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プログラムでNFTは自動的にデザインできるということについて

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2021年から取引量が激増して盛り上がっているNFTアート。次々とクリエイターが登場しており、Twitter上でも数多くの作品を見かけるようになっています。ブームの影響を受けて「自分でもNFT作品を作ってみたい」「NFTを作って販売したい」という人も増えています。

NFTはプログラムで自動的にデザインできます。自動的に生成されるNFTアートを「ジェネラティブ(ジェネレーティブ)NFT」と呼び、ツールを使って誰でも作品を制作して発表・販売することが可能です。

とはいえ、実際にはNFTを作ったからといって必ずしも売れるとは限りません。

この記事では、自動生成ツールを使ってNFT作品を制作する方法を紹介し、さらに「売れるNFT」の特徴について説明します。

NFTはプログラムを使って誰でも自動的にデザインが可能

NFT作品はコンピュータのプログラムを使うと簡単に作成することができます。イラストやデッサンの勉強をしたことがなくても作品を生み出せます。

デジタルアートを作るためのスマホアプリも存在し、手軽に作れることから人気があります。参入ハードルが低いというのがNFTアートの良い点とも言えるでしょう。

誰にでも参加可能という点はハードルが低いですが、かといって全ての作品が売れているかというとそうでもありません。

NFTの自動生成サービス・ツールは数多く提供されている

ジェネラティブNFTは、「作成支援サービス」「自動生成ツール」を使えば制作することができます。

たとえば「hashlips」というオープンソースのライブラリを利用すればジェネラティブNFTを簡単に作成可能です。とはいえ、ライブラリの「hashlips_art_engine」を使うにはPythonなどのプログラミング言語の知識が必要となります。

「hashlips」が難しいという人向けに以下のようなNFT作成支援ツールが提供されています。

NFT作成支援ツール

  • プラチナエッグ
  • VestOne NFT Generator
  • ジェネラティブNFTジェネレーター

プラチナエッグでは「自動的なアルゴリズムによる画像合成」を提供しており、NFT化する技術がない人でも自分の作品をジェネラティブアート化することが可能です。

引用元:Platinum Egg

大量の画像を作成する必要がある点、NFT化では専用のスマートコントラクトが必要な点など多少のハードルはありますが簡単に作成できるのは確かです。

「VestOne NFT Generator」はさらに簡単です。「サイト上で作ったパーツ画像」をレイヤーとして登録してデータ化し、画像をランダムに組み合わせるプログラムを使って自動的に大量のNFT作品を生成することができます。

引用元:VestOne

また、「ジェネラティブNFTジェネレーター」というツールもあります。「最上面のレイヤーに使用する画像」と「最上面から1つ下のレイヤーに使用する画像」を選択するだけでNFTを自動的に作成します。たとえば体を1種類最上面として、服5種類・帽子5種類・背景5種類とレイヤーごとに設定すると125種類の画像を自動的に生成できます。

引用元:ジェネラティブNFTジェネレーター

誰でもNFTを制作して販売が可能

NFT作品は制作についても自動作成ツールがありますし、さらに販売についてもサポートするサービスがあります。

「VestOne NFT Generator」は自動作成ツールというだけでなく、ツール内でMetaMaskと連携することができ、独自にコントラクト作成をして「ミント(新規発行)」が可能になります。NFTの作成から販売までサポートを受けられます。

通常、NFTアート作品を販売する手順は以下の通りです。マーケットプレイスとして「OpenSea」を使うものとします。

デジタル作品を制作

  • OpenSeaでアカウントを作成
  • イーサリアムを購入
  • MetaMaskとOpenSeaを紐付け
  • OpenSeaでデジタル作品をNFT化して出品

通常の手順を難しいと感じるか簡単と思うかは個人差があります。

ただ、今の日本ではNFTの始め方すら分からないという人がほとんどです。そのため、販売代行業者も登場しています。業者を使えば簡単に作品を出品できます。

出品業者のサポート内容

  • Wallet開設
  • NFT出品代行
  • NFT出品戦略

引用元:レオマネジメント

コンサルティングやマーケティング戦略の相談などもできることがあるので、こうした業者を使うのもひとつの手でしょう。

「売れる」「儲かる」という情報ばかりが目立つ

NFTが大きな話題になったのは「高値で取引されている」「高額で売れた」というニュースがネットを中心に広まったことが要因です。

NFTアートの高額取引

  • 岩の画像(2021年8月23日):約1億4000万円
  • Axie Infinityの土地(2021年2月9日):約1億5000万円
  • Twitter創業者「ジャック・ドーシー」の最初のツイート(2021年3月22日):約3億円
  • Crypto Punksのドット絵(2021年5月11日):約18億5000万円
  • デジタルアーティスト「Beeple」のアート(2021年2月16日):約75億円

極めつけは2022年11月にネットで大きく取り上げられたニュースです。

引用元:テレビウォッチ

小学生が描いた絵が最高額170万円で買われ、200作品が4000万円相当の暗号資産で売れました。

このように、2021年にNFTは「儲かる」「利益になる」商品として世間に登場したと言えます。しかも、NFTアートはプログラムを使えば自動的にデザインできます。マーケットプレイスに出すのも代行業者に頼めば手間はかかりません。

「簡単にできて何億円にもなる」「一攫千金だ」と思って参加した人も多くいます。確かに、成功例だけ見れば夢のような話です。

しかし、実情はそれほど甘くありません。

実はNFTは「売れていない」

現実を見てみましょう。実はNFTはそんなに売れていません。

NFTで世界最高のマーケットプレイスである「OpenSea」でも月間のユーザー数は2022年7月時点で「減少」しています。

引用元:OpenSea

約28万5000人というのは「全世界」のユーザー数です。最大のマーケットプレイスでも世界でたった28万人にしか利用されていません。

引用元:Finbold

2021年のアンケートでは、20カ国調査で「日本人のNFT保有率はわずか2%」という結果が出ています。

さらに、世界のNFT市場の分析を行っているDappRadar社によると、OpenSeaの1日の取引高が2022年6月には100万ドルにも満たないレベルに下がっていることが報告されています。

引用元:Cryptonews

2021年5月のピーク時には4億ドル以上の売上高があったNFT市場は、6月25日に約83万7000ドルにまで落ち込んでいます。

取引高が減少したのは「NFTは低額なものが中心に取引されている」ことが要因です。フリーミントと呼ばれる無料配布のNFTや0.1ETH以下(2.2万円以下)の低額NFTばかりが売れています。

引用元:Dune

世界のなかでもNFTを買う人は「ごく限られた少数派」であり、無料配布や低額のNFTが売れているというのが現状です。

「高額で取引!」「価格が高騰しています」「爆発的人気!」などの文句に踊らされることなく、冷静に現実を受け止めましょう。

引用元:Twitter

NFTは「手間をかけることなく自動的にデザインできる商品で大儲け」というお手軽な話ではありません。

実際、ほとんどのNFTは売れていません。おおよそ以下の理由が推測できます。

NFTが売れない理由

  • 作者が世間に認知されていない
  • 市場の動向を知らずに発表している
  • NFTのトレンドを抑えていない
  • デザインがそもそも良くない
  • コンセプトがない

無名の人間が、何のコンセプトもなく、自動生成プログラムでパッと作ったものがバカ売れするほどNFT業界は甘くありません。

自動デザインで売れるNFTと売れないNFTの違い

自動デザインで作成されるジェネラティブNFTには以下のような特徴があります。

ジェネラティブNFTの特徴

  • イラストのデザインが統一されている
  • パーツが複数部位に分かれている
  • コンピュータのアルゴリズムによってパーツをランダムに組み合わせる

アーティストが実際に1枚ずつ手で描くのではなく、事前に定めたパーツをコンピュータが組み合わせることによって大規模なコレクションを形成するというのが「ジェネラティブNFT」です。

「自動的にプログラムでデザインするNFT」として最も一般的に知られているタイプです。

この章では、ジェネラティブNFTとして成功したコレクションにはどのような特徴があるのか解説します。

BAYCという成功事例を見てみよう

「プログラムによって自動生成されたNFTコレクション」として最も有名なものは、「Bored Ape Yacht Club(BAYC)」でしょう。NFT通ならお馴染みです。

引用元:OpenSea

現在高額で取引されているBAYCですが、新規発行時は0.08ETHでした。類人猿のNFTアートが数千万円もの価格で取引されるようになった理由は、「アート性が高いから」というだけではありません。

BAYCの価格上昇のきっかけは、アメリカバスケットボールリーグNBAのスター選手「ステフィン・カリー」が購入したことと言われています。2021年8月、購入したBAYCをTwitterのプロフィール画像に設定しました。カリーのTwitterフォロワー数は1000万人以上もいるため、あっという間に話題になりました。

引用元:note

その後も様々な著名人がBAYCをプロフィール画像に設定しました。

BAYCの作品を持つことは、「Bored Ape Yacht Clubというメンバー制クラブ」への参加権を持っていることを意味します。作品を持つことで、メンバーシップへのアクセスのロックが解除される仕組みになっています。

つまり、著名人が所属する特別なグループに参加できます。BAYCのNFTホルダーは限定グッズの購入や限定NFTの入手、商用利用権など様々な特典が与えられます。

こうしてBAYCは「セレブリティの象徴」になり、確固たる地位を獲得しました。

「NFTを持っていることが、有名人ばかりのコミュニティに所属していることの証明となる」というのは、今までの文化には存在しないものでした。BAYCはNFTのステータス性を巧みに利用した最初のコレクションのひとつです。

NFTアートの「生態系」に入る

BAYCは決して「極端な事例」ではありません。ここから学べることもあります。「著名人が買ったから売れた」という単純な話ではなく、「作品以上にその周囲の人たちが大切」というNFTらしいカルチャーが浸透していることを意味しています。

Twitterやブログサービスでは、「NFTを始めたんだけど、全然売れない」というアーティストの嘆きを多く見つけることができます。

引用元:Twitter

売れているNFTには様々な理由が存在します。たとえば「地域振興のためのNFT」として山古志村が発行したNFTがありますが、大きな話題となり販売数も伸びています。

また、「NFTを所有することで同じ価値観を共有する仲間ができる」という理由で売れるNFTもあります。

引用元:YouTube

「VeryLongAnimals」というNFTでは、購入者同士の交流が生まれていることが報告されており、職種や立場を超えたコミュニティが形成されています。

NFTアートは「自動生成して作りました」というだけでは売れません。「NFTアートの生態系」に入る必要があります。

NFTの世界には多くのアーティストが存在し、アーティストを応援する人たちがいます。アーティスト同士の交流があり、そこから新しいプロジェクトも生まれています。NFTの作成・購入に参加している人たちが集まって「みんなで盛り上げていく」というのがNFTのコミュニティです。

NFTには早くも独自の文化が形成されています。同じ価値観を共有するコミュニティに参加して作品を発表してみましょう。

コミュニティ参加の仕方

  • 他のNFTアーティストを「いいね」「RT」で応援する
  • Twitterのスペースやdiscordに参加する
  • 他のアーティストの作品を購入する

自分でNFTを購入するし、作品を作って発表もするというのが売れるアーティストになる近道です。

コンセプトのあるNFTを作ろう

NFTマーケットプレイスで売れている作品を見ると、いくつかの特徴があることが分かります。

売れているNFTの特徴

  • 独自性がある
  • 「かわいらしい」「カッコいい」「異様」など一言で表せる特徴がある
  • コレクションしたくなる

作品を広い層にアピールするには、作品のバックボーンやコンセプトが重要です。作品の背景にある「ストーリー」のようなものです。NFTはそれだけなら1枚の絵ですが、そこに物語性が感じられるとき「買ってみたいな」という欲求を生みます。独自のコンセプトのあるNFTにはファンがつきます。

変わったコンセプトのNFTは数多くあります。

・迷路NFT
ドット絵で作った迷路をNFT化して販売

引用元:OpenSea

・トランプをモチーフにしたNFT
アイドルグループ「ももいろクローバーZ」のNFTトレカはトランプカードがモチーフになっています。

引用元:ももいろクローバーZ

webクリエイターの「botrino」氏はNFTコレクションの発表にあたり、作品のバックボーンやストーリーを練り込んだと語っています。作品を広く認知してもらうためには必要な作業としています。

引用元:OpenSea

botrinoでは「ある博士が世界史をまっさらな状態にすべく量産しているロボット」というテーマがあります。博士の考えとは裏腹に、ロボットたちは基本的に「やる気がない」という特徴があります。こうした物語性はNFTを作るうえで大切なポイントです。

プログラムを使ってNFTをデザインするにあたって、「物語性を意識する」「独自性を持たせる」「変わったコンセプトを持たせる」といった工夫は必要です。

NFTの価値は「金銭」ではない

NFTアートに関しては「単に作品が良いから売れる」という状況ではありません。

個人が「とりあえずNFTやってみました」というだけで売れたという時期はあり、単なる画像や動画が販売数を伸ばしていました。今ではプロジェクトが乱立しており、競争が激しくなっています。

プロモーションも必要ですし、コミュニティを作らなければなりません。エコシステムを考えて、新しい技術提案をする必要も出てきました。クリエイター個人ではこういった事業性のあるものを運営するのは困難という時代です。いかにチームを作っていくかが重視されます。

NFTの今後の課題は「アートとしての側面」と「事業の構築」の両面が必要という点です。どういうプロジェクトなら面白いと思ってもらえるのかという観点を意識して活動していく必要があります。

チームを形成するにも「NFTコミュニティに入って仲間を探す」ことは重要です。NFTを作るよりも前に、「知り合いを増やす」「人を集める」が重要になってくるでしょう。

さらに、「NFTの価値はどこにあるのか」も意識しましょう。

台湾のデジタル担当大臣のオードリー・タン氏は、「NFTの価値は金銭的なところよりもステータス的なところにある」と語っています。NFTは「作品や動画そのもの」よりも「何かを象徴するシンボル」としての価値があるというのがタン氏の意見です。

問題となるのは、「何を象徴しているのか」という「何」の部分でしょう。プロジェクトの参加権や投票権はよくある手法です。ストーリーを設定してその登場人物をNFTとするというのも「象徴」という手法です。

NFTそのものは「プログラムで自動生成」できます。ただし、自動生成されたNFTが「何であるのか」「何の役に立つのか」を考えておくことが重要です。「これ買ってどうする?」というNFTの根源的な部分を自分なりに思想として持っておくことはアーティストとして基本の姿勢です。

まとめ

プログラムでNFTアートは自動的にデザインできますが、「何のためのNFTなのか」を考えておくことの重要性について解説しました。

最後にこの記事をまとめていきます。

  • NFTアートの自動生成ツールやサービスは数多く提供されている
  • NFTアートは誰にでも作ることができて、販売することも手軽にできる
  • 簡単に作れるが、売るのは大変
  • NFTアートを売るにはアートの生態系に入ることが大切
  • NFTアートが何を象徴しているのか、何の役に立つかを明らかにしよう

NFTアートの良いところは、アーティストがコミュニティを通してユーザーと近い関係を作ることができる点です。まずは自分でNFTアーティストたちのコミュニティに参加してみましょう。

Spritz

Spritz

Web3領域を専門とするライター。DeFiやNFT分野への投資経験をもとに、クリプトに関する記事を発信しています。これまでに執筆した暗号資産に関する記事は70本以上。特に関心の強い分野は、セキュリティトークンです。ブロックチェーンによってもたらされる社会変革に焦点を当て、初心者にもわかりやすい記事を心がけています。
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