暗号資産(仮想通貨)の話題になると、ビットコインと同じくらい話題にのぼることが多くなったイーサリアムですが、皆さんはどれくらいイーサリアムについてご存じでしょうか?
暗号資産の時価総額の中ではビットコインの次にイーサリアムが大きいので、投資目的で注目している人も多いでしょう。
この記事の構成
イーサリアムとは
イーサリアムはビットコインとは異なる多機能なブロックチェーンをベースにした暗号資産であるため、今では世界中で注目を浴びています。
ここではこれまであまりイーサリアムに興味がなかった人のために、その詳細をわかりやすく解説していきます。
イーサリアムの起源と歴史
画像引用:Twitterヴィタリック・ブテリン氏公式プロフィールより
イーサリアムは2013年に、当時まだ19歳だったヴィタリック・ブテリン氏によって考案された暗号資産で2015年に一般公開されました。
19歳という年齢で暗号資産に興味を持ち、ビットコインに関する雑誌「ビットコインマガジン」の創設にもかかわっていたというから驚きですね。
彼は、ビットコインコミュニティのプログラマーで、小学生の頃からプログラミングを熱心に勉強しており、2012年には高校生対象のプログラミング能力を競う国際大会「国際情報オリンピック」で銅メダルを獲得した実績の持ち主です。
しかし、彼は2013年にビットコインコミュニティにおいて、「ビットコインのシステム上でアプリケーションを簡単に作れるような汎用性の高いプログラミング言語が必要である」ことを主張しましたが受け入れられませんでした。
彼はこのことをきっかけとして、イーサリアムを考案し、その思想をまとめたホワイトペーパーの発表へとつながっていきます。その後大学を退学し、暗号資産に関するより詳細な情報を知るために世界を旅してビットコインのプロジェクトを見てまわったのです。
その旅の中でプロジェクトに携わる人々がブロックチェーンを暗号資産以外の目的、例えば分散型送金システムや商品売買、個人認証などのさまざまな用途に活用していることを知りました。
そして当時のブロックチェーンにはそれらをサポートする十分な機能がないとの判断から、イーサリアムブロックチェーンのアイデアを具体的に進化させていったのです。「あらゆる目的のために使えるブロックチェーンをつくる」ということがヴィタリック・ブテリン氏が目指す目標となりました。
そうして、開発に開発を重ね、2015年に公表されたのがイーサリアムでした。
イーサリアムの時価総額
イーサリアムの通貨記号は「ETH(イーサ)」です。2015年に6,000万ETHが発行され、その後は年間1,800万ETHを上限に新規発行されています。ビットコインは発行上限が2,100万BTC(ビットコイン)と決められていますが、イーサリアムには上限がないため、毎年発行されるのです。
2015年にイーサリアムが一般公開されてから7年が経過しましたが、暗号資産としてどれだけの価値があるか見てみましょう。
参考サイト:CoinMarketCap
上表の時価総額ベスト5から分かる通り、1位のビットコインと2位のイーサリアムが3位以下と比べて圧倒的なシェアを持っています。上位2つでなんと暗号資産時価総額全体の約65%を占めています。まさに暗号資産のツートップと言っていいでしょう。ちなみに、世界で扱われている暗号資産の数は、2022年6月現在約10,040種類もあります。
暗号資産と言えばビットコインが真っ先に浮かぶ方が多いかもしれません。というのも、ビットコインは時価総額が最も大きい暗号資産の基軸通貨だからであり、価値の交換や決済手段を管理者なしで行えることをメインの目的で作られたプラットフォームです。ビットコインは発行総量の上限が2,100万枚と決まっており、実際の金(ゴールド)も埋蔵量が決まっているという希少性が似ていることより「デジタルゴールド」と呼ばれています。
イーサリアムはそのビットコインのお金の交換や決済システムに特化した利用目的の上に、アプリケーション開発が可能な暗号資産です。そのため、世界中のコンピュータが協力してプログラムの実行環境を提供していると捉えられることから、イーサリアムを「ワールドコンピュータ」と呼ぶこともあります。
ブロックチェーンとは
ビットコインやイーサリアムなどの暗号資産での通貨のやりとりをはじめとした様々な取引がなぜ成立するのか。それは、ブロックチェーンという技術があるからです。この技術が、今後の我々の生活に大きな影響を持つことは間違いありません。
ブロックチェーンは暗号資産の根底にあるシステムです。ビットコインやイーサリアムはもちろんのこと、どんな暗号資産もブロックチェーン技術を用いて開発・運用されています。
そのブロックチェーンは、暗号化技術、コンセンサスアルゴリズム、P2Pネットワーク(Peer to Peer Netwook)、そしてDLT(分散型台帳技術)という4つの技術から成り立っています。
これらの技術は一つ一つがまったくの新しいものではなく、すでにインターネットの世界において以前から存在したものであり、その4つを組み合わせて出来上がったものがブロックチェーンです。
以前から存在した技術といってもご存じない方も多いと思いますので、それぞれを分かりやすく説明していきます。
暗号化技術
暗号化というのは、情報を受け渡す際にその情報を盗み見てもわからないように、元の情報を一定の規則に従って変換する技術です。そのような場面では、入力したデータの内容は第三者にわからない形式に変換されているのです。そうして送られたデータは、受取先で元に戻されます。
ブロックチェーンでは暗号化の方法として「公開鍵暗号方式」という、暗号を作る鍵である「公開鍵」と解く鍵である「秘密鍵」からなる方式が利用されています。
例えばAさんからBさんへ、暗号資産1ETHを送る場合、次の流れになります。
- まずBさんからAさんに公開鍵を送る
- Aさんは公開鍵を使ってデータを暗号化
- 公開鍵とデジタル署名した暗号データをBさんに送る
- Bさんは公開鍵のペアである秘密鍵でデータを復号する
- 公開鍵と秘密鍵がペアで間違いなければ送金完了※ デジタル署名とは、データの作成者や送り主を証明するための電子的な署名です。これにより署名者によってデータが作成され改ざんされていないことを証明できます。
公開鍵によって暗号化されたデータは、秘密鍵でしか復号できません。秘密鍵は受け取る人しか持っていませんので、第三者がデータを不正に入手しても、秘密鍵がなければ確認できない仕組みになっています。
コンセンサスアルゴリズム
コンセンサスアルゴリズムとは、直訳すると「合意形成のための計算方法」ですが、ブロックチェーンでは、不特定多数の参加者の間で「間違いのないことを証明するためのルール」というイメージです。
ブロックチェーンは取引情報が集まった情報がつながったものですが、そのブロックを追加するときにデータの間違いがないか確認します。この作業をマイニング、作業をする人をマイナーと言います(詳細後述)。
マイニングするときに、ハンスと呼ばれている鍵が必要で、それは1~43億までのランダム数字を指します。この鍵はイメージ的には自転車の暗証番号式の鍵で、桁数が43億あります。つまりマイニングは、この鍵の番号を探す膨大な作業になります。
この作業を多くのマイナーが一斉に始めて、一番早く鍵の番号を見つけた人がブロックの追加を承認し、その報酬として暗号資産をもらいます。
このように一番仕事量(計算量)が多かった人に対して、承認権限を与えるのをPoW(Proof of Work:プルーフ・オブ・ワーク)と呼び、多くのブロックチェーンで使われているコンセンサスアルゴリズムになります。
PoWのおかげで、ブロックチェーンの正確性や信頼性が確保されています。
P2Pネットワーク (Peer to Peer Network)
Peer(ピア)とは「仲間」や「対等」という意味で、対等な関係でつながっているネットワークを「P2Pネットワーク」といいます。
P2Pネットワークに参加するコンピュータはすべて対等な機能を持ち、一部のコンピュータが故障や停止しただけで全体が影響をうけることはなく、長期にわたって安定した稼働を続けることが可能です。
ブロックチェーン上では、このP2Pネットワークですべてのコンピュータが同じデータを保持しており、全員がその同じデータを参照することを保証しています。
DLT(分散型台帳技術)
DLTというのは同じ台帳を参加者みんなで持つ技術基盤という意味です。ネットワーク上のすべてのコンピュータで、同じ台帳を分散化して管理、監視していく技術です。
DLTは暗号技術を利用して不変で安全なストレージが構築されており、一度保存されたデータは変更や改ざんができないようになっているのが優れた点です。
中央集権的な台帳を活用している銀行ではデータが中央システム上にありサイバー犯罪に弱いですが、分散型台帳はネットワークのすべてのコンピュータが同時に攻撃されないと影響を受けないので、サイバー犯罪の影響を受けにくくなっています。
DLTを採用しているブロックチェーンでは、マイニングの際に悪意あるマイナーによってネットワーク全体の計算能力の過半数(50%以上)が支配される場合、二重支払いなどの不正取引やマイニングが独占される事態が発生する可能性があり、これを「51%問題」といいます。
しかし、50%以上という膨大な計算能力とコストが必要とされるため、現実的ではないと考えられています。また、「51%問題」が起こることによるそのブロックチェーンの価値の低下は、仕掛けたマイナーにとっても利益につながりにくいため、高いコストをかけてまで実行することはないと思われます。
プラットフォームとは
ブロックチェーンは上記の4つの技術からつくられたプラットフォームのことです。プラットフォームは、最初の暗号資産であるビットコインの「Bitcoin Core」から始まり、「Ethereum」「EOS」など非常に多くの種類があります。
知名度や機能面の良さで代表的なものは下表の通りです。
これらのプラットフォームは、その主な用途でゲーム開発などのBtoC企業向けや、業界プラットフォーム開発などのBtoB企業向けなどに分かれます。
イーサリアムブロックチェーンの特徴
イーサリアムブロックチェーンの大きな特徴は、スマートコントラクトというイーサリアム上の誰にも管理されないアプリケーションを開発することができる仕組みです、
スマートコントラクト
世の中に出た最初の暗号資産ビットコインは、暗号資産の取引にほぼ特化したブロックチェーンでした。しかし、イーサリアムブロックチェーンにとって、通貨取引システムは機能の1つでしかありません。
スマートコントラクトは、文字通り計画を賢く実行する技術です。具体的にはブロックチェーンに取引内容を記録した契約を、自動的に実行することを可能にします。
例えば「A君へ1週間後に自分の口座から1ETHを送金する」という契約をイーサリアムブロックチェーンへ記録すると、その期日になるとその契約が自動的に実行されるという仕組みです。
その送金作業に銀行などの金融機関が絡んでおらず、管理者なしでダイレクトに処理されますが、それが人がいないところでも自動的に履行されるのがスマートコントラクトの優れた点であり、ビットコインのブロックチェーンにはない機能です。
この考え方は1994年に暗号学者であるニック・スザボ氏が提唱したもので、その後イーサリアムブロックチェーン上で稼働するスマートコントラクトとして、ヴィタリック・ブリテン氏によって具体化されました。
この仕組みは自動販売機によく例えられます。自動販売機で100円のブラックコーヒーを買う場合、コインを投入して商品を選択しボタンを押します。そうすると取り出し口からブラックコーヒーが出て来るというの流れが自動化されています。
スマートコントラクトでも、こういった取引が実行可能です。この「100円を投入する」「商品を選択する」という条件を定義し、それに見合う作業が実行されたときに自動的に商品を提供するというプログラムを、ブロックチェーンに記録して稼働させることが可能です。
前述のDTL(分散型台帳技術)のところで説明したように、ブロックチェーンに記録された情報は参加者全員がコンピューターやサーバー上で持つことになるので、改ざんが極めて困難という高い信頼性が確保できます。
また、P2P(Peer to Peer)が採用されていて中央管理者がいないため、余計なコストや手間、時間がかからないというまさにスマートなシステムです。
このように不特定多数の目でチェック可能な分散型情報管理によって、高いセキュリティのもとで、低コストでの契約管理及び実行ができるのがスマートコントラクトです。
DApps(分散型アプリケーション)のプラットフォーム
このようにイーサリアムブロックチェーンの最大の特徴は、「スマートコントラクトの技術を使って、アプリケーションを作るためのプラットフォームたりえる」ということが言えます。それを略して、DAppsプラットフォームと言います。
DAppsは、Decentralized Applicationsの略で、日本語にすると分散型アプリケーションとなり、管理者がいない状態で動かすことができるアプリケーションのことを言います。
この機能はお金の送金だけでなく、商品の売り買いなどの様々な場面で応用可能です。個人間だけではなく企業間の重要な契約やサービスの取引にも使えるので、将来がとても期待されています。
その証拠にイーサリアム企業連合という、イーサリアムを企業向けに活用することを目的として設立された団体もあります。
イーサリアム企業連合には500社以上が加盟しており、マイクロソフトやJPモルガン、KDDI、トヨタなど、誰もが知っている超優良企業も名を連ねています。
彼らがイーサリアムブロックチェーンの実用化を研究しているということは、将来、世の中に大きな変化をもたらす商品やサービスが出て来ることがおおいに期待できるでしょう。
独自トークンの発行~トークン規格につて
「トークン(token)」という言葉は、使われ方によって意味が変わることがありますので、まずそこを理解しておく必要があります。
トークン(token)を辞書で調べると「しるし」「象徴」という意味が出てきますが、暗号資産ではデジタル通貨や認証コードという意味合いで使われることが多いです。
デジタル通貨の場合、暗号資産は以前は仮想通貨と呼ばれていた為、トークン=暗号資産と混同されがちですが、実はトークンと暗号資産はイコールではなく明確な違いがあります。
暗号資産は、独自のブロックチェーン上で発行され流通するデジタル通貨のことです。例えばビットコインのブロックチェーンではBTC(ビットコイン)という暗号資産が使われ、イーサリアムのブロックチェーンではETH(イーサ)という暗号資産が使われています。
ブロックチェーンを独自に開発するのはとても骨が折れることですが、他のブロックチェーンに相乗りするのは非常に簡単です。イーサリアムブロックチェーンは、その相乗りをスムーズにする機能を持ったプラットフォームなのです。
イーサリアムブロックチェーンは、企業や個人が暗号資産や認証コードを簡単に発行することができるERC-20やERC-721などと呼ばれるトークン規格を持っています。
ECR-20は発行されるトークンの核となる基本機能を規格化したものです。この規格で作られたトークン同士は互換性を持ち、さらに暗号資産の利用に欠かせないウォレットや取引所との互換性も保証されます。
ERC-721はNFT(非代替トークン)の取扱をするための規格です。具体的にはデジタル情報に対して所有者や帰属情報を持たせて、それが唯一無二のものであることの証明を可能にするものです。(※NFTの詳細は後述)
これらの優れた規格によってイーサリアムブロックチェーン内で発行されるトークンが増え、ICO(Initial Coin Offering)と呼ばれる独自トークンの発行による資金調達を行う活動も活発になっています。ICOは株式で言えばIPO(株式公開)のようなものです。
イーサリアムブロックチェーンで誕生した主なアプリケーション
ここではイーサリアムブロックチェーンの最大の特徴であるスマートコントラクトを利用して開発された、代表的なアプリケーションの例を見ていきます。
DeFi (ディーファイ)
DeFi(ディーファイ)はDecentralized Financeを略したもので、日本語では分散金融とよばれるイーサリアムブロックチェーンを使った金融サービスのことです。UNISWAPや、Compoundといったものがあります。
暗号資産を預けることで利息をもらえたり、暗号資産の貸し借りをできるというような、実体経済における銀行などが行っている金融サービスをイーサリアムブロックチェーン上で提供できます。
DeFiは銀行などの金融機関という仲介者なしに当事者同士で取引できるので、仲介手数料をカットでき、さらに日本国外とも安い手数料での取引を可能としています。また、暗号資産を貸す場合も手数料がかからない分、高い金利を受け取れる可能性があります。
また、管理者がいないので口座開設する際に審査もなく、世界中どんな地域の人でも利用でき、2018年時点で、世界では銀行に口座を持っていない成人の人は約17億人いると言われています。そのような人達がDeFiを使うことによって金融サービスを利用できる人が飛躍的に増えるため、金融革命と言われているのです。
ただし、管理者がいないということは、利用時に何かトラブルが起きた場合はすべて自己責任となります。その点は利用の際に厳重な注意が必要となります。
Dex (デックス)
Dex(デックス)はDecentralized Exchangeの略で、ブロックチェーンを使った分散型取引所のことです。スマートコントラクトで管理運営されている取引所になります。
一般的に暗号資産で取引や投資をする場合は、ネット上で企業が運営している暗号資産取引所でビットコインやイーサリアム(ETH)などのコインを購入することになります。
この時に名前や住所、メールアドレスといった個人情報を登録する手間があり、取引所でもそういったやり取りにかける人件費等のコストが発生します。
しかし、Dexはスマートコントラクトで機能しているので、仲介者が存在せず当事者同士が直接取引できます。取引するのに個人情報を登録する必要もありません。
自分の個人情報が漏れる危険性も少なく、資金を取引所に送る必要もないので、管理はすべて自分が行うことになります。
このため、取引所でハッキングされたり、資金が盗まれたりする、ということもなくなります。さらに、Dexを使うとコストもほとんどかからないため、これから利用者が増えると見込まれています。
NFT (Non-Fungible Token)
NFTはNon-Fungible Token(ノン-ファンジブル トークン)の頭文字を取ったもので、最近テレビなどでもデジタルアイテムの新しい売買手段として時々取り上げられており、聞いたことのある方も多いかも知れません。
日本語にすると「非代替トークン」という意味で、デジタルアートなどデジタル商品の取引の際に、その商品がオリジナルで所有権は誰が持っているかなどを証明できるデジタル認証コードのことになります。
デジタル商品は簡単にコピーすることが可能であるため、NFTという真贋を担保するテクノロジーができるまでは、売買の対象として資産価値を持つことが難しい状況でした。
しかしイーサリアムブロックチェーンの登場で、取引履歴や利益などがすべて正確に記録され、NFTによってオリジナルであることも証明できるため、ネット上でのデジタルアート取引が活発になっています。
2021年3月にビープルという有名アーティストのNFTアート「Everydays:The First 5000 Days」という作品が、クリスティーズ・オークションにおいて75億円(当時)で落札されたため、NFTという言葉が一躍有名になりました。
CryptoKitties(クリプトキティーズ)
画像引用:CryptoKitties公式サイト
ブロックチェーン上で発行された仮想猫を収集したり育成したり売買できるゲームです。育成というところが以前大ブレイクしたタマゴッチに似ていますね。一匹一匹が固有の猫であり、その証明としてイーサリアムブロックチェーン上で、NFTを発行できるのが、このゲームがヒットした要因のひとつといわれています。
このゲームでは、猫同士を掛け合わせて、新しい猫を生み出すことも可能で、なんとそのバリエーションは40億種類以上もあるそうです。
希少性の高い猫は高値で売買されたりすることもあり、これまでに最高で約1200万円もの価格で売買されたことがあります。
イーサリアムブロックチェーンのアップデート
イーサリアムブロックチェーンは様々な機能を持っていることから人気が高まり、世界中で利用が広がってネットワークが巨大化してきています。
しかし、それによる処理速度の低下やガス代(GAS代)の値上がり、電力消費量の増大という、いわゆるスケーラビリティ問題を解決するのが当面の課題となっています。
ガス代というのはまさにガソリンのガスからきていて、ブロックチェーンを使ってコインを移動させたり、イーサリアムブロックチェーン上で、さまざまなアプリケーションを使う際に支払う手数料のことです。
イーサリアムブロックチェーンでは新しいブロックを生成する速度の上限が決まっているため、取引が増えすぎると動きが鈍くなります。優先して処理して欲しいと希望する場合は、ガス代を高く払う必要がでてくるなどします。
4段階のハードフォーク
そうした課題を解決するためにイーサリアムブロックチェーンは、大きなバージョンアップを繰り返してきました。2014年に概要が発表された時から、計画的にアップデートしていくという、ある程度のロードマップが示されていたのです。
そのアップデート計画は4段階のハードフォークと呼ばれ、下記のように進んできています。
・1段階:フロンティア(2015年7月30日)
このフロンティアアップデートによって暗号資産イーサリアムが一般公開され、マイニングやアドレス間の資金移動が可能になりました。(※マイニングの詳細は後述)
・2段階:ホームステッド(2016年7月30日)
本格的な始動となりブロックチェーンの分岐防止機能追加、ガス代の引上げ、採掘難易度の修正などが実施されました。
・3段階:メトロポリス(2017年10月・ビザンチウム、2019年・コンスタンティノープル)
ビザンチウムとコンスタンティノープルの2段階構成となっています。ビザンチウムではマイニングの難易度・報酬の調整がおこなわれ、決済時間の短縮化に貢献しました。コンスタンティノープルでは、コスト削減と処理速度の向上への調整が行われました。
・4段階:セレニティ(2020年12月1日よりスタート・通称「ETH2.0」)
イーサリアム2.0、通称ETH2.0の中核を担うブロックチェーンのビーコンチェーンが実装されます。
最重要アップデートのETH2.0
2020年12月1日に最も重要とされるETH2.0というアップデートがスタートしています。予定としては下記のとおりです。
・フェーズ1:2021年 ユーザーが利用する「シャードチェーン」実装
・フェーズ2:2021年 シャードチェーン・メインネット稼働、PoS移行
・フェーズ3:2021年 シャードチェーンの全稼働
ポイントはシャードチェーンの実装と、コンセンサスアルゴリズムのPoWからPoSへの移行です。
IT用語ですがシャーディングという言葉があり、「負荷の分散」を意味します。データを複数のサーバに分散させることによって、各サーバの負担を減らすことです。
ブロックチェーンでは「シャードチェーン」という複数のブロックチェーンにデータ処理を分散させて、スケーラビリティ問題を解決することを意味します。より具体的にはネットワーク負担を64個の新しいシャードチェーンに分散することです。
PoW(プルーフ・オブ・ワーク)からPoS(プルーフ・オブ・ステーク)へ
PoWとPoSはマイニングによる報酬を得る方法のことです。マイニングは重要ですので少し詳しく説明します。
イーサリアムブロックチェーンを使って送金をする時、銀行などの管理者を通す必要はありませんが、第三者の承認は必要です。
この承認という作業のことをマイニングというのです。マイニングをしている人はマイナーと呼ばれて、報酬として送信手数料を暗号資産で受け取っています。
このマイニング報酬にも種類があり、イーサリアムブロックチェーンではPoW(プルーフ・オブ・ワーク)という方法をとっています。ワークはWork、つまり仕事のことであり仕事量に応じてマイニング報酬が受け取れるのです。
PoWのマイニングは、早い者勝ちであるため、複雑な計算式を高速で処理するコンピュータが必要です。そのため、マイナーの専業化が進み、現在では個人で参加することはほぼ不可能です。
マイナーは、大規模な敷地に大型コンピュータを何台も詰め込み、フル稼働させるほどの設備投資が必要です。そこで消費される電気代も含めたコストは莫大で、環境経済の視点からみると無視できない大きな問題になってきています。
ビットコインも同様で、そのコストはアルゼンチン一国の電気代の年間消費量を上回るほど。いかに費用がかかるかわかりますね。
ETH2.0ではマイニング報酬方式が、PoS(プルーフ・オブ・ステーク)というものに変わります。PoSでは暗号資産THE(イーサ)を持っている人が、その保有量によって報酬を受け取れるようになります。その受け取れる推定年利は6~20%と言われています。
このPoSには32ETH(イーサ)をETH2.0の専用口座のようなところへ一定期間預けることで誰でも参加できます。
とは言っても、32ETHを2022年6月初旬のレートで換算すると約740万円になるので、一般の人が参加しようと思っても手が出しにくい金額です。
そこでひとつ朗報をお届けします。BINANCE(バイナンス)という世界大級の取引所で、ETH2.0のステーキングに参加できるサービスがあります。これを使えば最小0.1ETH(約23,000円)から参加可能です。
参加方法は出資できる金額をBINANCEの「ETH2.0ステーキング」へ預ければいいだけなので、興味がある人には嬉しい知らせかも。
ただし、一旦預けるとその口座はロックされてETH2.0のメインネットが稼働するまではステーキング解除ができませんので、1~2年程度は使う予定のない資金をBINANCEに預けることになります。
イーサリアムブロックチェーンの開発を指導するイーサリアム財団によると「新しいPoSシステムの導入により、マイニングで消費されるエネルギー量が99%以上削減される」と標榜しています。
エネルギー消費量が大幅に削減される理由は、早い者勝ちではなく、保有量で決まるため。ハードウェアは日常的に使用するコンピューターで十分とのこと。
この結果、エネルギー消費を大幅に抑えながら、多くの取引がイーサリアムブロックチェーン上で処理することが可能になりますので、分散化の推進とハッキングへの耐性がさらに高まると言われています。
しかし、イーサリアムブロックチェーンのコア開発者であるティム・ベイコ氏の情報によりますと、2022年6月に予定されていたPoSへの移行はまだ数か月先になるそうです。
イーサリアムブロックチェーンの将来
イーサリアムブロックチェーンに関して、起源や特徴、アップデート状況をできるだけわかりやすく解説してきました。
イーサリアムブロックチェーンが暗号資産を意味する言葉ではありません。スマートコントラクトによって、誰でも自由にアプリケーションを実装できる、様々な可能性に満ちたプラットフォームであることが、おわかりいただけたことでしょう。
前述の通り現在のイーサリアムブロックチェーンが抱えている主な課題は、高騰するガス代と消費電力の削減、処理速度の低下ですが、これらはマイニング方法をPoWからPoSへ移行することで解決可能な見込みとなっています。
移行のためのアップデートが遅延していますが、年内に完了するとの開発者からの情報があります。
また、イーサリアムの創始者ヴィタリック・ブテリン氏の話では、イーサリアムの開発は、現時点で50%であり残り50%を5つのマイルストーンで6年かけて消化していくとのことでした。
イーサリアムブロックチェーン入門・まとめ
イーサリアムはヴィタリック・ブテリン氏によって、2015年に公開された暗号資産です。2022年時点で、1万以上ある暗号資産の中でも、時価総額第2位まで成長した実力は、その優れたイーサリアムブロックチェーンの技術の証明でもあります。
イーサリアムの開発は現時点で50%であり、残り50%を5つのマイルストーンで6年かけて消化していくことにより、今後のさらなる発展に世界が注目しています。