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エンタメ業界におけるNFTの使い道とは?注意点や活用事例を紹介します

解説系記事

世界中の企業が、エンタメ業界におけるNFTの活用方法を模索しています。エンタメは、IP(知的財産)やデジタルコンテンツから収益を得ている産業です。よって、デジタルデータの記録や取引に強みを持つNFTは、エンタメ産業との相性が良いと言えるでしょう。

ブロックチェーン技術が大衆にまで普及した暁には、NFTを介してさまざまなエンタメサービスが提供されるかもしれません。この記事では、エンタメ業界におけるNFTの活用方法や注意点に焦点を当てつつ、ビジネスでの実例を紹介します。

エンタメ業界でNFTを活用する意義

映画や音楽、イベントなどエンタメ業界は裾野の広い産業です。また近年では、電子書籍やストリーミング配信のように、デジタルデータが活用される場面も増えてきました。このようなエンタメ産業にNFT技術を取り入れた場合、どのようなメリットを享受できるのでしょうか。ここでは、エンタメ産業にNFTを導入する意義を紹介します。

ファンとの関係性を可視化できる

NFTを活用すれば、コンテンツ制作者とファンとのつながりを可視化できます。

映画や音楽などは、不特定多数に向けて配信される大衆向けのコンテンツです。よって、配信会社は自社のファンをなかなか特定できません。このような背景から、エンタメ産業では顧客に対するターゲットマーケティングが困難でした。

これに対してNFTを用いると、自社のファンを容易に特定できます。例えば、オリジナルコンテンツの限定NFTを配布した際に、このNFTを受け取ったウォレットは自社のファンのものだと推測できるからです。このウォレットアドレスの取引履歴を分析すれば、ファンの年齢層や消費動向といったマーケティング情報も入手可能です。

このように、自社のファンと強固な関係を築く上で、NFTは重要な役割を果たします。

コミュニティでファンと交流できる

NFTを軸としたコミュニティによって、コンテンツ制作者がファンと身近な距離で交流できます。

Web3の醍醐味は、オンラインコミュニティを通じた主催者とファンとの対話です。主催者がファンからの質問にリアルタイムで回答するなど、ユーザーとの距離感の近さが魅力となっています。また自社のファンに向けてNFTを発行すれば、NFT保有者のみが閲覧できるプライベートコミュニティの開設も可能です。これにより、ファン同士の仲間意識も高められるでしょう。

NFTの導入によって、コンテンツ制作者やファンたちの間に一体感が生まれます。

ファンから活動資金を集められる

海外のWeb3プロジェクトでは、NFTの販売によってコンテンツ作成に必要となる資金を世界中のファンから調達しています。

Web3プロジェクトの発足時には、特定の目標が掲げられます。この目標を達成するため、資金集めの手段としてNFTが販売されることも。そして、プロジェクトの趣旨に賛同した世界中の投資家がNFTを購入します。言い換えれば、NFTが株式と似た役割を果たしています。

映像や音楽作品などのコンテンツ制作には、多額の資金が必要です。そのため、零細企業や個人など資金力の乏しいクリエイターは、なかなかエンタメ産業に参入できません。このような課題を解決する手段として、NFTは有効です。ただし、日本国内においては法令の観点から、資金調達のみを目的としたNFTの発行はできません。

ファンに対して特典を付与できる

自社への貢献度が高いファンに対して、特典(ユーティリティ)の付与が可能です。

ブロックチェーンの記録を遡れば、熱心に活動するファンのみを抽出できます。これらのロイヤルカスタマーに対して、特典付きのNFTを送付できます。また、特典付きのNFTをどのウォレットが保有しているかは、第三者からも識別が可能です。そのため、ファン同士でプロジェクトへの貢献度を競わせることもできます。

このように、ファンに対して利益の還元ができるため、ロイヤリティ(忠誠心)の向上が期待できます。

ファンが主体的に運営をサポートする

NFTの配布によって、ファンが主体的にプロジェクト運営に協力するようになります。

Web3の世界では、NFTの保有者もプロジェクトに携わる一員です。したがって、ファンによる積極的な貢献を期待できます。実際に多くのWeb3プロジェクトでは、NFT保有者が自主的に広報役を担うなど、プロジェクトを盛り上げるために運営に協力しています。

このように、ファンが主体的に関与する風潮は、NFT文化ならではと言えるでしょう。運営者とファンが共通の目標に向かって歩む「プロセスエコノミー」に最適な技術です。

デジタル情報に付加価値が生まれる

NFT技術によって、デジタル情報に希少価値やブランド力を付与できます。

従来のデジタル情報は無制限にコピーができるため、オリジナルデータに価値はありません。よって、音楽や画像などのデジタルコンテンツにも希少価値はありませんでした。

これに対してNFTを用いれば、デジタルデータで「数量限定商品」や「オリジナルコンテンツ」を提供できます。オリジナル品の真贋については第三者でも鑑定ができるため、オンライン上で取引されるエンタメコンテンツがより高い価値を持つようになります。

交換や二次流通取引ができる

NFTの強みは、交換や取引が容易な点です。ブロックチェーン上にデータが記録されているため、プラットフォームに左右されずに取引ができます。

また、NFT取引では二次流通による収益の一部がNFT発行者にも還元されます。そのため、たとえ中古市場での売買であっても、版権の所有者は収益の獲得が可能です。このNFT技術を用いれば、電子書籍や音楽データといったデジタルコンテンツの二次流通マーケットも創出できるでしょう。

トークングラフを形成できる

ファンに対してNFTを配れば、自社の顧客に関するトークングラフの作成が可能です。

トークングラフとは、暗号資産ウォレットから読み取れるユーザーの消費行動を指します。例えば、アクション映画の上映記念として来場者に対して記念NFTを配布すれば、来場者の暗号資産ウォレットの特定が可能です。その上で、そのウォレットが保有するNFTを分析すると、年齢層や性別、消費の傾向を分析できます。

トークングラフを活用すれば、ユーザーの氏名や生年月日といった個人情報を得ることなく、プライバシーに配慮した状態で顧客データを集められます。

エンタメ業界におけるNFTの使い道

エンタメ業界では、すでにいくつかの用途でNFTが導入されています。ここではNFTの導入事例と共に、NFTがもたらすメリットを紹介します。

公演のチケット

NFTは、ライブやコンサートのチケットとして活用できます。

既に、世の中にはデジタルチケットが普及し始めています。そのような中でNFTチケットを導入する意義は、真贋証明が簡単になるからです。誰もがブロックチェーンの情報にアクセスできるため、チケットの偽造品を容易に排除できます。同時に、NFTチケットは所有者を証明する手段としても有効です。チケットの所有者が明白であるため、二次流通市場においても安全な取引を実現できます。

また、二次流通によって発生した収益の一部が、チケット発行者に還元される点も強みです。人気アーティストのライブチケットでは、定価よりも転売価格の方が高騰しているケースもあります。しかしながら、仮に高値で取引されたとしても、チケット発行者側には金銭的な利益がありませんでした。このような市場環境において、NFTチケットであれば、二次流通で発生した金額の一部が主催者側へ還元されます。

来場記念NFT

コンサートやイベントの会場で、来場者に対して記念NFTを配布するといった使い方も可能です。限定グッズとして発行すれば、ファンに対して来場するモチベーションを提供できます。しかも、キャンペーンの実施にあたって、コストはほとんど掛かりません。

この記念NFTのメリットは、自社のファンを容易に特定できる点です。さまざまなイベントにおいて記念NFTを配布していけば、自社にとって貢献度の高いユーザーを発見できます。熱量の高いファンに対してクーポンを送付するといったプロモーション施策も展開できるため、ターゲットマーケティングの際に効果を発揮します。

ファンクラブ会員証

NFTは、ファンクラブの会員証としても機能します。

会員証をNFT化するメリットは、ファンサイトの設計が容易になるからです。従来のファンクラブの場合、IDやパスワード、氏名といった顧客情報をサーバー側で管理する必要があり、ファンサイトの構築には一定のコストが掛かっていました。

これに対してNFT会員権の場合、ログイン時に確認する情報は「NFT保有の有無」だけです。そのため、主催者が個人情報を管理する必要はありません。これにより、誰もが手軽にファンクラブを設立できます。

加えてNFT会員証には特典を付与できるため、ファン限定のクーポンやオリジナルコンテンツの提供も簡単です。また、NFTの売買によって会員資格も他者に譲渡されるため、ファンクラブ会員権の二次流通市場が誕生するかもしれません。

音楽や映像の所有権

NFTの技術を用いれば、音楽や電子書籍といったデジタルコンテンツをユーザー自身が保有できます。

従来のデジタルコンテンツでは、厳密にはユーザー側にコンテンツの所有権が与えられていませんでした。例えば、電子書籍を購入したとしても、アカウントが削除されたりサービスが終了したりすると、もう電子書籍を読むことはできませんでした。

これに対してNFTの場合、ユーザー側にNFTの所有権があるため、プラットフォームに依存せずにコンテンツを保有できます。また、コンテンツを転売した場合には収益の一部が運営者にも還元されるため、運営者にとってもメリットがあります。

エンタメ業界でNFTの活用に取り組む企業

ここまで紹介したNFTの活用事例について、既にいくつかの企業が事業化に挑戦しています。さらに、エンタメ事業でのNFT展開を見据えて起業した有望なスタートアップも登場しました。ここでは、エンタメ業界でNFTの展開に取り組む国内企業を紹介します。

LINE Xenesis株式会社

LINE Xenesis株式会社は、暗号資産事業を展開するLINEのグループ会社です。

LINE Xenesisでは、エンタメ専用のブロックチェーン「AVA(エイバ)」を活用してエンタメコンテンツのNFT展開を進めています。実際に、韓国の音楽グループ「TREASURE」や「ATEEZ(エイティーズ)」の特典付きNFTを発行しました。

株式会社チケミー

株式会社チケミーは、チケットのNFT化に取り組む日本のWeb3スタートアップです。チケットのみならず、「権利」や「コンテンツ」などあらゆる価値のNFT化に取り組んでいます。

チケミーの狙いは、NFT技術による流動性の向上です。コンテンツのNFT化によって、誰もが簡単に商取引へ参加できる世の中を目指しています。また、二次流通市場で収益の一部がNFT発行者にも還元される仕組みを活かして、転売や中古市場の活性化を模索しています。

microverse株式会社

microverse株式会社は、NFTプロモーションを展開する日本のWeb3スタートアップです。

映画やコンサートの場で記念NFTを発行するなど、NFT技術を駆使した営業戦略を得意としています。実際に、映画『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』では記念NFTを販売するなど、大手のプロジェクトにも採用された実績があります。

この他に推進するもう一つの事業が、NFTを活用したクラウドファンディングプラットフォームの運営です。このサービスでは、運営者とファンとの関係構築をNFTを介して支えています。

エンタメ業界向けにNFTを導入する際の注意点

エンタメ業界向けにNFT導入を考える際は、いくつか注意すべき項目が存在します。これらの注意点を軽視したまま開発を進めてしまうと、思うようにサービスが普及しません。NFT施策が失敗に終わらぬよう、以下の点に注意しましょう。

コンテンツ本来の面白さを追求する

NFTの導入自体が目的になってしまうと、本末転倒です。そこで、「NFTによって自社コンテンツの魅力をいかに引き出せるか」を考えなければなりません。例えば、「過去のイベントで配布した記念NFTを持つファンに対して、限定グッズを進呈する」など、NFTの特性を生かしたサービスが求められます。

また、マス層向けにサービスを展開する場合、技術的な革新性をアピールしてもそれほど効果がありません。むしろ、ユーザー側のメリットを端的に説明した方が、サービスが浸透しやすい傾向にあります。

誰もが扱いやすい設計を目指す

暗号資産ウォレットやトークンなどの難しい操作が必要なサービスは、マス層のユーザーには受け入れられません。そこで、ブロックチェーン特有の操作を可能な限り排除する必要があります。具体的には、以下の要素が挙げられます。

  • 暗号資産ウォレットのセットアップ
  • ガス代の支払い
  • ブロックチェーンネットワークの選択

上記の項目を無くすため、Web2の仕組みを織り交ぜながらシステム設計をすべきです。これによりWeb3ならではの強みが薄れてしまうものの、マス層向けのサービスにおいては操作性のよさは欠かせません。

加えて、「ブロックチェーン」や「NFT」といった専門用語もできる限り排除しましょう。
例えば、「NFT」ではなく「デジタルグッズ」と呼称するなど、サービスの特徴をわかりやすい言葉で伝える必要があります。

過度なユーティリティを付与しない

NFTにユーティリティ(特典)を付与する場合は、法令や市況を考慮しなければなりません。

まず注意すべき法令が、金融商品取引法です。例えば、プロジェクトによって発生した収益の一部をNFT保有者に還元すると、NFTが「有価証券」に該当すると見なされます。他にも、希少価値の高いNFTがランダムで発行されるケースでは、景品表示法や賭博罪に抵触する恐れがあります。NFTを発行する際は、これらの関連法規に対する注意が欠かせません。

また、ユーティリティばかりが注目を集めると、転売を目的とした投機筋も流入してきます。もしNFTの争奪戦が過熱すると、本来ターゲットとしていたファン層が離れてしまいます。よって、市場が過熱しないように、ユーティリティの内容や価値をコントロールしなければなりません。

エンタメ業界におけるNFT活用法のまとめ

本記事では、エンタメ業界におけるNFTの活用方法や意義について解説しました。最後に、エンタメ業界でNFTを導入するメリットをまとめます。

  • 運営者とファンとのつながりを可視化できる
  • オンラインコミュニティを中心とした盛り上がりを生み出せる
  • NFTの二次流通によって、運営者も手数料収入を手にできる

まだ模索段階ではあるものの、さまざまな企業がエンタメ業界にNFT技術を導入しようと取り組んでいます。本記事を参考にして、自社のエンタメ事業にNFT技術を導入してみましょう。

段巴亜

dan

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