画像:OpenSea公式ページ
世界最大級のNFTマーケットプレイスである「OpenSea(オープンシー)」は、NFTブームとともに、日本でも利用する人が増えてきました。
そんな中で「ガス代が高すぎる」「NFTを売買したいけどガス代がよくわからない」など、ガス代やその高騰について悩んでいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、以下について解説していきます。
- そもそもガス代とは何か
- ガス代の仕組み
- ガス代を安くする5つの方法
ガス代の仕組みを知ることで、ガス代を安くする方法も理解しやすいので、詳しく見ていきましょう。
この記事の構成
【OpenSea】ガス代(GAS)の仕組み
ガス代(GAS)の仕組みについて、以下の3つを解説します。
- ガス代(GAS)
- Gwei(ジーウェイ)
- GASリミット
ガス代の仕組みを知れば、高騰する理由なども理解しやすくなるでしょう。
ガス代(GAS)とは
ガス代とは、イーサリアムチェーンのネットワーク利用料のことです。
このネットワーク利用料は、ブロックチェーンへの記録や承認をしてくれる「マイナー(≒マイニング業者)」に報酬として支払われます。この記録や承認といった作業は「トランザクション(取引)処理」とも呼ばれ、この作業によってブロックチェーンの信頼性を保つ一助になっています。
ガス代の価格(報酬)を高く設定することで、優先的にトランザクションを処理してくれるといった特徴もあります。
ちなみに、ガス代の価格は「Gwei(ジーウェイ)× GASリミット(使用ガス上限)」で計算されます。
GweiとGASリミットについて、詳しくみていきましょう。
Gwei(ジーウェイ)とは
Gwei(ジーウェイ)とは、ガス代の単位のことで、1Gwei = 0.000000001 ETH(1/109ETH)です。
Gweiは、トランザクションの処理数に応じてリアルタイムで変動します。マイナーが処理しなければならないトランザクションの数が増えることで、より早く処理してもらおうとガス代を高く設定するユーザーも現れるからです。
GASリミットとは
GASリミットとは、トランザクションで使用するガスの取引量の上限です。
なにか問題が発生したときに、ガスが際限なく供給されることを防ぐためにあります。
OpenSeaのガス代(GAS)が高騰する原因
画像:Average daily gas price of Ethereum (statista)
ガス代の高騰は、ETH価格の高騰の他に、トランザクションが集中すると起こります。
以下の事例をもとに、簡単に説明します。
- 処理量の限界
- DeFiブーム
- NFTブーム
処理量の限界
ガス代が高騰する原因のひとつが「処理量の限界」です。
イーサリアムの取引やイーサリアムチェーンへの記録の際には、PoWという仕組みでブロックにデータが保管されます。
このとき、取引や記録が増えるとブロックの処理量に限界がきてしまい、処理が遅延したり承認されなかったりします。
マイナーは、手数料(ガス代)の多いトランザクションを優先的に処理するため、早く処理してもらおうとするユーザーが多くなり、ガス代が高騰するというわけです。
ちなみに、このような処理量の限界を「スケーラビリティ問題」といいます。
DeFiブーム(2020年9月ごろ)
2020年9月ごろのDeFiブームでも、ガス代が高騰しました。
DeFi(ディファイ)とは、ブロックチェーン上に構築された分散型金融を意味します。
これまでの金融機関では、中央組織による一括管理が必須でした。
一方で、ブロックチェーンの特性やスマートコントラクト(自動契約)を活用して、中央集権的な組織を仲介せずに、金融取引を可能にしたのがDeFiです。
DeFiブームにより、多くのユーザーがイーサリアムを利用したことで、ガス代は一時的に479Gweiまで上昇しています。(参照:Ethereum transaction fees hit another all-time high amid DEX volume boom)
NFTブーム(2021年2月ごろ)
2021年2月ごろにはNFTブームが起き、ガス代が高騰しています。
NFTを売買するOpenSeaでは、多くのユーザーがイーサリアムを使って取引するため、処理量の増加によりガス代が高騰しました。
これにより、OpenSeaでは一時、月間平均Gas priceが211Gweiまで高騰しています。
OpenSeaでガス代(GAS)が発生するタイミング
NFTの「販売者」と「購入者」に分けて、ガス代が発生するタイミングを解説します。
販売者が支払うガス代(GAS)
販売者が支払うガス代は、以下5つのタイミングで発生します。
- 初めてNFTを出品するとき
- メタデータをIPFSに保存するとき
- Giveawayでエアドロップするとき
- NFTの出品をキャンセルするとき
- オファーを承諾するとき
1.初めてNFTを出品するとき
OpenSeaでは、初めてNFT作品を出品する際にガス代がかかります。一度払ってしまえば、2度目以降は無料で出品できます。
2.メタデータをIPFSに保存するとき
NFTのメタデータ(タイトル・画像データ・作品概要など)をOpenSeaサーバーに保存するのではなく、IPFS(分散型サーバー)に保存する際に、1作品ごとにガス代がかかります。
IPFSに保存するとメタデータが凍結され、IPFSが無くならない限り、永久に作品の編集や削除ができなくなります。
3.Giveawayでトランスファーするとき
Giveawayとは、NFTを無償で配布することです。
OpenSeaではトランスファー機能を使って、NFTを送ることができます。
無料配布企画をする際には、NFT自体は無料でも、ガス代が発生することを覚えておきましょう。
4.NFTの出品をキャンセルするとき
OpenSeaでは、NFTの出品をキャンセルする際にガス代がかかります。
NFTの出品には、以下2つの方法で出品でき、どちらもキャンセル時にガス代が発生します。
- 固定販売価格で出品する
- オークション形式で出品する
一方で、「販売価格の値下げ」や「NFTの削除」にはガス代がかからないので、販売を取りやめたいときは、一度NFTを削除して、再登録するとガス代をカットできます。
5.オファーを承諾するとき
販売しているNFTにオファーが入り、承諾した際にもガス代がかかります。
この価格で買いたいとオファーした購入者ではなく、承認した販売者がガス代を払うという点を覚えておきましょう。
購入者が支払うガス代(GAS)
購入者が支払うガス代は、以下5つのタイミングで発生します。
- 固定販売価格でNFTを購入するとき
- ETHをWETH(Wrapped ETH)に替えるとき
- オファーをキャンセルするとき
- オークションへの入札をキャンセルするとき
- ETHをPolygon ETHに替えるとき
1.固定販売価格でNFTを購入するとき
販売中のNFTを固定販売価格で購入するとき、ガス代が発生します。
一方で、希望購入価格でオファーを出して、購入した際にはガス代は発生しません。
オファーを承諾した販売者がガス代を払います。
2.ETHをWETH(Wrapped ETH)に替えるとき
オファーやオークションに参加する際には、WETH(Wrapped ETH)が必要です。
Wrapped ETHとは、イーサリアムを基盤に開発・発行された暗号資産で、価格はイーサリアムと紐づいています。以下の画像のように、イーサリアムのロゴが赤くなっているのが特徴です。
OpenSeaでは、ETHをWETHに交換することができ、その際にガス代がかかります。
3.オファーをキャンセルするとき
買いたいNFTに出しているオファーを取り消すときにもガス代が発生します。
オファー購入ならガス代がかからないからといって、オファーを出しすぎるのは注意が必要です。
4.オークションへの入札をキャンセルするとき
オークション形式で販売されているNFTへの入札を、取りやめるときにもガス代がかかります。
5.ETHをPolygon ETHに替えるとき
ポリゴン(Polygon)で出品されたNFTを購入する際には、Polygon ETHが必要です。
OpenSeaでは、ETHをPolygon ETHに交換することができ、その際にガス代がかかります。
Polygon ETHとは、イーサリアムのスケーラビリティ問題に対する代替通貨として、開発・発行されている暗号資産です。。以下の画像のように、イーサリアムのロゴが紫色になっている点で見分けられます。
NFTの購入は、Polygon ETHで支払いますが、そのガス代はPolygonのネイティブ通貨であるMATIC(マティック)で支払うので、注意しましょう。
OpenSeaのガス代(GAS)を安くする方法5選
ガス代を安くする方法は4つあります。
- ガス代が安いタイミングで取引する
- MetaMaskの設定で取引速度を下げる
- MetaMaskの設定でGASリミットを下げる
- イーサリアム以外のチェーンで取引する
ガス代が高くてお悩みの方は、ガス代の節約にお役立てください。
ガス代が安いタイミングで取引する
ガス代が安いタイミングは3つあります。以下のタイミングで取引しましょう。
- 数分間のうちで安いタイミング
- 過去のデータから統計的に安いタイミング
- 取引量が増えそうな時期を避けたタイミング
1.数分間のうちで安いタイミング
ガス代は、リアルタイムで変動しているので、数分待つだけで、数千円安くなることがあります。その瞬間を見逃さずに取引を行いましょう。
2.過去のデータから統計的に安いタイミング
過去数週間分の統計をとり、特定の時間帯を狙って取引することも効果的です。
次の画像のように、日本時間の週末の午後は、イーサリアム取引が盛んに行われているアメリカでの取引量が落ち着く時間帯と考えられるので、比較的安い傾向にあります。
(画像:ETH GAS NOW)
3.取引量が増えそうな時期を避けたタイミング
有名アーティストや期待されているプロジェクトのNFT出品、およびETHの高騰・暴落など、取引量が増えそうな時期の取引は避けましょう。
ガス代の節約には、ある期間内でのトランザクションが、できるだけ少ないタイミングを見計らって取引することが重要です。
MetaMaskの設定で取引速度を下げる
MetaMaskの設定で取引速度を下げることでも、ガス代を安く抑えられます。
トランザクションを承認する際に、マーケット価格で見積もられたガス代が表示されるので、青文字で書かれた「編集」をクリックすると取引速度を変更できます。
「低・中・高」と3段階で選べるので「低」に設定しましょう。
取引速度を重要視しない場合にオススメする方法です。格段に安くなるわけではありませんが、急ぎの取引でない限りは低速設定にしておくのが良いでしょう。
MetaMaskの設定でGASリミットを下げる
GASリミットを下げることでもガス代を安くできます。
先程のMetaMaskでの取引速度を変更する画面で、「詳細オプション▼」をクリックすると、ガス代の内訳が表示されます。
GASリミットを下げれば、ガス代が安くなります。
最大手数料(Gwei)の変更は「MetaMaskの設定で取引速度を下げる」の内容を、手動で行う作業にあたります。
ちなみに、最大優先手数料(Gwei)は、マイナーに支払うチップです。
GASリミットの最低値は210,000と決められているので、210,000以上で設定しましょう。
ただし、低く設定しすぎると、いつまでも取引が行われないこともあるので注意してください。 相場感をつかめていない初心者の方は、MetaMaskのデフォルト設定を変えない方が賢明でしょう。
イーサリアム以外のチェーンで取引する
イーサリアム以外のブロックチェーンで取引することでも、ガス代を抑えられます。
OpenSeaで採用されているブロックチェーンは以下の4つです。
- イーサリアム(Ethereum)
- ポリゴン(Polygon)
- クレイトン(Klaytn)
- ソラナ(Solana)
それぞれメリット・デメリットはありますが、ガス代の価格だけを比較するとイーサリアムが一番高額です。
ポリゴンでは、初めてNFT作品を出品するときでもガス代はかかりません。しかし、NFT取引額や流通量はイーサリアムに劣るので、ポリゴンを使ってNFT販売しても、利益が出にくいデメリットもあります。
各ブロックチェーンの特性を理解して、よりガス代の低いブロックチェーンを利用することで節約に繋がります。
OpenSeaのガス代に関するQ&A
OpenSeaのガス代について、以下3つの質問に解答していきます。
- ガス代(GAS)を調べる方法はある?
- 取引にかかるガス代(GAS)は経費になる?
- これからガス代(GAS)が安くなる可能性は?
ガス代(GAS)を調べる方法はある?
ガス代は、いくつかのサイトで調べることができます。
「ETH GAS NOW」では、以下のような画面でガス代の確認が可能です。
(画像:ETH GAS NOW)
過去1年分の履歴や時間帯別のガス代が見られるなど、それぞれのサイトに特徴があるため、見やすいサイトを利用するといいでしょう。
取引にかかるガス代(GAS)は経費になる?
ガス代は経費になります。
所得税法上、必要経費は「その所得を生むのに直接必要となった支出」と定義づけられています。(参考:やさしい必要経費の知識 国税庁)
以下のような費用は、経費に計上できるといえるでしょう。
- 暗号資産の取得費
- 出金手数料
- 取引手数料
- 投資のコンサルティング費用
ガス代は取引手数料にあたるため、経費として計上できます。
これからガス代(GAS)が安くなる可能性は?
将来的に、ガス代が安くなる可能性はあります。
イーサリアムは、PoW(プルーフ・オブ・ワーク)と呼ばれる方法で、ブロックチェーンのデータが正しいことを承認しています。トランザクションを処理するために、膨大な電力を要する計算をすることで、マイナーは報酬としてガス代を得られるわけです。
このPoWでは、競争原理が働き、早く処理してもらおうと価格の吊り上げが起きやすくなっています。
そこで、イーサリアムではガス代の高騰問題を解決するために、ブロックチェーンの承認をPoS(プルーフ・オブ・ステーク)と呼ばれる方法に変更し、トランザクション処理の向上を図っています。
PoSは、ETHの保有量や保有期間によって、マイナーになる権利を得やすくなる仕組みです。PoWよりもトランザクションの処理スピードが早い傾向にあり、膨大な電力も必要としないので、ガス代の削減につながると期待されています。
PoWからPoSへの移行がうまくいけば、ガス代は安くなるでしょう。
まとめ:OpenSeaのガス代(GAS)を抑えて賢く取引しよう!
イーサリアムでは、ガス代が高騰する「スケーラビリティ問題」を解決するために、PoWからPoSへの移行を試みています。しかし、ガス代の高騰はすぐに解決するわけではありません。
そこで、いますぐガス代を抑える5つの方法をご紹介してきました。
- ガス代が安いタイミングで取引する
- MetaMaskの設定で取引速度を下げる
- MetaMaskの設定でGASリミットを下げる
- イーサリアム以外のチェーンで取引する
- OpenSea以外のマーケットプレイスを使う
それぞれ注意点なども考慮しつつ、OpenSeaでのガス代を抑えて取引しましょう。