美術館と言えば、世界的に有名なルーブル美術館を始めとして、歴史的な名画や作品が展示されている施設をイメージされる方が多いでしょう。
芸術鑑賞については基本的に現地に足を運び、本物の作品を鑑賞することが重要となりますが、どうしても地理的な距離などの物理的な要因によって、誰もが気軽にできる経験ではありませんでした。
しかし2022年現在、メタバースの登場により美術館もデジタル技術によって再現することが可能となりました。
物理的な距離の問題が完全に払拭されたことによって、世界を対象により多くの人々が美術作品を直に楽しめるはずです。
本記事では、そんなメタバース上に展開されている美術館の中から、奈良市写真美術館が実施している『入江泰吉写真展「古都奈良―春夏秋冬」』について紹介していきます。
一読いただければこれまで抱いていた美術館に対する価値観が、大きく変貌するかもしれません。
この記事の構成
NFTと美術館について
現実世界に存在している芸術作品、例えばレオナルド・ダ・ビンチの「モナリザ」や、ゴッホの「ひまわり」などは、言うまでもなく世界にたった一つしか存在しない作品です。
なぜなら、作者本人が描いた本物は唯一無二の存在であるからです。
評価を受けた作品に対しては金銭的価値が付いてきますが、他者が模倣した作品や写真を印刷したものに対しては、ほぼ無価値と考えられています。
当然、インターネット上に出回っている「モナリザ」や「ひまわり」の画像データに対して、価値が付くことはありえないことでしょう。
デジタル上に存在しているデータは、誰でも簡単にコピーが可能であるため、価値を持たせることは不可能でした。
しかし、暗号資産(仮想通貨)に利用されてるブロックチェーン技術の登場により、デジタルデータに唯一無二の価値を付随させることが可能となりました。
この唯一無二の価値を持ったデジタルデータが、NFT(Non-Fungible Token)です。
日本語では「非代替性トークン」と呼ばれる代替不可能なデータであるため、現実世界の美術作品のように、多くの人から注目を集めるNFT作品には高い金額が付けられるようになりました。
NFTが世界的に有名になった要因は様々ですが、その中でも「CryptoPunks」に代表されるデジタルアートの存在は大きいでしょう。
この出来事によってNFTアートを作成するアーティストは、現実世界の芸術家同様、自らが生み出すコンテンツによって生計を立てることが可能となりました。
アーティストは作品を作り、鑑賞者は作品を購入し所有することもできます。
このことは従来の美術作品を取り囲む状況と同じであり、結果として作品を展示する場所である美術館も登場することとなりました。
すでに日本国内には、「NFT鳴門美術館」が存在しており、ここではNFTアートの収集と展示、NFT文化発展のために様々な活動が行われています。
徳島県鳴門市に実在する「NFT鳴門美術館」については、以下の記事で詳しく解説していますので、合わせてご覧ください。
※内部リンクhttps://nft-hack.jp/2952
美術館「MANA Nara City Museum of Photography」
美術館の「MANA Nara City Museum of Photography」は、前述した「NFT鳴門美術館」のように現実世界に存在していません。
存在する場所はDecentraland(ディセントラランド)と呼ばれる、インターネット上の暗号資産経済圏を持つメタバースです。
そのため世界中どこにいても、インターネット環境さえあれば、この美術館を訪れることができます。
さらに美術館の建物自体、3Dモデリングによって形成されているため、簡単に作り替えることが可能に。
そのため今後、建築に興味を持つ学生が制作した美術館において、未来の芸術家の作品を数多く展示、企画していくことが期待されています。
入江泰記念奈良市写真美術館が開催
美術館は通常、常に展示が行われている常設展と、期間限定で開催される特別展で運営されています。
「MANA Nara City Museum of Photography」における常設展は2022年12月時点で公表されていませんが、特別展の第一弾として入江泰吉写真展「古都奈良―春夏秋冬」が開催されています。
※会期:2022年11月30日〜2023年1月9日
主催団体の一つである「入江泰吉記念奈良市写真美術館」は、奈良県奈良市に実在する写真専門の美術館です。
館長の大西洋氏は、今後も様々なワークショップを実施する予定であるとしており、2023年以降の取り組みにも注目でしょう。
奈良市と進める実証実験の一環
今回開催された「MANA Nara City Museum of Photography」は、奈良市を中心とした実証実験の一環として進められています。
主催している団体は、以下の通りです。
- 奈良市
- 一般財団法人奈良市総合財団
- 入江泰吉記念奈良市写真美術館
今回の事例に先駆けて、2022年9月にはメタバース上の同じ場所において、智弁学園広告写真部とNFT美術館におけるワークショップ形式の展示を行っています。
メタバースを活用した美術教育を模索するために、今後も様々な取り組みが行われていくでしょう。
入江泰吉の作品を展示
入江泰吉写真展「古都奈良―春夏秋冬」においては、日本を代表する写真家入江泰吉氏の作品がNFT化され展示されています。
入江泰吉氏は奈良市の風景や文化財を中心に撮影を行っており、本展示ではフィルムカメラで撮影された写真22枚を鑑賞できます。
NFT化された作品はNFTマーケットプレイスのOpen Seaでも確認でき、フィルムカメラの趣とデジタルアートの見事な融合を感じられるでしょう。
以下、展示作品一例
- 「春日奥山地獄谷石仏」1968年頃
- 「宵月薬師寺伽藍」1982年頃
- 「飛火野行く秋」1982年11月
会場とアクセス
会場はメタバース内となっているため、インターネットへの接続が不可欠です。
スマホからアクセスすることはできませんので、パソコンを経由したアクセスを試みましょう。
- Decentraland 座標35.10、36.10(https://decentraland.org/ )
まとめ
「MANA Nara City Museum of Photography」において、期間限定かつメタバース上で開催されている入江泰吉写真展「古都奈良―春夏秋冬」について解説しました。
昨今はコロナ禍の影響もあり、多感な時期を過ごす学生の多くが、感性豊かな芸術作品に直接触れる機会を失ったでしょう。
メタバース上に展開される美術館であれば、人との間の距離や換気などを気にすることなく、気軽に貴重な作品を目にすることができます。
アーティストにとっても、世界中のファンを対象に展示会を実施できるため、活動の幅をより一層広げることにも繋がるはずです。
デジタルの芸術作品としてのNFT、さらにそれを展示するメタバース上の美術館が掛け合わせることによって、将来我々が見たことのない作品が生み出されるかもしれません。
今後も様々な展示が「MANA Nara City Museum of Photography」において開催される予定ですので、ぜひ一度足を運んでみてはいかがでしょうか。