Menu

Tomajo DAO・Tomajo NFTとは?web3で農業に革命を起こす取組みについて解説

解説系記事

アート作品として語られることが多いNFT。

しかし、徐々にその活用の場面は広がりを見せ、時には意外な領域でNFTが用いられることがあります。

この記事でご紹介するTomajo NFT、及びそのコミュニティであるTomajo DAOは、最先端テクノロジーであるNFTとは一見ほど遠いところにあるように思われる農業を、NFTを用いて活性化することを目的としたプロジェクトです。

農業は歴史の長い産業です。それゆえ、従来の古い慣習が今も残っていることが多く、変化の激しい現代においてそれらの慣習が農業の発展を阻害している部分があります。

本記事では、農業が抱える課題を解決することで新しい一次産業のあり方を模索するために創設されたTomajo DAO、そしてその中でNFTがどのように用いられているかについて解説します。

Tomajo DAO・Tomajo NFTとは

引用元:Tomajo DAO

Tomajo DAOは「web3で農家の所得を上げる」をモットーに掲げて活動をしているDAO(自律分散型組織)です。

専業農家であるとまたろう氏がファウンダーとして立ち上げたコミュニティであり、2023年1月現在、Discordのサーバーには約680名のメンバーが参加しています。

コミュニティとして1点物のNFTコレクション「Tomajo NFT」も発行しており、その売上はコミュニティに関わっている農家の支援に使われています。

ファウンダー とまたろう氏について

Tomajo DAOのファウンダーであるとまたろう氏は、脱サラをして専業農家になり現在7年目を迎えます。

NFTなどのweb3のテクノロジーについて発信しているパーソナリティが多数いる音声配信メディア Voicy にて「農業で自由を手にするラジオ」という番組を持っており、自身の活動やコミュニティの動きについて日々発信しています。

NFTとは縁遠そうに見える農業ですが、Tomajo DAOにはとまたろう氏のVoicyをきっかけに参加しているメンバーも多く、ゆえにweb3関連の技術や文化のことをよく理解したメンバーが集っています。

Tomajo NFTの特徴

Tomajo DAOが発行しているNFTコレクションがTomajo NFTです。

Tomajo NFTは2022年7月に最初の作品をリリースし、その後も毎週日曜日にオークション形式で新しい作品を出品しています。

1点物のコレクションになっているため、一般的なジェネラティブのNFTよりは高額で落札されています。

過去の最高落札額では約28万円の価格がついており、現在も新作を出すたびに20万円程度の金額で落札されています。

作品のモチーフにはトマトの品種が用いられています。1つ1つの作品名がトマト、あるいはミニトマトの品種名になっており、それぞれの品種のイメージを生かして擬人化した女性のイラストが描かれています。

Tomajo NFTを所有することの具体的なユーティリティとしては、今後Tomajo NFTから発行を予定しているジェネラティブNFTの制作プロジェクトに参加できるというものがあります。

ジェネラティブNFT発行の目的は今後の活動の資金調達、及びコミュニティの拡大です。

日本の農家の活動環境を改善したいという志を持ったメンバーがTomajo DAOには集っており、そこからさらに踏み込んで自分自身もジェネラティブNFTの制作に貢献したいと考える人は、1点物のTomajo NFTを購入することでその活動に参加することができます。

Tomajo DAOが目指すもの

引用元:Tomajo DAO

Tomajo DAOは、Tomajo NFTや2023年リリース予定のジェネラティブNFT制作の舵取りをしているNFTコミュニティでもあります。

しかし、DAOとして目指している本来の目的は「web3上に農村を作る」ことです。

Tomajo DAOの参加メンバーは、日々何らかの形で農業に接している人が大半を占めます。

とまたろう氏のような専業農家の方もいれば、平日は会社員・週末は農業をしているという「半農・半〇〇」というスタイルの方、もしくはいずれ実家の家業を継ぐ形で農業に従事する予定の方など、様々な属性のメンバーが参加しています。

中には、家庭菜園というキーワードをきっかけにコミュニティに参加する主婦の方もいます。必ずしも本格的に農業に取り組んでいる人ばかりではなく、誰もが気軽に参加できる場所としてコミュニティづくりができていると言えるでしょう。

キャッチフレーズの「web3上に農村を作る」という言葉は、言い換えれば「農村の経済圏、おそびその中での各主体の役割をそのままweb3に持ってくる」ことだと言えます。

農村には作物を育てる農家もいれば、収穫物を加工して販売する人、流通に関わる人、他の村との交渉をする人など、村の経済を成立させるために様々な役割の構成員が存在します。

このような農村の仕組みをそのままweb3の世界に持ってこようというのが、Tomajo DAOの発想です。

Tomajo DAOには農家以外にも農作物を使って加工品を作る人や、ECサイトを作って流通網を構築している人、あるいはSNS等で農作物や商品の情報を外部に発信する人など、実際の農村と同じように様々な役割を担っている人がいます。

web3のテクノロジーと文化を生かしてweb上にリアルな農村と同じ経済圏を作る。しかもその経済圏は物理的な制約を超え、インターネットにより遠くに住んでいる人同士でバーチャルな農村が出来上がる。

このような姿を思い描いてTomajo DAOは発足し、現在ではこの構想通りのコミュニティが実現しつつあります。

既存の農業における中央集権性という課題

ではなぜ、Tomajo DAOはweb3に農村を作ろうとしているのでしょうか。

それは、農家の所得を上げたいという非常にシンプルな目的があるからです。

Tomajo DAOが目指す農業のあり方を理解するために、現在の日本の農業の姿について確認しておきましょう。

利益の8割が手数料で搾取されるスキーム

日本の若い世代は農家になりたがらないという論説を耳にすることがあります。

その最大の理由は「農家の収入が低いから」です。

農家は決して稼げる仕事だとは言えないのが実情です。そしてその原因は、農作物の流通スキームにあります。

農家が作った農作物が消費者の手に届くまでには、何層にも渡って中間マージンを取る主体が存在します。

具体的にはJA、卸売市場、スーパーなどです。これらの経済主体が農作物の流通経路を押さえているため、売上が農家の手元に入るまでに次々と手数料が抜き取られます。

100円の野菜が売れた時、そのうち農家が受け取る利益はわずか10円〜20円程度であるとも言われています。

ファウンダーのとまたろう氏は、農家が搾取されているこの状況を打破したいと考えてDAOを立ち上げ、これに賛同する農業関係者が集ったのが今のTomajo DAOであるとも言えます。

変化を好まない農村文化

このような状況が長年に渡り続いてきたにも関わらず改善がなされなかったのは、農村自体が変化を好まない文化であることにも起因しています。

多くの方がイメージするとおり農業従事者の多くは高齢であり、どちらかと言えばこれまでのやり方に固執し、変化を好まない傾向にあります。

また、農業自体は産業として十分に成熟してしまっているため、界隈で強い発言権や影響力を持つ古参の関係者も多く、ゆえに若手の力では産業構造をほとんど変えられないという問題もあります。

Tomajo DAOは、他のNFTコミュニティと比較すればさすがに年齢層は高めではあるものの、農業従事者としては非常に若い世代のメンバーが中心となって活動しています。

この観点から見れば、Tomajo DAOの取り組みは既存の農業の仕組みに見切りをつけ、テクノロジーの力でまったく新しい農業を形作る活動であるとも言えます。

Tomajo DAOがNFTを活用して実現できたこと

引用元:Tomajo DAO

従来の考え方にとらわれず、新しい技術を用いて農家の収入アップを目指すTomajo DAOの取り組みの中では、NFTも重要な役割を果たしています。

具体的には「仲間づくり」と「資金調達」の2点においてNFTが活用されています。

NFTによる仲間づくり

NFT活用例の1点目は、仲間づくりです。

すでに述べたとおり、1点物のNFTであるTomajo NFTを発行することで、今後発行予定のジェネラティブNFTを制作するメンバーを集めることに成功しています。

そのジェネラティブNFTの発行もまた、Tomajo NFTを応援する人を集める有効な手段になりえます。

さらに現在のNFT界隈では、経済圏に入るためのパスポート的な役割をNFTが果たしていることも注目すべき要素です。

誰しもが参加できるオープンなコミュニティも重要ですが、その一方で特定のNFTを持っている人しか参加できないコミュニティの形成も、今後のDAO運営では欠かせない要素になってきます。

広く浅く関わる仲間だけではなく、より濃い関係を築ける仲間を集めるためにもNFTは利用可能であり、Tomajo DAOでもそのようなNFTの活用が検討されています。

NFTによる資金調達

もう1点は資金調達の手段としての活用です。

Tomajo NFTの売上は、コミュニティマネージャーの採用やDAO内の各プロジェクトの資金提供に用いられています。

またジェネラティブNFTの売上も、ジェネラティブNFTの発行自体にかかる各種支払いにあてるとともに、その後のDAO運営での活用が予定されています。

Tomajo DAOですでに実現しつつある施策

引用元:Tomajo DAO

Tomajo DAOが掲げる目標は「web3に農村を作る」「農家の所得を上げる」ですが、すでに具体的な形としてこれらは実現しつつあります。

その事例として2つご紹介します。

他のDAOとのつながりを利用した農作物直販スキーム

1点目は、他のDAOとのつながりを利用した農作物の直販スキームです。

すでに述べた通り、従来の農作物の流通経路は中間マージンを取られる割合が高く、農家の手取りは少なくなってしまいます。

そこで昨今、活用されるようになってきたのがインターネットを用いた直販ですが、Tomajo DAOではそこからさらに一歩進めた施策をとっています。

それが「他のNFTコミュニティ(DAO)内に、Tomajo DAOのメンバーの野菜直販所を置いてもらう」というものです。

まだ黎明期にある日本のNFT界隈において、今の時点でNFTを扱うことができたり、特定のNFTコミュニティに参加したりしている人は、リテラシーも高く、所得水準も高い傾向にあります。

これはTomajo DAOにとって、自分たちの農作物を売り込む優良な顧客基盤になります。

そこでTomajo DAOでは国内の有名なNFTプロジェクトのうち、

Live Like A Cat(LLAC)
NFT Marketing Orchestra(NMO)
人妻DAO

の3つのコミュニティと連携を取り、これらのコミュニティのDiscordサーバー内にTomajo DAOの野菜直販ページへのリンクやDiscordサーバーへのリンクを置いてもらうことに成功しています。

この仕組みにより、上記3つのコミュニティのメンバーがTomajo DAOのメンバーから野菜を買いたいと思った時に、スムーズに販売サイトを訪れて購入できるようになっています。

農家をより身近な存在に

もう1点は、消費者に対して農家をより身近な存在に感じてもらうことです。

Discordサーバーの大きな利点のひとつに「消費者と農家が直接チャットでつながることができる」というものがあります。

これまでも農家側は、消費者との距離を縮めるために様々な施策を講じてきました。

例えば、野菜を販売する際に生産者の顔写真やメッセージなどを添えたり、あるいはECサイトで野菜を販売をするときのやりとりの中で積極的にコミュニケーションを取るといったことがあります。

しかしDiscordでのチャットのやり取りは、これらを圧倒的に超える密なコミュニケーションを可能にします。

農家も消費者もともに同じDiscordサーバーに参加しているわけですから、そもそも「同じコミュニティの一員」であるという自覚があります。

ゆえに、そこで交わされるコミュニケーションも「生産者と消費者」というよそよそしいものではありません。

消費者視点で見れば、まるで自分の家の隣に住んでいる農家の人に声をかけるかのように、気軽な気持ちで農家の人にチャットを送ることができます。

何でも相談できるかかりつけ医のような存在をイメージするとよいかも知れません。

このような仕組みを作り上げたことで、農家視点に立てば「いつも自分から野菜を買ってくれる太客」を作ることができ、結果的に収入のアップにつながっています。

Tomajo DAO・Tomajo NFTの今後の展望まとめ

Tomajo DAOは、NFTを活用して農家の所得を上げる取り組みを行っているプロジェクトです。

古くからある農業の体質を抜け出して所得を上げる独自の仕組みを作るために、NFTを活用した仲間づくりや資金調達を行い、順調にコミュニティを形成しています。

他のNFTコミュニティとの連携により、実際に農作物を直販できる新たなルートの開拓にも成功しています。

アートではなくビジネス的な観点でのNFTのユースケースとして、引き続き注目していきたいプロジェクトだと言えるでしょう。

Sparrow

Sparrow

フリーランスのWebライター。ブロックチェーンの非中央集権的な世界観に惚れ込み、暗号資産・NFT・メタバースなどのWeb3領域に絞って記事を執筆。自らの暗号資産投資やNFT売買の経験をもとに、難しいと思われがちなブロックチェーンについて、初心者にもわかりやすい記事を書くことを心がけています。好きなNFTクリエイターは「おにぎりまん」氏。
Author