2022年現在、片手に収まるスマホ1台あれば、世界中のあらゆるコンテンツにインターネットを通じてアクセス可能となりました。
スマホの普及は従来の情報概念を覆し、まさに近代における革命とも言える影響力を及ぼしています。
しかしネット社会の浸透は便利な側面だけではなく、詐欺被害やプライバシーの流出といった負の側面も生み出したと言えるでしょう。
その中でも経済的に大きな影響を与えている問題が、デジタルコンテンツによる「著作権侵害」です。
数多くの漫画、雑誌、写真集などを違法にアップロードしていた「漫画村事件」では、その損害額は3,200億円にものぼるとされており、その影響力の大きさがうかがえます。
従来海賊版と言われていた違法メディアの取り締まりですが、ネットを通じた手口の多様化によって完全な摘発が難しい状況です。
そして、そんな違法メディアの存在については、近年話題となっている「NFT(Non-Fungible Token)」においても例外ではありません。
NFTは非代替性トークンとも呼ばれる、ブロックチェーン技術を活用した新たなデジタルデータです。
無限にコピーが可能であるが故に無価値であったデジタルデータに対し、唯一無二の価値を付けることで資産価値を生じさせることに成功しました。
しかしながら、このNFTもまだ完全に違法メディアに対する対策ができておらず、様々な詐欺が横行している状態です。
このようなデジタルコンテンツに関する著作権を管理、保護するためのサービスとして「C-Guardian(シー・ガーディアン)」が開発されました。
本記事では、「C-Guardian」に関する基本的な内容と、NFTが持つ著作権に対する課題、そして解決することで生まれる可能性についてを解説していきます。
この記事の構成
「C-Guardian」とは?
NFTの著作権侵害問題として最も大きな内容として、NFTの著作者ではない第三の人物が勝手にNFTを発行していることがあげられます。
特に海外マーケットにおいては無許可に発行されているコレクションや、許可を得ないまま商品化されているNFTが数多く存在しています。
ある種無法地帯となりつつある市場状態では、コンプライアンスを重視する企業や健全なアーティストがNFTへの参入に対し積極的になることは難しいでしょう。
このことは結果的に、NFTの発展を鈍化させることにも繋がってしまいます。
そこで、著作権保護サービスである「C-Guardian」を活用することでこのような問題を解決し、NFT市場を拡大していくことが期待できるでしょう。
著作権を侵害するサービスからコンテンツを保護
「C-Guardian」を利用するには、まず違法な著作権侵害から保護したいコンテンツをサービス上に登録します。
その後は、登録されたコンテンツがネット上に違法掲載されてないか探索、万が一類似したものがあった場合はその類似度を自動判定してくれます。
対象が著作権を侵害したコンテンツであった場合、掲載されているサイトURLと画面、その他の情報をブロックチェーン上に記録し証拠として保存します。
最終的には侵害サイトに対して、「侵害を検知し、内容をブロックチェーン上に証拠として記録した」ことを通知し、コンテンツの取り下げを促すことになります。
このように、ネット上に散らばった情報を探索、検知、類似判定を自動で行うことで、人力では不可能なスピードでの対応が可能となっています。
さらに改ざんや消去が困難であるブロックチェーン上に証拠を保存することで、侵害者に対する警告力は高まるでしょう。
このように「C-Guardian」では、迅速かつ確実なコンテンツ保護が可能となります。
大手広告会社の博報堂が提供
「C-Guardian」の開発は、ブロックチェーンテックである原本株式会社と株式会社ケンタウロスワーク、さらに株式会社博報堂が発足した「博報堂ブロックチェーン・イニシアティブ」によって行われました。
博報堂は2021年7月に「STOP!著作権侵害2021」というイベントを開催しています。
このイベントでは各コンテンツ業界の担当者が集まり、著作権侵害に対する課題解決と方向性などの講演が行われました。
コンテンツ業界と長年深い関わりがある博報堂だからこそ、著作権に対する問題意識は強いはずです。
「C-Guardian」は本来、通常のデジタルコンテンツを対象として開発されてきましたが、NFT市場においても課題が大きくなっていることを受け、NFT保護にも対応しました。
NFT市場成長のための課題
2022年現在のNFTコレクションの多くは、企業が提供している作品以上に個人のクリエイターが運営している作品が中心です。
そのため注目を浴びたコレクションが出てきても、その規模の小ささから需要に対応できず、結果として1つの作品価格が大きく高騰してしまいます。
このような状況では金銭面で購入のハードルが上がり、新規保有者が増えづらい状況が続いてしまうでしょう。
今後NFT市場をさらに拡大、発展させていくためには、個人クリエイターだけではなく母体の大きなコンテンツ企業の参加が必要となります。
しかし、コンテンツ企業にとっては作品自体が重要な収益源であるため、それが簡単に侵害されてしまう市場に簡単には参入できません。
そのため「C-Guardian」のような著作権保護の取り組みを推進し、健全な市場環境を創造することが求められます。
NFTの価値を担保するものは何なのか?
暗号資産(仮想通貨)を代表するビットコインは、発行数上限が2,100万枚と決められており、その有限性によって一定の価値が担保されています。
それでは発行上限を持たないNFTの価値を担保するものは何でしょうか。
その答えは、「特定のNFT作品が公式なものであると証明できるか否か」です。
過去に世界最大のNFTマーケットプレイスであるOpen Seaが行った調査では、発行されているNFTのおよそ8割以上が、著作権侵害などを含む不正な作品であることが判明しました。
そのため公式なNFTコレクションは、著作権を保護した上で自身の正当性を証明しなければいけません。
そのため「C-Guardian」を利用した価値の証明は今後より重要視されていくこととなるはずです。
それに伴い、不正なNFT作品は淘汰されていくと考えられるでしょう。
著作権保護によってNFTは活躍の場を広げる
NFTの著作権保護を推進させた先には、著作者だけではなく所有者の権利を守る側面も強くなります。
なぜなら、購入したNFTが不正なものであった場合、本来得られるはずであった付加価値(コミュニティへの参加権など)が手に入らないためです。
NFTは今後、作品として所有するだけではなく、様々な権利を有する存在となっていくと考えられます。
そのため、こうした著作権保護の強化によってNFTはさらに活躍の場を広げていくでしょう。
こちらではそのような事例として、以下の内容を紹介します。
- ファンコミュニティ
- 二次流通市場
ファンコミュニティ
特定のアイドルやアーティストを応援する行動として「推し活」と呼ばれるものがあります。
これはライブへの参加はもちろん、物販ブースや公式ネット通販などでグッズを購入する活動などを指しています。
「推し活」は従来ライブなどの現実世界、グッズなどの現物に限られてきました。
なぜならデジタルデータの配布であればコピーが容易であるため、公式なデジタルコンテンツは価値がないと判断されるためです。
しかし著作権保護によって公式であると証明できるNFTが存在すれば、従来のライブやグッズに加えて、デジタルコンテンツによるマーケット展開が可能になります。
恐らく、偽造品やコピー作品が多く流通する状況は変わらず発生するでしょう。
しかし、保有しているデジタルコンテンツが公式なものであると証明できることで、ファン同士の繋がりが深くなる上、偽造品購入の抑止にも繋がります。
このように、これまで現実世界でしか展開が難しかったファンコミュニティを、デジタルコンテンツにおいても行うことが期待できるのです。
二次流通市場
高級ブランドを取り扱う企業では、NFTによって正規品であることを証明する取り組みが進められています。
内容としては正規品に取り付けたNFCチップの情報と、NFTチップ化した保証書データを連動させることで、真贋判定できるというものです。
これは単なる一時流通における証明だけではなく、二次流通におけるマーケティングにも活用されることが期待されています。
高級ブランド品は、二次流通市場における規模も大きい傾向にありますが、企業にとっては正規店舗で購入した顧客に対してしか接点を持てず、二次流通市場で購入した顧客を把握する手段を持っていませんでした。
しかしNFCチップとNFTによる保証書データの活用は、スマホと連動させることで各所有者へと受け継がれます。
これによって所有者は二次流通による商品の正当性を確認でき、企業は各所有者の顧客情報をデジタル上で把握できるようになります。
その結果、企業は所有者のウォレットに対してプロモーションを行えるなど、どの流通経路からでも所有者との接点を持てます。
この事例はNFTによる現物の権利保護といった意味合いを持ちますが、商品の正当性を担保するといった意味でNFTの新たな活用事例と言えるでしょう。
「C-Guardian」を活用したNFT市場の発展が期待される
デジタルによる著作権侵害は被害の状況を正確に把握することが難しく、場合によっては放置されてしまっているケースも少なくありません。
これはNFT市場においても同様であると言えるでしょう。
さらに著作権を侵害している事例の多くは、特定の企業や作品コンテンツのみを侵害しているわけではありません。
そのため個々の企業や作者だけで対応することは難しく、その解決には限界があります。
このような状況を根本的に解決するためには、「C-Guardian」のような著作権保護サービスの拡充が必須となるでしょう。
NFTを取り囲む環境整備が進めば、著作権侵害によって参入を懸念していた企業やアーティストも前向きになることが考えられます。
そして質の高いコンテンツが増加することで、NFTはより身近な存在へと発展していくはずです。
長年コンテンツ業界と関わりのある博報堂だからこそ、「C-Guardian」の開発を含め著作権問題の解決に向けて率先して取り組んでいます。
今後の活動によって著作権問題の解決、そしてNFT市場の発展に繋がることが期待されるでしょう。