2022年は暗号資産(仮想通貨)市場全体にとって厳しい年を迎えています。ごく一部を除き、大半は今年だけで50%〜90%ほどの下落を記録しています。今もなお下落の勢いが強く、回復の兆しは見えていません。
こうした状況の中で、暗号資産はNFT市場へどのような影響を与えているのでしょうか?
今回の記事では、暗号資産とNFTの関係やNFTが持つリスク、そのリスクへの対処法について解説していきます。
この記事の構成
昨今の暗号資産市場を振り返る
ここでは、暗号資産の価格が大きく動き出した2021年の値動きを、ビットコインを用いておさらいしていきます。
暗号資産は、2021年の年明け「1BTC = 300万円」から強い上昇を始めました。2021年4月中旬に「1BTC = 650万円」にピークを迎えて一度は下落するも、8月上旬頃から再び上昇。11月上旬には「1BTC = 766万円」に到達し、年明けからはおよそ2.5倍の価格となりました。
その後は強めに下落し「1BTC = 532万円」となったところで2021年を終えています。
2022年5月から強い下降相場に突入
2022年1月から4月までは「1BTC = 400万円〜600万円」の間を行ったり来たりしていました。1月下旬には一時「1BTC = 400万円」を割るもののすぐに持ち直し、3月下旬にかけて強く上昇しています。
しかし、5月に入り400万円のサポートラインを割ったところから上昇の勢いがなくなり、下落の勢いが強くなっていきます。5月6日にはステーブルコインのUSTが売られ過ぎたことで価格維持ができなくなり崩壊しました。これは暗号資産全体に影響し、5月4日から11日の間に30%近く暴落しています。
落ちてからの反発も小さく、上昇の兆しは見えてきていません。
6月に入ってからはさらに下げ幅を拡大
6月に入ってからは、より下降の勢いが強くなっています。
世界的な金融の引き締めや、米国の暗号資産貸出業者「セルシウス・ネットワーク」が資産の引き出しや移動を制限したことによる不信感から、6月中旬に40%近い暴落を記録しました。
2022年6月29日現在の価格は「1BTC = 273万円」であり、2021年に1年間かけて上昇した分を戻してしまっています。2017年12月に記録した「1BTC = 215万円」も見えてきており、ほとんどの暗号資産にとって厳しい状況が続いています。
NFT市場への影響
2021年はNFT元年とも呼べる年で、数多くの作品が生まれました。2022年に入っても日々新しい作品がリリースされており、NFT市場は盛り上がりを見せています。
ここでは、暗号資産とNFTの関係を解説していきます。
NFTには「暗号資産」と「NFT自体の価格」2つのリスクがある
NFTマーケットプレイスでは、各NFT作品に暗号資産で価格がついています。NFTの取引にはイーサリアム(ETH)を中心として、ポリゴン(MATIC)、クレイトン(KLAY)、バイナンスコイン(BNB)などが用いられることが多いです。まず、NFT作品自体の暗号資産が上昇、下降することによって価値が変動します。
そして「暗号資産 ⇄ ドル、円など(フィアット通貨)」の価格も常に変動しています。たとえNFTの暗号資産建ての価格が変わらなくても、暗号資産自体の価格が下落してしまうと現金に戻した時に目減りしてしまうことになるのです。
つまりNFTは「暗号資産」の価格変動と「NFT自体」の価格変動、2つのリスクにさらされていることになります。
暗号資産の価値は大きく下落
今まで説明してきたように、2022年暗号資産は下落を続けています。
The SandboxやCryptopunksのような有名作品は、今も暗号資産建てで高い価格を維持していますが、ドルや円で換算した場合には価値が下がっていることになります。
NFTの価値を見るときは、暗号資産の価格も見ることが重要です。
一部でNFTの価格も下落した
暗号資産の下落を受けて、一部の有名NFT作品でも価格の下落が見られました。
NFTでもっとも成功した作品とも言えるBored Ape Yacht Club(BAYC)の暗号資産価格は、6月中旬に25%ほど下げています。リリースから強気の上昇をしてきた中で、初となる暴落を記録しています。
暗号資産市場が冷え込む中で、関係なく盛り上がりを見せていたNFT市場ですが、今までと違う動きが出てきているのも事実です。7月以降のNFT市場は、新しい局面を迎える可能性があるので注意しましょう。
NFTが持つリスクに対処するには
NFTには「暗号資産」と「NFT自体の価格」の2つのリスクがあることをお伝えしてきました。ここでは、そのリスクにどのように対処していくべきかを解説していきます。
NFTへの投資スタイルを明確にする
NFTを購入する理由は人によって異なります。大きく分けると、下記の理由があると考えられます。
◆収集性、実用性
- 単純に作品を気に入っている
- 好きなアーティストがいる
- ゲームで使えるから
- 持っているとコミュニティに入れるなど特典がある
◆収益性
- 値上がり益で儲けたい
まずは、自分がNFTを持つもっとも強い理由をはっきりさせるといいでしょう。
NFTを持つ理由は、大きく「収集性、実用性」と「収益性」の2つにわけられます。収集性、実用性が理由な人は、目先の値動きに関係なく持ち続けるべきと考えられます。手持ちのNFTを売るときは収集性、実用性を感じなくなったときです。
一方で収益性を求める人は、値動きを注視する必要があります。今持っているNFTの需要と価格のバランスを見て売買することが求められます。
NFTの暗号資産価格と暗号資産自体の価格は全くの別市場で動いているので、あくまで「NFTを売買することで、暗号資産の枚数を増やす」ことが目的です。
損切りのラインを決めておく
収益性を求める人は、損切りのラインを決めておくのが重要です。
NFT作品も暗号資産同様に、1日で数十%動くことがあります。予想外の動きをしたときは、時に撤退するのも重要です。
損切りは損失を確定させる行為であり、誰もが避けたいことです。しかし、損切りすることで再度チャレンジすることができます。損切りのタイミングを逃して下まで落ち切ってしまうと、多くの場合で価格は戻ってきません。
致命傷の損失を出さないためにも、いくらまで行ったら損切りをするというラインは決めておくようにしてください。
無駄な売り買いを繰り返さない
NFTの売買には手数料やガス代がかかります。取引回数を減らすことは、自分に利益を残すことに繋がることを理解しておきましょう。
NFT市場でも為替トレーダーのように短期トレードで稼ぐ人もいるようです。しかし、短期売買はトレードの中でも最高難易度であり、手数料もかかるため、おすすめできる方法ではありません。
NFT市場で収益を求めるのであれば、有望なプロジェクトに早めに参入して中長期目線で投資を行うといいでしょう。
今後の市場の展望
ここからは、暗号資産市場とNFT市場、2つの市場の展望を解説していきます。
暗号資産市場
今までお伝えしてきた通り、暗号資産市場は下落が強い状況にあります。短期的に少し上昇しても、それを打ち消す勢いで下落しているのが現状です。
上昇への兆しが見えない今、2022年内は下げ続けることも想定しておいた方がいいかもしれません。2022年後半にはイーサリアムのアップデートが控えるなど、NFT関連の暗号資産の新しい発表も予定されているので、その際の値動きに注目してみましょう。
NFT市場
今までの値動きをみていると、暗号資産市場の値動きとNFTの暗号資産建ての値動きはほとんど連動していないように見えます。暗号資産が暴落しても、有望なNFT作品の価格は上がり続けます。それぞれ切り離して考えていいのではないでしょうか。
収益性を求めるのであれば、そのNFTがどんな価値を持つか、という点だけを見ていくといいでしょう。
まとめ
NFTの価値には「暗号資産」と「NFT自体の価格」2つが影響してきます。2022年は暗号資産市場は厳しい状況を迎えていますが、5年、10年のスパンでは発展していくと予想されています。
NFT市場も今後さらに大きくなっていくと考えられます。まだ参入者が少ない今、ぜひNFTを学んでいきましょう!