2021年5月、ウィスコンシン州郊外の事業所を出たところで、4人の男がひとりの男に遭遇した。喧嘩になり、被害者が銃を抜いた。発砲がなかったにもかかわらず、そのせいで買い物客は立ち去らねばならず、周辺の企業は数時間閉鎖されました。喧嘩の原因は、宝石でもお金でもなく、個人的な意見の相違でもなかったのです。実のところ原因はパンデミックのために、再び人気を集めているスポーツカードについてでした。
ターゲットは、駐車場襲撃の前に、トレーディングカードを手に入れようとする客で大変な騒ぎになっていました。ブラックフライデーに買い物をする人たちと同じように、カードコレクターたちは、数千ドルの価値があるかもしれないカードのパックを手に入れようと、店の前で一晩中キャンプをしたのです。当初、Target社は、一晩中行列に並ばないようにと客に告げました。しかし、それが思うような効果を発揮しなかったため、同店は店頭でのトレーディングカードの販売を中止しました。野球カード、ポケモンカード、その他のスポーツのカードも含まれていました。「お客様と私たちのチームの安全が最優先です」と、同チェーンは声明で述べています。
トレーディングカードビジネスは、驚くべき経済状況でうまくいきました。 eBayは米国で400万枚以上のカードを販売し、これは2019年に米国で販売したカードよりも142％多くなっています。2020年2月現在、12枚が100万ドル以上で落札されています。2021年1月には、トプスのミッキー・マントルのルーキーカードが520万ドルで落札されました。2019年以降、急成長しているビジネスにとっては素晴らしいことです。昨年、ESPNは、スポーツカード市場は、そのクレイジーさと価格が上がり続ける様子から、ゴールドラッシュのようだと述べました。
その中で、デジタルマップやスポーツNFTのような新しいものが出てくるのです。2020年には、Dapper LabsとNBAが協力して、トレーディングカードをオンラインで利用できるようにしました。NBA Top Shotは、スポーツファンがNBAの試合のハイライト映像をNFT化し、売買できるNFTマーケットプレイスです。NBA Top Shotでは、これらのビデオハイライトを「モーメント」と呼んでいます。ビデオは、お金に余裕のある技術に精通したコレクターにとって、新しいトレーディングカードになることが期待されています。そうすれば、コレクターは単に人の写真が載っているカードだけでなく、スポーツの記憶に残る瞬間の映像も手にすることができるようになるのです。
ブロックチェーン上で収集できるハイライトリールのようなものだと考えていただけるとわかりやすいでしょう。2020年2月、レブロン・ジェームズがヒューストン・ロケッツとの試合でダンクを決め、2021年4月その瞬間のクリップが、オークションに出品され、38万7600ドルで落札されたのです。
Goldin Auctionsの創設者であるKen Goldin氏は、Bloombergのインタビューで、「われわれは、この趣味がこれまで持っていなかったものを手に入れた」と述べました。「突然、われわれはクールになったんだ」。
カード収集は、インフルエンザ、古い趣味の感傷的な価値、デジタル収集品への趣味の成長のために、近年人気が高まっています。というのも、カードコレクターは、単に趣味というだけでなく、投資で儲けることができる株式市場の代わりとしてとらえているようなのです。しかし、トレーディングカードの市場は、他の市場と同じように変動が激しいものです。今、価格が下がっているのは、パンデミック時の記録的な売れ行きのせいです。
ジェフ・ウィルソンさんは、1980年代に多くの子供たちがしたように、若い頃からカードを集め始めました。30年以上やっていませんでしたが、2018年、息子がターゲットでフットボールのチケットのパックを買ったのをきっかけに、再び始めました。
「一緒に見て、一緒に何パックか開けてみたんだ。カードを見るのは何年ぶりだろう 」とウィルソン。「すぐに少し懐かしくなって、また興味を持ちました」ウィルソンさんは、お金のある大人になった今、若い頃の自分が嫉妬するようなカードを買うことができるのです。2年後にパンデミックが起こったとき、しばらく集めていた人たちが、押入れや地下室で昔の地図コレクションを見つけ、この趣味に再び没頭しました。
スポーツ記念品専門のオークションハウス、ハント・オークションの社長、デビッド・ハント氏は、「奇妙な方法でギャンブルの一種に近い」と言います。
カードコレクターにとって、未開封のパックから珍しいカードが見つかるという希望は、何世代にもわたって買い続けてきたものです。また、トレーディングカードを投資対象として捉えるコレクターも増えており、お金を稼ぐことができる可能性があるため、趣味としての面白さも増しているのです。
「PWCC100」は、世界最大のトレーディングカードマーケットを自称するPWCCマーケットプレイスが作成した指標。1999年以前からのスポーツ施設の価値を追跡し、S&P500と比較したものです。PWCCによると、過去7年間、これらの投資はS&P500よりはるかに良い成績を収めているとのこと。ウィルソン氏のような長年のコレクターにとって、お気に入りの選手に投資し、カードが物理的なスリーブにきちんと収められ、触って遊べることは、株式口座の数字の変化を見るよりもリアルなことなのです。
5分間で新しいことを学ぶ
ウィルソンや他のマップコレクターは、他のコレクターとつながり、知識を共有できるように、さまざまなプラットフォーム用のコンテンツを作り始めました。「Sports Card Nonsense」というポッドキャストでは、現在のスポーツイベントがカードの価値にどのように影響するかについて話し、それぞれのカードを株のように見ています。株を買うことは、カードを集めることと似ているところがたくさんあります。選手のルーキーカードを買うことで、コレクターはその選手の将来に賭け、いつか殿堂入りできるように応援しているのです。それは、上場したばかりの会社の株を買って勝者を選ぶことより、必ずしも簡単なことではありません。
NBAトップショットNFTsのビデオハイライトは、物理的なカードと非常によく似ています。中の仮想カードの希少性にもよりますが、「パック」は9ドルから999ドルの値段になります。そして、コレクターは、仮想カードをめくって大勝利につながることを期待して、モーメントを交換することができます。このように、「NBAトップショット」の発売後、何が起こるかを確かめたかったウィルソン氏は、レブロン・ジェームズ、ザイオン・ウィリアムソン、ルカ・ドンチッチといった有名選手を買いに行きました。「リスクの高い、投機的な投資スタイルだと思うが、何が起こるか見るためにお金を入れる価値はあると思ったよ」と、同氏は言います。
NBAトップショットに動画の良いところが使われた、24歳の経営者であるジャック・セトルマンは、ウィルソンよりもこの新事業に肯定的でした。2021年3月のYouTube動画で、彼は200万ドル相当のNBAトップショットを披露しました。「友人と私はレブロン・ジェームズから47500ドルで瞬間を購入し・・・目標はレブロンに100万ドルで売ることだ 」と、セトルマンは動画の中で述べています。Top Shot Momentsを売買したのは、バスケットボールファンだけでなく、バスケットボールのプロもいた。大きな目標ではありましたが、ジェームス・ハイライトは以前から成功していたので、不可能ではありませんでした。
しかし、事態は急速に好転していきます。2022年7月、NBAトップショットは830万ドルを売り上げたが、これは前年比82.5％減でした。「価格の下落や市場の大きな変化を見ているのは、経済的なものだけではないと思う」とハントは言います。NBAハイライトでもデジタル絵画でも、NFTワールドは記録を破る売り上げに慣れているのです。
「NBAのハイライトでも、デジタル絵画でも、同じようなものだが、この規模のマーケットを2年でつくることなんてできないよ」とハントは付け加えました。「別に驚くことじゃないんだ」。セトルマンは、彼の夢であった100万ドルでの売却を果たせなかった。レブロンはまだ自分のハイライトビデオに100万ドルを払っていません。これまでの最高入札額は2,300ドルです。ウィルソンはまだ自分のコレクションを持っていて、いつか取り戻したいと思っています。投資家は、NFTが成長し、人気が高まるにつれ、長期的な視点でNFT市場を見ています。
2022年からは、古くて高品質なスポーツカードの価格も下がってきています。カードラダーのCL50指数（カード市場を最もよく表す厳選された50枚のカードの価値を追跡する指数）は、2021年のピークから50％近く下がっているのです。これは、それ以降に燃やされたカードが増えたことによります。
物理的なカード市場とデジタルカード市場の両方が変化しているにもかかわらず、人々は依然としてスポーツカードとスポーツ全般を愛しています。「スポーツの人気を他の骨董品や美術品、高級ワインなど、常に資産クラスであったものと比較すると、スポーツはおそらくそれらをすべて合わせた10倍以上の人気があります 」とハントは述べています。コレクターはスポーツカードに意味を見出し、懐古主義のミレニアム世代にとっては子供時代を思い出させるもの、熱狂的なファンにとってはお気に入りの選手とつながる方法、あるいはお金を稼ぐための方法になっているのです。
