Bittensor(TAO)は、個人の計算リソースを分散型AIエコシステムで共有する画期的なWeb3プロジェクトです。ネイティブトークンのTAOはDePIN※1銘柄として高い注目を集めており、すでに市場規模が7,000億円を超えています。
本記事では、Bittensorの概要やエコシステムの詳細、各ステークホルダーの役割と参加方法、またエントリー時に注意すべきポイントについて詳しく解説します。
※1 DePIN:分散型の物理インフラネットワークの略で、個人が持つコンピューターやWi-Fi、ストレージなどのリソースを提供し、その対価としてトークンを受け取れる仕組みのことです。
この記事の構成
Bittensor(TAO)とは?
出典:Bittensor
Bittensorは、P2P※1ネットワークを活用して、分散型のインテリジェンス市場を構築するWeb3プロジェクトです。デジタル商品(計算力、データ、予測モデルなど)を「インテリジェンス」として定義し、独自の通貨「TAO」で取引を行います。
プロジェクト参加者は、インテリジェンスを生産し報酬を得る「マイナー」、ネットワークを維持する「バリデーター」、またはAIを利用する「ユーザー」として分散型AIエコシステムに貢献します。
※2 P2P(Peer to Peer):ユーザー同士が直接通信する技術。
Bittensorが注目される背景
- DePIN市場の急成長
- 計算リソースの需要増
- コスト効率の良いAIソリューション
Bittensorが注目される要因として上記3点が挙げられます。まず、DePINとして、個人や企業が計算リソースを提供する新しいシステムが市場で評価されています。Bittensorの市場規模はすでに7,000億円以上です。また、AI開発競争が激化する中で、高性能な計算リソースへの需要が増加しており、Bittensorはその計算リソースをカバーするソリューションとして期待されています。さらに、コストパフォーマンスの高いAIサービスという点も多くのステークホルダーから支持を得ています。
TAOについて
出典:CMC
- 報酬として使える
- ネットワークの支払い
- 発行枚数に限りがある
TAOは、Bittensorネットワークに貢献した人に報酬として渡されるトークンがTAOです。また、Bittensorの中でAIを動かすサービス(データ保存や予測モデル)を利用する際にも支払いに使用されます。TAOは「最大発行数」が決まっていて、将来的な価値の維持も追求されています(最大2,100万トークン)。
Bittensorの運営情報
Bittensorの開発拠点に関する具体的な情報は公開されていません。Bittensorは分散型AIネットワークプロジェクトです。組織の性質上、特定の運営拠点を持っていない可能性があります。
一方で、創設者のジェイコブ・スティーブス氏については素性が明らかになっています。スティーブス氏は2011年から2015年にかけて、カナダのサイモンフレーザー大学(Simon Fraser University)で応用科学(数学およびコンピュータサイエンス)を学び、2016年から2018年までGoogleでソフトウェアエンジニアとして勤務していた経歴があります。その後、2019年にBittensorプロジェクトを開始しました。
Bittensorへの参加方法
役割 | 概要 | 必要な条件 |
マイナー | AIタスクを実行し報酬を得る | 計算リソースの提供
Bittensorネットワーク接続 |
バリデーター | マイナーの成果を評価し報酬を得る | 評価能力、ステーク(TAO) |
デリゲーター | トークンを委任し間接的に参加 | TAOトークン
Bittensor対応のウォレット |
ユーザー | AIサービスを利用 | TAOトークン、サービスアクセス |
開発者 | AIモデルやサービスを開発・提供 | プログラミングスキル、SDKの理解 |
Bittensorプロジェクトには、上記表の役割で参加(貢献)することができます。マイナーとして参加するためには2 vCPU + 8 GB memory以上の仮想環境で稼働できる計算リソースが必要です。他の役割ではTAOが必要になります。
1. マイナー(Miner)
マイナーは、ネットワーク上でAIタスクを実行する役割を担います。例えば、高性能なコンピュータでモデルを動かし、画像認識や予測分析を行います。その成果に応じてTAOトークンを報酬として受け取ります。適切なリソース(2 vCPU + 8 GB memory以上)とプログラミングスキル(Python)を有し、参加料(最低2.5 TAOの登録費用)を支払えばマイニングに参加できます。
2. バリデーター(Validator)
バリデーターは、マイナーのアウトプットを評価し、その品質に基づいて報酬を分配する役割を担います。参加条件はTAO保有者の上位64人以内となることです。そのうえで、TAOのステークを実施します。バリデーターは直接AIタスクを実行する必要はありません。マイナーに対する評価実績によって報酬を得ます。
3. デリゲーター(Delegator)/ノミネーター
デリゲーターは、自分のTAOトークンを信頼できるバリデーターに委任し、間接的にネットワークに参加します。メリットは、専門知識がなくても参加できる点です。しかし、信頼できるバリデーターを選ぶ必要があり、選定を誤ると期待する利益が得られない可能性があります。
4. ユーザー(User)
ユーザーは、Bittensorネットワークが提供するAIサービスの利用者です。TAOトークンを支払い、画像認識モデルやデータ予測ツールなどを利用します。高スペックなGPU/CPUを持っていなくても、高度な計算リソースを使えます。
5. 開発者(Developer)
開発者は、Bittensorのオープンソースプラットフォーム上で新しいAIモデルやサービスを構築します。自身が開発した技術をネットワークで普及させることができます。開発者には高度なAI/MLスキル、プログラミング能力、およびBittensorのAPIやSDKに関する知識が求められます。
TAOの購入方法
TAOは国内のCEX※2で購入ができません。よって、国内CEXから海外CEXへ送金した後に、特定のペアでトレードする必要があります。バリデーター、デリゲーター(ノミネーター)、AI利用ユーザーとして参加を検討されている方に向けて、TAOの一般的な入手方法を解説します。
※2 CEX(Centralized Exchange:中央集権型取引所)
1.国内CEXで送金銘柄を購入
まずは国内CEXで海外CEXへ送金するための銘柄を購入します。銘柄選びでは、送金速度と価格の安定性が重視されます。最も的確なのがXRP(リップル)です。多くのCEXで取り扱っており、送金スピードも速く、購入しやすいのでおすすめです。ただし、銘柄選択は任意です。すでに保有しているBTCやETHでも問題ありません。
2.海外CEXへ送金、トレード
利用する海外CEXは、TAOを上場しているところを選択する必要があります。世界的大手取引所では基本的にTAOをトレードできます。なお、XRPと直接TAOをトレードできる取引所は多くありません。一度USDTにトレードした後にTAOを購入するといった流れになります。
3.ウォレットへ入金
ウォレット名 | 特徴 | 用途 |
Polkadot-JS | 信頼性が高い公式ウォレット | ステーキング、トークン管理 |
Talisman | 初心者向けの使いやすいUI | ステーキング、トークン管理 |
Trust Wallet | Binance公式ウォレット | ステーキング、トークン管理 |
Tensor Wallet | Bittensor専用で最適化されたウォレット | ネットワークの操作 |
TAOを管理できるウォレットへ入金します。Bittensorに参加するためにはウォレット接続が必要だからです。
上記表はTAOを管理できるウォレットリストです。BittensorネットワークはPolkadotのパラチェーン※3であるため、Polkadot-JSウォレットでTAOを管理できます。Talismanも使いやすいウォレットです。
※3 パラチェーン:メインのブロックチェーン(リレーチェーン)に接続される独自の機能を持った派生チェーンのこと。Polkadotのエコシステムでは、複数のパラチェーンが並行して動作することで、スケーラビリティと相互運用性を実現しています。
Bittensorの注意点
Bittensorは、計算リソースを使って報酬を得られる魅力的なシステムですが、費用や競争、セキュリティなどには注意が必要です。参加する前に準備をしっかり整えましょう。
初期費用と暗号資産のボラティリティ
ネットワークに参加するには一定の計算リソースとTAOが必要です。特に、計算リソースの導入にはコストがかかります。すでに保有している計算リソースを利用できるか検討してみましょう。また、もらえる報酬はAIモデルの評価や市場の状況によって変わります。せっかく稼いだTAOが市場価格の下落によって価値のないものになる可能性もあります。
技術の知識と競争
プロジェクト参加において、AIや分散型ネットワークについての知識が必要です。また、他の人と競争するため、良い結果を出すためのスキルや工夫が求められます。プログラミング知識も必要です。公式のガイドやチュートリアルを活用して、必要なノウハウを事前に学んでおきましょう。
セキュリティとルール/規制
ウォレットの操作ミスでトークンを失うリスクがあります。気をつけていても、送信時のアドレス入力ミスやネットワークミスで暗号資産をロストすることも考えられます。ノンカストディアル型ウォレット※4の操作ミスは自己責任です。補償はありません。また、国ごとの暗号通貨のルールが変わることもあります。海外CEXから国内CEXへ送金が規制されるようなことがないとは言い切れません。国の法律やルールは常に最新のものを確認しておきましょう。
※4 ノンカストディアル型ウォレット:ユーザー自身が秘密鍵を管理する暗号資産ウォレットのこと。取引所などの第三者に資産管理を依存せず、完全な自己管理が可能である一方、秘密鍵を紛失すると資産にアクセスできなくなるリスクがあります。
まとめ
BittensorはAI開発を支えるDePINとして、計算リソースを個人や企業に提供します。柔軟なゲートウェイを持ち、マイナー、バリデーター、デリゲーターといった多様な役割で報酬を得ることが可能です。また、ネイティブトークンTAOの価格上昇にも期待が集まっています。すでにDePIN銘柄市場でトップクラスの存在感を示すTAOは、Web3とAI融合の象徴となっています。計算リソースの余剰がある方は、これを機会にTAOをマイニングしてみてはいかがでしょうか?