Lidoは、誰でも簡単にイーサリアムのステーキングができるリキッドステーキングプラットフォームです。
本来、イーサリアムのステーキングに参加する場合は、技術面・資金面の双方において決して低くないハードルが存在します。
しかしLidoは、専門的な技術や知識を持たないユーザーが、少額の資金からでもイーサリアムのステーキングに参加することを可能にします。
その一方で、最近ではLidoがイーサリアムにもたらしかねない中央集権化のリスクについても議論が盛んになっています。
本記事では、Lidoの仕組みや利用するメリットについて解説をした上で、Lidoによるイーサリアムの中央集権化の懸念についても説明します。
この記事の構成
Lidoとは
引用元:Lido
Lidoは、利便性の高さや誰でも手軽にイーサリアムのステーキングに参加できることから、非常に人気が高いステーキングサービスの1つになっています。
ステーキングとは、自身が保有する暗号資産(仮想通貨)を、PoS(プルーフ・オブ・ステーク)を採用しているブロックチェーンにロックして報酬を得る仕組みです。
代表的なPoSのブロックチェーンにはイーサリアムがあります。
そしてLidoは「本来、参加するハードルが高いはずのイーサリアムのステーキングを手軽に利用できるプラットフォーム」として注目を集めています。
「イーサリアムのステーキングに参加する際のハードル」をより一般化すると「ステーキングという仕組み自体が抱える課題」と言い換えることができ、具体的には以下のようなものがあります。
- ある程度まとまった資金が必要
- 初心者にはノードの運用が困難
- ステーキング中の資産を動かすことができない
そして、これらの課題を解決し、より簡単にステーキングができるサービスとして誕生したのがLidoです。
Lidoの具体的な特徴
引用元:Lido
ここからは、Lidoの具体的な特徴について解説します。
特に、従来の方法でイーサリアムのステーキングに参加する場合と比べて、どのような点で利便性が向上しているかについて詳しく説明します。
少額からステーキングが可能
Lidoでは、少額からイーサリアムのステーキングに参加することができます。
一般的に、ユーザー自身でノードを立ててステーキングに参加する場合、最低でも32ETH(2023年11月8日現在のレートで約900万円)という高額な資金が必要になります。
しかし、Lidoは任意の金額からステーキングに参加することができるため、投資資金がそれほど多くないユーザーでも利用しやすくなっています。
ノードを運用する必要がない
本来、イーサリアムのステーキングを行う際は、ユーザー自身が専用のソフトを用いてノードを運用する必要があります。
この方法は、自分でコンピューターの設定や管理などを行う必要があり、かなり上級者向けの手法だと言えます。
一方、Lidoが提供するステーキングサービスでは、メタマスクなどの暗号資産ウォレットをLidoのサイトに接続し、ステーキングしたい金額を入力するだけでステーキングが行なえます。
専門的な知識がなくとも、暗号資産関連のサービスを少しでも利用したことがあるユーザーであれば比較的簡単に利用できる点は、Lidoの大きな強みです。
stETHを受け取れる
LidoでETHをステーキングすると、それと同額のstETHというトークンを受け取ることができます。
stETHはリキッドステーキングトークンと呼ばれるトークンで、基本的にETHと1:1の比率で価格が連動する設計になっています。
このstETHは売却したり、保有してステーキング報酬を得られるなど、様々な使い道があります。
stETHを運用できる
いくつかの用途があるstETHですが、特に人気なのが他のDeFiプラットフォーム等でstETHを運用して収益を得る手法です。
従来のステーキングにおいて、ETHをチェーンにロックしている間は、当然のことながらそのETHを他の運用手段に回すことはできません。
しかし、Lidoを用いてステーキングを行っている場合、ETH自体はイーサリアムチェーンにロックされているものの、代わりに受け取ることになるstETHは、特に制約を受けることなく自由に取り扱うことができます。
そして、このstETHをAaveやMakerなどの他のプラットフォームに担保として預け入れることで、ETHのステーキングに参加しながらstETHを運用して収益を得ることができます。
複数のチェーンに対応している
Lidoは、イーサリアム以外にもソラナやポリゴンなど、他のブロックチェーンのステーキングにも対応しています。
チェーンごとにAPR(年換算利回り)やリスクは異なるため、利用する際は事前に必要な情報をご自身で調べるようにしてください。
Lidoに関する懸念点
引用元:Lido
ステーキングプラットフォームとして魅力的なLidoですが、懸念点がないわけではありません。
ここでは、以下の3つの懸念点について解説します。
- バグによる資金流出等のリスク
- ETHとstETHの価格乖離
- イーサリアムに対するLidoの影響力の増大
バグによる資金流出等のリスク
まずは、スマートコントラクトのバグによる資金流出等のリスクです。
これは長らくDeFiプロトコルに共通した課題となっており、最近ではDeFi大手のCurve financeでも多額の資金が流出する被害が出ています。
Lidoでも、過去に複数回バグが発見され、資金が流出する危機がありました。
大規模なバグバウンティプログラム(バグを発見した人に報奨金を支払う制度)はあるものの、この種のリスクは常につきまとっています。
ETHとstETHの価格乖離
ETHとstETHの交換レートは1:1に設定されています。
しかし、これは必ずしもETHとstETHの市場価格が一致するということを意味していません。
事実として、2023年11月8日現在の取引価格は1stETH=約0.9948ETHとなっており、stETHがわずかに低くなっています。
これは、ETHに比べてstETHの用途が限定的であることなどが原因です。
stETHを用いて運用を行う際は、この価格差に注意しておく必要があります。
イーサリアムに対するLidoの影響力の増大
最近になって危惧されているのが、イーサリアムに対するLidoの影響力の増大です。
元々、ビットコインやイーサリアムにおいては、トランザクションの承認を行うノードが特定のプレイヤーに偏っていないこと(=分散性)が強みとされてきました。
マイナーやバリデーターと呼ばれるノードが一部のプレイヤーに偏っている場合、悪意を持ったノードによってチェーンが攻撃される恐れがあります。
これに対し、ビットコインやイーサリアムのノードは十分に分散化されており、ゆえにこれらのチェーンは力がある一部のプレイヤーの影響を受けることは少ないとされてきました。
しかし、Lidoが登場したことにより、イーサリアムでは中央集権化の懸念が生まれてしまっています。これについて、以下で詳しく説明します。
イーサリアムの中央集権化の懸念とは
引用元:Lido
イーサリアムのステーキングプラットフォームとして、Lidoの人気は急速に高まっています。
しかしこのことは、Lidoがイーサリアムに対して中央集権的な影響力を持つことにつながりかねません。
まずは、現在のLidoがイーサリアムに対してどの程度の影響力を持っているか、数量的な面から確認していきます。
Lido上でステーキングされているETHの割合
2022年に行われたイーサリアムの大型アップデート「Merge」の完了以降、イーサリアムは中央集権化のリスクに晒されています。
具体的には、イーサリアムネットワークにステーキングされたETHのうち、3分の2以上がわずか7つの事業者によって所有されていることが明らかになっています。
その中でも、Lidoが占める割合は27.5%となっており、これはイーサリアムのステーキング参加者の中で最も多い数値です。
2023年10月にはこの比率が約32%まで上昇しており、イーサリアムネットワークにおけるLidoの影響力は今なお拡大していると言えます。
Lidoの影響力が高まることのリスク
上記の通り、現在ステーキングされているETHの約3割をLidoが占めています。
そしてこのことは、イーサリアムにおける中央集権化の懸念につながっていきます。
具体的には、ステーキングサービスの中でLidoのシェアが増加するにつれ、現在は分散化することで保たれているイーサリアムのガバナンスとセキュリティにおけるリスクが増大します。
特定のノードが過大な影響力を持つようになると、ネットワークの意思決定における公平性と透明性が損なわれ、ガバナンスが毀損する恐れがあります。
さらに、セキュリティ上の脅威も高まります。
仮にLidoが悪意を持った攻撃者の標的となった場合、Lidoの影響力が悪用され、イーサリアムのネットワーク全体が危険に晒される可能性があります。
このように、Lidoのような特定のサービスがイーサリアム上で極端に強い影響力を持つことは、ネットワークの信頼性と安定性を損なう重大な脅威となり得ます。
Lidoの特徴と懸念点に関するまとめ
Lidoは、誰もが手軽にイーサリアムのステーキングに参加できる画期的なシステムです。
利用時に気をつけるべき点はあるものの、イーサリアムの運用プラットフォームとしては十分に選択肢になり得るサービスだと言えます。
一方、イーサリアムにおけるLidoの影響力の拡大は、イーサリアムネットワーク全体の信頼性や安定性を揺るがしかねない不安要素にもなり得ます。
Lidoを含め、特定のブロックチェーンに対する影響力が大きなプラットフォームを利用する際は、そのプラットフォーム自体がもたらす中央集権化のリスクも十分に考慮する必要があるでしょう。