられるプログラミング言語「Java言語」に対応しています。そのため、企業で運用しているJavaプログラムをそのままCordaに展開できます。
一般的にスマートコントラクトを設定する場合には、Solidityなどイーサリアム専用のプログラミング言語で記述しなければなりません。しかしSolidityを記述できるプログラマーは少なく、企業でのシステム導入の足かせとなっています。これに対してCordaなら、以前からJavaを用いている社内プログラマーであれば、スマートコントラクトを構築できるため、素早い展開が可能です。
Corda(コルダ)のユースケース
Cordaは、複数の企業間での取引において真価を発揮します。ブロックチェーンによって、改ざん不可能なデータを共有でき、スマートコントラクトによる自動取引も可能となります。ここでは、実際にCordaが活用されている事例を紹介します。
デジタル証券取引
Cordaは、三菱UFJ信託銀行のプラットフォーム「Progmat」に採用されています。
Progmatでは、スマートコントラクトを基盤とした証券取引が可能です。従来の証券取引では、証券口座と資金の口座はシステム上、それぞれが独立して稼働していました。Progmatでは、取引にスマートコントラクトを導入したことで、証券と資金が連動して迅速に取引されるようになります。
結果として、従来は証券の売却から現金化まで数営業日の時間が必要だったものの、Progmatでは証券の売却と同時に現金が入金されるようになりました。
国際貿易の事務手続き
Cordaを活用すれば、国際貿易における事務手続きもスムーズになります。
貿易では国境を越えて船舶会社や航空会社などの輸送機関と銀行などの金融機関が介在します。従来の取引では、紙をベースにしてやり取りをしていました。そのため各社の担当者が、電話やFAX、メールを駆使して手続きを支えていました。
しかしCordaを導入すれば、支払いや手続きの状況を国境を超えて共有できるようになります。加えて、スマートコントラクトによって手続きを自動化できるため、グローバルでのスムーズな取引を実現できます。
船舶燃料の受発注
Cordaは、船舶燃料の受発注システムにも応用可能です。船舶はさまざまな港で給油を行い、目的地に向かいます。従来は経由地で燃料の補給をした場合に、その数量を紙に記録して港湾会社と船舶会社で共有していました。そしてこれらの取引を専用の記録用紙に記入して、燃料費の精算を行っていました。しかし、紙のデータを各社で共有するのは大変です。
そこでCordaが導入され、各地での給油データがリアルタイムで関係する企業に共有できるようになりました。燃料の受発注から請求まで一貫して処理できるため、効率化が実現します。
デジタル地域通貨
Cordaは、地域通貨としての活用も可能です。デジタル地域通貨のプラットフォーム「まちのわ」の基盤技術として採用されており、特定の地域で使える地域限定の通貨として活用されています。
従来のデジタル通貨との違いは、スマートコントラクトを活用できる点です。例えば地域通貨で補助金を支給する場合、スマートコントラクトにもとづいて申請完了と同時に送金することも可能です。これにより振り込みの事務作業がなくなるため、迅速な補助金の支給が実現します。
Corda(コルダ)を用いた新規開発
Cordaは金融や貿易に留まらず、さまざまな業界での展開を計画しています。ここでは、現在検討されているCordaの活用方法を紹介します。
偽造品対策ソリューション
Cordaを活用すれば、ブランド品の真贋鑑定が容易になります。ブロックチェーンの特性を使うことで製造記録やシリアルナンバーの管理ができるため、誰でもブランド品の真贋検証が可能となるからです。
Cordaによって誰もが過去の所有者や取引履歴を検証できるようになれば、偽のブランド品が紛れ込むリスクも少なくなるでしょう。
フードデリバリーにおける安全管理
Cordaは、食のトレーサビリティや安全管理にも役立ちます。食品業界では産地や消費期限の偽装がたびたび問題となります。しかし問題を解決しようにも、何社にもまたがるサプライチェーンを把握することは現実的ではありません。
そこで、Cordaによるサプライチェーン全体の横断的な管理(=トレーサビリティ)が役に立ちます。管理温度や産地、生産日を記録でき他社の情報を参照できるため、食品偽装の防止に役立つと期待されています。
Corda(コルダ)の特徴や注目される理由のまとめ
本記事では、Cordaの特徴や注目の理由について解説しました。ビジネス用のブロックチェーンは市場規模も大きく、今後の活用と成長が期待されている分野です。ビジネスでの導入事例は少ないものの、徐々に活用事例が登場することでしょう。
Cordaでも複数のプロジェクトが進んでいるため、今後の展開に注目が集まっています。ぜひその動向に注目してみてください。