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本格始動した「BONSAI NFT CLUB」のユニークなコンセプトとは

解説系記事

本サイト「NFTの面白い活用事例15選!御朱印やビール、盆栽など少し変わった取組事例を徹底解説」でご紹介した「BONSAI NFT CLUB」が本格的に始動し、好評を博しています。

BONSAI NFT CLUBは「NFTを購入した人の自宅に本物の盆栽が届けられ、discordのコミュニティで栽培方法を学ぶ」という試みです。

盆栽は管理や育成には手間も時間もかかるので、これまでは時間の余裕がある熟年層が愛好する傾向があり、「年寄り臭い趣味」とされてきました。ところが近年では、日本人らしい繊細で上品な趣味のひとつとして海外でも「BONSAI」として知られるようになるという変化を遂げています。

「BONSAI NFT CLUB」は、時代の変化とともに世間の見方が変わりつつある盆栽に新しい価値を与える活動として注目されています。

この記事ではBONSAI NFT CLUBのユニークな活動と、今後期待される展開について詳しく解説します。

「BONSAI NFT CLUB」とは?

引用元:日本盆栽協会

盆栽は手で持てる程度の大きさの「盆=鉢」に生きている「樹木=栽」を盛り込んだ園芸技術です。限られたスペースのなかで自然美を追求するもので、アート要素もあります。

盆栽は日本を超えて海外で非常に人気が高く、イタリアでは日本にもない「盆栽専門学校」があるほどです。一時期日本では「お年寄りの趣味」とされていましたが、近年では盆栽に興味を持つ若い人も増えています。

BONSAI NFT CLUBはすでに海外でも人気の高い盆栽へ取り組む人を増やしていこうという企画です。

NFTを購入すると自宅に本物の盆栽が届く

「盆栽」は「小さな自然を身近な場所に持ち込む」という園芸技術で、国内外で高い需要があります。海外市場も育っており多くの園芸農家を必要としていますが、盆栽農家は高齢化していて海外輸出に積極的に取り組むことができないという課題を抱えています。

そこで立ち上がったのが「BONSAI NFT CLUB」です。NFTの購入者でコミュニティを形成し、一人ひとりの参加者が盆栽を育成して海外へ輸出するという取り組みです。

引用元:BONSAI NFT CLUB PERFECT GUIDE

BONSAI NFT CLUBのNFTを購入すると、自宅に本物の盆栽が届きます。「紛うことない本物」で、SNSでは盆栽を実際に受け取ったホルダーのテンション高い投稿を見つけることができます。

引用元:Twitter

届いた盆栽の育成については、discordのコミュニティに参加し学びながら行っていきます。

配布される盆栽は、すでに2000本以上の海外向け盆栽の育成を手掛けている農業法人「赤石の泉」が協力しています。

盆栽は育成年数によって価値が向上します。将来的には育成の初期段階でNFTを所有権として販売することも検討されているとのことです。

コンセプトとコミュニティについて

盆栽は海外では「日本らしいアート」と受け止められているという側面もあり、高い人気があります。ところが、日本では国内の愛好家は年々減りつつあり、生産農家は高齢化の波にさらされている状況で、次世代への継承が困難な状況が続いています。

「せっかく海外での人気が高まっているのに、日本で育成する人が少ない」というのは盆栽を継承していきたいと考える人にとっては、歯がゆいところでしょう。海外の盆栽販売は日本の取引に比較して「5倍から10倍ほどの値がつく」こともあるほどですが、「植物」であるため輸出制限が複雑で、海外のバイヤーとのコミュニケーションが不足しているために、国内の生産者に還元されないことも多くあると伝えられています。

BONSAI NFT CLUBはNFTを購入することで参加できる「盆栽育成コミュニティ」です。NFTは「盆栽を育てる権利」が得られる会員証のような役割を果たします。NFTにおける「ユーティリティ」が明確なプロジェクトで、400年以上続いていると言われている日本伝統の価値を加速化させることを目指しています。

盆栽が実際にホルダーに配布されて所有・育成されます。活動を通して盆栽の楽しさを体験でき、育成方法はdiscord内で学ぶことができます。

たとえば、盆栽を手にして最も重要なのは毎日の水やりですが、discordではホルダー全員が水やりを続けられるように「毎日水やりチャンネル」で報告をすることができます。季節ごとで変わる手入れのやり方について「盆栽育て方チャンネル」で学ぶことができますし、何かトラブルがあったときには盆栽育成歴の長いサポーターに質問することができます。

「BONSAI NFT CLUB」プロジェクトの背景

引用元:BONSAI NFT CLUB

「BONSAI NFT CLUB」のプロジェクトの背景にあるのは、「盆栽を世界のアート好きが熱狂するコンテンツに育てる」というファウンダーの想いです。

盆栽に世界中からもっと注目が集まって「盆栽を保有してみたい」「アートとして投資したい」という想いが重なることで、盆栽を次世代に継承したいと考えています。

盆栽は一つひとつの樹に歴史があります。誰が保有していたか、どうやって育てられたのかによって盆栽の形は変わっていきます。小さいもので2年くらい、大きいものが3年くらいでとりあえずの完成を迎えますが、さらに上の段階に引き上げるにはさらに3年かかります。樹齢100年を超える盆栽も数多くあり、育成してきた人の想いが1つの盆栽に込められています。受け継いできた持ち主の意思を引き継いで、次世代へつなげていくのが盆栽です。

盆栽とNFTをかけ合わせると、NFTによって「所有者の入れ替わり」の明確な記録を付けることができます。盆栽の重要なプロセスである「継承」をデジタル上に保管できることを意味します。ホルダーによるコミュニティが拡散していけば新しいブームを起こすきっかけにもなるとBONSAI NFT CLUBは考えています。

なぜ「盆栽×NFT」なのか?

NFTを活用した試みは様々な形で行われています。「映画製作とNFT」「村おこしとNFT」「御朱印とNFT」など数多くの社会実験が全国各地で発生しています。

ここで、「なぜ盆栽とNFTなのか」と疑問に思う人もいるでしょう。

「BONSAI NFT CLUB」のコミュニティマネージャーである「bara」氏はブログやTwitterで情報を発信しています。

引用元:Twitter

bara氏の発信からはBONSAI NFT CLUBの思想を読み取ることができます。ここでは、bara氏の発信から読み取れるBONSAI NFT CLUBの考え方を紹介します。

「まずは盆栽を配ってしまおう!」から始まっている

bara氏は、自らを「植物に支配された男」と紹介しています。盆栽が大好きで、「超クールなもの」ととらえています。ブログでは「真柏」「石化ヒノキ」などを紹介して「カッコいい」「かわいらしい」と評価しています。

引用元:note

bara氏がまず実行したのは、「自腹で盆栽を配る」ことです。盆栽の素晴らしさや楽しさを誰かに体験してもらいたいという強い思い入れが感じられます。

ここには、「素敵なバンドがいるから、ライブ一緒に行こうよ。チケットおごるよ」といった勧誘に感じられる「軽さ」と「どうしても知ってほしい」という想いが共存しています。

bara氏は「自分でも良く意味が分からない」と自虐的につぶやいていますが、盆栽の良さを知ってもらうために自ら行動するという実行力があるのは確かです。

「無料で本物の盆栽が届く」という体験は、「ワクワクする」「面白そう」という感覚を生みます。ここにある「なんだか分からないけどワクワクする」というのはNFTプロジェクトにも共通する感覚でしょう。

bara氏のアカウントは「無料で盆栽を配り始めたらフォロワーが600人に増えた」そうです。「盆栽を配ってしまおう!」という行動に共感した人が多かったと考えられます。

植物」「緑」に触れる機会を増やす

「無料で盆栽を配る」という行動には、「植物好きを増やしたい」「日常で緑に触れる機会を増やしたい」という想いがあったからとbara氏は語っています。

植物は、毎日少しずつ変化していくものです。手間はかかりますが、「育てる喜び」という確かな感覚があります。正しい手順で愛情を持って育てれば植物はその想いに答えてくれます。

盆栽も正しく育てれば一生付き合える植物です。bara氏は「自分が盆栽を配ることで届いた人が盆栽にハマってくれたら、植物の素晴らしさを友人に口コミで話すだろう」と考えています。時間はかかりますが「クチコミ」はジャンルの発展に欠かせないものですので、考え方として正しいと言えるでしょう。

また、bara氏は「日本人は植物や緑に触れる機会がどんどん少なくなっている」ことに危惧を感じています。緑の公園がいつの間にかなくなったり、道路沿いの並木がいつの間にか切られていたりなど、確かに緑は少なくなりつつあります。

そういったなかで、「自分ができる限り、愛する植物をみんなに送ろう」と考えたのが、BONSAI NFT CLUBの始まりです。

「観葉植物」ではなく「盆栽」である価値

引用元:Twitter

ここで、「植物を送りたいなら観葉植物でいいんじゃないか」と考える人もいるでしょう。bara氏は観葉植物でなく「盆栽」だからこそ価値があると考えています。

というのも、盆栽は日本の伝統的な芸術だからです。

盆栽は「自然の風景を模して造形する」という趣味です。植木鉢のなかに「野外にあるような大木の姿」を実現させるというのが盆栽です。ここにあるのは日本人らしい「見立て」の文化です。たとえば日本庭園は「海を見立てたもの」が多いのは良く知られています。茶の湯、浮世絵、歌舞伎なども見立ての文化のひとつです。

近年では海外の人たちから日本文化の良さを教えてもらうことが増えました。YoutubeやTikTokの影響もあり、日本人が当たり前に思っていたものが意外な高評価を受けるようになっています。

そこで改めて「日本らしさ」「日本文化の良さ」を自分が知っているかどうかを問われると、「分からない」というのが正直なところでしょう。日本人が「日本とは何か」を分かっていない状態です。

「盆栽か、あーなんか日本っぽいよね」「和服ね、なんか日本っぽい」という程度でしょう。「そもそも古来から伝わる日本の伝統をもう一回しっかり自分のこととして受け止めよう」とbara氏は考えています。

「盆栽」はNFTそのものである

BONSAI NFT CLUBのプロジェクトは「まじすけ株式会社」によって運営されています。「世界中の次の世代にワクワクを届ける」をビジョンに掲げています。

海外のマーケティング事業のなかで愛媛県の盆栽団体「赤石五葉松輸出振興組合」と提携することになり、愛媛県の盆栽のヨーロッパ展開を2021年からサポートするようになっています。

「盆栽×NFT」というのは冗談のような組み合わせのように思えるかもしれませんが、実際には非常に相性が良いはずだとBONSAI NFT CLUBのファウンダーのひとりであるmajisuke氏は語っています。

盆栽には一つひとつの樹に歴史があります。盆栽は樹齢が100年を超えるものも珍しくなく、保有者は一人ではありません。受け継がれていくなかで育ってきたものです。「誰が保有していたのか」「どうやって育てられたのか」によって盆栽の形は変わります。

受け継いできた先代の意思をつないで次の世代に受け継がれていくのが盆栽です。

「誰が保有していたか」「どう育てられたのか」によって価値が変わるのなら、それはNFTと変わりません。NFTは所有の記録が必ず残ります。ホルダーがコミュニティを育てることで、NFTの価値は変わっていきます。

「NFTは盆栽だ」とファウンダーは語っています。「NFTに込められた思想は、盆栽が歴史を刻むこととリンクする」と言われて納得できる人も多いのではないでしょうか。

NFTの「新しいユーティリティ」を提案している

「NFT」と聞いて真っ先に思い浮かべるのが「人間や動物の横顔の絵」という人は多いでしょう。

人気のあるプロジェクトや話題になるNFTの多くが「PFP」と呼ばれるプロフィール画像に使うためのピクチュアだからです。

引用元:OpenSea

NFTアートの代表的事例として良く取り上げられる「Bored Ape Yacht Club」は典型的な「PFP」です。

NFTのこうした使いみちのことを「ユーティリティ」と呼びます。ユーティリティはPFPだけではありません。たとえば「限定コミュニティへの参加権」がユーティリティになることもありますし、リアルイベントへの招待券や会員証がユーティリティとなるNFTも発行されています。

「BONSAI NFT CLUB」のユーティリティは「盆栽が無料で送られてくること」です。コミュニティに参加して盆栽の育て方を学ぶことができるのも「ユーティリティ」と言えます。

リアルに手にできるものを送って、さらにそれを育成するというのがBONSAI NFT CLUBというプロジェクトですが、これは新しいNFTのユーティリティを提案していると考えられます。

このプロジェクトが成功すれば、「植物を育てる」というユーティリティを持つNFTが新たに生まれる可能性もあります。

第二弾のプロジェクト「BONSAI NFT FARM」

BONSAI NFT CLUBはTwitterのフォロワーが4000人を超えており、一定の評価を受けていると考えて良いでしょう。

実際に盆栽が届いたという人のツイートからは楽しそうな様子がうかがえます。

引用元:Twitter

「盆栽を送ってしまう」というプロジェクトが好評だったことを受けて、BONSAI NFT CLUBでは第二弾のプロジェクトが企画されています。

概要

BONSAI NFT CLUBのプロジェクト第二弾は盆栽園の設立を目指すNFTアートの発行です。「BONSAI NFT FARM」と名付けられたプロジェクトでは、8031体のNFTが発行されます。

引用元:OpenSea

NFT販売による収益を活用して本物の盆栽園を設立して経営しますが、NFT購入者が「オリジナル盆栽のデザイン」や「盆栽園のルール」などを投票によって決めて、盆栽園をコミュニティとともに作り上げていきます。

NFT画像は樹種や樹齢などのパーツを組み合わせたジェネラティブアートで、レアリティが設定されています。

・樹種
「黒松・五葉松・真柏・桜・紅葉・梅・イチョウ」の7種類が用意されています。樹種にはレアリティが存在せず均等に用意されています。

・樹齢
盆栽は成長年数が経過するごとに大きく成長します。BONSAI NFT FARMの樹齢は「3年・10年・50年・200年」の4パターンが用意され、樹齢が上がるごとにレアリティが低くなります。

希少な組み合わせとして、「スペースシャトルから見た宇宙と真柏」「月夜にサラリーマンが未知との遭遇をしている様子と黒松」など4つが存在します。また、「NEO TOKYO PUNKS」や「ぴぴぴ」「onigiriman」「ビットコヌシ」など有名イラストレーターとのコラボも存在します。

豊富なユーティリティ

BONSAI NFT FARMはユーティリティが豊富に提供されます。

  • 保有数に応じたBONSAIを送付
  • BONSAI NFT FARMでの決定権
  • BONSAI NFT SHOPでのオリジナルBONSAIの購入権

NFTの保有数に応じて以下のような権限が付与されます。

保有数と権限

  • 1~9個:FARM HOLDER
  • 10~29個:園主
  • 30~99個:大園主
  • 100個以上:超園主

権限と特典

  • 園主:本物の盆栽を1鉢
  • 大園主:本物の盆栽を1鉢・BONSAI NFT CLUBが制作するオリジナルブランドBONSAIを1鉢
  • 超園主:本物の盆栽を10鉢・BONSAI NFT CLUBが制作するオリジナルブランドBONSAIを1鉢・オリジナルブランドBONSAIのイラストの一点物NFTを1体

BONSAI NFT FARMはNFTの利益を使ってリアルな盆栽園を作ることですが、その際に「盆栽師の選定」や「オリジナル盆栽のデザイン」などの決定権をホルダーに付与します。

BONSAI NFT CLUBではリアル盆栽園の開園のほか、オリジナルのBONSAIブランドを立ち上げることを目標としています。アートBONSAIを制作して、世界に届けることを想定しており、BONSAI NFT CLUBやBONSAI NFT FARMのホルダーのみが購入できます。

「無限盆栽システム」とは

BONSAI NFT FARMでは、10体以上のNFTを保有している「園主・大園主・超園主」に向けて「無限盆栽システム」というユニークなユーティリティを用意しています。

これはその名の通り「無限に盆栽が届く」というシステムです。各シーズンごとにNFT保有数に応じた盆栽が送られます。

NFT所有数と送付数
園主:ミニ盆栽1鉢
大園主:小~中盆栽1鉢
超園主:オリジナル盆栽1鉢

無限に盆栽を送り届けるには仕入れ費用や配送費用などが必要になりますが、BONSAI NFT FARMは資金繰りについても大胆な方策を採っています。

「スポンサーmint」と呼ばれるシステムで、「mint価格よりフロア価格のほうが安いが、もしmintしてくれるなら御社を宣伝します」と企業に「広告案件」として持ちかけるものです。BONSAI NFT FARMが盆栽を届けるとほぼ100%開封されます。つまり、「開封率が高いDMをNFTユーザーに送る」ことが可能です。この開封率の高さによって宣伝効果が見込めるため、興味を持っている企業が数多くあるとBONSAI NFT CLUBはブログで語っています。

まとめ

「NFTを買うとリアルな盆栽が送られてくる」というユニークな活動をしているBONSAI NFT CLUBについて紹介しました。

最後にこの記事をまとめます。

  • BONSAI NFT CLUBのNFTを購入すると自宅に本物の盆栽が届く
  • 育成の仕方はコミュニティ内で学べる
  • 日本で盆栽を育てる人が高齢化して少なくなっていることに危機感を抱いているところから始まったプロジェクト
  • 盆栽を気軽に始めることができ、身近に緑を感じることができる
  • 「誰が保有してどう育てられたのか」が分かるという点で、盆栽とNFTには共通点があると考えている
  • NFTアートを発行する「BONSAI NFT FARM」プロジェクトも立ち上がっている
  • 「無限に盆栽が届く」というシステムもある

BONSAI NFT CLUBが成功すれば、今後は「植物を育てる」というユーティリティを持つNFTプロジェクトが増えるかもしれません。今後の活動に期待しましょう。

Spritz

Spritz

Web3領域を専門とするライター。DeFiやNFT分野への投資経験をもとに、クリプトに関する記事を発信しています。これまでに執筆した暗号資産に関する記事は70本以上。特に関心の強い分野は、セキュリティトークンです。ブロックチェーンによってもたらされる社会変革に焦点を当て、初心者にもわかりやすい記事を心がけています。
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