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OpenSeaの盗難被害に対するポリシー変更ついて

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世界最大規模の取引量を誇るNFTマーケットプレイス「OpenSea」では盗難の被害が相次いでおり、取引量の減少や被害者からの提訴など、ネガティブなニュースがたびたび取り沙汰されました。これらを受けOpenSeaは2022年8月に、盗難されたNFTへの対応についてのポリシー変更を発表しました。この記事では盗難被害の事例を挙げたのち、新しいポリシーの内容を紹介します。

OpenSeaで相次ぐ盗難被害

NFT市場は日々急速に拡大していますが、それに伴い詐欺や盗難の発生件数も増加しています。世界で最もよく利用されているNFTマーケットプレイスである「OpenSea」においても、盗難の被害が相次いでいます。

特に大きなニュースとなったのは、2022年2月19日に合計170万ドル(約2億円)相当のNFT254個が盗まれた事件です。OpenSeaは2月18日からスマートコントラクトのアップグレードを開始すると事前に予告していました。このアップグレードは、詐欺によってユーザーが不用意に署名できないようにすることが目的で行われたものでしたが、犯人はこの情報を悪用し、アップデートを行う際の隙を突いて犯行に及んだとみられています。

詐欺の手口は、「ガス代無料で新しいスマートコントラクトに移行できます」と書かれたフィッシングメールを送り、その下の「Get Started」ボタンを押すと偽サイトに誘導されるというものでした。

170万ドルという被害額は莫大な金額ですが、これは盗まれたNFTが売却された金額に過ぎません。まだ売却されていないNFTも含めると、被害総額は200万ドル(約2億3,000万円)から300万ドル(約3億4,000万円)にも達するとも言われています。今回の攻撃の被害者は32人と見積もられていることから、高額NFTの所有者を狙ったものと思われます。

実際、盗み出されたNFTの中には世界的に有名なpfp向けのNFTであるBored Ape Yacht Club(BAYC)の作品も4点含まれており、そのうち3点は「LooksRare」というプラットフォームで合計66万7,000ドル(約7,600万円)で売却されました。

この事件後、OpenSeaの取引量は急激に減少し、2月22日の時点では37%も下落したとのことです。盗難されたNFTが売却されたプラットフォームであるLooksRareでも取引量が減少し、ライバルのNFTプラットフォームの取引量が増加するという現象も起こりました。それほどこの盗難事件は大きなものであり、プラットフォームやNFTそのものへの不信感を一時的に高めることとなってしまいました。

新ポリシーの内容

OpenSeaはこうした盗難被害を受け、2022年8月11日に盗品に対する新しいポリシーを発表しました。この章では、ポリシーの内容を詳しく紹介していきます。

h3:警察への報告書の使用方法を拡大
従来はエスカレートした盗難事件にのみ警察へ報告書を提出していたOpenSeaですが、新ポリシー以降はすべての盗難被害の確認のために、盗難に遭った場合は警察に届け出ることをユーザーに義務付けました。

アメリカの法律では、盗品を故意に販売することが禁止されています。OpenSeaはこの法律を考慮してポリシーを作成したことを強調していますが、ユーザーが盗品と知らずにNFTを購入した場合、ユーザーに落ち度が無かった場合でも罰せられる可能性があることも認めていました。警察への報告書の利用を拡大するよう方針を調整した背景には、こうした実態への配慮も含まれています。

盗難の被害者は7日以内に警察に届け出

盗難の被害に遭ったユーザーは、一週間以内に警察へ届け出るように義務付けられました。これは盗まれたNFTが市場で流通してしまうことと、盗難の虚偽報告を防ぐための措置です。一週間以内に届け出が無かった場合、該当するNFTは引き続き市場で売買が再開されます。このようにすることで、仮に盗難されたという虚偽報告をされた場合でも、NFTをスムーズに市場に戻すことができます。また、本当に盗難に遭った場合も迅速に対応ができるため、盗難品が他のプラットフォームに流出する危険性を下げることができます。

届け出の報告がない場合は売買を再開しやすく

盗難被害を訴えたユーザーがアイテムを取り戻した場合や、虚偽報告などで届け出の報告を取り下げるべきと判断された場合、アイテムの売買を再開しやすくすると発表されました。OpenSeaによれば、公証人を必要とせずに取引を再開できる簡素化されたプロセスを導入し、その詳細を最終決定したとのことです。

加えてOpenSeaは、盗難の問題を根本的に解決するようなソリューションを模索中であり、疑わしいURLを早期にブロックしたり、盗難の検出を自動化する取り組みをすでに実行しています。

ここまで見てきたように、今回のOpenSeaによるポリシー変更は、大規模な盗難被害を受けて、盗難が起きた場合に迅速に対処できるようにするための、ユーザーへの注意喚起を込めた変更となっています。また、盗品についてのポリシーはOpenSeaのヘルプセンターにもまとまっていますので、気になる方は参照してみてください。

NFTに関する不正への各国の対応策

ここまで、OpenSeaにおける盗難被害の実例と、それを受けた新ポリシーの内容を見てきました。NFTはまだまだ新しい市場であり、莫大な資金が流れ込んでいることから、悪意のある人間たちによる詐欺や不正が横行しているのが現状です。そうした状況をいくつかの先進国は問題視しており、対応策を講じています。ここでは、主要国のNFTに関する不正への対応策の例を見ていきます。

1. アメリカ

2022年2月、アメリカ財務省は美術作品によるマネーロンダリングなどの犯罪行為に関する調査報告書を公開しました。その中で、NFTを含むデジタルアートはマネーロンダリングに使用される可能性があることを指摘しました。多額の資金を国境を越えて瞬時に送金できるという特徴が、資金洗浄に利用されやすいとしています。

また、NFTが転売された際にアーティストに自動的にロイヤリティが支払われる仕組みを実現したスマートコントラクトについても、不正な取引を助長する可能性があるとしています。

政府機関や規制当局は、これらのリスクを軽減する方法を検討していると同時に、アメリカ司法省は暗号資産専門の弁護士の募集を行うなどの動きもあります。

2. 中国

中国の銀行、証券、インターネット金融協会は2022年4月に共同声明を出し、NFT関連の金融リスクについて警告を出しました。

中国のNFT市場が近年加熱していることを指摘した上で、投機的な取引やマネーロンダリングなどの違法な資金調達につながると主張しました。この声明では、証券、ローン、保険、貴金属などの金融資産の発行にNFTを使用してはならないとされました。また、各協会のメンバーはNFTの取引拠点やファイナンス手段を提供することを禁じました。

​​3. EU

また、EUでは、NFTプラットフォームをEUのアンチマネーロンダリング(AML)の規制の対象とすべきという改正案が2022年7月に提出されました。この議論が進めば、人気のマーケットプレイスは銀行や不動産業者などと同様にシステム上の不正資金のリスクを評価し、ユーザーは本人確認が必須となる可能性が高まります。

上記で見てきたように、主要な先進各国では、NFTの市場の急速な拡大に伴うリスクを認識し、早くも対応に動き始めています。日本ではまだ目立った規制の動きは見られませんが、今後、世界各国で不正への対応や規制が強化されていくと予想されます。そのような流れの中で、OpenSeaも今後新たなポリシーの設定や抜本的な改革を求められる可能性は十分にあり得ます。ユーザーは詐欺に遭わないようにリテラシーを向上させながら、プラットフォームや国が打ち出す施策に目を光らせておく必要がありそうです。

まとめ

NFTは近年の世界的なトレンドであり、市場規模が急速に拡大しながら巨大な経済圏を形成しつつあります。そうした新しい分野では、法整備や体制が整っていないことや人々の認知不足から、詐欺や不正がまかり通りやすいことは知られています。NFT取引においては怪しいリンクはクリックしない、シードフレーズは他人に教えたり入力したりしないなど、個人レベルでの根本的な注意は必要ですが、それでは防ぎきれないリスクも多々あるでしょう。

本記事で見てきたOpenSeaの事例にもあるように、プラットフォームごとに規則や注意点が設定されており、何か事件があればそれは改良され、変化していきます。また盗難以外にもマネーロンダリングなどの不正の温床にもなるNFTは、国の介入によって今後ますます規制が強化されていく可能性が高いです。NFTの世界に少しでも関わっている人であれば、自分の資金・資産を守るために、各方面での不正への対応策を常に追っていく必要があるでしょう。

春眠

shunmin

アート関連の仕事をしながら副業ウェブライターとして活動。NFTコレクション運営においては、企画、マーケティング、コピーライティング、情報発信などを担当。NFTによってアートの世界がどのように変化していくかに興味があり、日々情報を収集している。毎日の読書によるインプットを欠かさず、読みやすい文章で丁寧に執筆することを心がけている。
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