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バイナンスのステーブルコインBUSD(バイナンスドル)が発行停止へ

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2023年8月30日、バイナンスは2024年2月までにBUSD(バイナンスドル)の発行を停止し、サポートを終了することを発表しました。バイナンスはユーザーに対して、停止日までに別の暗号資産(仮想通貨)への両替をアナウンスしています。

かつては時価総額ランキング上位の常連で、バイナンスでも多くの取引通貨ペアとして採用されていたBUSDの発行が停止されるということで、このことは大きな話題となりました。

本記事では、BUSDがサポート停止に至った経緯や暗号資産市場への影響を詳しく解説していきます。

バイナンスのステーブルコインBUSDサポート停止の概要

BUSDは2019年9月にパクソスとバイナンスが共同で発行してから、順調に時価総額を伸ばしてきました。2021年にはNFTやブロックチェーンゲームなどの影響で暗号資産市場に資金が集まり、バイナンスでの取引高やBUSDの時価総額も急増しています。

当時はステーブルコインの代表格であったUSDT(テザー)に迫る勢いで成長を続け、時価総額トップ10に名を連ねるようになりました。

他の取引所やDeFiでも続々と採用され、数あるステーブルコインの中でも圧倒的なパフォーマンスを発揮していました。しかし、2022年11月にFTXの倒産によりステーブルコインの信頼が急落したことや、12月7日〜13日の間にバイナンスから短期間で36億6,000万ドル(当時約5,023億円)が引き出されるなど、不審な動きが目立ち始めます。

バイナンスCEOのチャンポン・ジャオ氏は、多額の資金の引き出しについてツイッター(X)で「出金の方が多い日もあれば、入金が多い日もある。ビジネスとしてはいつも通りのことだ」として退けましたが、その後もBUSDは売られ続け、時価総額を大きく下げてしまいます。

そして、2023年2月にはニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)が発行元のパクソスに対して、BUSDの発行停止命令を下しました。2023年8月末にはバイナンスより正式に発行停止とサポート終了が発表され、9月以降はBUSDを含む通貨ペアの廃止が決まっています。

バイナンスのステーブルコインBUSDが発行停止するまでの経緯

ここでは、なぜ時価総額上位にまで上昇したBUSDが発行停止に至ったのか、その経緯をまとめていきます。

2019年9月にパクソスと提携してBUSDを発行開始
2020年9月までに24億BUSDを発行
バイナンスはテザーをライバル視
2022年5月にはテラ崩壊があるもステーブルコインの時価総額は上昇
2023年2月にニューヨーク州金融サービス局より発行停止命令を受ける
2023年8月末にバイナンスがBUSDのサポートを停止していくことを発表

それぞれ詳しくみていきましょう。

2019年9月にパクソス(PAXOS)と提携してBUSDを発行開始

BUSDは、2019年9月にバイナンスがブロックチェーン関連企業のパクソスと提携し、ニューヨーク州金融サービス局の承認を受け、運用が開始されました。BUSDでは法定通貨担保型を採用しており、パクソスが保有する銀行口座にある米ドルに対して1対1で担保されるシンプルな仕組みのステーブルコインです。

BUSDはステーブルコインとしては比較的後発です。運用が始まった時点では、現在時価総額で上位に名を連ねる、USDC(USDコイン)やDAI(ダイ)などはすでに流通していました。

当時一強であったUSDTのテザー疑惑により、新たなステーブルコインが求められていた中、BUSDは発行開始後順調に時価総額を増やしていきました。

2020年9月までに24億BUSDを発行

2019年9月に運用を開始したBUSDは、1年間で大きな成長を遂げました。具体的には以下の通りです。

  • 24億BUSD(当時約2,620億円)発行
  • ピーク時の時価総額2億3,000万ドル(当時約241億5,000万円)
  • バイナンスでは15万人以上が保有
  • バイナンスでの取引通貨ペアは97種類

2020年は暗号資産市場全体が低迷しましたが、バイナンスでは多くのアルトコインを取引銘柄に採用し、高配当を獲得できるステーキングサービスの取り扱いを始めた時期でもあります。こうした取り組みによってバイナンスに多くのユーザーが集まり、BUSDの保有者増加を後押しをしたと考えられます。

また、この時期からBUSDが他の取引所でも通貨ペアとして採用されることも増え始めます。2020年にバイナンスは取引所としても大きな成長を遂げ、BUSDはステーブルコインとしてUSDTに次ぐ立ち位置を築いていきました。

バイナンスはテザーをライバル視

2021年は暗号資産市場全体が盛り上がったことで、BUSDの時価総額も急上昇します。2021年の1年間で時価総額は10倍以上になり、USDTをライバル視するようになりました。

バイナンスが公式ブログで、BUSDは法定通貨担保型でニューヨーク州金融サービス局による承認を受けていて透明性が高いのに対し、USDTは運用が不透明であることを指摘した記事は、今でも確認できます。

2022年5月にはテラ崩壊があるもステーブルコインの時価総額は上昇

2022年5月に、ステーブルコインのペッグが外れたことに起因して発生した「テラ(Terra)崩壊」の大きな事件があっても、BUSDの時価総額は上昇を続けます。この頃にはBUSDはコインベースやクーコインなど、競合取引所の取引通貨ペアとしても採用されています。

一方で、ステーブルコインの担保が十分に保たれているのかを疑う声も大きくなっていきました。すでに市場には数多くのステーブルコインがありましたが、急激な取引の集中を理由に、法定通貨とのペッグが外れるケースが目立つようになります。

2023年2月にニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)より発行停止命令を受ける

2022年11月にFTXの破綻、12月には短期間でバイナンスから36億6,000万ドル(当時約5,023億円)が引き出されるなど、暗号資産市場に立て続けにネガティブな事件が発生します。この頃からニューヨーク州金融サービス局や、米国証券取引委員会(SEC)による監視の目も厳しくなり始めました。

そして、2023年2月にニューヨーク州金融サービス局よりBUSDの発行停止、6月には米国証券取引委員会が「BUSD含む未承認の有価証券を販売した」と主張して、バイナンスが提訴されました。この発表により、ステーブルコインのペッグ外れや売りが集中して暗号資産市場で合計約450億円が清算されるなどの事態に発展しています。

2023年8月末にバイナンスがBUSDのサポートを停止していくことを発表

2023年8月末、バイナンスはBUSDが絡む取引通貨ペアの取り扱いを段階的にとりやめ、2024年2月までにサポートを完全に停止することを発表しました。すでに予想されていた展開のため市場に大きな影響はありませんでしたが、かつて時価総額トップ10常連の暗号資産がなくなることに驚いた人も少なくありませんでした。

バイナンスのCEOであるチャンポン・ジャオ氏は「BUSDは常に米ドルに1対1で担保されているので安心してください」と述べ、縮小しても「1BUSD=1ドル」が保たれることを強調しています。バイナンスは、8月末の時点ですでにBUSDが絡む8つの通貨ペア廃止を決定しています。

バイナンスのステーブルコインBUSDが発行停止した主な理由

バイナンスのステーブルコインBUSDが発行停止した理由として、主に以下2つの理由が考えられます。

ニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)と米国証券取引委員会(SEC)による影響
バイナンスとパクソスの関係悪化

それぞれ詳しく解説していきます。

ニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)と米国証券取引委員会(SEC)による影響

ニューヨーク州金融サービス局と米国証券取引委員会による影響はもっとも大きいと考えられます。ニューヨーク州金融サービス局とは金融サービスや製品を規制する政府機関、米国証券取引委員会とは米国の証券取引を監視、監督する連邦機関のことです。

ニューヨーク州金融サービス局は発行停止の命令を行い、理由については「パクソスがバイナンスやBUSDの顧客に対するリスク管理の義務に違反した」と述べています。

米国証券取引委員会は、バイナンスが未登録の証券を無許可で販売したとして訴訟を行いました。裁判は2023年10月24日現在も続いています。

バイナンスとパクソスの関係悪化

ニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)と米国証券取引委員会(SEC)による影響以外にも、バイナンスとパクソスの関係が悪化したためという見方もあります。

パクソスのCEOであるチャールズ・カスカリラ氏は、2023年2月に「バイナンスとは、我々の現在の戦略的優先事項と一致しない」という内容の社内メールを送りました。このように、早い段階からバイナンスとの関係は悪化していたことが予想できます。

また、同氏はバイナンスとの関係を終了するという決定は、ニューヨーク州金融サービス局と米国証券取引委員会とは別、ということも付け加えています。

バイナンスのステーブルコインBUSD発行停止発表後の影響

ここでは、バイナンスのBUSD発行停止発表後の影響についてまとめました。

時価総額は大きく減少
BUSDの取引通貨ペアが減少
次のステーブルコインは未定

それぞれ、詳しく解説していきます。

時価総額は大きく減少

引用:https://coinmarketcap.com/ja/currencies/binance-usd/

BUSDの時価総額は、2022年の12月を最高値にして大きく下がっています。現在の時価総額ランキングは29位で、最高値の10分の1ほどの数字です。

ただ、バイナンスCEOのチャンポン・ジャオ氏が「BUSDは常に米ドルに1対1で担保される」と宣言したように、時価総額が減りつつある中でもペッグは保たれています。

BUSDの取引通貨ペアが減少

2023年2月にニューヨーク州金融サービス局が発行停止を命じて以来、相次いでBUSDが絡む通貨ペアの廃止が決まっています。具体的には以下の通りです。

  • 2023年6月 バイナンスUS:2通貨ペア
  • 2023年8月 バイナンス:8通貨ペア
  • 本記事では、BUSDがサポート停止に至った経緯や暗号資産市場への影響を詳しく解説していきます。2023年10月 バイナンス:30通貨ペア(信用取引)

今後はバイナンスを含め、さまざまな取引所で廃止が決まると考えられます。

次のステーブルコインはFDUSDになる可能性

2023年8月末、バイナンスがBUSDのサポート停止を発表した際に、FDUSD(ファーストデジタルUSD)に移行するようにアナウンスしました。FDUSDとは、香港に拠点を置くファーストデジタルグループが発行するステーブルコインであり、バイナンスにも上場しています。

バイナンスは2つのステーブルコイン間の取引を手数料無料で提供し、移行を促進していくようです。

また、日本に進出予定のバイナンスジャパンは、三菱UFJ信託銀行と提携し、ステーブルコインの発行プラットフォーム「プログマコイン」の共同開発を進めていくことを発表しています。

まとめ

BUSDは2024年2月までのサポートを予定しており、その後は消滅していく見込みです。サポートが続く限りはペッグも維持されるものと考えられますが、今お持ちの方はなるべく早めに他の暗号資産へ両替することをおすすめします。

今後はFDUSDへの移行が予想されています。これからFDUSDが絡む取引通貨ペアが増えていくのか、ステーキングサービスは提供されるのか、他の取引所での取り扱いが増えるのかに注目していきましょう。

S.G

SG

月間100万PV超えの投資情報サイトや、ニュースサイトなど、暗号資産に関する記事を数多く執筆するフリーランスのライター。自身も2016年から暗号資産投資を行なっており、日進月歩の進化を遂げる暗号資産業界を常に追ってきた。ライター歴は3年で「文章で読者をワクワクさせ、行動に移させる」をモットーに執筆を行う。東南アジア在住、海外留学の経験があり、英語の翻訳記事も得意にしている。
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