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「Brave」とは?暗号資産と連動したブラウザについて解説

解説系記事

ブロックチェーン技術は、ウェブブラウザのビジネスモデルをも変えようとしています。従来のウェブブラウザは、広告費を主な元手として運営されていました。しかし、ユーザーに最適な広告を配信する名目で個人情報の収集が行われており、プライバシー保護の観点からたびたび問題視されてきました。そこで、プライバシーの問題を解消するために登場したウェブブラウザが「Brave(ブレイブ)」です。ブロックチェーン技術の仕組みを導入し、これまでにない新しいビジネスモデルを実現しました。

この記事では、Braveの特徴や仕組みについて紹介します。

Braveとは?

Braveは、ブロックチェーン技術を組み合わせたインターネットブラウザです。Google Chromeなど大手ブラウザに比べて利用者は少ないものの、以下の理由から注目を集めています。

米Brave社が開発したウェブブラウザ

Braveの開発を手掛けた企業が、アメリカのBrave software社です。このBrave software社は、JavaScriptの生みの親であるBrendan Eich(ブレンダン・アイク)氏によって設立されました。Brendan Eich氏はインターネットの黎明期から活躍している業界の重鎮であり、彼が手掛けるBraveのプロジェクトは大きな注目を集めています。

Braveは、ウェブブラウザのオープンソース「Chromium」を基盤に開発されました。このChromiumはGoogle Chromeでも採用されているため、アプリの外観や基本的な操作方法はGoogle Chromeと共通です。加えて、Google Chrome用拡張アプリの流用もできます。そのため、既存ブラウザからの乗り換えも容易です。

暗号資産ウォレットが組み込まれている

Braveには、ブラウザ内にあらかじめ暗号資産(仮想通貨)ウォレットが組み込まれています。Braveは基軸通貨として独自にBAT(ベーシックアテンショントークン)という銘柄を発行しており、このBATをBraveのブラウザのみで管理できます。

内蔵型ウォレットのメリットは、セキュリティや操作性に優れる点。Metamaskのような拡張アプリでは偽のアプリが出回ったり、送金の手順が複雑であったりという課題があります。一方でBraveでは、暗号資産ウォレットの利用を前提に設計されており、拡張アプリにおける懸念事項が解消されました。

プライバシー保護が重視されている

Braveではプライバシー保護に重点が置かれており、ユーザーの閲覧履歴が厳重に秘匿されます。「Brave Shields」という遮断システムが備わっており、第三者によるトラッキングや位置情報の読み込みはできません。加えて、セキュリティの高い接続の方式「HTTPS」を自動で適用できます。HTTPSによる接続によって、パスワードの漏洩をできるだけ防止できます。

また「Tor(トーア)ブラウザ」という匿名性を高める手法によって、IPアドレスや位置情報の秘匿も可能です。Torの匿名化技術とBrave ShieldsBraveの組み合わせにより、第三者がユーザーの閲覧記録を入手できない仕組みになっています。このように、Braveではユーザーのプライバシー情報が外部には発信されず、安心してインターネットを閲覧できるのです。

表示速度が早い

Braveは、ウェブページの表示速度が高速です。広告配信に要するデータ通信を自動で遮断しており、通常のブラウザと比較して高速化を実現しています。

一般的なブラウザでは、絶えず広告配信やトラッキングに通信データを費やしています。加えて広告配信に要する通信は、バッテリーの消費速度を早める原因にも。一方でBraveでは、「Brave Shields」によってウェブサイトに掲載されている広告をブロックします。

従来のインターネット環境では、ユーザーの好みに合わせた広告を配信する目的で、ユーザーに関する情報がサイト運営者に送信されていました。例えば、サイトの閲覧履歴や位置情報、年齢層といった情報が大手テック企業やサイト運営者に提供されています。しかし近年では、水面下で行われる個人情報の収集に疑問視する声も。加えて、ユーザーの意に反して次々と広告が表示される仕組みも問題です。不要なポップアップや点滅する広告によって、ユーザーは絶えず注意力を奪われるからです。

データ消費やプライバシーの問題を解消するため、Braveは広告を自動で遮断する手法を採用しました。これによりウェブページの表示速度の高速化だけでなく、プライバシーの保護やサイト表示の簡素化を実現しています。

BAT(ベーシックアテンショントークン)の用途

BAT(ベーシックアテンショントークン)はERC-20のトークンであり、Braveブラウザにおける基軸銘柄です。Braveの経済圏は、このBATの流通によって支えられています。ここでは、BATの用途を紹介します。

広告の閲覧でトークンを得られる

Braveにおける独特の広告制度が、「Brave Rewards」です。ユーザーはウェブブラウザ上で広告を閲覧すると、BATを得られます。Braveでは原則的に、広告が表示されません。しかしユーザーが同意した場合に限り、Braveの独自広告が表示されます。ユーザーが広告の表示を受け入れて閲覧した際に、トークンが支給される仕組みです。

Googleなど既存のウェブブラウザでは、広告主が支払った広告費用は全てメディア運営者の収益になります。これに対してBraveブラウザの場合、広告主が負担した費用の一部が、広告を見たユーザーに還元されます。

もちろん、Braveで表示される広告はプライバシー保護が重視されており、トラッキングされる恐れはありません。また広告はウェブサイトの画面には表示されず、プッシュ通知にて配信されます。つまり、ユーザーが意図してアクセスしない限り、広告が表示されない工夫も施されています。

クリエイターに直接トークンを送れる

Braveでは、ウェブサイトの閲覧者から作成者に対して直接BATを送付できます。これにより、動画やブログ記事の投稿者へチップを渡すことも簡単です。

有料のメディア媒体を除いて、従来のウェブサイトでは広告収益が主要な活動資金でした。そのため、ウェブサイトはさまざまな形式の広告で溢れかえっています。一方でBraveなら、サイト閲覧者から簡単にBATを受け取れる仕組みがあり、広告収益に依存しないサイト運営も可能です。

Braveには、サイト閲覧者のトークン送付を支援する機能「オートコントリビューション」があります。オートコントリビューションを用いると、ユーザーの閲覧時間や訪問頻度に応じて、寄付すべき金額の目安が表示されます。訪問したサイトごとの割合も自動的に計算されるため、所有するBATの効率的な分配が可能です。

DeFiでの運用ができる

BATは一般的なトークンと同様に、DeFiによる運用も可能です。CompoundやAaveなどの主要DeFiプロジェクトではBATを扱っており、通貨ペアも豊富に用意されています。加えてBinanceのような大手取引所では、BATのレンディングサービスにも対応しています。

eコマースでの支払いができる

BATは、オンラインショッピングにおける決済手段としても用いられます。Braveには公式オンラインストアが存在し、BATの支払いによって日用品の購入が可能です。またBATは、ブロックチェーンゲームにおける基軸通貨としても活用できます。これにより、ゲーム内での課金やNFTアイテムの取引においてBATを利用できます。

Braveが抱える課題

Braveは、従来のウェブブラウザにおけるビジネスモデルを変えようとしています。今後のインターネット業界を変革させる可能性も秘める一方で、さまざまな課題も抱えています。

収益源を広告費に依存している

Braveは広告の排除を目的としているにもかかわらず、収益源を広告費に依存しています。Braveでは一般の広告表示を遮断する代わりに、自社が獲得した広告案件を配信します。出稿された広告費用のうち30%が、Braveの取り分です。しかし、Braveは広告を嫌う顧客向けに開発されたウェブブラウザであり、広告収益に頼るビジネスモデルに対して疑問視されています。

加えて、既存の広告を遮断し自社が配信する広告に差し替えている点も問題です。オリジナルのコンテンツは、既存の広告主が負担した費用によって製作されています。それにもかかわらず、コンテンツのみを流用しBraveの独自広告に差し替える手法には、倫理的な問題が付きまといます。

暗号資産の未利用ユーザーにとって使いにくい

Braveは、BATの利用を中心として設計されたウェブブラウザです。そのため、画面には暗号資産の操作ボタンが並んでいます。暗号資産に馴染みがないユーザーにとっては余計なボタンが多く、操作性を悪化させています。

大多数のインターネットユーザーは、暗号資産に関する知識を持っていません。そのため、暗号資産を基盤にしたBraveを使いこなすには他のウェブブラウザよりも高いハードルが存在します。

Braveの特徴や注目される理由のまとめ

ブロックチェーン技術を基盤にしたウェブブラウザ「Brave」を紹介しました。このBraveには、以下の特徴があります。

  • ウェブ上の広告が自動で遮断される
  • 独自トークン「BAT」を介して、コンテンツの製作者へ直接チップを渡せる
  • Braveが配信する独自広告を閲覧すると、BATを得られる

ブロックチェーン技術の導入によって、Braveの革新的なビジネスモデルが実現しました。Braveが普及すれば、従来のインターネット広告市場には大きな変革が訪れるでしょう。一方で懸念点も多く抱えており、Braveの掲げるビジネスモデルが成功するかはわかりません。ブロックチェーン技術を用いたウェブブラウザについて、今後の動向が注目されます。

段巴亜

dan

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