様々な著名人もTwitterアカウントのアイコンにするなど、大きな注目を集めているNFTですが、最近ではNFTを個人ではなくDAO(自律分散型組織)で保有しようとする動きが見られています。
数あるDAOの中でも、NFTの共同保有を目的として設立されたDAOは「コレクターDAO」と呼ばれており、非常に高額なNFTを多数所有している組織も登場してきています。
この記事では、そもそもコレクターDAOとはどういった組織なのか?といった概要・特徴や、暗号資産(仮想通貨)業界でも有名な2つのコレクターDAOについて徹底解説していきます。
また、コレクターDAOの課題や問題点についても詳しくご紹介していくので、興味のある方はぜひ最後まで参考にしてみてください。
この記事の構成
コレクターDAOとは?どのような特徴がある組織なの?
早速ですが、コレクターDAOとはどのような組織なのか、その概要や特徴について解説していきます。
DAOというコミュニティでNFTを所有する目的や、今後考えられるメリットなどもご紹介していくので、詳しく確認していきましょう。
コレクターDAOとはNFTの共同保有を目的に作られたDAOのこと
冒頭でもご紹介したように、コレクターDAOとは「NFTをコミュニティで保有することを目的に設立されたDAO」のことを指します。
つまり、現在流通しているどのNFTを保有するかをDAOのメンバー間で話し合い、ブロックチェーン上での投票をもって、NFTをコレクションしていくコミュニティというわけですね。
また、現在の暗号資産業界では様々なDAOが設立されており、作られた目的によってDAOの種類が細分化されています。
画像引用元:What is a DAO? (In 2022)
上記の画像は、DAOに関する様々な情報発信をしている「DAO Central」による分類となっていますが、2022年現在でも10種類ものDAOが存在しています。
コレクターDAOは、上記のように複数あるDAOの1つの種類であるという位置付けは把握しておくようにしましょう。
高額で手が届かないNFTでもコレクターDAOであれば共同で保有することができる
そもそもNFTをDAOで保有するという動きが出てきた理由としては、NFTの価格の急激な高騰が挙げられるでしょう。
実際、CryptoPunksやBAYC(Bored Ape Yacht Club)といった有名なNFTコレクションは億単位の金額で取引されることもあるため、個人で保有することは現実的に難しい作品価格ですよね。
しかし、こういった個人で購入することが難しい高額なNFTでも、DAOという組織・コミュニティであれば資金を寄せ集めることもできますので、高額なNFTを共同で資金を出し合って共同で購入することが可能となります。
また、後にご紹介するPleasrDAOというコレクターDAOでは、Dogecoin(ドージコイン)のモデルとなったカボスちゃんのNFTを購入し、さらにそれをDOGトークンという暗号資産(FT/ファンジブルトークン)に分割することで、誰でもNFTの一部を保有できるようにしています。
画像引用元:Doge – pleasrdao | Gallery
DOGトークンのように、DAOで所有しているNFTを暗号資産にするケースは珍しいですが、高額なNFTを複数所有できることはコレクターDAOの大きなメリットと言えるのではないでしょうか?
コレクターDAOによってNFTの価値が支えられている側面もある
また、コレクターDAOの存在によって、多くのNFTの価値が支えられている側面があるということも知っておく必要があります。
多くのコレクターDAOでは、人気があり知名度も高いNFTを集める傾向にあり、主要なNFTコレクションの価値を高めている大きな役割を担っています。
また、有名なコレクターDAOによって購入されたNFTは「コレクターDAOに価値を認められたNFT」という、ある種のブランドが大衆の中で醸成されることも考えられるでしょう。
もちろんコレクターDAOだけがNFTの価値を高めているわけではありませんが、そういった役割を持っていることは間違いないように思われます。
保有するNFTを担保にしてコレクターDAOが資金調達をする未来も考えられる
コレクターDAOの今後として、保有するNFTを担保にして大きく資金調達をする未来がやってくるかもしれません。
後に詳しく解説していきますが、PleasrDAOはコミュニティで所有しているNFTを担保にして、Cream Financeというプロトコルから350万ドルの資金調達に成功しています。
まだNFTを担保にしたローンが一般的に普及しているとは言い難いですが、今後の資金調達のメインストリームとなることで「保有するNFTを担保にして、新しいNFTを購入できる」といった好循環が生まれる可能性も十分に考えられるでしょう。
高額なNFTを多数所有する有名なコレクターDAOを紹介
次に、高額なNFTを多数保有している有名なコレクターDAOを2つご紹介していきます。
それぞれのコレクターDAOの特徴や保有するNFTについても解説していくので、気になる方はぜひ確認してみてください。
Flamingo DAO
Flamingo DAOは、NFTへの投資を行うために設立されたコレクターDAOです。
複数あるコレクターDAOの中でも最も知名度が高いコミュニティの一つとなっており、現在のNFT市場でも人気が高いNFTを中心にキュレーションしています。
また、Flamingo DAOはNFTをコレクションするコレクターDAOでありながら、しっかりと投資リターンも求めるInvestment DAO(投資を目的としたDAO)の側面があることも特徴ですね。
世界でもトップクラスに人気の高いNFTを多数所有
Flamingo DAOが所有しているNFTコレクションは、公式サイトで確認することができます。
- CryptoPunks
- BAYC(Bored Ape Yacht Club)
- MAYC(Mutant Ape Yacht Club)
- BAKC(Bored Ape Kennel Club)
- Clone X
- Nouns
- Meebit
保有しているNFTを確認すると、上記のような非常に有名で高額なNFTを多数所有していることがわかります。
これほどの高額なNFTをラインナップできるのは、資金力があるFlamingo DAOだからこそできることだと言えるでしょう。
審査制を採用しており参加メンバーになるためのハードルが高い
また、Flamingo DAOの特徴としてDAOに参加するためには、厳しい審査をクリアする必要があることも挙げられます。
非常に高額なNFTを取り扱っているので当然ではありますが、DAOのメンバーとして参加するためには「20万ドル以上の年収や100万ドル以上の純資産をはじめとした、アメリカの適格投資家(Accredited Investor)としての要件」が必要となってくるようですね。
コレクターDAOとしての規模も大きい分、参加するためのハードルが非常に高いこともFlamingo DAOの大きな特徴と言えます。
PleasrDAO
先ほどから何度かご紹介しているPleasrDAOも、非常に有名なコレクターDAOの一つです。
もともとは2021年3月にデジタルアーティストであるpplpleasrのNFTを購入するために設立されたという経緯があり、目的を達成した後もコレクターDAOとしての活動が継続しています。
また、暗号資産系のベンチャーキャピタルとして最も有名なa16z(アンドリーセン・ホロウィッツ)からも資金提供を受けているなど、その活動を活発化させているコレクターDAOと言えるでしょう。
エドワード・スノーデンが発行した「Snowden NFT」を所有
PleasrDAOも公式サイトにて、所有しているNFTを公開しています。
PleasrDAOが保有しているNFTの中には、Dogecoinのモデルとなったカボスちゃん以外にも、2021年に販売されたエドワード・スノーデンが発行した「Snowden NFT」もあります。
Flamingo DAOと比較すると、決して保有しているNFTの数は多いとは言えませんが、非常に希少性が高いNFTを保有しているのがわかるのではないでしょうか?
世界で初めてNFT担保ローンを行ったDAO
先ほども少しご紹介しましたが、PleasrDAOは2021年7月に保有しているNFTを担保にした資金調達を行っており、世界で初めてNFT担保ローンを利用したDAOとしても知られています。
Cream FinanceプロトコルのIron Bankは、350万ドル(3億8,000万円)のローン(貸し付け)をPleasrDAOに対して実施したことを発表した。担保として高価値のNFTを利用しているという。
C.R.E.A.M. Finance(Cream Finance)は分散型のレンディングプロトコルであり、個人や機関、プロトコルなどに向け、金融サービスを幅広く提供する。
Cream Financeによると今回の貸し付けは「DAO-to-DAO」の貸し付けとして史上初であるほか、NFTを担保としていることが注目される。
引用元:Cream FinanceのIron Bank、史上初となるNFTアート担保にPleasrDAOへ350万ドルを貸付
このように、NFT担保ローンは価値の高いNFTを所有しているコレクターDAOだからこそできることであり、今後さらにNFTの価値が一般的に認められてくることによって、他のコレクターDAOでも同じような動きが行われる可能性が高いです。
PleasrDAOでは、後々DAOで確保している資金を利用して投資活動なども行うとされているので、これからの動向には注目しておく必要がありそうですね。
コレクターDAOが抱える問題点やこれからの課題
最後に、コレクターDAOが抱える問題点や、今後の課題についてご紹介していきます。
ここまででも解説してきたように、コレクターDAOには多くのメリットがありますが、一方で知っておくべき問題点も存在しています。
コレクターDAOや現在のNFT市場についてより深く理解するためにも、詳しく確認していきましょう。
所有するNFTではなく、コレクターDAO自体の価値を高めていくことが難しい
コレクターDAOが抱える課題として、所有しているNFTの価値ではなく、コレクターDAOそのものの価値を高めていくことが難しいという点があります。
具体例を出すと、世界でも屈指の規模を誇っていたコレクターDAOである「ApeDAO」を挙げることができるでしょう。
ApeDAOは、BAYC(Bored Ape Yacht Club)を中心にコレクションしていたコレクターDAOであり、最盛期には81体ものBAYCを保有していたにも関わらず、そのNFTの価値をうまく活用することができていませんでした。
そこでApeDAOでは「保有しているNFTの利用ライセンスをまとめて提供する」というIPを利用したい企業側にとってメリットが大きい独自の価値を作り出そうとしましたが、DAOでの投票で否決されてしまい、結果的に解散となってしまいます。
このように、ApeDAOほどの規模を誇るコレクターDAOでも価値を創出できずに解散となってしまうケースがあるなど、ただ高額なNFTを保有しているだけではコミュニティとしてうまく価値を提供・享受できないことがよくわかりますよね。
現在、他のコレクターDAOでは所有しているNFTをレンタルしたり、DeFiでの担保として利用するなどの取り組みを行っているコミュニティもありますが、まだまだ試行錯誤の段階となっています。
今後のコレクターDAOの課題として、ただ単に高価なNFTを所有するだけでなく、それらを活用した独自の価値を提供をしていくことが非常に重要になってくるでしょう。
特定の人物が多くのガバナンストークンを保有することで分散化されない
これはコレクターDAOに限った話ではないかもしれませんが、DAOの意思決定はガバナンストークンを利用したブロックチェーン上での投票で行われるため、特定の人物が多くのガバナンストークンを保有していると、組織が正常に分散化されないという問題があります。
事実、先ほどのApeDAOが発行していたAPEDというガバナンストークンの多くは、創業者であるKyloren氏によって大量に保有されており、ほぼ一人でDAOの意思決定に大きな影響を与えることができる状況でした。
ApeDAOは「そもそもDAOではない」と言ってしまえばそれまでかもしれませんが、ApeDAOに限らず実際には中央集権的な運営がされているDAOも多いので、こういった組織の分散化も大きな課題となってくるでしょう。
NFTの共同所有を目的としたコレクターDAOの特徴や有名なDAOまとめ
今回は、NFTの共同保有を目的に作られた自律分散型のコミュニティである、コレクターDAOの概要や特徴などをご紹介してきました。
コレクターDAOは個人では購入できない高額なNFTを共同で保有することができるメリットがあり、かつ所有しているNFTを利用した様々な取り組みを行っています。
しかし、ご紹介したApeDAOのように、保有するNFTをうまく活用することができずに解散に至ってしまうケースもあるなど、多くの課題があることも現実です。
まだコレクターDAOという組織自体が始まったばかりなので問題点も多いですが、これからNFTというものの価値がさらに認められ、より一般社会にも普及していくことで、コレクターDAOの存在感も増していくことは十分に考えられるでしょう。