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世の中に貢献できるお金稼ぎ?トークンエコノミーで社会のあり方が変わる

解説系記事

2021年のNFTバブルを経て、暗号資産(仮想通貨)への関心はより一層高まってきました。

その一方で、多くの日本人が持つ暗号資産に対するイメージは「リスクの高い投資」「自分が儲かりたいだけの金儲け」「初心者がうかつに手を出すべきものではない」といった範疇を抜け出せていないように思います。

しかしこの記事を読んでトークンエコノミーについて理解することで、暗号資産が単なる投機対象ではなく、社会をより良くする可能性を秘めたテクノロジーであることがわかるはずです。ぜひ最後までご覧ください。

トークンエコノミーとは?

トークンエコノミーとは、一言でいうと「デジタル資産による新しい経済圏」のことを意味します。

「トークン」という言葉は、テクノロジーの進歩に伴い本来の意味から派生して幅広い場面で活用されています。

そこでまずはトークンという言葉の広義の意味を確認した上で、この記事で用いるトークンの意味を定義します。

その後、暗号資産に関連する文脈での「トークンエコノミー」について理解を深めていきましょう。

トークンとは?

トークンという言葉には本来、「しるし」「証拠」などの意味があります。

その後、経済が発展するにつれて「代用貨幣」「引換券」「商品券」といった意味も持つようになりました。

そして現在、トークンには必ずしも物理的な形を持つとは限らないケースも存在します。

たとえば、Amazonで利用できるAmazonポイント、楽天で利用できる楽天ポイントなどもトークンであると考えることができます。

つまり、昨今の経済システムにおけるトークンとは「金銭的価値を持つ物理的、あるいはデジタルの通貨」であると言えます。

ただし、金銭的価値を持つことがすなわち「お金(法定通貨)と交換ができる」とは限らない点には注意が必要です。

先ほどのAmazonポイントや楽天ポイントも、それぞれのプラットフォームの中では金銭的価値を持ち、これを用いてショッピングを楽しむことができますが、ポイントをそのまま円やドルなどの法定通貨に交換することはできません。

これは暗号資産においても同様です。法定通貨にいつでも交換できるトークンもある一方で、トークンエコノミーと呼べるような経済圏は形成しているものの、トークンと法定通貨の交換はできないという場合もあります。

トークンを基軸とする「経済圏」

物理的な通貨(10円玉など)もトークンと呼ぶことはできますが、本記事ではトークンエコノミーについて論じるにあたり、まずは「トークン=金銭的価値を持つデジタル通貨」と定義して解説を進めます。

このトークンを活用して構築する独自の経済圏を「トークンエコノミー」と呼びます。

トークンエコノミーでは、トークンを利用して様々なサービスを利用することができます。

たとえば、先ほどから例として登場する楽天。楽天では、貯まった楽天ポイントを使って楽天市場で商品を購入するだけではなく、金融・保険・通信・電気・ガス・旅行・エンタメなど、楽天ポイントを媒介に多岐に渡るサービスを展開しています。

引用元:DIME

特定の目的を持った商品やサービスが利用できる環境と、そこで用いられるトークンが揃うことで形成される経済圏、これをトークンエコノミーと呼び、この形のトークンエコノミーはすでに私たちの生活に広く浸透しています。

トークンエコノミーの根幹はブロックチェーン

そして近年、このトークンエコノミーという試みにブロックチェーン技術が活用されるようになってきました。

これは、ブロックチェーンの持つ特性がトークンエコノミーと非常に相性がよかったためです。

これからの時代のトークンエコノミーは、ブロックチェーンを技術的な基盤として成長することが予想されており、本記事でもこれ以降はブロックチェーンを活用したトークンエコノミーについて解説していきます。

ブロックチェーンが持つ特性の中で、トークンエコノミーと好相性にある要素には以下のようなものがあります。

  • 誰もがサービスを提供する側として経済圏に参加できる
  • 特定の管理者が不在(中央集権的でない)

誰もがサービスを提供する側として経済圏に参加できる

あなたが仮に、世の中にとって非常に価値がある優れたサービスを思いついたとしましょう。

できるだけ多くの人にこのサービスを届けるには、すでにたくさんの人が集まっている場所でサービスを提供することが合理的です。

つまりAmazonや楽天など、既存のユーザーを多く抱え込んでいるプラットフォームで自分のサービスをリリースすることができれば、これほど望ましいことはありません。

しかし、これを実現することは不可能です。

これらのプラットフォームはあくまで企業としてのAmazon、楽天の持ち物であり、一般ユーザーが自由にその場を借りてサービスを提供できるものではありません。

ところがブロックチェーンを用いると、事情が変わってきます。

ブロックチェーンは誰もが参加できる開かれた世界です。

世界中で多くのサービスが開発・提供されているブロックチェーンとして、イーサリアムが有名です。

もしあなたが自分のサービスを作って多くの人に届けようとする場合、イーサリアム上でdApps(分散型アプリケーション)などの形でサービスを作ることにより、世界中の人に届けることができます。

また、イーサリアムではカスタムトークンと呼ばれる独自の暗号資産も作ることができ、これを自分のサービス内で使用する通貨とすることもできます(技術的には可能ですが、残念ながら日本の法律上は実現不可能です)。

このように、ブロックチェーンを基盤としたトークンエコノミーにおいては、誰もがサービスを提供する側として経済圏に参加することができます。

特定の管理者が不在(中央集権的でない)

引用元:ASCII

既存のトークンエコノミーが持つ重大な問題点として「経済圏のすべてが特定の管理者に握られている」というものがあります。

繰り返しの登場になりますが、ECショップとしてのAmazonや楽天は、いずれも特定の企業の管理の下で運営されています。

また、そこで流通するトークン(Amazonポイントや楽天ポイント)も、企業がその価値を保証しているからこそ商品との交換に使えるのであり、万が一Amazonや楽天が倒産したときには、あなたがどれだけポイントを貯め込んでいようとも一瞬で無価値になります。

一方、ブロックチェーンには「特定の管理者がいない(中央集権的ではない)」という特徴があります。

この特徴のおかげで、仮にあなたがブロックチェーン上でサービスを展開している場合、誰かがあなたの意志を無視してサービスを勝手に止めたり、サービスに関連するデータを改ざん・削除することはできません。

特定の個人や企業に依存することなく、誰もがこの世界に「確実に存在する」経済圏を提供できる。この点も、ブロックチェーンとトークンエコノミーが好相性である大きな理由です。

ここからは、ブロックチェーンを活用したトークンエコノミーの具体例を3つ解説していきます。

いずれもお読みいただくことで「暗号資産=投機」という日本人が抱きがちなイメージを払拭し、トークンエコノミー、そして暗号資産は社会を良くする新時代のテクノロジーであることが理解できるはずです。

STEPN

引用元:STEPN

STEPNは歩いてトークンを稼げるMove to Earnのサービスとして、2022年前半に爆発的な盛り上がりを見せました。

毎日歩いたり走ったりするだけで相当な額のお金を稼げるという側面ばかりが注目を浴びましたが、実のところSTEPNは、現代社会が抱える課題を解決しうる可能性を秘めた非常に良質なサービスです。

STEPNの基礎知識

STEPNは歩くことでトークンを獲得できるサービスです。

利用方法を簡単に解説すると、まずはスマートフォンにSTEPNのアプリをダウンロードし、アプリ内でスニーカーのイラストが描かれたNFTを購入します。

引用元:STEPN

そのNFTを保有していると、時間の経過で一定量のエネルギーが溜まります。

エネルギーが溜まったら、スマートフォンを持った状態で歩く、または走ることでエネルギーを消費し、代わりにトークンを獲得することができます。

STEPNをプレイして獲得できるトークンはGST(Green Satoshi Token)と呼ばれ、暗号資産取引所での他の暗号資産と交換を経て、最終的に日本円に換金することができます。

全盛期には1時間のウォーキングで数万円、数十万円を獲得するユーザーもおり、簡単に大金を稼げるという点が話題を呼びました。

トークン獲得の手段:歩くor走る

STEPNでのトークン獲得方法は実にシンプルです。

NFTを購入し、エネルギーが溜まったら歩くor走る。

わずかこれだけの行為でトークンを獲得できます。

ITリテラシーによほど自信がない人や英語が不得意という人でなければ、誰でも簡単にトークンを獲得できるシステムが、爆発的な人気を呼んだ理由の1つです。

現代人の健康維持・促進に貢献

稼ぎやすい側面ばかりが注目を浴びたSTEPNですが、実は現代社会の大きな課題を解決しうるサービスでもあります。

STEPNが社会に対して提供する価値、それは「現代人の健康維持・促進」です。

現代人の多くが運動不足や肥満といった悩みを抱えていることは、もはや説明の必要はないでしょう。

ダイエット市場は今や膨大なものとなっており、人々はわざわざ大金を払ってサプリメントやダイエットグッズを購入したり、ジムに通ったりしています。

「お金を払ってまでも痩せたい」

これが私たち現代人の多くが持つ願望ですが、STEPNは痩せるための行動である「運動」に金銭的なインセンティブを与えました。

「お金を払って運動して痩せる」から、「お金をもらって運動して痩せる」という真逆の体験をSTEPNはユーザーに提供しました。

その結果、STEPNユーザーは「お金のために運動する」という行為を、半ば強迫観念めいたものさえ感じながら続けることになりました。

本記事の筆者も、実は今でも毎日歩いているSTEPNユーザーですが、この習慣はSTEPNのおかげで身についたものです。

稼ぐことだけを目的にSTEPNをプレイしていた人たちもいますが、一方でSTEPNのおかげで運動習慣が身についたり、健康状態が改善した人も多数います。

STEPNという1つのトークンエコノミーが、運動不足・肥満という社会問題の解決につながる強力な一手であると言えるのではないでしょうか。

WeatherXM

引用元:WeatherXM

WeatherXMと呼ばれるWeb3のプロジェクトが先日、500万ドル(約6億7,000万円)の資金を調達しました。

WeatherXMはユーザーにインセンティブとしてトークンを付与することでデータを集め、予測精度を高める気象ネットワークです。

WeatherXMの基礎知識

WeatherXMが提供するサービスの概要は以下の通りです。

  • ユーザーはWeatherXMが販売する気象予測装置を購入し、自宅に取り付ける
  • 装置が収集した気象データを、ユーザーはWeatherXMに提供する
  • 提供した気象データの対価としてユーザーはトークンを受け取る

このように、ユーザーは気象予測に役立つデータを提供した見返りとしてトークンを受け取ります。“Collecting data to Earn”というようなイメージのサービスです。

トークン獲得の手段:装置の購入&気象データ収集

WeatherXMの経済圏でユーザーがトークンを獲得する仕組みは非常にシンプルです。

まずユーザーはWeatherXMが販売する気象予測装置を購入します。購入には400ドル(約5万4,000円)程度の費用がかかります。

この装置を自宅に取り付けておくだけで、装置は自宅周辺の気象データを収集してくれます。

ユーザーは集めたデータをWeatherXMに送ることで、トークンを受け取ります。

STEPNと同じくらい、非常にシンプルでわかりやすい仕組みです。

気象予測が困難な地域の予測精度向上に貢献

WeatherXMが提供する社会的価値、それは「気象予測が困難な地域の予測精度向上に貢献すること」です。

ユーザー視点では「装置を買って放置するだけでトークンがもらえる、楽なお金儲けの仕組み」に見えますが、WeatherXMが提供する真の価値は違う部分にあります。

WeatherXMの目的は、気象予測の精度向上です。

しかし多くの人は、気象予測の精度はすでに十分高い水準にあり、これ以上改善の余地があるのだろうかと思うのではないでしょうか。

ところが、すでに精度の高い気象予測を実現できているのは、気象インフラが十分に整備されている地域だけです。

たとえば、僻地や人口が少ない地域など採算が取れる見込みがない場所は、インフラが整っておらず気象データが集まらないため、正確な気象予測ができません。

この現実に対して、改善の一手となるのがWeatherXMのトークンエコノミーです。

政府や企業が手を差し伸べることができないのであれば、住民に直接気象データを収集してもらい、その報酬としてトークンを支払う。その結果、地域の気象予測の精度は向上し、地域住民も恩恵が得られる。

このように既存の経済合理性の下では解決困難な課題が、トークンエコノミーを形成することで解決できるようなケースが今後はさらに増えてくるはずです。

IPFS

引用元:Filecoin

IPFS(InterPlanetary File System)は「分散型ストレージ」と呼ばれるネットワーク上のデータ保存の仕組みの一種です。

分散型ストレージとは、特定の企業や組織、国家などの管理者が一括してデータを管理するのではなく、ネットワーク参加者のパソコンやスマホの空き容量を利用するなどして、分散化されたネットワークでデータを保存する仕組みです。

分散型ストレージは、特定の管理者がデータを一括管理するクラウドストレージに比べて、「ハッキングやデータ消失のリスクが低い」「管理者によるデータの閲覧・改ざん・悪用のリスクが低い」「データの維持管理費を抑制できる」などのメリットがあります。

過去には、政府による検閲を回避するためにIPFSが活用された事例があります。

たとえばトルコでは2017年、政府によって国内からのWikipediaの閲覧が制限されました。これに対し、閲覧制限が出来ないようにIPFSを用いることで、トルコ語版Wikipediaのコピーがオンラインに登場、人々はPeer to Peerで情報にアクセスできるようになりました。

またスペインでは、カタルーニャ州の独立に関する住民投票が行われた際、政府にとって不都合な情報を掲載したサイトの多くが政府の手で閉鎖されました。そこで人々は住民投票に関わる情報をIPFS上に公開することで、政府の検閲を逃れ、誰もが必要な情報にアクセスできるようになりました。

このように、IPFSを活用して分散的にデータを保存することにより、政府でさえも恣意的に検閲や改ざんを行うことができないデータ管理が実現します。

IPFSの基礎知識

IPFSは、従来からインターネットで利用されている通信規格、「HTTP(Hypertext Transfer Protocol)」が持つ問題点を解決できるシステムです。

HTTPは「ロケーション指向型」のネットワークと呼ばれ、HTTPでデータにアクセスする場合は「http://〜」というURLを指定します。

このURLはデータが存在しているサーバ、及びサーバ内でのロケーション(場所)を指定しています。

このようにHTTPは、あくまでデータの保管場所を指向した仕組みになっています。

ところがロケーション指向型では、特定の管理者(サーバ)への依存度が強く、管理者によって不正にデータを用いられたり、データが消失するなどの懸念があります。

一方、IPFSは「コンテンツ指向型」を採用しているネットワークです。

IPFSではコンテンツごとに識別可能なIDが割り当てられています。

データを呼び出す際はネットワーク全体へコンテンツの識別IDを通知し、そのIDが割り当てられたデータを持っていないかを照会します。

ネットワーク上のノード(ブロックチェーン上で取引の監視・管理・承認などを行う端末)のうち、どれか1つでもIDが合致するデータを持っていれば、そのノードからデータを呼び出すことができます。

トークン獲得の手段:ネットワーク上でのデータ保存場所の提供

引用元:Binance Academy

IPFSで用いられるトークンはFilecoinといいます。

Filecoinは様々な獲得手段がありますが、ここでは「データの保存に協力することに対する報酬」としてのFilecoinの扱いについて解説します。

IPFSでは特定の管理者に依存せず、データを分散して保存しています。

データを分散して保存するための場所として利用されるのは、ノードのパソコンやスマホの空き容量です。

つまりノードの視点から見ると、データを分散して保存するための場所(ストレージ)を提供し、その貢献の対価としてFilecoinを受け取ることになります。

分散型ストレージの実現に貢献

このような報酬の仕組みが取り入れられたのは、そもそもノード側には空き容量をわざわざ提供するインセンティブがなかったためです。

自分が使用していない余剰の容量を貸しているだけではあるものの、データの保存自体にはコストもかかるため、本来的には他人のデータを保存しておく理由はノード側にはありません。

そこでFilecoinで報酬を支払う仕組みを取り入れ、ノード側にもデータを保存するメリットがある状態を作り上げることで、IPFSはデータの保存場所を確保し、システムを成立させています。

ノード側から見れば、ただ空き容量を差し出すだけで報酬を得ていることになりますが、これも従来の中央集権的なデータ管理の問題点を解決しているという意味では、非常に大きな貢献であると言えます。

トークンエコノミーの今後の展望まとめ

本記事では、デジタル資産であるトークンを用いた経済圏「トークンエコノミー」について解説しました。

トークンエコノミー自体はすでに様々なものが存在していますが、今後は親和性が高いブロックチェーン技術と結びつくことで、より幅広く多様なトークンエコノミーの形成が期待されています。

またSTEPNのようにユーザー視点ではお金を稼ぐことばかりが注目されるサービスであっても、本質を突き詰めていけば、実はトークンエコノミーが現代社会の問題解決に貢献しているケースが多いことも見てとれます。

今後も革新的なトークンエコノミーが増えてくることを期待しながら、ユーザーのみなさんもぜひ様々なプロジェクトを通じて、トークンエコノミーの意義を体験してみてはいかがでしょうか。

Sparrow

Sparrow

フリーランスのWebライター。ブロックチェーンの非中央集権的な世界観に惚れ込み、暗号資産・NFT・メタバースなどのWeb3領域に絞って記事を執筆。自らの暗号資産投資やNFT売買の経験をもとに、難しいと思われがちなブロックチェーンについて、初心者にもわかりやすい記事を書くことを心がけています。好きなNFTクリエイターは「おにぎりまん」氏。
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