Oasysは2022年2月に発足した日本発のブロックチェーンプロジェクトです。
初期バリデータにはバンダイナムコ研究所、セガ、Ubisoft、Netmarbleといった国内外大手ゲーム会社が名を連ねており、注目を集めています。
2022年10月にメインネットのローンチを予定している中、先日は21の企業が務める初期バリデータの最後の一社として、国内ゲーム会社でも有名なスクウェア・エニックスの参加が公表されました。
この記事ではOasysの創設から今日に至るまでの動きに加えて、ゲームに特化したブロックチェーンとして兼ね備えている特徴についてわかりやすく解説します。
この記事の構成
ゲーム特化型ブロックチェーン「Oasys」とは
引用元:Oasys
Oasysは、シンガポールを拠点に設立されたブロックチェーン分野の事業を手がけるOasys PTE. LTD.が開発を進める「日本発のゲームに特化したブロックチェーンプロジェクト」です。
「Blockchain for Games」をコンセプトに掲げていることからも分かる通り、ゲーム特化型のブロックチェーンとして、これまでブロックチェーンやNFTなどに馴染みのなかったユーザー層にも利用しやすいプラットフォームの構築を目指しています。
創設チーム
引用元:Oasys
Oasysの創設チームには非常に豪華な顔ぶれが揃っています。特に、日本のゲームユーザーや暗号資産(仮想通貨)関連の情報を日々追いかけている人は、すでにその名を知っているメンバーもいるでしょう。
Gabby Dizon(ギャビー・ディゾン)氏
自律分散型NFTゲームギルド「Yield Guild Games(YGG)」の共同創業者
中谷 始 氏
バンダイナムコ研究所の代表取締役社長
國光 宏尚 氏
モバイルオンラインゲームの企画・開発・運営を行う株式会社gumiの創業者
上野 広伸 氏
ブロックチェーンゲームを専業で開発しているdoublejump.tokyo株式会社のCEO
内海 州史 氏
国内ゲーム会社セガの取締役副社長
このように、国内ゲーム関連企業やブロックチェーンゲーム関連事業に携わるメンバーが集まっているため、非常に期待されているプロジェクトだと言えます。
初期バリデータ
Oasysの初期バリデータには国内外の21の企業が名を連ねています。
バリデータとは、ブロックチェーン上の取引の妥当性を検証するノード(コンピューター端末)、またはその運営者を指し、ブロックチェーンネットワークを稼働させるための重要な役割を担っています。
バリデータは主にPoSをコンセンサス・アルゴリズムとして採用しているブロックチェーンで使用される用語であり、PoWにおけるマイナーと同じ役割を持ちます。
2022年9月、初期バリデータの最後の一社として、ドラゴンクエストやファイナルファンタジーで知られるスクウェア・エニックスが参加することが発表されました。
なお、スクウェア・エニックスとはOasysチェーン上での新しいゲーム開発をともに模索していく旨も公表されています。
以下の通り、Oasys公式サイトには初期バリデータ21社が掲載されています。
引用元:Oasys
バンダイナムコ研究所やセガといった国内大手ゲーム会社から、Astar NetworkやbitFlyer Blockchainなどの暗号資産関連企業まで、幅広い企業がバリデータとして参加しています。
Oasysプロジェクトの目的
Oasysプロジェクトの目的は、ゲームに特化したブロックチェーンを構築することです。
したがって、ブロックチェーンとしてゲーム開発に適した特性を多数兼ね備えています。
以下の表は、Oasysプロジェクトのホワイトペーパーに掲載されているものです。
この表では「ガス代・トランザクション処理の速度・分散性・データの可用性・ネットワークの安定性」の5つの要素について、DeFiプロトコルとブロックチェーンゲームのそれぞれで重要視される要素が比較されています。
引用元:Oasys
その中でも、ゲーム向けブロックチェーンに特に重要とされる「ガス代」と「トランザクション処理の速度」について、Oasysのどのような点がゲーム開発に向いているのかということも含めて解説します。
ガス代
表の最上段に記載されている「Gas Fee」の部分に注目してみましょう。
DeFiプロトコルとブロックチェーンゲームには、それぞれ以下のような水準が求められているとされています。
DeFi
ガス代は安い方が望ましい(ただし、安すぎるとスキャムが増加する)
ブロックチェーンゲーム
ガス代はゼロであることが必要
一般的に高額なガス代は、ユーザーがネットワークを利用する際の障害となる可能性があります。
したがって、DeFiプロトコルにおいてもブロックチェーンゲームにおいても、基本的にはガス代は安い方がよいとされます。
しかしDeFiプロトコルの場合、ネットワークの安定稼働やスキャム防止のために、一定のガス代負担はむしろ生じなければならないという側面もあります。
一方、ブロックチェーンゲームではユーザーがゲーム内でNFTや暗号資産の取引をする頻度がDeFiプロトコルに比べて格段に増えます。
NFTとして扱われるゲーム内アイテムの送付や、Play to Earnゲームで稼いだ暗号資産の送金など、ゲームとして必然的に発生する取引のすべてにガス代がかかってしまっては、まともにプレイすることができません。
ユーザーフレンドリーなゲーム体験を提供するためにも、ブロックチェーンゲームにおいてはガス代はゼロであることが望ましいとされています。
トランザクション処理速度
次は、表の上から2段目に記載されている「Transaction Speed」について見てみましょう。
こちらも、DeFiプロトコルとブロックチェーンゲームのそれぞれで望ましいとされる水準を比較してみます。
DeFi
速ければ速いほどよい(ただし、速すぎるとブロックチェーン自体が止まってしまう)
ブロックチェーンゲーム
超高速であることが必要(モバイルゲーム並の速度)
こちらも一般的には速い処理速度が望まれていますが、求められる水準感は異なります。
DeFiプロトコルでは処理速度があまりにも速すぎると、ブロックチェーン自体が止まってしまうリスクがあります。
ユーザー視点で見ても、DeFi運用の際にそれほど速い処理速度は必要とは言えません。
しかし、ブロックチェーンゲームでは圧倒的なスピードが求められます。
ホワイトペーパーには「プレイヤーがブロックチェーン技術を使っていることを感じないほどユーザーフレンドリーであること」が必要だと書かれています。
つまり、スマホなどでプレイできる一般的なモバイルゲームとまったく変わらない水準の速度が必要です。
もしそれが実現できなければ、ユーザーはゲームの処理の遅さにイライラしながらプレイすることになります。
Oasysの技術的特徴
引用元:Oasys
Oasysは、Oasysアーキテクチャと呼ばれる独自の構造を採用したEVM互換対応のプロトコルです。
Oasysアーキテクチャはマルチレイヤーで構成されています。
具体的には、Hub-Layerと呼ばれる高スケーラビリティのレイヤー1、及びVerse-LayerというEthereumのLayer2スケーリングソリューションを利用したレイヤー2の2層からなっています。
また、Oasysにはネイティブトークンとして「OAS」というトークンが存在します。
このOASの用途についても解説します。
Oasysアーキテクチャ
Oasysアーキテクチャを構成するHub-Layer(レイヤー1)、Verse-Layer(レイヤー2)はそれぞれ以下のような特徴があります。
Hub-Layer(レイヤー1)
- 安定したネットワーク
- 高スケーラビリティ
- データ可用性の高さ
- エコフレンドリー(環境に優しい仕様)
Verse-Layer(レイヤー2)
- ユーザーのガス代はゼロ
- 1秒以下でのトランザクション処理
- スキャムへの抵抗力
- フレキシブルなFTおよびNFTデザイン
それぞれ異なる特性を持ったレイヤー1とレイヤー2が機能しあうことで、ゲームに適した特性を持つブロックチェーンが形成されています。
OASトークン
OASは暗号資産取引所での取り扱いはまだありません。
しかし、ガバナンストークンとしてOasysのエコシステムの中では多数の用途があるため、今後トークンが上場するタイミングでの価格は注目しておいた方がよいかもしれません。
OASトークンには主に以下の用途があります。
- ガス代の支払い
- OASを預け入れることによるエコシステム構築への貢献
- ガバナンス投票への参加
- ステーキングによる報酬獲得
- エコシステム内で生じる多数の少額支払い(ゲーム内での支払い行為も含む)
プロジェクトのロードマップ
引用元:Oasys
Oasysは今後の展望として「ヴィジョンマップ」をホワイトペーパーに公開しています。
それによると、今後6年以内にOasysは持続可能なパブリックブロックチェーンとして、完全にDAOによって運営されることを目指しています。
また、6年後の2028年に至るまでの期間を以下の3つの区分にわけ、Oasys上で展開するプロジェクト数、および分散型ID(DID)の数についてそれぞれ目標を掲げています。
STEP1【〜2023年6月】
- プロジェクトの数 20以上
- 分散型IDの数 100万ID以上
STEP2【〜2024年6月】
- プロジェクトの数 100以上
- 分散型IDの数 1,000万ID以上
STEP3【2024年6月〜】
- プロジェクトの数 1,000以上
- 分散型IDの数 1億ID以上
Oasysの今後の展望まとめ
Oasysは日本発のゲームに特化したパブリックブロックチェーンです。
創設チームや初期バリデータとして参加している企業の顔ぶれからも、大きな期待が寄せられています。
また、初期バリデータには国内外のゲーム関連企業も多数参加していることから、ゲーム開発面でもタッグを組むことで、魅力的なゲームが誕生する可能性もあります。
Oasys発のゲームでご自身の興味が持てるものが出てきた際には、ぜひプレイしてみてください。