2023年8月14日現在、暗号資産トロンの時価総額は10位です。国内で取り扱う取引所は5社と限られており知名度も高くないですが、海外では多くのユーザーに知られています。
トロンには、暗号資産とTRON DAOが運営するプロジェクト全体、2つの意味があります。
トロンはブロックチェーン上で多岐にわたる分野のアプリケーションの開発をしているために将来的な拡張が期待できる一方で、ジャスティン・サン氏が訴訟を受ける、ステーブルコインUSDDの価格が不安定であるなど、懸念点もあります。
本記事では、トロンの誕生から現在までの歴史、技術的な特徴や将来性まで詳しく解説していきます。
この記事の構成
「tron.network」とは
引用:https://tron.network/trx?lng=en
tron.networkとは、トロンに関するさまざまな情報を提供するプラットフォームです。アカウント数や取引数を始め、ホワイトペーパーやセキュリティ監査報告書、現在の取り組みなど多くの情報を確認できます。
tron.networkでは、NFTマーケットプレイス、トロンETF、宇宙への進出などさまざまな事業を展開していることがわかります。先進的な取り組みが多く将来性を感じさせますが、事業を広げすぎているためか、一部開発の進捗が確認できないことは気になる点です。
トロンのメインネットは2018年の5月末からリリースされ、すでに5年以上稼働していて、開発にはRipple Labsなどの大手企業からきた優秀な人材が携わっているとされています。高性能なブロックチェーンを活用し、今後どのようなサービスが提供されるかに注目していきましょう。
トロン(TRX)の誕生〜現在までの歴史
引用:https://trondao.org/
ここでは、トロンの誕生から現在までどのような道を歩んできたかを詳しく解説していきます。
創設者
トロンの創設者は、中国生まれのジャスティン・サン氏です。アジアでトップの北京大学を卒業し、暗号資産で大きな財をなした起業家の一人として知られています。2019年7月には投資家のウォーレン・バフェットとのランチ権を5億円で落札したとして話題になりました。
直近では、脆弱性をついた攻撃にあった取引所「カーブ・ファイナンス」の創設者マイケル・エゴロフ氏を保護するために3億円超の支援を行うなど、ジャスティン・サン氏は投資家としての一面もあります。一方で良くない噂も絶えず、2023年3月には無許可で証券の販売や、売り手と買い手が同じウォッシュトレードを行ったとして、SEC(米証券取引委員会)より訴訟を受けています。
ジャスティン・サン氏はすでに運営から離れていますが、今後の判決によっては価格に影響が出てくる可能性も否定できない状況にあります。
運営チーム
発足当初にトロンを運営していたチームは、TRON財団(TRON Foundation)です。TRON財団では、TRONエコシステムの構築、暗号資産の管理、TRONプロトコルの開発と管理を行なっていました。
その後、2021年7月にTRON財団は解散し、代わりにTRON DAOという組織が設立されました。TRON DAOはTRON財団の活動を引き継ぎ、TRONプロジェクトを継続して運営するために、有志によって構成された組織です。公式サイトも存在し、現在はツイッターでも積極的に情報発信が行われています。
出資者
TRON財団の発足当時に出資を受けた事実は確認できませんでした。トロンは2017年8月にリリースされた暗号資産であり、早い段階から評価され多くの投資家に購入されてきました。
2018年12月にはブロックチェーンゲームファンドTRON Arcadeに110億円規模の投資、2019年10月に取引所ポロニエックスへの出資など、リリースから1年ほどで多額の資金を準備できるまでに成長しています。
トロン(TRX)の目的
暗号資産トロンは、トロンのブロックチェーン上で利用される暗号資産です。トロンではイーサリアムのようにブロックチェーン上でDAppsの開発を行うことができ、分野はDeFiやNFTなど多岐に渡ります。
発足して間もない頃はエンタメ系の事業を主軸とし、映像や音楽などのコンテンツを配信するプラットフォームの開発を中心に行なっていました。しかし、最近はDAppsの開発が盛んになりDeFiが大きく伸びています。2023年8月時点ではイーサリアムに次ぐ預け入れ総額を誇り、かつては2位の座をキープしていたバイナンススマートチェーンを大きく引き離しています。
トロン(TRX)の技術的特徴
引用:https://trondao.org/developers/resources/get-started/
次にトロンの技術的な特徴を解説していきます。
処理能力が高くトロンのブロックチェーン上でDAppsの開発ができる
トロンのブロックチェーンでは「1秒間/2,000件」の取引処理が可能で、ビットコインやイーサリアムの能力を大きく上回ります。イーサリアムと同様にスマートコントラクトも実装しており、高い処理能力を持ったブロックチェーン上では、DeFiやNFTマーケットプレイス、ウォレット、Web3.0ブラウザ、ブロックチェーンゲームなどの開発が行われています。
2019年頃までは、トロンのブロックチェーンについて脆弱性を指摘された事実がありますが、最近はクラッシュなどの重大なトラブルは発生しておらず、安定して稼働しているようです。
トロンスキャンでは、取引の情報が確認できる
トロンスキャンでは、トロンのブロックチェーン上で行われる取引について、さまざまな情報を提供しています。別のプラットフォームであるtron.networkの提供する情報は概要のみであり、トロンスキャンでは価格や供給量、ステーキングされている量など、より細かい内容の確認が可能です。
また、Webウォレットとしての機能も備えています。ブラウザからログインして、保有する暗号資産トロンを送金したり受け取ることができます。
ドミニカ国では国家ブロックチェーンに認定
2022年10月、中南米のドミニカ国は暗号資産トロンを国家通貨として承認し、TRONプロトコル上でドミニカコイン(DMC)やデジタルID(DID)を発行する計画を発表しました。また、国家認定のブロックチェーンとすることも明らかにしています。
2021年9月にはエルサルバドルでビットコインが法定通貨として認められたことがありましたが、ブロックチェーンが国に認められた事例は世界初となります。ドミニカ国では2022年5月にバーチャルアセットビジネス法案を可決し、国内での決済や税金の支払いに利用できるようにしていくようです。
動画や音楽などを公開できるプラットフォームをリリース
トロンはクリエイターが動画や音楽を自由にアップロードし、ユーザーは投げ銭方式で支払いができる、分散型のプラットフォームをリリースすることを予定しています。従来の中央集権的な仕組みと異なるため、クリエイターは中間マージンを取られずに対価を受け取ることができます。
このプラットフォームは、当初トロンの中心的なコンテンツとなる予定でした。しかし、TRON DAOの公式ページを見る限り、現在はゲームやNFT、DeFiの開発に注力しているようにも見えます。
TRON DAOによって管理と運営が行われている
暗号資産トロンは2017年8月に誕生し、メインネットが2018年5月から稼働し始めてから、TRON財団によって運営が行われてきました。そして、エコシステム全体が成熟したことを理由に2021年7月にTRON財団を解散し、12月には運営がTRON DAOに引き継がれました。
創設者のジャスティン・サン氏はTRON財団の解散と共に、リーダーとして積極的に関わることをやめ、今後はコミュニティのメンバーの一員として発展に貢献していく意向を示しています。
トロン(TRX)の将来性
引用:https://trondao.org/developers/resources/multimedia/
ここでは、トロンの将来性について解説していきます。
代表的な分散型プラットフォームになる可能性
トロンのプラットフォームが、Web3.0時代の代表的な存在になるかもしれません。
現在のYouTubeやTiktokなどの中央集権的なサービスでは、中間マージンが発生します。例えばYouTubeでは投げ銭に対しての中間マージンは「35%〜50%」であり、少なくない割合を差し引いた金額がクリエイターに分配されるため、適正な収益を受け取ることができていないという課題があります。
今後の運用次第ではありますが、トロンに魅力的なクリエイターが集まれば、現在の中央集権的なプラットフォームに代わる存在になることもあるでしょう。
ステーブルコイン「USDD」の開発
2022年5月に、トロンはステーブルコインのUSDDをリリースしました。USDDはトロンのブロックチェーン上で発行され、暗号資産トロンを担保とするアルゴリズム型のステーブルコインです。
アルゴリズム型のステーブルコインにはFRAXやUSTがありますが、「1通貨=1ドル」のペッグが外れることも多いです。USDDがリリースされた直後には、USTが一斉に売られたことでペッグが外れたまま回帰せず、暗号資産市場全体に不信感が広がった事件に発展したことがありました。
2023年8月14日時点でUSDDの価格は「1USDD=0.997ドル」であり、時折「1USDD=0.995ドル台」に達するなど不安定な動きをしています。TRONDAOはプラットフォームから多額の暗号資産トロンを引き出すなどして対応していますが、現時点ではステーブルコインとして利用できるほどの水準には達していないと考えられます。
DeFi分野では第2位の預け入れ額を誇る
DeFiに関する情報を提供するDefiLlamaでは、トロンはイーサリアムに次ぐ預け入れ額があることを示しています。これは、バイナンススマートチェーンやポリゴン、ソラナなどライバルとなるブロックチェーンを大幅に上回る数字です。
預け入れ額
イーサリアム:58.58%
トロン:12.89%
バイナンススマートチェーン:7.58%
ポリゴン:2.08%
ソラナ:0.78%
預け入れ額としては2位の数字ですが、トロンのアクティブアドレスの数は約137万人で、イーサリアムの約32.3万人の数字を抑えてトップです。
プラットフォームや取引所を通じてステーキングが可能で、コインベースでは3.48%の配当を獲得できます。トロンのブロックチェーンは多くのユーザーがいながらも不具合が少なく、品質が高いことがわかります。
ジャスティン・サン氏がSECによって提訴される
2023年3月、トロン創設者のジャスティン・サン氏は、SEC(米国証券取引委員会)から未登録証券の販売と配布(エアドロップ)、詐欺と市場操作した疑いで提訴されました。SECは提訴について、トロンは証券であり届出をしていない点、買い手と売り手が同一のウォッシュトレードを行い取引の活況を意図的に操作した点を理由としています。
2023年7月には第一審でリップルは証券ではないという判決が出たことで、証券と指摘された暗号資産が抱える脅威はひとまず去った形です。しかし、今後SEC側が控訴する姿勢との報道もあり、再び裁判が行われることになった場合には、証券と認定される可能性も出てきます。
またジャスティン・サン氏自身の裁判は継続中であり、今後の判決によってはトロンの価格に影響が出てくることもあるでしょう。
トロン(TRX)の時価総額推移
ここでは、Coinmarketcapのチャートを用いて、トロンの流通量や時価総額の推移を解説していきます。
流通量と発行上限数
暗号資産トロンには、発行上限が設けられていません。発行済み枚数「894.7億枚」すべてが市場に流通しています。
発行済みのトロンは、OKコインジャパンやビットポイントなどで購入できます。
リアルタイムチャート
トロンは、ビットコインやイーサリアムなどと同じような値動きをすることが多いです。直近では2023年の年明けを底にして、右肩上がりで価格が上昇しています。
中期でも上昇目線で、目安としては2021年9月に記録した「1TRX=12.79円」が考えられます。
単体時価総額推移グラフ
「発行済み枚数 × 価格」で求められる時価総額は、価格とほぼ同じ値動きをしています。そのため、発行済み枚数についても一定の水準で保たれていると考えられます。
他の上位銘柄との時価総額比較
暗号資産トロンが時価総額TOP10にランクインしたのは、2018年の一度のみです。2023年8月14日現在10位につけていますが、11位のポリゴンとの差が詰まってきており順位は流動的です。
トロン(TRX)を取り扱っている暗号資産取引所
ここでは、暗号資産トロンを取り扱う取引所を紹介していきます。
トロン(TRX)の取扱いがある国内取引所の例
暗号資産トロンの取り扱いがある主な国内取引所は、以下の通りです。
- ビットポイント
- DMM ビットコイン
- オーケーコインジャパン
- ビットトレード
- ザイフ
国内取引所で暗号資産を購入する際には「取引所」と「販売所」の2つの方法があります。取引所とはユーザー同士で取引する方法であり、販売所と比較して手数料が安くなることが多いです。
現在販売所で取引している人は、今後は取引所に切り替えていくといいでしょう。
トロン(TRX)の取扱いがある海外取引所の例
暗号資産トロンの取り扱いがある海外取引所は、以下が挙げられます。
- バイナンス
- ビットフィネックス
- クラーケン
- クーコイン
- バイビット
- ポロニエックス
主要な取引所では、基本的に取り扱いがあると考えていいでしょう。
トロン(TRX)の取得・購入および保管方法
暗号資産トロンの取得と購入には以下の方法があります。
- 取引所で購入する
- プラットフォームや取引所経由でステーキングする
- レンディングする
- トロンのブロックチェーン上に構築されたゲームをプレイして報酬をもらう
保管方法は主に以下の通りです。
- 取引所で保管する
- メタマスクなどのソフトウェアウォレットで保管する
- レジャーナノなどのハードウェアウォレットで保管する
取引所に置いたままにしている場合は、セキュリティ面に不安があります。気になる人は、インターネットから切り離したところで保管できるハードウェアウォレットを購入するといいでしょう。
トロン(TRX)の今後の展望とまとめ
トロンのブロックチェーン上では、さまざまなアプリケーションの開発が進んでいます。特にDeFiは預け入れ金額とアクティブユーザー共にトップクラスであり、一定の成果を収めているといえるでしょう。
一方で、SECによる裁判やジャスティン・サン氏が抱えている訴訟、ステーブルコインUSDDのペッグが外れていることなど懸念点が残ることも事実です。今後の展開によっては、暗号資産トロンの値動きに影響が出てくることも理解した上で投資を行う必要があります。