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【時価総額TOP20】ダイ(DAI)について徹底解説

解説系記事

ダイ(DAI)は2023年7月21日時点で時価総額第19位の暗号資産(仮想通貨)です。代表的なステーブルコインの一つであり、最近では取り扱いを始める国内取引所が増えてきています。

ダイはイーサリアムのブロックチェーン上で発行され、管理者のいない非中央集権的な仕組みで稼働しています。近年のテザー疑惑や、テラ暴落、SECの訴訟などでステーブルコインに対する不信感が高まる中で、着実に信頼を得て成長してきました。

本記事では、ダイの誕生から現在までの歴史や特徴、将来性や値動きなどを解説していきます。

ダイ(DAI)と他のステーブルコインの違い

引用:https://makerdao.com/ja/ecosystem

ダイと他のステーブルコインとの違いとしては、以下が挙げられます。

  • 法定通貨を担保としない
  • 担保を預けることで誰でも発行できる
  • MakerDAOというプロジェクトが提供するプラットフォームで発行される
  • プラットフォームではルールに基づいて自動で処理される
  • 担保の価値が下落すると強制決済される

ダイは暗号資産を担保としていることが特徴です。一般的に暗号資産は値動きが激しく、ステーブルコインの裏付けとなる資産としては向いていないとされていますが、ダイは「過剰担保」「強制決済」「メイカーによる補填」3つの仕組みでカバーしています。

これら3つの仕組みについては、ダイの技術的特徴の見出しで詳しく解説します。

ダイ(DAI)の誕生から〜現在までの歴史

引用:https://makerdao.com/ja/

ここでは、ダイの誕生から現在に至るまでの歴史を紹介していきます。

創設者

ダイを発行するプラットフォームを運営するMakerDAOの創設者は、デンマーク人のルーン・クリステンセン氏です。似た言葉にDAO Makerという暗号資産がありますが、まったくの別物なので注意しましょう。

MakerDAOのプロジェクトの発足は2014年頃で、2017年末頃からダイが発行され始めました。現時点で、ダイの発行枚数は46億枚を超えています。

MakerDAOの運営は、すでに暗号資産メイカーを保有する人達で構成されるDAO(分散型自立組織)に引き継がれました。しかし、依然としてクリステンセン氏の影響力は大きく、コミュニティ内で「ダイの担保資産からUSDコインを除外すべき」「リスク回避のために米ドルからデペッグすることを検討すべき」などと発言し、物議を醸しています。

特に、リスク回避のために米ドルからデペッグすべきという主張は、ダイの存在意義を根底から覆すため、コミュニティ内では批判が集まっているようです。今後もクリステンセン氏の発言には注目していきましょう。

運営チーム

MakerDAOが発足した後は、クリステンセン氏がCEOを務めるメーカー財団に開発が引き継がれ、現在はDAOによって運営されています。

DAOとは分散型組織の略称であり、ガバナンストークンの保有者により意思決定や運営が行われる特徴があります。MakerDAOは暗号資産メイカーを保有する人たちによって構成され、「1MKR=1票」として今後の方向性を決める投票に参加することが可能です。

出資者

世界最大級のベンチャーキャピタルに関するデータベースである「CrunchBase」は、MakerDAOが2017年9月から2019年12月までで、合計7,950万ドル(約112億円)を集めたことを伝えています。

ダイの時価総額が2022年に急上昇したように、MakerDAOはステーブルコインの中でも比較的うまくいっているプロジェクトといえるでしょう。数年前までは出資を受けていましたが、現在は積極的に出資を行う立場に回っています。

2022年10月には5億DAI(当時約725億円)を米国債に投資、16億ドル(当時約2,360億円)を暗号資産取引所コインベースの資産運用部門で運用を行うなど、新たな計画を発表しました。

ダイ(DAI)の目的

ダイは、法定通貨の米ドルと価値が連動するように作られたステーブルコインです。ステーブルコインの用途としては以下が挙げられます。

  • 価値の保存
  • 決済手段

ステーブルコインは担保に裏付けされた暗号資産で、法定通貨のように利用可能です。例えば、ビットコインが値上がりした際にダイやUSDコインなどに替えると、米ドルと同等の価値を持ち続けられます。

また、ステーブルコインはブロックチェーン上で発行されるトークンであり、全世界に瞬時に送金できることも特徴です。これは法定通貨にはない特徴であり、銀行を用いて国際送金するよりもはるかに簡単な手順で完了します。

ダイ(DAI)の技術的特徴

引用:https://summer.fi/borrow

次に、ダイの技術的特徴について解説していきます。

イーサリアムのトークン規格「ERC-20」の暗号資産

ダイはERC-20の規格に準拠したトークンです。ERC-20とは、イーサリアムのブロックチェーン上で発行されるトークンの規格の一つであり、主に以下の機能を実装しなければなりません。

  • トークンの総供給量(供給上限がなくても問題ない)
  • 特定のアドレスが保有する量の表示
  • 送金

ERC-20規格のステーブルコインは、主に以下の種類があります。

  • ダイ
  • テザー
  • USDコイン

上記以外にも「ラップドビットコイン」「ラップドイーサリアム」など、暗号資産の価値と連動することを目的としたステーブルコインも含まれます。

担保を預けることでダイ(DAI)を自由に発行できる

ダイは暗号資産を担保とするステーブルコインであり、発行上限が決められていません。MakerDAOが提供するプラットフォームである「summer.fi」に行き、保有する暗号資産を預けることで誰でも入手できます。

ダイを発行する際、担保にできる主な暗号資産は以下の通りです。

  • イーサリアム
  • チェーンリンク
  • ベーシックアテンショントークン
  • ポリゴン
  • USDコイン

ダイはもともとイーサリアムのみを担保としていましたが、2019年11月にベーシックアテンショントークンが採用され、複数の暗号資産に対応できるようになりました。

なお、ダイを発行した後に再び暗号資産に戻したい場合は「安定化手数料」というコストを支払わなければなりません。安定化手数料は、保有している期間やMakerDaoが定める割合などによって変動します。

過剰担保の仕組みを採用

ダイは過剰担保の仕組みを採用しています。過剰担保とは、発行するダイに対して多めに
暗号資産を預け入れる必要があることを意味します。

例えば、1,000ドル分のダイを発行したい場合は、預け入れ時の時価で150%以上(1,500ドル分)の暗号資産を担保にしなければなりません。過剰の割合は暗号資産によって異なり、時価総額が低く値動きが激しいものほど高くなる傾向にあります。

過剰担保の割合に上限はないので、いくらでも預けることができます。担保の価値が上がった際には引き出せますが、その分清算される可能性も高くなるので注意しましょう。

担保となる暗号資産が下落すると強制清算

発行しているダイに対して、担保に預けている暗号資産の価値が150%以下に下落すると強制清算が行われます。その場合は、別途手数料も発生するので注意しましょう。

強制清算が行われた場合には、預けた暗号資産が負債となったダイの補填に当てられます。

担保としている暗号資産の価値が150%を下回らないよう、急な値動きがあった際には必ず確認するようにしてください。状況により追加で担保を預けるか、ダイを返却するなどして対応しましょう。

急落時はメイカー(MKR)の追加発行により補填

過去に何度かステーブルコインのペッグが外れた事件が発生しているように、一時的に激しく売られた場合に、価値が急落することがあります。ダイが急速に売られた場合には、担保となる暗号資産が強制清算されますが、間に合わずペッグが外れるケースも想定できます。

そうした場合には、ガナバンストークンであるメイカーが追加で発行され、足りない分の補填を行います。

ダイは他のステーブルコインと同様に、一時的に急落する可能性は否定できません。しかし、ガバナンストークンが追加で発行されることで担保価格を上昇させ、ダイのペッグ維持をサポートします。

ダイ(DAI)の将来性

引用:https://makerdao.com/ja/governance

続いて、ダイが今後どのようになるか、将来性について解説していきます。

比較的価値が安定しているが過去ペッグを外れたことがある

テラの暴落や、シリコンバレー銀行が送金要求を処理しなかったことで、ステーブルコインに対する不信感が高まり、過去にペッグを外れたことがあります。ダイも例に漏れず何度か経験してきました。

過去ペッグを外れた場合には多くは元の水準まで戻ってきましたが、中にはテラのように暴落したまま、ほぼ無価値になったステーブルコインもあります。ダイは「過剰担保」「強制決済」「メイカーによる補填」3つの仕組みでカバーしていますが、今後予想外のスピードと規模で売られた場合に、ペッグを外れる可能性も否定できません。

ダイは、審査の厳しい国内取引所で取り扱いが増えているように、信頼性は評価されています。しかし、ステーブルコインならではのリスクがあることは理解しておく必要があります。

決済手段として普及

近年は、ステーブルコインを店頭での決済やクレジットカードの支払いに利用できるケースが増えています。例えばUSDコインは、クレジットカード会社のVISAで法人取引での支払い手段として認められています。

ダイも、取引所コインベースの決済サービスやOpenSeaでの支払いに利用可能です。現在は暗号資産関連サービスに限られますが、今後USDコインのように業界を超えて導入される可能性があります。

アップグレード時の不具合

2019年に、脆弱性を検証するプラットフォーム「ハッカーワン」のユーザー「lucash-dev」によって、不具合を指摘されたことがあります。lucash-devのレポートでは、複数担保を導入するアップグレードを行う際に不具合があり、悪意ある攻撃を受けた場合にすべての資産を失う可能性があったことを報告しています。

この不具合はテスト段階で発覚したため、大事には至りませんでした。現在MakerDAOはメーカー財団の手を離れ分散化されていますが、ダイの価値を調整する仕組みが稼働しないなど、システム部分の不具合が発生する可能性はあります。

国内取引所で取り扱い開始

2023年に入り、ダイは複数の国内取引所での取り扱いが始まっています。時価総額だけでいえばテザーやUSDコインの方が上ですが、それらの暗号資産を差し置いてダイが採用されていることは注目すべき事実です。

ダイは、テザーやUSDコインなどの管理者がいる銘柄と異なり、仕組みが分散化されています。担保の比率や強制決済となる基準が明確であり、不正がしづらい点を評価されているのかもしれません。

ダイ(DAI)の時価総額推移

ここでは、Coinmarketcapのチャートを用いて、ダイの流通量や時価総額の推移を解説していきます。

流通量と発行上限数

引用:https://coinmarketcap.com/ja/currencies/multi-collateral-dai/

Coinmarketcapによると、ダイはすでに「46億枚」が発行済みです。ダイは発行上限を定めておらず、担保を預けることで誰でも発行可能です。

発行済みのダイは、国内取引所や海外取引所で入手できます。

リアルタイムチャート

引用:https://coinmarketcap.com/ja/currencies/multi-collateral-dai/

ダイはドルとペッグしたステーブルコインです。そのため、円ベースで価格を見た時は基本的にドル円と同じ値動きをします。

近年は円安が進んでいるので価格が上昇しているように見えますが、ダイ自体の価値は1ドルのまま、ほぼ変わっていないことを理解しておきましょう。

単体時価総額推移グラフ

引用:https://coinmarketcap.com/ja/currencies/multi-collateral-dai/

ダイは2022年2月頃をピークに時価総額が下落しています。原因としてはDeFiやNFTブームが一段落したことに加え、ステーブルコインに対する不信感が高まっていることが考えられます。

時価総額の下落は、ダイだけではなくUSDコインやバイナンスドルでも見られる傾向です。

暗号資産の時価総額は「発行済み枚数 × 価格」で求められますが、ダイの価格は基本的に一定です。そのため、ドルベースの時価総額は発行済み枚数と同じと考えることができます。

他の上位銘柄との時価総額比較

ダイは過去10年の間にベスト10に入ったことはありません。

2023年に入ってからは、過去上位にランクインしていたバイナンスドルが大きく順位を下げています。2023年以降はダイがテザー、USDコインと並ぶ存在となれるかに注目していきましょう。

ダイ(DAI)を取扱っている暗号資産取引所

最後に、ダイを取り扱う暗号資産取引所と購入方法を紹介していきます。

ダイ(DAI)の取扱いがある国内取引所

ダイの取り扱いがある主な国内取引所は、以下の通りです。

  • コインチェック
  • GMOコイン
  • SBI VC トレード
  • オーケーコインジャパン

ダイは、現段階で国内取引所で取り扱いのある唯一のステーブルコインですが、多くは販売所でのみ売買ができます。販売所とは「ユーザーと取引所」間の売買であり、相場の価格に対して数%の手数料が上乗せされていて、取引コストが割高になることが多いです。

オーケーコインジャパンでは、取引所で「ユーザー同士」で取引できるので、コストを抑えることができるでしょう。

ダイ(DAI)の取扱いがある海外取引所

ダイは、多くの海外取引所で取り扱いがあります。

  • バイナンス
  • コインベース
  • クラーケン
  • クーコイン
  • バイビット
  • ジェミニ

海外取引所は、ユーザーを世界中に抱えていて流動性が高いです。そのため、相場価格に近い価格で取引できることが多いです。

ダイ(DAI)の取得・購入および保管方法

ダイの取得と購入には以下の方法があります。

  • 暗号資産取引所やDeFiのプラットフォームで購入する
  • summer.fiのプラットフォームで暗号資産を担保に借りる
  • レンディングをして配当をもらう

保管方法は、以下の通りです。

  • 取引所で保管する
  • メタマスクやマイイーサウォレットなどのソフトウェアウォレットで保管する
  • レジャーナノxなどのハードウェアウォレットで保管する
  • ペーパーウォレットで保管する

さまざまな保管方法があるので、予算や手間などを考慮して自分にあった方法を選ぶといいでしょう。

ダイ(DAI)の今後の展望まとめ

ステーブルコインの中で、ダイはテザーやUSDコインに次ぐ時価総額があります。近年は国内取引所でも取り扱いが始まっているように、信頼性が高いと判断されていることがわかります。

ダイは将来的に普及する余地が大いにある一方で、創業者のクリステンセン氏は「リスク回避のために米ドルからデペッグすることを検討すべき」と発言したことは注目すべき点です。発言は2022年8月であり、続報は確認できないため検討は進んでいないと考えられますが、今後の発表によっては体制や方針が大きく変わる可能性もあります。

ステーブルコインは、価値の保存や決済手段として利用できるメリットがありますが、ペッグが外れるという最大のリスクも含んでいます。ぜひこの記事を通じて理解を深め、暗号投資に役立ててみてください。

S.G

SG

月間100万PV超えの投資情報サイトや、ニュースサイトなど、暗号資産に関する記事を数多く執筆するフリーランスのライター。自身も2016年から暗号資産投資を行なっており、日進月歩の進化を遂げる暗号資産業界を常に追ってきた。ライター歴は3年で「文章で読者をワクワクさせ、行動に移させる」をモットーに執筆を行う。東南アジア在住、海外留学の経験があり、英語の翻訳記事も得意にしている。
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