ビジネスにおける新たなマーケティングツールとして「ファントークン」が注目されています。ファントークンはスポーツチームをサポートするだけでなく、ビジネスや政治、個人活動など様々なシーンで活用できます。
本記事ではファントークンのビジネスへの適応性と、MA(Marketing Automation)でのFT/NFTの役割について深掘りしていきます。Web3時代のマーケティング戦略を模索する皆様に向けて、有益な情報となれば幸いです。
この記事の構成
ファントークンとは?
ファントークン(Fan Token)はスポーツチームや企業、個人がファンとのエンゲージメントを強化するためのデジタルアセットです。トークンを保有するファンは様々な報酬や体験を得ることができます。
ファントークンはFT※1として発行されることが多く、暗号資産市場での取引が可能です。しかしNFT※2形式で発行されるファントークンもあり、こちらはNFTマーケットプレイスなどで取引します。
※1 FT(Fungible Token:代替性トークン)
※2 NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)
ファントークンの特徴
- 暗号資産
- 限定性
- セキュリティ
ファントークンは暗号資産です。スマホやPCにインストールされたウォレットなどを用いて所有量を確認します。発行される数量を調整することで希少価値をもたせることも可能です。また、ブロックチェーン技術を基盤としているためセキュリティも高く、不正な取引やアセットの改ざんが非常に難しいのが特徴です。
ファントークンの利点
- ファンエンゲージメント
- 収益源の確保
- コミュニティの強化
ファントークンはファンが愛するチームやアーティスト、組織と直接的に関わる手段です。組織やアーティストはファントークンを通じて新たな収益機会を創出することもできます。共通の興味を持つファン同士のコミュニティを強化する効果もあります。
ファントークンはビジネスに使える?
ファントークンはビジネスの新たなツールとして注目されています。PSG※3はファントークンを利用してデジタルドメインでの収益を増やし、ブランドのロイヤルティを強化しています。音楽業界でもアーティストがファントークンを導入し、ファンとの関係を深化させています。
※3 PSG(パリ・サンジェルマン)はパリを拠点とするサッカーチームです。
ファントークンの種類を理解
- スポーツチームを支援するファントークン
- ビジネスを支援するファントークン
- 個人を支援するファントークン
ファントークンはファンや支持者のエンゲージメントを深化させます。スポーツ支援などで使用されることが広く認知されていますが、ビジネスや特定の個人をサポートするといった事例も見られるようになりました。
スポーツチームを支援するファントークン
広く認知されているファントークンの一面です。世界の多くのサッカーチームはファントークンを発行して、ファンとクラブとのつながりを強化し、新たな収益源を生み出しています。ファンはトークンを保有することで、クラブの意思決定への参加や限定的なグッズを得ることができます。
ビジネスを支援するファントークン
ビジネス分野でもブランドのロイヤルティを高めるためのファントークンが導入されています。音楽ストリーミングサービスの「Spotify」は独自のファントークンを発行し、アーティストの新曲先行試聴や限定イベントへの招待などの特典を提供する試みを進めています。
個人を支援するファントークン
個人のクリエイターやアーティストが自身の活動をサポートしてもらうため、ファントークンを発行するケースも増えています。ミュージシャンやスポーツ選手が個人的に独自のファントークンを発行し、ファンとのエンゲージメントを深化させる試みが行われています。
MAでFT/NFTが果たす役割
- パーソナライズドキャンペーン
- タイムリーなトークン配布
- エンゲージメントの強化
MAはマーケティング活動を自動化する取り組みです。ファントークンをMAに活用し、パーソナライズドなキャンペーンやプロモーションを自動的に展開することが可能になります。FT/NFTの取引データをMAツールで収集・分析することで、顧客の興味や行動を分析し、マーケティング戦略の最適化に役立てることもできます。
パーソナライズドキャンペーン
MAデータベースにファントークン保有者リストを入力し、パーソナライズドなイベントを自動で実行することが可能です。また、イベント開催時はFT/NFTを特別な招待券として自動で送ることもできます。招待券の不正使用はブロックチェーン技術によって予防されます。
タイムリーなトークン配布
FT/NFTを用いることで、顧客に向けてタイムリーなアプローチが実現できます。新商品/サービスの発表時には、決済や割引券として使用できるファントークンをニュースレターと同時に自動配布することもできます。
エンゲージメントの強化
MAにおいては顧客の購買行動をデータ駆動で分析します。ファントークンを用いれば、対面履歴やWeb上でのトラッキングデータの他に、ブロックチェーンデータが活用できます。より顧客ニーズは正確に把握され、エンゲージメントの強化を図ることができます。
MAでファントークン導入を成功させるポイント
- 企業戦略の確認
- オラクルデータの活用
- スタッフの教育とMAツールの対応
MAの取り組みの中で、ファントークン導入を成功させるポイントをまとめて解説します。MAでのブロックチェーン、オラクルデータ連動には技術的なプロセスが必要になります。社内リソースに応じて、専門のソリューションサービスも活用しましょう。
企業戦略の確認
ファントークン導入は単なる技術的な取り組み以上のものであり、企業のビジョンや目標、ブランドの方向性と密接に関連します。ファントークンをどのようにマーケティングに活用していくか、どのような価値やユーティリティを顧客に提供するのかを明確にすることが大切です。
オラクルデータの活用
ファントークンにスマートコントラクトを実装する際、オラクルデータの活用は重要になってきます。オラクルは実世界の情報をブロックチェーン内のスマートコントラクトに反映させる技術です。MAはタイムリーなデータ駆動の取り組みなので、市場動向に合わせたファントークンの自動調整(ユーティリティなど)が実現すれば、非常に効率的な顧客管理が実現します。
スタッフの教育とMAツールの対応
ファントークンの導入に伴い、マーケティングスタッフへの教育は不可欠といえます。企業内において、ブロックチェーン技術に対する理解を深めることで、スムーズな導入と運用が可能となります。また、使用しているMAツール※4がファントークンとの連携が可能かを確認し、必要に応じてツールのアップデートや変更を検討することも重要です。
※4 ブロックチェーンデータ、オラクルデータなどはAPIを用いてMAツールとの連携を実現させます。
ファントークンの事例
- ビジネスで使用されるファントークン
- 政治で使用されるファントークン
- 個人目的で使用されるファントークン
ファントークンはビジネスだけでなく、政治や個人目的でも活用されています。ここでは、ファントークンの事例を具体的に解説していきます。ファントークンの多様な活用方法をイメージアップして頂ければ幸いです。
ビジネスで使用されるファントークン
ビジネスでファントークンが使用される事例は増えています。特に日本での事例をまとめて解説します。
SORACHI1984
サッポロビールは2021年、ビールブランド「SORACHI1984」でブランドトークンの取り組みをスタートさせました。SORACHIトークンが発行され、トークンを集めたファンはデジタルグッズやNFTと交換できます。
トークンはSNS投稿やアンケート回答、ファンミーティング参加などの活動を行ったファンに限定して配布されました。
新垣結衣NFT
アサヒ飲料は新垣結衣さんのNFTをキャンペーンに使用しました。「十六茶」の特定製品を購入することで、デジタルブロマイドNFTが抽選で獲得できるというプロモーションです。
新垣結衣NFTはLINEのブロックチェーン技術を基盤としており、専用の「DOSI Wallet」でのみ受け取ることができます。
Asahi Super Dry Brand Card Collection
アサヒグループホールディングスは「スーパードライ」誕生36周年を記念して、NFTコレクション「Asahi Super Dry Brand Card Collection」を発売しました。NFTは発売からわずか18分で完売しています。
アサヒグループは今後もNFTを活用したグローバルプロモーションやイベントなどの展開を検討しており、先進的な技術を駆使して「スーパードライ」ブランドの価値をさらに高める方針を明らかにしています。
政治で使用されるファントークン
政治分野でもロイヤルティを向上させる目的などでファントークンは使用されます。有名なもので第45代米国大統領が発売したトランプカードや岸田トークンなどがあります。
Collect Trump Cards
「Collect Trump Cards」は政治の領域で注目されるファントークンとして浮上しています。トークンホルダーにはトランプ氏と直接会うなどの特典を得ることができます。特典の中にはマイアミでの高級ディナー会食、プライベートリゾートでのミート&グリート、限定サイン入り写真やデジタルトレーディングカードのプレゼントなどが含まれます。
岸田トークン
自民党の青年局は研修会の出席証明や記念バッジとしての役割を果たす「岸田トークン」を発行しました。岸田トークンの狙いは主に自民党の「Web3への取り組み」をPRすることと、若い世代に対するエンゲージメントの強化です。
個人目的で使用されるファントークン
個人でもファントークンを発行することは可能です。自身の活動や事業のPR手段や、ファンとのコミュニケーションツールとして、様々な用途でファントークンは使われています。
Lil Yachty
米国のラッパー、Lil Yachtyは自身のファントークン「$YACHTY」を発行しました。トークンを持っているファンは音楽イベントやグッズへの特別なアクセスや、直接のインタラクションの機会を得ることができます。
Spencer Dinwiddie
NBAのプレイヤー、Spencer Dinwiddieは自身の契約をトークン化し、ファンに投資の機会を提供しています。将来の収入の一部をファンと共有する新しい形のファンエンゲージメントとして注目されました。
まとめ
ファントークンはビジネスの新しい可能性を切り開くツールです。特にMAプロセスでのFT/NFTの活用は、顧客エンゲージメントの強化やパーソナライズドキャンペーンでイノベーティブな変化をもたらす可能性があります。
本記事を通じて、ファントークンとビジネスの深い関連性、MAでファントークンが果たす役割、ファントークン導入時のポイントなどを解説させて頂きました。Web3時代のマーケティング戦略を模索する皆様に向けて、有益な情報となれば幸いです。