NFTFiとは、NFTを担保にして、暗号資産を借りることができるプラットフォームで、まだその数は非常に少なく、今後注目されていくカテゴリーの一つです。この記事では、NTFiの一例を紹介します。
この記事の構成
NFTの運用における問題点
結論から言うと「流動性の低さ」です。
NFTは暗号資産と違い、購入する相手がいないと売買が成立しません。
また、購入した金額の半分だけ運用したいなどの柔軟な使い方もできませんし、購入した金額より安く販売しなくてはいけない場合もあります。
このように、NFTが流通するにしたがって、資産として運用する難しさが浮き彫りになってきました。
NFTFiの役割と位置づけ
このような資産運用問題を解決するのがNFTFiです。
先述した通り、NFTを担保にして暗号資産を借りることができるプラットフォームで、NFTとDeFi(暗号資産の貸し借りなどができるサービス)を足したサービスなのでNFTFiと呼ばれます。
NFTFiの登場は、1つで数億円の価値を有するといわれる高額NFTを所持しているユーザーにとっては、運用の幅が広がることを意味し、同時に低迷気味になっていると言われているNFTへのユーザーの流入が増えることも期待されています。
Pine Protocolについて
現在、世界中で存在するNFTFiのプラットフォームは類似のサービスを含めても一桁台で、Defi等に比べても圧倒的に少ないです。
今回はその中で、2022年3月にlaunchした新しいプラットフォームである「Pine Protcol」について紹介していきます。
特徴
今までのNFTFiは貸し手と借り手をマッチングさせるプラットフォームで、双方で交渉などを行う必要があり、借り手が資金を借りるまでにある程度の時間を要していました。
そこでPineProtcolは、融資までの時間短縮を目指し、貸し手側が暗号資産プールに資金を提供し、借り手側はNFTを担保にし、そのプールより即時融資が出来るシステムを構築・実現しました。
これにより、DeFiのAMM(自動マーケットメーカー)ような、パーミッションレスでスピーディな取引を可能にし、さらに貸し手も借り手もメリットを享受できるプラットフォームが誕生しました。
現在担保に出来るNFTは30プロジェクトです。
公式サイトに一覧が掲載されていますので、一部を紹介します。
(引用元:https://app.pine.loans/pools)
担保にできるNFTの特徴として、
- 流動性が高い
- 利用率が高い
など、万が一資金の借り手がデフォルト(債務不履行)になっても、借り手が損をしないようなNFTを対象にしています。
貸し手側のメリット
貸し手は様々な項目を設定することができますので、その一部を紹介します。
- 担保として受け入れるNFT
- 通貨の種類
- LTV(Loan to Valueのことで、負債(借入金)÷総資産価値(NFT)で計算される)
これらの項目を設定後に資金をプールすることができます。
他には、
- プールした資金の未使用部分はいつでも引き出しが可能
- 貸し手がデフォルト(債務不履行)になった場合、担保になっているNFTの所有権を取得することができ、そのNFTを元に貸し出した資産を取り戻す清算方法が備わっている
- 今後のプランとして、貸付プールに保管したアイドル状態の資産をPine Protcolがホワイトリストに登録されたDeFiに展開し、利回りを獲得することが可能になる
などがあげられます。
借り手側のメリット
融資を受ける際の主なメリットを紹介します。
メリット
- 貸し手との交渉などが一切不要で、即時融資が受けられる。
- 融資を受けたあとでも、NFTのユーティリティーを保持することができる。
- 融資期間中、融資の任意の一部返済が可能で金利コストの軽減ができる。
- 融資期間終了後、12時間経過後まで融資の更新が可能
などがあげられますが、他にも借り手側の特徴がありますので以下の章で説明いたします。
「Pine Wallet」について
借り手のために発行されるウォレットです。
借り手への融資が確定したとき、NFTに抵当権が付与されそれを保管しておくためのウォレットで、借り手はNFTを売却することは不可能ですが、NFT保有が条件のコミュニティへの参加やエアドロップへの応募などが可能になります。
Pine Now Pay Later(PNPL)
まだβ版での使用になりますが、自分のウォレット内の資金より高価なNFTを入手したい場合に使用できるシステムで、住宅ローンのような融資が受けることができます。
例えば、AさんがOpenSeaで購入したいNFTが10ETHだとします。
このNFTはとても貴重で少しでも早く入手したいが、自分のMetaMaskには8ETHしかないのでこのNFTを購入することはできません。
そこで、PNPLのシステムを利用し自分のMetaMaskにあるNFTを担保にし2ETHを借り、目的のNFTを購入することができるシステムです。
この場合も担保にしたNFTは返済まではPine Walletに保管されることになり、融資額を返却すればNFTは戻ってきます。
PIne Protcolでは、この仕組みを住宅ローンのような融資と例えており、非常に柔軟な融資の形と言ってよいでしょう。
この一連の流れは同じトランザクションで行う必要があるなど、ルールが決まっていますので詳細は公式サイトでの確認が必要です。
NFTの評価額
Pine Protcolでのパーミッションレスな即時融資を実現するために、PinePricerと呼ばれる、価格を設定するシステムを構築しています。
これはPine DAOによって管理されているもので、全ての債務で担保とされたNFTに対して公正で透明な価格フィードを提供するシステムです。
この価格情報が表示されているフィードは貸し手のみが閲覧及び利用が認められています。
Pine Protcolでは非常に重要な位置づけになっているので特定の運営者だけでなく、PIneトークン(後述します)を保持しているDAOのメンバーで健全性などのチェックを行っています。
尚、公式サイトによると「今後、バージョンアップが行われる際は、より定量的な統計方法などを使用することにより価格設定を強化し、貸し手、借り手双方に取って堅牢で公平なものにしていく」としています。
独自通貨「Pineトークン」について
ティッカーシンボルは「$PINE(以下PINE)」で、以下の機能を有します。
- ネイティブガバナンストークン
- アクセストークン
- 経済的インセンティブ
PINEの所有者はPine Protcolへの提案や投票を行うことで、Pine DAOのメンバーになることができ、先述したNFTの評価額を決めるPinePricerに参加することが可能になります。
また、Pine Protcolの取引頻度や取引量に応じたインセンティブとして、追加のPINEが報酬として付与されます。
更に、PINEの保有量やユーザーアクティビティ、及び貸付量に応じたいくつかの階層にわけられ、金利やサービス料金の割引、貸し手への有利な金利を請求できるなど、階層ごとの特典を得ることも可能になります。
オリジナルNFT「Pine Pieces Genesis」について
Pine Protcolは、廃止プロジェクトとなった「TempusbyUTS」を買収し、オリジナルNFT「Pine Pieces Genesis」を立ち上げ、2022年5月2日に144体のNFTをエアドロップしました。
(引用元:https://opensea.io/collection/pine-pieces-genesis)
「Pine Pieces Genesis」はVIPメンバーシップを兼ねており、NFTを保有することにより様々な特典を受けることができます。
資金を貸し出すユーザーは「Pine Pieces Genesis」を入手して、更なる特典を得るとよいかもしれません。
セキュリティについて
2022年5月18日、Web3セキュリティ会社である「Quantstamp」によるPineProtcolのスマートコントラクトの監査が完了したことを報告しました。
この監査による重大な脅威は発見されませんでしたが、いくつかの欠点も発見され迅速に対応したことが報告されています。
調査結果として以下のグラフを掲載しています。
なお、Mediumに問題提起された項目の全てについて、修正及び解決した旨の報告が記載されているのでそちらをご参照ください。
まとめ
今回はPine Protcolを簡単に説明しましたが、実際にはもっと細かいルールがありますので、使用する際は貸し手、借り手ともに公式サイトなどで確認してから取引を行ってください。
NFTFiは今後も増えてくると予想されるプラットフォームです。
特に高額なNFTを保有しているユーザーにはとても便利なプラットフォームになると思いますので、今後のバージョンアップにも期待していきたいと思います。