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【20年前から存在するメタバース】セカンドライフはなぜ廃れたのか?

解説系記事

“早すぎたメタバース” と呼ばれるPCゲーム「セカンドライフ」をご存じでしょうか。

セカンドライフは、今から20年ほど前にリリースされたゲームで、メタバースと非常によく似た特徴があります。当時は今ほどインターネット技術が発達していませんでしたが、セカンドライフではバーチャル空間でユーザー同士でコミュニケーションが取ることができ、現金に換金できるゲーム内通貨を使って、経済活動をすることもできました。

昨今、メタバースやNFTゲームの「Play to Earn」は新しい概念として注目されていますが、実はずっと前から存在していたと言えます。

今回の記事では、セカンドライフの特徴や衰退した理由、今どうなっているかなどを紹介していきます。セカンドライフはまだプレイできるゲームなので、気になった方はぜひ公式サイトもチェックしてみてください。

セカンドライフとは

公式サイト:Second Lifeより引用

参考:https://www.lindenlab.com/releases/start-your-second-life-in-june-2003
https://www.j-cast.com/2006/12/27004641.html?p=all
https://jp.wsj.com/articles/second-life-founder-returns-to-take-on-the-metaverse-11642137546
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2201/18/news091_3.html

セカンドライフは、アメリカのサンフランシスコに本社を構える「LindenLab」によって運営されています。ゲームの歴史は古く、2002年3月にベータ版がリリース、2003年6月に正規版がリリースされました。

自由度の高い3Dゲームであるセカンドライフは、ベータ版の時から世界中のユーザーにプレイされていたようです。ベータ版のリリース後、たった数ヶ月の間にさまざまなコミュニティが立ち上がり、スポーツゲームや会議、クイズ大会などが開催され、みるみるうちにゲームは発展していきました。

リリース直後、CEO兼創設者のPhilip Rosedale氏(2010年に辞任)は「6か月ほどで、ベータメンバーは現実の世界に匹敵する世界を作り上げました。さらなるメンバーを追加するために新たな土地を増やし、セカンドライフの世界は無限に広がっていきます」と語っています。

その後も順調にユーザー数を伸ばし続け、2006年頃には日本国内でも話題になり始めました。ゲームで世界中のユーザーとコミュニケーションをとれることは当時としては珍しく、日本人のユーザーも多く生まれました。また「トヨタ」「日産」「BMW」などの企業がゲーム内に土地を持ち、自社の車をゲーム内で試乗できるようにするなど、企業の戦略の一つとしても利用される動きも出てきています。

セカンドライフはリリースから順調に発展を続けていましたが、一方で、突如通信が切れる、フリーズする、ログインエラーが出るなど、ユーザーはさまざまな不具合に悩まされるようになります。結果的に2007年が人気のピークとなり、その後はユーザー数は徐々に減少。人気がなくなるにつれて、参入していた企業も撤退を始めました。

現在、まだセカンドライフはプレイすることができますが、ユーザー数は全盛期から大きく減ってしまいました。過去のユーザーによって作られた街だけが残り、多くがゴーストタウン化してしまっているようです。

このような状況の中、2022年1月には創設者Philip Rosedale氏の復帰が発表されました。ゲームとしての存在感を失ってしまった今、セカンドライフがいかにして復活を遂げていくかに関心が集まっています。

セカンドライフの特徴

引用:公式サイトSecond Lifeより

ここでは、セカンドライフの特徴を解説していきます。

アバターを作成して仮想世界を自由に行動できる

参考:https://web-hoshi.com/secondlife

セカンドライフでは、まず自分の分身となるアバターを作成し動かします。

初期のアバターが数種類用意されていますが、ゲーム開始後に変更することが可能です。アバターは人間の姿をしたものから、動物、アニメ系など、さまざまなものに変えることができます。

最近では「Mesh」というリアルな見た目のアバターを作り出す技術の追加や、「BENTO」という指先から口など細やかな動きを実現できる技術の導入により、より現実世界に近いものが作れるようになっています。

ゲームとしてのストーリーはない

セカンドライフには、RPGゲームのようなストーリーはありません。開始と同時に広大なセカンドライフの世界にただ放り出されることになります。

何かを達成しなければならない、ミッションをこなさなければならない、といったこともありません。自分が思うように動き、ユーザー間でコミュニケーションを取り、面白そうなイベントが開催されていればそこに参加するといった、いわゆるオープンワールドです。

ゲーム内通貨「リンデンドル」が流通しており、現実の通貨に換金可能

参考:https://exchangerate.guru/ld/usd/1/

セカンドライフ内では、ゲームをリリースした2002年から専用通貨「リンデンドル」が流通しています。リンデンドルは他のプラットフォームへの送金はできませんが、Paypalを通じて現金化することが可能です。

暗号資産(仮想通貨)と全く同じ機能を持つわけではないですが、それに近いものがすでに2002年の時点で作られていたことがわかります。メタバースだけでなく暗号資産に関しても先駆けの存在である、ということです。

現在は「320リンデンドル = 1USドル」のレートで取引されています。ただ、ここから各プラットフォームで手数料が引かれるので、円に両替するときはこのレート通りの額が手に入ることにはならないようです。

商談や音楽、製品のプロモーションなど、経済活動ができる

参考:https://www.itmedia.co.jp/news/articles/0703/07/news074.html

セカンドライフでは、ユーザーは土地を借りて建物を建てられます。その中では、会議や商談などのミーティング、広告を貼ったり自分が作ったアイテムを売るなど、リンデンドルを用いて経済活動を行うことができます。

セカンドライフが全盛期だったころには、土地の売買で100万ドル(当時1億円)以上を稼いだ人もいました。現在はユーザーが減少したため難易度は上がっているものの、質の高いアイテムを作れる人や集客できる人は今も稼ぐことができているようです。

セカンドライフが衰退した理由

参考:https://www.itmedia.co.jp/news/articles/0703/07/news074.html
https://liginc.co.jp/osora/archives/2575
https://secondlife.com/

2007年の全盛期は世界中に436万人のユーザーがいたとされるセカンドライフですが、2017年には100万人を割る数まで落ち込んでいます。

ここでは、2007年以降にセカンドライフが衰退していった理由をお伝えしていきます。

始めるまでが面倒

参考:https://www.itmedia.co.jp/news/articles/0703/07/news074.html

セカンドライフはWebブラウザでプレイすることができません。パソコンにアプリをダウンロードする必要があります。

当時はアップデートが頻繁に行われており、その都度ダウンロードが行われていました。これが煩瑣に感じられるためにゲームをプレイするモチベーションを大きく下げ、結果的にユーザー離れを起こす結果を招いてしまいました。

操作が難しい

参考:https://liginc.co.jp/osora/archives/2575

セカンドライフは前後左右に動かすなどの基本動作は簡単ですが、走る、ものを掴む、視点を変えるなど、特殊な動きを習得するにはかなりの時間がかかるようです。自由度が高くできることが多い反面、メニューの数が膨大であり、直感的にプレイできる仕様ではありません。

操作に慣れる前に、ゲームを離れることになってしまったユーザーが相当数いると考えられます。

金銭面

参考:https://www.j-cast.com/2007/03/16006242.html?p=all

ゲームを遊んで現金化できるリンデンドルを稼げることは、セカンドライフの大きな特徴です。しかし、土地を買う、アイテムを買う、オリジナルアバターを生成して着せ替えるなど、これらすべての行動にリンデンドルが必要になります。

また、2007年には英語で「あなたのリンデンドルをいただきますが、いいですか?」と尋ねられ、「Yes」を選択するとすべてが盗られてしまうという詐欺も発生しました。

なにかとお金がつきまとうゲームであることから、嫌気が差してやめてしまった人も多いはずです。

度重なる動作不具合

セカンドライフをプレイするには、早い通信速度と高いスペックのパソコンが求められます。また、市販のPCではソフトのインストールすらもできない、といったケースもあったようです。

当時はメモリが1GB以下のパソコンも多く、CPUの性能も今ほど高くありません。セカンドライフをプレイできたのは、パソコンを改造できてスペックを上げられる一部の人のみであったため、入口の段階からユーザーを選ぶゲームでした。

セカンドライフの今

引用:公式サイトSecond Life マーケットプレイスより

2022年1月に創設者のPhilip Rosedale氏がLindenLabに復帰したことにより、セカンドライフの再生が期待されています。

ここでは、セカンドライフの今を紹介していきます。

グラフィックが大幅改善

以前はアバターの数は限られていましたが、現在は「Mesh」や「BENTO」の技術が導入され、よりクオリティの高いものを作れるようになっています。

また、グラフィックが切り替わるたびに読み込みに時間を要し、時にはアプリ自体が落ちてしまうことが頻繁にありました。しかし、近年はスペックが改善されたことから、市販のパソコンでもストレスなくプレイできるようになっていますが、まだ読み込みに時間がかかることもあるようです。

ゲーム人口は減少気味だが、一部の人の中で根強い人気

セカンドライフのゲーム人口は全盛期に比べて大幅に減少していますが、一部でプレイし続けている人もまだいるようです。

Youtubeでは、古くからのセカンドライフプレイヤーたちが、イベントを開催したりトークショーを行っている動画をいくつか確認できました。ユーザー間で結束力の強いコミュニティが作られている様子が伺えます。

セカンドライフとメタバースの違い

セカンドライフとメタバースは「ゲームを通じてユーザー同士でコミュニケーションが取れる」「ゲームで遊んでお金を稼げる」といった共通点があります。

しかし、両者はまったく同じものというわけではありません。ここでは、両者の違いを解説していきます。

NFTの有無

メタバースでは、ゲーム内で使う土地やアイテムをNFT化するのが一般的です。NFT化することでユーザー間で仮想通貨を用いて取引できるようになる、他のゲームでも使える、資産として価値を持つなどのメリットがあります。

一方でセカンドライフでは、NFTは採用されていません。ゲーム内では土地やアイテムが売買されていますが、専用通貨リンデンドルでの取引となり、他のゲームでアイテムを使うことはできません。あくまでゲーム内でしか価値を持たないということになります。

暗号資産(仮想通貨)の有無

メタバースでは、専用の暗号資産を用いて取引を行うことが多いです。「The Sandbox」の「SAND」や「Decentraland」の「MANA」など、有名メタバースには必ずといっていいほど専用の暗号資産が用意されています。

セカンドライフではリンデンドルが用いられますが、これは暗号資産ではありません。なぜなら、暗号資産の定義を満たさないからです。

(1)不特定の者に対して、代金の支払い等に使用でき、かつ、法定通貨(日本円や米国ドル等)と相互に交換できる
(2)電子的に記録され、移転できる
(3)法定通貨または法定通貨建ての資産(プリペイドカード等)ではない
引用元:日本銀行|公表資料・広報活動

リンデンドルは(1)と(3)の条件は満たしますが、(2)の移転ができないため、条件に合致しません。

VR・AR技術

参考:https://forbesjapan.com/articles/detail/44255/3/1/1

最近では、メタバースにVR・ARなどの最先端技術が用いられています。

2021年の11月に社名変更した「Meta社」はVRゴーグルを開発し、メタバースを現実に近づけようとしています。現時点では長期間使用できない、価格が数万円して高いなどの課題はありますが、今後はメタバースへのVR・ARの導入は進んでいくことでしょう。

一方で、セカンドライフはパソコンのアプリで遊ぶ仕様になっており、VR・ARのような技術は使われていません。今後新しい技術の導入が期待されます。

セカンドライフの今後

参考:https://channel.nikkei.co.jp/digitalsummit2022/digitalsummit2022_day2_archive5.html

セカンドライフは、2007年頃をピークに人気は下降し、最近までユーザー数は右肩下がりを続けていました。しかし、最近ではグラフィックが改善したことや、創設者のPhilip Rosedale氏が復帰したことによって、ユーザー数は少しずつ回復基調にあります。

しかし、現在のセカンドライフの知名度は全盛期と比べて大幅に落ちてしまいました。以前と同じくらい、もしくはそれ以上を目指すのであれば、大幅なリニューアルが必要であると考えられます。

元祖メタバースのセカンドライフを作り上げたPhilip Rosedale氏が、競争が激化する現代でどのような策を打って出るか、注目してみていきましょう。

セカンドライフ まとめ

セカンドライフは、2007年頃に人気のピークを迎えたゲームで、メタバースと似た特徴を持っています。当初、ゲームを遊びながら稼げるシステム(現代のPlay to Earn)は多くの人に受け入れられましたが、操作性の悪さやゲームの不具合により、ユーザーが多く離脱することになってしまいました。

今後どのメタバースが発展するかを見極める上で、セカンドライフの事例は参考になるはずです。ぜひ当記事を参考にメタバースを選んでみてください。

S.G

SG

月間100万PV超えの投資情報サイトや、ニュースサイトなど、暗号資産に関する記事を数多く執筆するフリーランスのライター。自身も2016年から暗号資産投資を行なっており、日進月歩の進化を遂げる暗号資産業界を常に追ってきた。ライター歴は3年で「文章で読者をワクワクさせ、行動に移させる」をモットーに執筆を行う。東南アジア在住、海外留学の経験があり、英語の翻訳記事も得意にしている。
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