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【完全版】DAO(自律分散型組織)とは?特徴や今後の課題、有名なDAOまで徹底解説

解説系記事

ここ最近の暗号資産(仮想通貨)界隈では、DAO(自律分散型組織)という組織形態が改めて注目されています。

しかし、DAOという組織形態が作られてからはまだまだ歴史が浅く、どのような特徴を持つ組織なのかわからない方も多いのではないでしょうか?

この記事では、そんなDAOの概要や特徴、メリット・デメリットまで初心者にもわかりやすく解説していきます。

また、現在で最も一般的な組織形態である「株式会社」との違いや、2つのDAOのプロジェクトについてもご紹介していくので、ぜひ最後まで参考にしてみてください。

DAO(自律分散型組織)とは?

早速ですが、まずはDAOという組織形態の特徴について解説していきます。

DAOに注目が集まってからまだ歴史が短いため、人によってDAOに対する認識が別れることも多いのですが、初心者の方にも可能な限りわかりやすくご紹介していきます。

DAOについての理解を深めたい方は、ぜひ詳しくチェックしてみてくださいね。

DAOとは中央集権的な管理者がおらず、自律的に運営される組織のこと

DAOという組織についてしっかり把握するためにも、まずはその言葉の意味から確認していきましょう。

DAOとは「Decentralized Autonomous Organization」という英語の頭文字をとった略語であり、日本語では「自律分散型組織」と呼ばれています。

「自律分散型組織」という言葉だけではなかなかわかりにくいですが、主に以下の2つの特徴を持った組織形態と定義することができます。

1. 中央集権的な管理者(権力者)がいない分散された組織
2. 自律的に運営され、成長していく組織

つまり簡単に言うと、会社の社長がいなくとも、勝手に運営されて成長していく組織と言うことができますね。

本当にそんな運営方法で組織が回っていくのかという疑問はさておき、DAOはそういった運営方法が採用されている組織であることはしっかり理解しておきましょう。

国籍・年齢・性別問わず、誰でも匿名でパーミッションレスに運営に参加できる

DAOの大きな特徴として、国籍・年齢・性別など関係なく、誰でも匿名で運営に参加できることも挙げられます。

従来の株式会社であれば、ほとんどのケースにおいて匿名で働くことなどできませんし、必ずと言ってよいほど身分証明書の提示が求められますよね。

また、ここ最近では日本でも海外からの外国人労働者も多く見られますが、依然として国籍による就業の制限があることは紛れもない事実でしょう。

しかし、DAOであれば国籍・年齢・性別に関係なく、どんなバックグラウンドを持つ人であっても匿名でパーミッションレス(許可を必要とせず)に運営に参画することが可能です。

加えて、多くのDAOでは仕事をインターネット上でできるため、働く場所も制限されません。

DAOという組織の形が今後さらに普及することで、誰にとってもボーダーレスかつ機会均等となり、本当の意味での実力主義の世界が広がっていくことが予想できるのではないでしょうか?

誰もが許可なく使える公共的なモノ(インフラ・資源など)を作る組織

全てのDAOに該当するわけではないかもしれませんが、DAOは「誰もがパーミッションレスに使える公共的なモノ(インフラ・資源)を作る組織」と言うこともできるでしょう。

例えばビットコインであれば、誰もがパーミッションレスに使うことができる「お金や金融システム」を作り上げているDAOと定義することができます。

少しわかりにくい部分でもあるので、ここではビットコインとイーサリアムという2つのDAOを例にしてわかりやすく解説していきます。

Bitcoin(ビットコイン)

まずDAOの例として、2008年に「サトシ・ナカモト」という人物によって世界で初めて作られた暗号資産であるBitcoin(ビットコイン)が挙げられます。

ビットコインは数あるDAOの中でも最も完璧な形で運営されているDAOであり、開発時に作成されたプログラミングコードに沿って運営されています。

一般的な会社の社長といった中央集権的な管理者がいないにも関わらず、プロジェクトの開始から大きな成長を続けていることは、以下のチャートを見れば明らかと言えるでしょう。

ビットコインは、世界中の誰もがパーミッションレスに利用できるお金・金融インフラを作っているDAOとなっており、事実ビットコインのネットワークを利用するために何かアカウントを登録したり、誰かの許可を得る必要は一切ありませんよね。

しかし、銀行など従来の中央集権的な金融システムにおいては、利用者の国籍などによってサービスを使うことができないケースもありますし、良し悪しは別として犯罪者やテロリストはそもそもネットワークから排除する方針が取られることが一般的です。

そういった意味においては、ビットコインは誰でもパーミッションレスに利用できる金融システムを作っているDAOと言えるのではないでしょうか?

Ethereum(イーサリアム)

次に、2013年に当時大学生であったロシア系カナダ人のヴィタリック・ブテリン氏によって構想され、ビットコインに次ぐ第2位の時価総額を誇るEthereum(イーサリアム)をご紹介していきます。

イーサリアムは、誰もが許可なく使えるアプリケーションのインフラを開発しているDAOとなっており、現在最も多くのDappsが開発されているブロックチェーンとなります。

また、イーサリアムには非営利の「イーサリアム財団」という組織はありますが、株式会社の社長的なポジションの人物はおらず、分散的かつ自律的に運営されているDAOと言えるでしょう。

通常、何かのアプリケーションを開発する際にはサーバーやクラウドサービスを利用・契約する必要がありますが、中でも有名なサービスとしてAmazonが提供しているAWS(Amazon Web Services)が挙げられますよね。

しかし、AWSを利用するためには匿名で契約することはできませんし、利用者の国によってはサービスの利用を制限していることがあります。

事実、2022年3月8日には、ロシアとベラルーシにおいてAWSの新規契約を停止する発表が行われました。

米Amazon Web Servicesは3月8日(米国時間)までに、ロシアとベラルーシにおけるクラウドサービスの新規契約を停止したと発表した。「AWSとAmazonはウクライナの人々と世界を積極的に支援しており、今後も続けていく」(AWS)という。

出典元:AWS、ロシアでの新規契約を停止

しかし、イーサリアムであればAWSのように利用契約などをする必要がなく、誰でもパーミッションレスに様々なDappsを開発することができます。

人によっても意見は異なるかもしれませんが、イーサリアムは誰もが使える公共的なアプリケーション開発のインフラを作っているDAOと言うことができるでしょう。

DAOのメリット

ここまで、DAOの概要や特徴を解説してきましたが、次にDAOという組織形態のメリットをご紹介していきます。

株式会社と比較したメリットも解説していくので、ぜひ詳しく確認してみてください。

組織の運営がブロックチェーン上で行われるため透明性が高い

DAOという組織形態の1つ目のメリットとして、運営の透明性が高いことが挙げられます。

DAOでは組織としての意思決定を行う際に誰でも参加することができるグループチャットで議論されるため、株式会社のように意思決定の過程がクローズドにされるということはありません。

また、最終的にはガバナンストークン保有者の投票によって組織の方向性が決められ、かつブロックチェーンにその結果が刻まれるので、後から改竄することも不可能でしょう。

DAOの運営で頻繁に使われるスマートコントラクトにおける取引・契約内容も確認できるなど、従来の組織と比べてもDAOは非常に運営の透明性が高い特徴があると言えます。

株式会社と比較すると一部の経営者に富が集中せず分配されやすい

DAOでは株式会社とは異なり、一部の経営者・株主などに富が集中しにくいというメリットも挙げられます。

先ほどもご紹介したように、本質的な意味のDAOにはそもそも中央集権的な組織の管理者がいないため、経営者のみが大きな利益を得るのではなく、参加者全員で利益を分配しようといった考え・思想があります。

ビットコインを例に挙げると、もともとはサトシ・ナカモトというリーダーは存在したものの、現在ではいわゆる社長的なポジションの人物はいませんし、それぞれの参加者がマイニングをはじめとした自分の役割に応じた利益を得て、組織が運営されていますよね。

近年、GAFAMなど大手企業に富が集中しすぎていることが問題としてよく取り上げられますが、これからDAOという組織がより世界的に普及することで、多くの人々に富が分散される世界が来る可能性も考えられるでしょう。

参加者が自主的にDAOの活動を支援・宣伝するインセンティブが強い

DAOという組織形態では、参加者が自主的にDAOの活動を支援・宣伝する傾向があることもメリットとして考えられます。

対して、株式会社では社員が自主的に宣伝を行ったところで、報酬(給料)が分配されるケースは少なく、インセンティブが少ないと言わざるを得ません。

ところが、例えば暗号資産のレンディングサービスを提供しているDAOであれば、プロジェクトの参加者・利用者が増加することでガバナンストークンの価格上昇が見込まれるため、トークンホルダーにとっては自主的に宣伝・支援を行うインセンティブが発生します。

また、NFTの発行をしているDAOであっても、Twitterなどで自ら宣伝することにより注目が集まり価格の上昇が見込まれるので、そのNFTを保有しているDAOの参加者にとってはメリットが大きいですよね。

DAOではありませんが、2022年4月30日にBAYC(Bored Ape Yacht Club)を作っているYuga Labsが手がけるメタバース空間「Otherside」のセールが行われましたが、このセールを実施するにあたってYuga Labsは特に広告費はかけておらず、ほぼNFTホルダーによるTwitterなどでの拡散のみで約410億円という莫大な売り上げを記録しています。

「Bored Ape Yacht Club(BAYC)」のメタバースプロジェクト「Otherside」は30日、NFT(非代替性トークン)セールを開始。3時間以内に55,000個のNFTが売り切れた。

また、販売に伴いイーサリアム(ETH)のブロックチェーンが混雑し、ガス代(取引手数料)が、一時最大で約6万円以上まで高騰する事態が発生した。

メタバース「Otherside」は、複数の人気NFTの世界をつなぐオープンワールドゲーム。今回のNFTは、このOtherside上のランドセールだった。合計5万5,000個の土地が一律305APE(販売時は75万円相当)で販売され、売上は、約410億円以上に達した。

出典元:BAYCのメタバース「Otherside」、NFT売上400億円以上を記録

Yuga LabsはDAOではないため少し異なるかもしれませんが、このように参加者自らがプロジェクトの宣伝を行ってくれる傾向があるのはDAOという組織のメリットと言えるでしょう。

DAOのデメリットや抱える課題・問題点

ここまでDAOという組織形態のメリットをご紹介してきましたが、もちろんデメリットも存在しています。

最後に、現在のDAOが抱えているデメリットや今後の課題などに焦点を当てて見ていきましょう。

現状のほとんどのDAOが自律的でも分散性があるわけでもない

DAOという組織の特徴として、中央集権的な管理者がいないという分散性がありつつも、自律的に運営されていく組織であることを解説していきました。

しかし、現在存在するDAOと呼ばれる組織は以下の2つのパターンであることが多く、自律的に運営されているわけでもなく、なおかつ分散性があるわけでもありません。

・運営初期は中央集権的なリーダーが指揮をとりつつ、徐々にDAOに移行していく組織
・当初からDAOという組織形態はとりつつも、うまく運営を行えていない組織

先ほどご紹介したDAOの完成形であるビットコインにおいても、当初はサトシ・ナカモトという中央集権的なリーダーがプロジェクトの指揮を行っていたことで知られています。

DAOは誰にも平等であり、民主的で人類の理想に近い組織形態ではありますが、現在のDAOの立ち位置を考えると、まだまだ発展途上の組織であることがよくわかりますよね。

組織の意思決定が遅くなることがある

DAOのデメリットとして、組織としての意思決定が遅くなってしまうことも挙げられます。

ビットコインやイーサリアムなどのDAOには存在していませんが、多くのDAOでは運営の方針について投票することができるガバナンストークンが発行されており、保有者による投票によって組織の意思決定が行われています。

しかし、そういった民主的な運営方針が採用されていることにより、組織としての意思や方向性を決定するスピード感が遅くなってしまうことはデメリットとして考えられるでしょう。

法的な整備が整っていない

DAOはまだ誕生して間もない組織であるため、世界各国でも法的な整備が追いついていません。

特に、DAOで発生した収益はどのように処理されるべきなのか?税金はどうすれば良いのか?など様々な問題があり、対応は各国の政府によっても異なっています。

また、そもそもDAOは誰かの持ち物というよりも参加者全員の「共有物」であるため、DAOで獲得した収益に対する税金はどこの国で支払われるべきなのか?など、課題は山積みと言えるでしょう。

まだ発展途上の組織形態と言えばそれまでかもしれませんが、今後の各国の政府の対応によっては運営において大きな問題が発生する可能性があることも考慮する必要があります。

ハッキングされる危険性がある

DAOのデメリットとして、ハッキングの危険性があるということも知っておく必要があるでしょう。

DAOのハッキングの危険性を理解するためにも、ここでは2016年に発生した「The DAO事件」をご紹介していきます。

THE DAO事件とは、2016年に行われたICOで大量のETHが不正流出したことに端を発する。イーサリアム上の分散型投資ファンド「THE DAO」で、資金移動システムの脆弱性をついたハッキングが発生し、集められた資金の3分の1にあたる364万ETHが流出。これは当時の全ETH発行量のおよそ5%を占めたことから、イーサリアムコミュニティのみならず、仮想通貨業界に大きな波紋を投げかけた。

引用元:2016年THE DAO事件のハッカー判明か、仮想通貨記者が特定

事件の詳細は上記の通りですが、簡単にいうとイーサリアム上に書かれたスマートコントラクトのコードに欠陥があり、そこをハッカーに狙われ資金が流出した事件となっています。

当時は非常に大きな話題となった事件であり、この事件をきっかけにイーサリアムのハードフォーク(ブロックチェーンの分岐させ、資金流出の不正を事実上取り消した)が行われ、現在のイーサリアムクラシックが誕生しました。

いずれにせよ、DAOではスマートコントラクトを利用して運営されることが多いため、バグがあることによりハッキングされてしまう可能性があることは知っておいて損はありません。

参加者への報酬体系が難しい

DAOの最後のデメリットとして、参加者への報酬体系が難しいことも考えられます。

一般的な株式会社であれば、明確な労働時間と報酬が契約で決められていますが、DAOはそういった決まりはなく、基本的にはコミュニティやプロジェクトへの貢献度で報酬が決定します。

完全に成果報酬型の働き方であり、かつ報酬額はガバナンストークンの投票で決定されるため、DAOによってもその報酬額は様々と言えるでしょう。

これからDAOで働く人々も増えていくことが予想されますが、明確な報酬が決まっていないことは少しデメリットに働く可能性もあるかもしれません。

DAO(自律分散型組織)の特徴やメリット・デメリットまとめ

ということで、今回は現在の暗号資産業界で再度注目をされているDAO(自律分散型組織)の特徴やメリット・デメリットなどをご紹介してきました。

DAOという組織自体がまだ誕生したばかりということもあり、本質的な意味のDAOはまだまだ少ない状況ですが、これから様々なプロジェクトがDAOという組織で運営されることは十分に予想できます。

法整備も十分に行われておらず、今後の課題・デメリットも多いDAOではありますが、従来の株式会社にはない多くのメリットがあることも事実です。

まだ発展途上の組織形態ではありますが、ブロックチェーン・暗号資産をより深く理解するためにも、今後のDAOの動向には注目しておく必要があるでしょう。

GM

gm

2017年から仮想通貨投資を開始し、2020年から本格的にweb3.0の世界に参入。現在はフリーランスとして暗号資産やブロックチェーン、NFT、DAOなどweb3.0に関する記事を執筆。NFT HACKでは「初心者にもわかりやすく」をモットーに、読者の方々に有益となる記事の作成を行なっている。
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