「KAMIYO 〜神代〜」は2022年10月29日にリリースされた日本発のジェネラティブNFTコレクションです。
そしてKAMIYOを運営しているのは、ボイスドラマやミュージックビデオなどのエンタメ事業を手掛けるクリエイターチームの「古事記project」です。
昨今の国内NFTは、NFTコレクションから生まれたキャラクターを軸にしてIPビジネスを展開していく傾向にあります。
一方のKAMIYOは、従来からエンタメに関わっていたチームが、NFTを「自分たちの事業展開の1つの選択肢として活用する」という形で生み出されたものであり、その点においては他のNFTコレクションとは真逆の方向性で運営されているとも言えます。
この記事では「エンタメのプロ」が生み出したNFTコレクションKAMIYOと、その制作・運営を行っている「古事記project」について解説します。
この記事の構成
古事記projectとは?
引用元:古事記project
NFTコレクションKAMIYOを制作しているのはエンタメコンテンツのクリエイターチーム「古事記project」です。
代表の村上良之氏を中心に、10人ほどのメンバーで運営しているそうです。
古事記projectはNFTコレクションを作るために組まれたチームではなく、そもそも2017年頃から活動をしているチーム。
古事記や日本神話などを題材とし、音楽やボイスドラマ、ミュージックビデオ、マンガ、舞台などの制作を手掛けてきました。
いわば「エンタメのプロ集団」が、今回NFTコレクションを制作したということになります。
これまでに作り上げてきた多様なコンテンツ
引用元:古事記project
古事記projectはこれまでに数々のエンタメコンテンツを世に送り出してきました。
公式サイトには、おすすめコンテンツとして以下の内容が紹介されています。
- 古事記project くりぷと!
- 検見川神社お守りNFT
- 斬舞踊サイト
- 地域活動
- ボイスドラマ
- 漫画
これら以外に音楽、ラジオ、イラスト、グッズ販売なども行っています。
古事記projectは、代表の村上氏と副代表のまみよ氏がバンド活動をスタートしたところから始まりました。
その後、ラジオ番組を持つことになり、そこからラジオドラマ、ボイスドラマと発展していった経緯があるため、今もメインコンテンツとしてボイスドラマには非常に力を入れています。
また、デジタルのみならずリアルな世界での活動として、舞台公演や地域活動も行っています。
特に、神社を中心とした地域活性化の活動に取り組んでいたことは、後の検見川神社お守りNFTやKAMIYOの制作にもつながりました。
このように、すでに幅広くエンタメコンテンツの制作に取り組んでいる古事記projectですが、おすすめコンテンツの中に2つのNFTプロジェクトが含まれていることから、今はNFTにも力を注いでいることが見てとれます。
NFTを活用した取り組み
多数のエンタメコンテンツを作り出してきた古事記projectですが、2022年に入って立て続けに以下の3つのNFTコレクションをリリースしています。
- こじぷろGODz(KOJIPRO-GODz)
- 検見川神社お守りNFT
- KAMIYO 〜神代〜
ここからは、これら3つのNFTコレクションそれぞれの特徴を説明します。
こじぷろGODz(KOJIPRO-GODz)
引用元:OpenSea
こじぷろGODzは、古事記projectとして初めてリリースしたNFTコレクションです。
古事記projectがこれまでに制作してきたコンテンツの中に登場する神様(一部人間も)のキャラクターデザインの数だけ発行される、一点物のNFTになっています。
初回販売時から購入は早押しの勝負となり、いずれの作品も即完売しています。
本記事の執筆時点では作品総数も28点と少なく、売りに出されているのはわずか3点。
最低フロア価格も1.3ETHと比較的高額で取引されるコレクションになっています。
検見川神社お守りNFT
NFTの技術的な特徴を活用した非常にユニークなNFTコレクションが、検見川神社お守りNFTです。
検見川神社お守りNFTは、千葉県千葉市の検見川神社と古事記projectが共同で発売したNFTです。
本来、お守りには有効期限があります。
購入から1年でご利益が切れてしまうとされているため、1年が経過したお守りは授かった寺社に返納して「お焚き上げ」をしてもらうのが通例になっています。
一方、NFTにはバーン(burn:焼却する)という概念があります。
バーンすることで、NFTのデータ自体を消滅させることができます。
このバーンという技術をお焚き上げになぞらえて、購入から1年経過したお守りNFTは自動的にバーンして消滅する設計になっています。
一般的なNFTは、ブロックチェーンの上で永続的に存在し続けることが特徴とされていますが、あえて現実のお守りのように1年経過時に消滅する機能を実装することで、デジタルでありながら現物のお守りに近い特性を実現しています。
ジェネラティブNFT「KAMIYO -神代-」
引用元:OpenSea
そして最後に紹介するのが、2022年10月29日にリリースされたばかりのNFTコレクション、KAMIYO。
KAMIYOは発行点数13,888体のジェネラティブNFTコレクションです。
発行価格は0.001ETH(約230円)となっており、昨今流行りになっている「激安Mint」の流れを踏襲しています。
KAMIYO制作の目的は「古事記projectの認知向上」であると、チームメンバーは発言しています。
KAMIYOは当初、0.001ETHよりも高い金額での発行を予定していました。
というのも、やや高めの価格を設定することで、事業の資金調達も兼ねていたからです。
しかし、リリース前に価格は0.001ETHに変更され、KAMIYOを販売する目的も「認知の向上」に絞ったものとなりました。
そのため、発売当日に13,888体すべてが即完売。
二次流通市場でも盛んに取引が発生し、本記事執筆の時点ではフロア価格0.008ETHで取引がされています。
古事記projectにおけるNFTの位置付け
引用元:古事記project くりぷと!
古事記projectは、NFTコレクションを販売するために人が集まって作られたチームではありません。
元々エンタメ事業を展開するクリエイターチームが、自分たちの事業の一環としてNFTにも着手し始めたという経緯があります。
この流れは、最近の日本で見られるNFTを用いた事業展開とは方向性が異なります。
ここからは、今後日本で生まれるNFTコレクションの事業の方向性について考察します。
「NFTでIPを作る」から「IPの一部にNFTを活用する」へ
こじぷろGODzのような一点物の作品にせよ、KAMIYOのようなジェネラティブの作品にせよ、日本におけるNFTの歴史は比較的浅いというのが実情。
あくまでその間の出来事ではありますが、全体の傾向として2022年はジェネラティブのNFTが盛り上がり始めた1年だと位置づけることができます。
CryptoNinja Partners(CNP)やCNP Jobs(CNPJ)などがよい例でしょう。
CNPとCNPJについては、まずはNinjaDAOと呼ばれるコミュニティからNFTコレクションが誕生し、そのNFT自体をIP(知的財産)として活用することで様々な領域に事業を展開する方向で動いています。
つまり「先にNFTがあり、そこからIPを作ってビジネスを展開する」という流れです。
ところが2022年後半から、徐々にその逆の流れをたどるプロジェクトが登場し始めました。
例えば、Crypto Baby Animals(CBAs)やAopanda Party(APP)などがそれにあたります。
これらのプロジェクトは、すでにweb2の世界で十分な知名度を誇っており、InstagramやTikTokで数十万人のフォロワーを抱え、それをユーザー母体としてIPが成立しています。
このようなIPにおけるNFTコレクションの制作・販売は、「事業のスタート」ではなく「自分たちが展開するIPビジネス、エンタメビジネスの一部」として位置付けられることが多くなっています。
これは、古事記projectにおけるこじぷろGODzやKAMIYOも同様です。
古事記project自体は2017年からエンタメ活動を作り上げてきたプロジェクトであり、神様を題材としたキャラクター自体はすでに多数存在していました。
古事記projectの場合、IPとしての知名度はCBAsやAPPに及ばない部分もあることから、認知の向上という目的も兼ねて、「すでにある自分たちのキャラクターをNFTに活用することでより事業を拡大していく」という動きを取っていると言えます。
古事記projectの今後の展望まとめ
ジェネラティブNFT「KAMIYO」は、広くエンタメ事業を手掛けるクリエイターチーム「古事記project」の事業の一環として立ち上がったNFTコレクションです。
リリース直後に即完売し、古事記project自体の知名度向上に貢献しています。
また、今後は古事記projectのように、すでにあるキャラクターを用いてNFT事業を展開するIPが増加する可能性があります。
古事記projectのKAMIYOも含めて、事業の一環としてNFTを活用していく流れにぜひ注目してみてください。