NFT(Non-Fungible Token)とは日本語で「非代替性トークン」と呼ばれており、ブロックチェーンの技術を活用して画像などに唯一性を付与したデジタルデータのことです。
2022年現在、NFTはまだアートやブロックチェーンゲーム内のアイテムなどで利用されるケースがほとんどですが、今後は様々な分野や業界でNFTが活用されていくと予想されています。
この記事では、そんなNFTを活用して面白い取り組みを行っている活動事例を15個に厳選してご紹介していきます。
中には、ウイスキー樽や電子住民票など思いも寄らない形でNFTを活用している事例もご紹介していくので、興味のある方はぜひ最後までご覧ください。
この記事の構成
NFTはアートだけでなく、様々なビジネス分野への活用が期待されている
ここでは、NFTとはそもそもどういうものなのか?といった概要のおさらいや、今後NFTが活用されるであろう分野やジャンルを確認していきましょう。
NFTとは偽造することができない非代替性を持つデジタルデータのこと
記事の冒頭でも少し触れましたが、NFTとは正式名称である「Non-Fungible Token」の頭文字を取った略語であり、日本語では「非代替性トークン」と呼ばれています。
NFTは、ブロックチェーン上にあるデジタルデータに固有のID(シリアルナンバー)を付与する仕組みを採用することによって、同じものが一つとしてない唯一性を証明したトークンと説明することができます。
また、NFTはブロックチェーンの技術が使われていることから、データを改竄することは非常に難しく、かつこれまでできなかった各個人がデジタルデータを所有するという概念も産み出しました。
現状ではまだその利用範囲が限定されているNFTですが、このデジタルデータに唯一性や所有の概念、改竄の防止という特徴を付与できる技術は、多くの分野で活用が進んでいくことは間違いないでしょう。
今後さらにNFTの活用が期待されているビジネス分野・ジャンル
このように様々な可能性を秘めているNFTですが、今後は以下のようなビジネス分野に利用されていくと考えられています。
・ゲーム:NFTゲーム内のアバターやアイテムをNFT化し、所有・売買を可能にする
・音楽:アーティストが作成した楽曲をNFT化し、収益構造の改善ができる
・スポーツ:スポーツ選手のトレーディングカードNFTの販売や、特定のスポーツクラブを応援するファンNFTを発行できる
・チケット:イベントチケットをNFT化することによる偽造防止や、転売時の収益構造の改善ができる
・不動産:不動産をNFT化することで、煩雑な手続きの簡略化や流動性を向上させる
・ドキュメント:医療・行政などの重要書類の改竄防止や、デジタル住民票への活用ができる
・身分証明書:身分証明書のNFT化により、行政などのオンラインサービスの拡充ができる
・会員権(メンバーシップ):NFT所有者のみ参加できるコミュニティの会員権として活用できる
上記の中でもデジタルアートや音楽、スポーツなど、すでにNFTの技術が一定程度活用されているものもあります。
これらはあくまでNFTの活用が進むとされている分野の一例ですが、今後はさらに様々なビジネス分野でNFTが活用される未来が訪れると考えられています。
NFTの面白い活用事例15選を紹介!
それでは、ここからNFTのユニークな活用事例を15個に厳選してご紹介していきます。
現在、NFTを活用してどのような取り組みが行われているのか気になる方は、ここから具体的な事例を確認していきましょう。
山古志地域:デジタル村民×NFT
新潟県長岡市山古志地域(旧山古志村)は、2004年に発生した新潟中越地震に大きな影響を受けて人口が激減し、人口800人・高齢化率55%という地域存続の危機に立っていました。
そんな状況に危機感を覚えていた「山古志住民会議」は、NFTやブロックチェーンのテクノロジーに着目し、山古志発祥である錦鯉をモチーフにしたNFTアート「Colored Carp」を発行。
このNFTは単純なNFTアートとしての側面だけでなく、山古志地域に共感したデジタル関係人口を増加させる「電子住民票」の役割も持っており、バルト三国のエストニアが実施している「e-Residency(電子国民プログラム)」が近いイメージとして挙げられています。
すでに山古志地域に暮らすリアルな人口を超えるデジタル村民が誕生しており、今後はNFTの販売で得た収益を利用して、地域の問題を解決するファンドの設立や、空き家を活用したビジネス誘致などを行っていく予定となっています。
まだ山古志地域のNFTの取り組みは始まったばかりですが、今後の動向によっては地方創生におけるNFT活用の成功モデルとなる可能性は十分に考えられるでしょう。
Art uni:染め物×NFT
Art uniは、1975年に京都で創業した完全手作業で染め物を作成している老舗の染色工房です。
もともとは委託での染色加工業者として設立されましたが、現在では国内外の有名ブランドにテキスタイルを提供しています。
そんなArt uniでは、染め物をNFT化する取り組みを行っており、将来的にはメタバースで使用するアバターの衣服、また壁紙や家具などで利用されることを目指しているようです。
上記のように非常に独特な染め物のNFTを販売しており、デジタルだからこそリアルではできない絶妙な色彩の表現方法を模索しているとのことです。
今まで染め物やテキスタイルといえばリアルな実物を購入するというイメージしかありませんでしたが、NFTにすることでメタバースを通し、日本の伝統工芸をアピールすることもできるのではないでしょうか?
株式会社Beeslow:環境保全×NFT
都市緑化や生物多様性を促進する株式会社Beeslowでは、ミツバチからヒントを得たNFTコレクションの販売を開始し、NFTを活用した環境保全に取り組んでいます。
このNFTコレクションはミツバチの群に見立てたデザインとなっており、販売代金は自社で展開する屋上緑化サービス「Beeslow Garden」に必要な苗や土の費用、またNFTクリエイターやDiscordコミュニティ「Eusocial DAO」へ還元されるとのことです。
「Eusocial DAO」へと還元された資金はさらに別の環境保全プロジェクトへ再投資する予定となっており、DAOの中では参加者が新しい環境保全に関する取り組みを提案することもできます。
NFTを通して参加者が主体的に環境問題に取り組んでいくことも大きな目的としており、NFT×環境保全の可能性を感じさせる独自の取り組みと言えるでしょう。
また、他のNFTプロジェクトと同じくSNSのプロフィールアイコンにすることで、環境問題への姿勢を表明できるのも、本プロジェクトのメリットの一つと言えるのではないでしょうか?
株式会社横浜ビール:クラフトビール×NFT
画像引用元:PRTIMES
横浜にてクラフトビールの製造を行っている「株式会社横浜ビール」では、ビール瓶のラベルアートをNFTにする取り組みを開始しています。
もともと横浜ビールが販売するクラフトビールのラベルアートはアーティストとコラボして作られており、その作成背景には様々なストーリーがあるためNFTとの非常に高い親和性を持っていました。
今回、ラベルアートをNFTにして販売した収益の一部は地域に還元され、さらにビール製造業者やアーティスト、またNFTホルダーに繋がりを作り、地域活性化の仕組みを作っていくとのことです。
また、今後もユーザーにより付加価値を感じてもらえる商品作りに取り組み、寄付などを通じて社会に貢献する活動を行っていくことも検討しているようです。
株式会社Torches:日本酒×NFT
画像引用元:純米大吟醸『飛騰ASCENDING』『燈火ILLUMINATING』
株式会社Torches(トーチーズ)は、長野県の酒造会社である小野酒造店と提携し、日本酒製造業者が長年抱える問題を解決するための取り組みを行っています。
特に日本酒はワインやウイスキーなどとは異なり、熟成をするというブランディングが難しく消費期限も短いため、日本酒の蔵元や農家の方々の持続可能性に寄与しにくいという問題を抱えてます。
そこで、日本酒を飲み終わった後にも購入者が長期的な価値を感じられるように、パッケージにも描かれた製造年シリアルナンバーと紐付けされているNFTアートを日本酒購入者に配布しています。
パッケージおよびNFTアートには対となる龍と鳳凰の浮世絵が描かれており、NFTの一部の販売収益は酒造をはじめとした日本の伝統文化を維持していくために利用されるようです。
UniCask(ユニカスク):ウイスキー×NFT
UniCask(ユニカスク)は、ウイスキー樽をNFT化し、NFTホルダーで分割して年代物のウイスキーをシェアするという今話題のサービスです。
一般的にウイスキーは熟成する年数が長くなるほどに価値が高くなると言われており、熟成年数が長いものは非常に人気が高いことで知られていますが、樽の中で保管していたウイスキーを手に入れられる人はそう多くありません。
しかし、UniCaskが発行する「Cask NFT」を購入すれば、高額なウイスキー樽を誰でも簡単かつ少額で購入することができるとして、ウイスキー愛好家の間で大きな話題となっています。
また、UniCaskで購入できるウイスキー樽の中には、NFTを購入してから数十年後にウイスキーとNFTを交換できるものもあるなど、その「熟成期間」をも楽しむことができるのも大きな特徴と言えるでしょう。
「Cask NFT」は一枚一枚がトランプカードのデザインになっています。所持しているNFTカードを利用したゲームに参加でき、勝利すると特典が得られるのも非常に面白い取り組みと言えます。
北海道余市町:ふるさと納税×NFT
画像引用元:ふるさとチョイス
北海道余市町は、ふるさと納税の返礼品にNFTを採用するという独自の活動を行っています。
第一回目の返礼品は、NFTクリエイターのPoki氏による余市町の名物であるワインが描かれたNFTアートとなっており、全国的にも大きな反響を呼びました。
また、第二回目の取り組みでは、国内のNFTゲームとして非常に有名な「My Crypto Heroes」を開発するMCH株式会社と提携し、「My Crypto Heroes」のゲーム内で使用できるNFTアイテムが返礼されるなど、日本全国で初となるユニークな取り組みを行っています。
まだふるさと納税にNFTを活用する事例は少ないですが、今後は地方創生の一環として余市町の取り組みを参考にする自治体が現れてもおかしくないでしょう。
こはくの天使:飲食店×NFT
徳島県小松島市にあるカフェ「こはくの天使」では、お店のスポンサーになることができる「スポンサーNFT」を発行しています。
このスポンサーNFTを購入することでファンも一緒になってお店を応援できます。お店側はNFTの売却益を使って店舗の宣伝を行い、それに伴ってNFTの価値が高まれば購入者も転売益を得られるというWin&Winなシステムの構築を目指しています。
店舗を大々的に宣伝できる資金力がない個人商店だからこそ、このようにNFTを活用し、ユーザーと直接繋がりを持ってプロモーションしているのは非常に面白い取り組みと言えるでしょう。
画像引用元:カフェ「こはくの天使」スポンサーNFT
また、お店のメニュー表にはスポンサーNFTを確認できるQRコードが記載されており、そこで自分の名前やTwitterのリンクを掲載することもできるようです。
なお、2022年2月に販売されたスポンサーNFTは販売開始から2分で18個全てが完売するほど人気となっており、今後も需要が拡大していくことが予想できるでしょう。
浄楽寺(一般社団法人BUSHIDO文化協会):御朱印×NFT
神奈川県三浦半島の観光事業を行うBUSHIDO文化協会は、同協会の会員である浄楽寺にて授与している御朱印とNFTを掛け合わせる、世界で初めての試みを行っています。
昨今、御朱印ブームが広まったことで各寺社仏閣の御朱印の写真がSNSにアップされることは珍しくありませんが、それはあくまでも他の誰に授与されたものであり、誰でもダウンロードできる「画像」でしかありません。
そこで、BUSHIDO文化協会はデジタルデータでありながらも、自分だけが所有しているという「繋がり」を作ることができるNFTの特徴に着目し、デジタル御朱印の発行を決断したとのことです。
また、遠方であるために直接参拝をすることができない方でも、NFTの御朱印であれば自分と寺社仏閣の「繋がり」を感じることもできるでしょう。
浄楽寺のデジタル御朱印はOpenSeaで販売されているので、興味のある方は一度販売ページを確認してみてはいかがでしょうか。
BONSAI NFT CLUB:盆栽×NFT
BONSAI NFT CLUBは、NFTを通して盆栽の魅力や素晴らしさを海外に発信するコミュニティです。
盆栽は国内のみならず海外でも人気の高い日本文化の一つとして知られていますが、盆栽を育成する人材が高齢化してきており、海外への展開・輸出が鈍化しているという問題点を抱えています。
そこでBONSAI NFT CLUBでは、NFTを購入した方の自宅に本物の盆栽が届けられ、専用のDiscordコミュニティで栽培方法を学びながら育成し、最終的には海外向けに販売できるようなコミュニティ作りを目標としています。。
また、BONSAI NFT CLUBはこれまで海外輸出用の盆栽を2,000本以上育成してきている農業法人赤石に協力を仰いでおり、NFTホルダーに対して高品質な盆栽を配布していることも大きな特徴と言えるでしょう。
盆栽は育成して海外の購入者に届くまでに最低2年はかかってしまうので、先に所有権をNFT化して販売するという取り組みも今後は視野に入れているとのようです。
NFT鳴門美術館:美術館×NFT
NFT鳴門美術館は、徳島県鳴門市にある日本で初めて開館したNFTアート専門の美術館です。
もともとはフランスの工芸家エミール・ガレの作品を中心に展示する「鳴門ガレの森美術館」として開館しましたが、コロナによる入場者数が激減したことで経営不振に陥り、NFTに特化した美術館として再出発したという経緯があります。
NFT鳴門美術館では単純にNFTアートを展示するというだけではなく、NFTアートの発行や審査、販売、流通なども行っていくことを目指しています。
また、NFT鳴門美術館の入場券としての役割も持つ「Naruto Museum Pass」というNFTが販売されており、美術館に無料で入場できる以外にも保有するNFTを美術館で展示できる権利や、Naruto Meta Museumというメタバース上での個人ギャラリースペースを保有できるなど様々な特典が付与されるとのことです。
リアルな美術館とデジタルのNFTが融合した、非常に面白い取り組みの一つと言えるのではないでしょうか。
山中湖山荘(マーチャント・バンカーズ株式会社):不動産×NFT
不動産投資やNFT関連のビジネスを展開するマーチャント・バンカーズ株式会社では、自社が所有する不動産物件のNFT化を行っています。
この取り組みはブロックチェーン事業を行う株式会社世界との業務提携の第一弾として行われたものであり、富士山の近くに位置する「山中湖山荘」の登記簿謄本をNFT化して販売しました。
不動産売買は手続きの煩雑さから流動性が低くなることは珍しくないため、NFT化することで海外投資家からのニーズをさらに掘り起こす狙いがあるようです。
ただし、まだ法律上では不動産の所有者を変更する際に登記簿謄本への記載が必要であるため、不動産のトークン化が本格的に進むのはまだ少し時間がかかると考えられます。
PoLクリプトカレッジ:入会券×NFT
PoLクリプトカレッジは、暗号資産やブロックチェーン、NFT、DAOをはじめとしたweb3.0に関する知識を幅広く学ぶことができる教育プログラムです。
そんなPoLクリプトカレッジでは、入会券をNFT化する取り組みを行っており、このNFT入会券を持っておくことで受講時に必要な入会金を固定金額で支払える権利を得ることができます。
つまり将来的に入会金が値上がりした場合でも、過去の安価な金額でweb3.0に関するプログラムを受講できるというわけですね。
また、初期段階でNFT入会券を購入した方ほど費用が安くなるので、早期購入者ほどインセンティブが高い仕組みが採用されています。
もちろん、このNFT入会券はマーケットプレイスで売買することもできるので、プログラムを受講した後に売却して当初の購入費用を回収することもできるでしょう。
Table Unstable – 落合陽一サマースクール2022:卒業証明書×NFT
筑波大学准教授であり、メディアアーティストとしても活動している落合陽一による特別カリキュラム「Table Unstable – 落合陽一サマースクール2022」では、卒業証明書をNFTにする取り組みを行いました。
これは株式会社電通グループ、シビラ株式会社、ソニー株式会社による合同の実証実験となっており、カリキュラムに参加した小学4〜6年生に対してNFT化された卒業証明書を配布しています。
将来的にはNFTがこれまでの実績や経歴を証明する書類となり、大学入学や留学、また就職試験などに活用される未来を構想しているようです。
高校や大学の卒業証明書などがNFT化されると学歴を改竄することは不可能になるため、より個人の経歴が明確になる未来がやってくる可能性も考えられるでしょう。
MASAMUNE Erasure:データ消去証明書×NFT
株式会社ブレイバーはスマートフォンなどの端末からデータを削除するサービス「MASAMUNE Erasure」を提供しており、そのデータ消去処理完了証明書にNFTを活用しています。
特に近年、スマートフォンやHDDなどに個人情報を保管するケースは増加しており、端末廃棄時にデータ削除サービスを利用したものの正常に消去処理が行われず、個人情報が流出する事例が大きな問題となっています。
そこでMASAMUNE Erasureでは、証明書をNFTとして発行することで誰にもデータ消去証明書の改竄ができないことはもちろん、「誰が」「いつ」「どこで」端末のデータを削除したのかを確認できるようにしています。
また、この証明書はイーサリアムのレイヤー2であるPolygon(ポリゴン)にてフルオンチェーンで作成されているため、永続性という観点でも非常に優れた特徴があると言えます。
このように何かを証明する書類をNFTにする取り組みも、今後さらに拡大していくことでしょう。
NFTの面白い活用事例15選まとめ
今回はNFTの面白い活用事例を15選ご紹介してきました。
2022年現在、まだNFTは社会に浸透しているとは決して言えず、主にNFTアートやブロックチェーンゲームなどでの利用が一般的となっています。
しかし、今回ご紹介した事例のように様々な分野でNFTが活用され始めてきており、今後もこの流れは継続していくと考えられます。
これからも実社会とNFTがどのように融合し、発展していくのかは注目する必要があるでしょう。