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NFTアートの収益で「自律的なまちづくり」を目指す!埼玉県で実施される国内発のOpen Townプロジェクトとは?

解説系記事

NFT(Non-Fungible Token)は、ブロックチェーン上に記録されるデータであり、日本語では「非代替性トークン」と言い換えられます。

日本国内では、海外でNFTアートが高額落札されたニュースなどをきっかけに注目を集めだし、現在では多くの日本人NFTアーティストが活躍しています。

NFTアートは通常のアート作品同様、デジタルデータでありながらも唯一無二の価値を持つことが特徴です。

そのため、世界的に有名な名画であるレオナルド・ダ・ヴィンチの「モナリザ」やゴッホの「ひまわり」のように、人気の集まる作品は高額で取引されることも珍しくありません。

そんなNFTアートの売上を収益源として、「自律的なまちづくり」を目指すプロジェクトが日本国内で進行していることをご存知でしょうか。

日本は世界的に見ても少子高齢化が深刻な問題となっており、人口が集中する都市と地方の格差はますます広がりつつあります。

若年層の流出が止められなかった結果、高齢者が人口の大半を占める「消滅可能性都市」と呼ばれる地域も存在しており、住人が抱える社会課題は数え切れません。

そのような地域の活性化をNFTアートの収益で目指す取り組みが現在、埼玉県横瀬町にて進めらようとしています。

本記事は、そんな横瀬町でのNFTを活用したまちづくり施策の内容をお伝えする内容となっています。

将来的には日本各地で同様のプロジェクトが進行される可能性は十分に考えられるでしょう。

ぜひ最後までご覧ください。

Open Town Yokozeプロジェクト

横瀬町は埼玉県西部に位置する、人口8,000人程度の小さな町です。

東京から電車で約73分の好アクセスでありながらも、豊かな山々に囲まれた雄大な自然を楽しめます。

冬場に楽しめる「あしがくぼの氷柱」は秩父三大氷柱の一つであり、「寺坂棚田」は埼玉県で最大級の棚田です。

町のいたるところで四季折々の景色を楽しめる横瀬町ですが、人口減少に伴う「消滅可能性都市」の一つに数えられています。

また都市部と比較した際、教育分野における機会、情報格差があるという問題も抱えています。

これらは山間地域に属する町特有の問題ですが、横瀬町は課題解決のために様々な取り組みを行っています。

中でも、多方面から募集したプロジェクトアイデアを実際に社会実装、実験できる仕組みを提供している官民連携のプラットフォーム「よこらぼ」は特徴的だと言えるでしょう。

そのような取り組みの一環として、Web3.0技術を活用しながら自律的なまちづくりを目指す「Open Town Yokoze」が実施されることになったのです。

2022年11月10日よりこのプロジェクトメンバーを募集しており、12月現在では実行に向けた準備が行われている最中となっています。

横瀬町の特徴を活かしたNFTアート

人口減少が続く地域では十分な財源が確保できず、住民の要望に応えることが難しい場面が多々発生します。

「Open Town Yokoze」ではこのような状況を打開するために、横瀬町の特徴を活かしたNFTアートを全世界に向け販売する予定です。

これにより横瀬町の住民や関連機関自ら、世界中から資金と応援者を集めることが可能となり、結果的に町の抱える問題解決施策の実行に繋げられるとしています。

つまり税金や援助に頼らない「自立型のまちづくり」として、NFTを活用した財源確保を目指すのです。

横瀬町の特徴を活かしたNFTアートについては、町内出身のイラストレーター若林夏氏によって制作される予定です。

若林氏は多摩美術大学デザイン科を卒業した後、デザイナーを経てフリーのイラストレーターとして活動されています。

現在では複数書籍の挿絵や装画、各社の広告など様々なジャンルのイラストを担当中です。

「Open Town Yokoze」進行後は、その他アーティストの作品も増えていくことも考えられますので、イラスト以外での横瀬町の魅力を訴求していくことが期待できるでしょう。

Web3寺子屋(仮称)について

「Open Town Yokoze」では都市部との教育格差に対する課題解決として、「Web3.0寺子屋(仮称)」の設立も予定しています。

暗号資産(仮想通貨)やNFTといった、Web3.0と呼ばれる新しい動きは世界中で広がり続けています。

今後本格的に到来することが予想されるWeb3.0時代に向けて、ネット教育に特化した「寺子屋」を設置し、横瀬町在住の小学生から大学生を対象に学びの場を提供する予定です。

また学生でなくても、NFT保有者も学びに参加できるとしており、幅広い年代が交流することで横瀬町からイノベーションが起きることも期待できるかもしれません。

株式会社奇兵隊が主導で実行

「Open Town Yokoze」を推進しているのは、株式会社奇兵隊(以下:奇兵隊)です。

奇兵隊は「世界中の境界をなくし、不可能を可能にする」をスローガンに様々な取り組みを実行しています。

特に物理的な距離や言語、文化の壁を超えた交流、支援に重きを置いており、それらを実現するために提供しているサービスの一つが「Open Town」なのです。

このプロジェクトが実行されるのは横瀬町が初めてではなく、第一弾としてウガンダのカルング村、第二弾としてインドネシアのロンボク島で行われています。

第三弾となる横瀬町での事例は日本国内で初ですので、これからの進展次第では各都道府県に展開していくことも考えられるでしょう。

ウガンダのカルング村での事例

「Open Town」第一弾として実行された、ウガンダのカルング村での事例を見てみましょう。

「Savanna Kidz Project」と呼ばれるこのプロジェクトは、2022年2月より本格的にスタートしました。
独自のNFTアートの売上を元にまちづくりを推進しており、NFT保有者が参加できるDAOコミュニティと住民が協力しながら様々な取り組みを実現しています。

開始から1ヶ月後の2022年3月には、107名が購入したNFTアートの売上(当時レートで約200万円)をもとに、5,000リットルの貯水タンクを15基設置することが決まりました。

この貯水タンクはコンクリート製であり、定期的な点検によって20年以上の使用に耐えられます。

そして工事には村の住民を雇用することで、新たに13名の雇用が実現したとしています。

その後6月には、孤児院と小学校の施設改善が決定されました。

まちづくりの方針についてはDAOを中心に進められ、独自のガバナンストークンの保有量を元に投票できます。

他にもアイデア出しや議論の参加も可能となっており、NFTを通じて世界と住民が一丸となって理想的なまちづくりを推進できるのです。

Savanna Kidz NFTについて

 

「Savanna Kidz Project」の収入源として販売されたNFTコレクションは「Savanna Kidz NFT」です。

村に住む子どもたちをモデルに目、鼻、口、頭、顔などを100種類の動物デザインをベースに作成されています。

2022年2月15日に先行発売が開始され、その収益を元に前述した貯水タンクの設置が決定しました。

そして同年5月10日に一般販売が開始された際には、400体以上の販売が実現しています。

「Savanna Kidz NFT」は奇兵隊の子会社である、エストニア法人KiHeiTai Estoniaによって運営されています。
作品を購入するとガバナンストークンである「$OPENTOWN」を保有でき、各プロジェクトの投票に参加できます。

そして、購入者は購入直後に3,000$OPENTOWNを受け取る権利を得られ、その後12年間に渡って毎日4$OPENTOWNを受け取ることが可能です。

Web3.0型クラウドファンディングである「Open Town」

ウガンダのカルング村での事例のように、NFTを活用した「Open Town」プロジェクトは実施地域に素晴らしい影響を与えていると言えるでしょう。

従来、新興国や個人に対して支援を行う方法としては「クラウドファンディング」が主流でした。

しかしクラウドファンディングの場合、全く見知らぬ人からの支援は難しく、さらに単なる寄付となる側面が強いため、持続性や拡大が難しい側面を持っています。

そのような課題を解決するために奇兵隊はWeb3.0の技術を活用し、支援する側の人にもプロジェクトの意思決定に関わる喜びや、成功時のリターンを得られるようにしました。

そのため「Open Town」の流れ自体は、クラウドファンディングと似通っています。

課題を抱える地域の自治体や企業がプロジェクトオーナーとなり、その地域をモチーフにしたNFTアートを制作、販売します。

そして、NFTアートの売上によって実現したいビジョンや改善点を世界にアピールすることで、興味を持った支援者自身も参加しながらまちづくりを推進できるのです。

また、ブロックチェーン技術を活用することで、資金送金の流れも徹底した管理が可能となります。

NFT購入によって得た資金は、一度NFTのウォレットに入金されますが、その後スマートコントラクトで自動的に現地NGOのウォレットに移る形になっています。

そのため資金を中抜きするなどの不正が不可能であり、万が一不正を行った場合にはその事実が全世界に晒されてしまうのです。

このように支援者、被支援者が共に協力しながら理想のまちづくりを推進できる上、資金管理についてもブロックチェーン技術を使用した透明性が担保されています。

まさに「Open Town」は、Web3.0型のクラウドファンディングであると言えるでしょう。

まとめ

奇兵隊が推進する「Open Town」プロジェクトについて解説してきました。

既にウガンダのカルング村では、開始から1年経たずして15基もの貯水タンク設置、孤児院や小学校の施設改善が進められています。

今回開始される横瀬町での事例は日本国内では初の事例となるため、大きな注目を浴びることとなるでしょう。

横瀬町の結果次第では、さらなる地域への展開も十分に考えられます。

実際、奇兵隊代表取締役CEOの阿部氏は、2023年の前半は開催都市を増やすことに注力したいと公表しています。

従来のクラウドファンディングを進歩させた「Open Town」が横瀬町でどのように展開することになるのか、注目すべきと言えるでしょう。

May

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ブロックチェーンを筆頭とする様々な技術が、今後世の中の仕組みを大きく変えるかもしれないという点に対し興味を持っているWebライター。 自身の経験を元にだれにでも分かりやすく、興味をもってもらえるような記事を執筆するように心がけて参ります。
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