NFTとは「Non-Fungible Token」の頭文字を取った言葉であり、一般的には「非代替性トークン」と訳されます。
「非代替性」とは一見すると理解し難い言葉に感じられるかもしれませんが、端的に言い換えれば「替えが効かない、唯一無二の存在」といったイメージです。
そして「トークン」はビットコインに代表される暗号資産(仮想通貨)などにおいて利用されている、ブロックチェーン技術を使用して発行された「デジタルデータ」を指します。
つまり、「替えの効かない唯一無二のデジタルデータ」こそがNFTという存在なのですが、日本国内においては2021年頃を境に注目が集まりました。
海外においてNFTアートや、Twitter創業者のジャック・ドーシー氏のツイートが高額売買されたことは、まだ記憶に新しいかもしれません。
このようにデジタルデータに唯一性を持たせられるNFTですが、現実世界とリンクさせた商品があることをご存知でしょうか。
今回の記事では、そんなNFTと日本を代表するお酒「日本酒」がコラボした事例である「雷鳥」というコレクションを紹介します。
ぜひ最後までご覧ください。
この記事の構成
NFT日本酒とは何か
NFT日本酒と聞いた時、以下のような疑問を持たれた方もいらっしゃるかもしれません。
「NFTってデジタルデータなのに、日本酒と何の関係があるの?」
確かにNFTは画像や音楽といった、通常パソコンやスマホ画面を通してのみ確認できるデータが一般的です。
NFT日本酒もそのような例に漏れず、基本的にはNFTアート(画像データ)をマーケットプレイスで購入することとなりますが、その後の流れが特徴となります。
NFTアートを購入したホルダーは、所有しているアートがボトルにデザインされた世界で唯一の日本酒を購入できるのです。
つまり、デジタルデータである唯一無二のNFTアートを所有しながら、そのデザインがボトルに印刷された唯一無二の日本酒も現実世界で楽しめるという訳です。
このようにNFT日本酒はデジタルと現実世界をリンクさせ、さらに日本酒も味わうことのできるといった、通常のNFTアート作品とは一風変わった特徴を持っています。
合同会社VUIKU内のプロジェクト
NFT日本酒「雷鳥」は、国内外のスタートアップや起業家を支援するインキュベーションファンドである合同会社VUIKU内のプロジェクト「hummingbird」が運営しています。
「hummingbird」は以下の3名が中心となって運営されており、全員が20代前半と非常にフレッシュなチームです。
- 須田 隆太朗氏:hummingbird代表
- 青山 奈津美氏:CO.NECT東京大学ブロックチェーン起業家支援プログラム4期生
- 林 宋其氏:東京藝術大学美術学部デザイン科3年
NFTのようなデジタル技術の最先端を20代の若者達が牽引する例は珍しくありませんが、「雷鳥」のように日本酒を絡めた例は珍しいと言えるかもしれません。
このコレクションは、若者を中心に日本酒を呑まなかった層に対して日本酒を知る、好きになるきっかけを与えたいとしています。
今回のプロジェクトを元にして、今後どのような革新的なコレクションを展開するのか注目です。
全1,152種類のコレクションを展開
NFT日本酒「雷鳥」のコレクションは全1,152種類の展開となっています。
日本の暦である「二十四節気」を元に、24パターンの背景色を展開し、それぞれコレクション名である雷鳥のアートがデザインされています。
雷鳥は日本国内において特別天然記念物として指定されており、別名「神の鳥」とも呼ばれています。
外見は丸い羽毛と力強い脚部が特徴的で、標高2,000mを超える山岳地帯に生息しています。
林 宋其氏がそんな雷鳥の特徴を活かしながら、帽子やヘッドホン、ネクタイにキセルといったアイテムを持たせた可愛らしいデザインに仕上げました。
岐阜県の地酒を使用
雷鳥は岐阜県の県鳥でもあります。
このことから瓶詰めされる日本酒は、岐阜県飛騨市に蔵を構える「渡辺酒造」が提供しています。
創業150年を超える老舗の酒蔵であり、飛騨山脈の伏流水を仕込み水に使用し、地元米である「ひだほまれ」を中心に醸した銘柄「蓬莱」は全国的に有名です。
ANAファーストクラスでも提供される実績を持ち、その造り技術はもちろん日本酒の質は間違いありません。
このことから、NFTコレクターはもちろん日本酒を目的とした購買でも十分に満足できる内容となっているでしょう。
また「雷鳥」コレクションの売上10%は飛騨地域へ寄付するとしており、地域への還元も目指しています。
今後コレクションオーナーへ向け、飛騨高山の築100年の古民家を改装したゲストハウスでのオフ会、渡辺酒蔵でのツアー等飛騨地域の活性化に繋がる企画を計画していくとしています。
「雷鳥」の購入方法
通常のNFTコレクションであれば、マーケットプレイスからの購入が通常となりますが、「雷鳥」は以下の2通りの購入方法が存在しています。
- Open SeaからNFT購入後に日本酒が届く
- 公式Webサイトから日本酒購入後にNFTが配布される
どちらの方法でもNFTアートと、所有するアートがデザインされた日本酒が届くことに違いはありません。
始めの手順が異なるだけですが、それぞれの方法を解説していきましょう。
Open Seaから購入する場合
「雷鳥」コレクションは、世界最大のマーケットプレイスである「Open Sea」にて販売されています。
コレクションURL:https://opensea.io/collection/nft-sake-thunderbird
任意のコレクションを購入後は、Discord内の独自サーバへ接続する必要があります。
Discord内の「ホルダー認証チャンネル」から「雷鳥」コレクションを保有していることを承認します。
承認が完了しましたら、同サーバ内に開設されている「shipping-address チャンネル」より、日本酒の配送先を入力します。
その後約1週間程度で配送先に指定した住所へ、購入したNFTアートが印刷された日本酒が届きます。
Webサイトから購入する場合
「雷鳥」公式Webサイトからでも、NFTアートを選択できます。
公式WebサイトURL:https://www.nft-sake.com/
Open Seaのようなマーケットプレイスとは異なり、通常のECサイト感覚でラベルに印刷するアートを選択し購入します。
その後購入時に登録したメールアドレスへ、NFTアートを紐付けるためのウォレット登録フォームが届きます。
指定フォームへ必要事項を入力すれば、登録したウォレット宛に購入したNFTアートが届く流れとなります。
Discordの利用がおすすめ
前述したどちらの購入経路でも、最終的に所有するNFTアートに連動する日本酒が届くことには変わりません。
しかし、その後のオーナー特典などを利用するためには、Discordを利用した方が便利でしょう。
Discordの独自サーバ内では、さまざまなお知らせはもちろん、オーナー同士でコミュニケーションが取れる場が用意されています。
またオーナー限定で飛騨高山にあるワーケーション旅館を50%オフで利用、酒蔵見学を伴うオフ会など様々な特典を受けられます。
さらに日本酒の購入は1度きりではなく、NFTアートを所有している間は追加注文が可能です。
本数をまとめて注文するごとに、1本あたりの値段は以下のように安くなります。
- 1〜5本:7,000円/1本
- 6〜11本:5,280円/1本
- 12本〜:4,400円/1本
追加注文自体は公式Webサイトから依頼することになりますが、Discord内でのコミュニティへの参加はNFTオーナーとしての体験価値を得ることに繋がるでしょう。
実際に購入した所感
実際に「雷鳥」コレクションを1点購入してみました。
購入経路はOpen SeaからNFTアートを先行して選ぶ形を取りましたが、こちらは通常NFT購入時と手順は変わりませんので特に手間取ることはありません。
その後Discordでのホルダー認証も指定される手順通りに進めれば、大きく手こずることはないと感じます。
「shipping-address チャンネル」での入力事項にて、一部不明な部分がありましたのでDiscord内で質問してみましたが、5分と経たずにはっきりとした返事をもらえました。
サポート体制もしっかりしていますので、NFTの購入自体が初めてという方でも比較的安心して購入できるコレクションだと言えるでしょう。
その後、自身が注文した日本酒の郵送連絡は、Discord上の「雷鳥旅立ち状況」にて確認できます。
注文から1週間程度で届くと記載されていましたが、実際には2日後には自宅に届きました。
住んでいる地域によっても差があるかもしれませんが、全国どの地域でも記載の通り1週間程度で届くかと思われます。
日本酒自体は醸造アルコールを使用しておらず、国産の米と米麹だけを使っています。
精米歩合は55%となっており、ボトルに記載はありませんが分類的には「純米吟醸」と呼べるでしょう。
度数は15度と加水されており、栓部分の印字には渡辺酒造の代表銘柄「蓬莱」の文字があります。
老若男女別け隔てなく飲める味に仕上がっている印象を持ち、様々な温度変化が楽しめる日本酒だと感じます。
4合瓶(720ml)での展開ですので、複数人で楽しむことを考えた場合は数本注文しても良いかもしれません。
価格自体は1本あたり約10,000円と、日本酒としては最上級に位置します。
しかし通常の日本酒では感じることの出来ない購入体験、ラベル自体への価値創造、その後のホルダー同士での交流などを考えれば、その価格には十分価値があると言えるでしょう。
まとめ
合同会社VUIKU内のプロジェクト「hummingbird」が展開する、NFT日本酒「雷鳥」を紹介しました。
このプロジェクトの最終目標は、「雷鳥」購入者の全員が飛騨地域に足を運ぶこととしています。
そのためにホルダー向けのワーケーション旅館割引クーポンの配布や、酒蔵見学などのオフ会を今後充実させていくでしょう。
このようなNFTを通じた地域創生、活性化は今後も増えていくことが考えられます。
さらに、飲み手が減少していると言われる日本酒業界へも、大きく影響を与えるかもしれません。
NFT日本酒「雷鳥」は2022年10月1日に販売が開始されたばかりですので、今後のさらなる展開、企画内容の増強などに期待すべきと言えるでしょう。