2023年は暗号資産(仮想通貨)の実用化が進んだとともに、法整備も行われた年となりました。Apple社ではステーブルコインUSDCの導入が進み、ヨーロッパではマネー・ロンダリング防止ルールの遵守や、投資家を保護するための規則案が承認されています。
暗号資産市場全体としては2023年前半は停滞した反面、後半にはビットコイン含む多くのアルトコインが高騰しました。その中でも、もっとも大きな躍進を遂げたのはソラナ(SOL)といっていいでしょう。
ソラナの価格は、2023年9月から12月までの間で約5倍になりました。2024年1月24日現在は市場全体の停滞もあり少し下げていますが、直近1年で見てもまだ高値といえる価格に位置しています。
本記事では、ソラナが短期間で高騰した理由と現在の開発状況、2024年以降の展望をまとめました。
この記事の構成
なぜソラナの価格は3ヶ月で約5倍になったのか
ソラナの価格は2023年9月末時点では「1SOL=約3,000円」であったのが、12月末には「1SOL=約14,600円」にまで上昇しました。約3ヶ月で約5倍もの暴騰をしたことになります。
暗号資産市場では短期間で数十%を超える高騰を記録する銘柄が数多く生まれていますが、ほとんどは草コインと呼ばれる時価総額が小さいものです。時価総額が低いため、数百万円、数千万円程度の資金が入っただけでも、大きく価格が変動することがあります。
そうした状況の中で、時価総額ランキングでトップ10前後を推移していたソラナが短期間で約5倍になったことは、数少ない事例といえます。2023年12月22日にはリップルやバイナンスコインなどメジャーなアルトコインを押し除けて、時価総額第4位まで浮上しました。
ソラナが短期間で上昇した理由としては、以下が挙げられます。
- FTX破綻による懸念の払拭
- 大型イベントの開催
- 市場全体の後押し
それぞれの理由について、詳しく解説していきます。
FTX破綻による懸念の払拭
大きな理由として、FTXとその関連会社が保有する大量のソラナが売却されるのではないか、という懸念が払拭されたことが挙げられます。
FTXは、かつてはバイナンスやコインベースに次ぐ大手取引所でした。しかし、総資産のほとんどが自社トークンのFTTとその関連銘柄であり、財務の健全性を指摘する声がきっかけで売りが売りを呼び、最終的に救済の手を差し伸べていたバイナンスからも撤回されたことで、2022年11月に破綻しています。
FTXの創設者であるサム・バンクマン・フリード氏は、プロジェクトが誕生してまもない頃から投資を行っており、多額のソラナを保有していました。FTXが保有していたのは供給量の10%にあたる約5,575万SOL(約1,571億円)でしたが、破産手続きが進む中で損失の補填に使われるのではないかという懸念が生まれ、売り圧力となっていた経緯があります。
結果的に2023年9月にソラナ財団、11月にFTXの関連会社が、保有するソラナは2027年まで売れずにロックアップされると発表し、懸念が払拭されました。
ソラナ財団が発表した9月はソラナが上昇し始めた時期と一致します。そのため、この出来事は短期間で高騰した理由といえるでしょう。
大型イベントの開催
ソラナが強く上昇し投資家に注目され始めた2023年10月末、オランダのアムステルダムで「Solana Breakpoint 2023」が開催されました。このイベントは意図したタイミングで企画、開催されたものではありませんでしたが、価格にポジティブな影響を与えたと考えられます。
Solana Breakpoint 2023では、ソラナはAmazonのサーバーサービスであるAWSとパートナーシップを結んだことが発表されました。これにより、開発者はブロックチェーンに接続されたRPCノードを配置し、簡単にアクセスできるようになります。
他にも、ソラナブロックチェーンのパフォーマンスを強化するFiredancerの発表など好材料が多くあったことも、ソラナに買いが集中した要因の一つとなりました。
市場全体の後押し
2023年9月末から12月末までは、ソラナだけでなく他の暗号資産も大きな上昇を記録した時期でした。ビットコインは3ヶ月の間に「1BTC=402万円」から「1BTC=594万円」と約1.5倍に、イーサリアムは「1ETH=25万円」から「1ETH=32万円」と約1.3倍の価格となっています。
これら主要通貨の後押しによって、すでに注目されていたソラナに買いが集まりやすくなり、価格の上昇につながったと考えられるでしょう。
ソラナの特徴
ここでは、ソラナの生い立ちやスペック、競合のブロックチェーンなどさまざまな情報をまとめました。
- 誕生から現在まで
- 競合のブロックチェーン
- 取引処理速度と取引手数料
- 開発が行われているDAppsの数
それぞれ詳しく解説します。
誕生から現在まで
ソラナとは、高速のトランザクション処理とDAppsの開発が可能なブロックチェーン、もしくはその上で用いられるネイティブ暗号資産のことです。
ソラナのブロックチェーンは、創設者のアナトリー・ヤコヴェンコ氏を始めとした人たちによって2017年頃に考案され誕生しました。その後約2年の開発期間を経て、新型コロナが世界各地で猛威を振るい始めた2020年3月にリリースされたように、比較的新しいブロックチェーンです。
ソラナは、倒産した海外取引所FTXと深い関係があります。創設者のサム・バンクマン・フリード氏やFTXの関連会社であるアラメダ・リサーチ社は、大量のソラナを買うことでプロジェクトを支援してきました。FTXとの関係の深さは暗号資産投資家の間でもよく知られていた事実でしたが、2022年11月に倒産が発表され、ソラナも巻き添えを食らう形で大きく下落します。
ソラナの価格は2023年の上半期までは停滞したものの、ブロックチェーンのスペックは多くの開発者やユーザーに認められていました。イーサリアムよりも低コストで大量のトランザクションを処理できるとして、現在ブロックチェーン上ではさまざまなDAppsの開発が行われています。
競合のブロックチェーン
DAppsの開発ができるブロックチェーンで、もっとも有名なのはイーサリアムです。イーサリアムの競合となるブロックチェーンは「イーサリアム・キラー」と呼ばれ、ソラナはその内の一つに該当します。
ソラナの競合ブロックチェーンとしては、主に以下が挙げられます。
- イーサリアム
- アバランチ
- カルダノ
- バイナンススマートチェーン
- コスモス
2024年1月24日現在のソラナの時価総額は第5位であり、上記の中ではイーサリアム、バイナンススマートチェーンに次ぐ3番目に位置しています。
一般的にソラナはイーサリアムキラーの位置付けです。しかし、創設者のアナトリー・ヤコヴェンコ氏は「ソラナはイーサリアムの競合ではあるが、殺そうとしているのではない」「イーサリアムを補完するものとして共存していくべき」と語っています。
取引処理速度と取引手数料
ソラナのブロックチェーンは、取引処理速度と取引手数料の安さに特徴があります。競合ブロックチェーンとの比較は以下の通りです。
1秒あたりの取引処理件数(TPS) | 取引手数料(混雑具合により変動) | |
ソラナ | 2,700件〜3,000件 | 0.00025ドル |
イーサリアム | 15件 | 1.45ドル |
アバランチ | 4,500件 | 0.001AVAX(約45.4円) |
カルダノ | 不明 | 0.07ドル |
バイナンススマートチェーン | 42件 | 0.15ドル |
コスモス | 1件 | 0.05ドル |
他と比較しても取引処理速度は速く、取引手数料も安いです。スペックが高いことで開発者もユーザーにも扱いやすいことが、ソラナが人気である理由の一つといえるでしょう。
開発が行われているDAppsの数
ソラナのエコシステムは日々成長を続けており、現在686個のDAppsの開発が行われています。この数はイーサリアムの3,000個以上と比較すると見劣りするものの、中には暗号資産ウォレットのPhantomや、Move to Earnで一躍有名となったSTEPN、メタバースのStar Atlasなどの著名なプロジェクトも多く存在します。
ソラナのブロックチェーンでは、今までに1,150万以上のアカウントが誕生し、2,150万以上のNFTが生成され、2,600億件以上の取引処理が行われました。2023年後半の勢いをそのままに、2024年以降もさらに多くのユーザーによる利用が期待されています。
ソラナの2024年以降の展望
最後に2024年以降のソラナの展望を述べていきます。
主には、以下が挙げられます。
- 訴訟に関する問題
- メインネットのトラブル
- ソラナブロックチェーンの拡大
それぞれ解説していきます。
訴訟に関する問題
2023年6月、SEC(米国証券取引委員会)は61種類の暗号資産を証券と指摘し、無登録で販売してきたとして、取引所のバイナンスやコインベースに対して訴訟を起こしました。裁判は現在も進行中であり、直近でも口頭弁論が行われるなどの動きを見せています。
訴訟が報道された時点で、すでに米国の新興ネット証券会社のロビンフッド・マーケッツ社は、ソラナ含む3種類の取り扱いを停止しました。今後ソラナが証券という判決が出た場合に多くの取引所で上場廃止となり、価格が下落する可能性があるでしょう。
また、元プロバスケットボール選手のシャック・オニール氏のNFTプロジェクトで、ソラナのブロックチェーン上で開発が行われた「アストラルズ」でも訴訟が行われています。訴訟はFTX破綻後に開発を放棄したことが理由とされており、ソラナの運営とは直接的に関係はありません。
しかし、今後訴訟の動向によっては、ソラナのプロジェクト全体へのマイナスイメージがついてしまうことも理解しておく必要があります。
メインネットのトラブル
ソラナのメインネットのトラブルにより、取引ができなくなり送金詰まりが発生した事例が多く報告されています。主には以下のトラブルがあります。
2022年5月:毎秒400万の取引が集中し、捌けなくなったことにより稼働停止
2022年10月:8回の障害が相次いで発生
2023年3月:アップデートの過程で障害が発生
こうしたトラブルが、ソラナの価格にネガティブな影響を及ぼしたことも少なくありません。
最近はコインベースのレイヤー2ネットワークであるBaseも台頭してきており、トラブルの件数は減少傾向です。しかし、今後も大規模なトラブルが発生する可能性があることには注意する必要があります。
ソラナブロックチェーンの拡大
ソラナのブロックチェーンは高速かつ低コストな取引処理能力があることから、多くのDAppsの開発が行われています。イーサリアムに次ぐ立ち位置を築いており、今後NFTやDeFi、メタバース、ステーブルコインなどさまざまな分野への拡大が期待できます。
2023年12月には、ある投資家がソラナのブロックチェーン上の暗号資産のミームコインである「Silly Dragon」を約8,700円分購入し、22日後に2万倍以上増やし200万ドル(約2.8億円)の利益を得たとして話題になりました。
こうした事例がソラナに対する関心を引きつけ、新たな投資家や開発者がエコシステムに参加し、拡大に貢献する可能性があります。
まとめ
ソラナの価格は、2023年後半に短期的に大きく上昇しました。現在は市場全体が調整局面を迎えており、他の暗号資産よりも大きめに値を下げている状況です。SECによる訴訟も控えており、判決次第では価格に影響を与えることも予想されます。
2023年後半がそうであったように、2024年以降もソラナがアルトコイン市場の中心となる可能性があります。ぜひ今後もソラナの動向に注目してみてください。