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DEXアグリゲーター1inch(ワンインチ)の特徴や使い方などをわかりやすく解説

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暗号資産(仮想通貨)取引所大手のFTXの破綻以降、より一層DEX(分散型取引所)への注目が集まっています。

しかし、現在でも様々なDEXが存在しているため、どの分散型取引所を利用すればよいのかわからない方も多いのではないでしょうか?

そんな方におすすめなのが、複数のDEXの中から最適な暗号資産の取引レートを自動で探してきてくれるDEXアグリゲーターです。

この記事では、DEXアグリゲーターで最も人気が高い1inch(ワンインチ)というプロトコルの特徴や使い方をわかりやすくご紹介していきます。

記事の後半では、事前に知っておきたい1inchの注意点・リスクなども解説していくので、ぜひ最後までチェックしてみてください。

DEXアグリゲーター1inch(ワンインチ)とは?

1inchとは、いわゆるDEXアグリゲーターと呼ばれるサービスであり、正式名称は「1inch Exchange」となっています。

簡単に言うと、複数のDEXを自動的に比較し、その中から最適な取引レートの取引所を探し出してきてくれるサービスと言えるでしょう。

わかりやすくイメージするのであれば、DeFi業界における「価格.com」のような比較サイトだと理解すればよいかもしれません。

DeFiはまだまだ発展途上の市場ではありますが、現状でも数多くのDEXが存在しているため、それらを自分で比較して最適なレートを探すのは事実上不可能です。

しかし、1inchを利用すればそのタイミングでの最適なレートをすぐに提示してくれるため、誰でも有利な条件で取引を行うことができます。

また、他のDEXを仲介するだけでなく、1inch自体も分散型取引所としての機能を持っています。

1inch(ワンインチ)で利用できる基本的な機能

次に、1inchで利用できる基本的な機能をご紹介していきます。

ここでは、以下の3つの機能について詳しく確認していきましょう。

  • スワップ(交換)
  • イールドファーミング(流動性マイニング)
  • ステーキング

スワップ(交換)

スワップとは、保有している暗号資産を別の銘柄に交換できる機能であり、DEXの中でも最も基本的な機能の一つです。

例えば、持っているイーサリアム(ETH)をステーブルコインのダイ(DAI)に交換したい際には、このスワップの機能を利用します。

上記のように、非常にシンプルでわかりやすいUIとなっているので、DEXを使ったことがない初心者の方でも問題なく利用することができるでしょう。

また、1inchには「Limit order」という指値注文(希望する価格で売買の注文を出す方法)でスワップできる機能も提供されています。

成行ではなく、自分が希望する価格で暗号資産の取引を行いたい方は、ぜひLimit orderの機能も活用してみてはいかがでしょうか?

イールドファーミング(流動性マイニング)

イールドファーミングとは、複数の暗号資産が溜められたPool(プール)に流動性を与え、利回りを獲得することを指します。

このPoolには、2種類以上の暗号資産が常に同じ割合(2種類の暗号資産のプールなら50:50の割合)で溜められており、ユーザーはその流動性を利用してスワップを行います。

別名、流動性マイニングとも呼ばれており、1inchをはじめとしたAMM(自動マーケットメーカー)型のDEXで採用されている特徴的な機能と言えるでしょう。

流動性を提供する通貨ペアにもよりますが、中には非常に利回りが高い通貨ペアも存在しているため、イールドファーミングは資産運用の方法としても注目を集めています。

ステーキング

1inchでは、独自に発行しているガバナンストークン「1INCH」をステーキングできる機能が提供されています。

1INCHをステーキングすると、その数量や期間に応じてUnicorn Power(ユニコーンパワー)というポイントのようなものを獲得することができ、1inchの運営に参加できる権利が与えられます。

また、Unicorn Powerを他のユーザー(resolver)に委任することも可能であり、委任した場合にはその見返りとして利回りを獲得することができます。

1inch(ワンインチ)の4つの特徴

ここでは1inchの特徴について、さらに詳しく確認していきましょう。

以下の4つの特徴に沿って、順番に解説していきます。

  • 300種類以上のDEXと連携しているDEXアグリゲーター
  • 複数のブロックチェーンに対応している
  • フロントランニングを防止する機能を実装
  • ガバナンストークンの1INCHを発行している

300種類以上のDEXと連携しているDEXアグリゲーター

1inchは、様々な取引所から最適な取引レートを見つけてくれるDEXアグリゲーターですが、連携している取引所の数は300種類を超えています。

先ほどもご紹介したように、これほどの数のDEXから最適なレートを自力で探し出すのはほぼ不可能と言えるでしょう。

多くのDEXを自動的に比較し、手軽に有利なレートで暗号資産のスワップができる点は、1inchを利用する大きなメリットとなっています。

複数のブロックチェーンに対応している

1inchの特徴として、複数のブロックチェーンに対応していることも挙げられます。

上記画像のように、EthereumやBNB Chain、Polygon、Avalancheなどのブロックチェーンに対応しているため、主要なDEXはほぼ網羅していると言っても過言ではありません。

ユーザーによってメインで使用しているブロックチェーンは異なると思いますが、1inchなら基本的にどんなユーザーでも問題なく利用することができるでしょう。

フロントランニングを防止する機能を実装

1inchでは、フロントランニングという不正行為を防止する機能が実装されています。

フロントランニングとは、他のユーザーの取引オーダーを確認した攻撃者(フロントランナー)が先回りし、自分のオーダーを先に約定させて利ざやを稼ぐ行為のことです。

この行為により、攻撃を受けたユーザーは不利なレートで取引させられてしまうため、DEXを利用する上での大きな問題点として取り上げられています。

そこで1inchではこのフロントランニングを防止するため、仮想レート(virtual rates)という仕組みを導入し、フロントランナーが不正行為をすると損をしてしまう構造を採用しました。

この機能により、ユーザーは公平な条件のもとで取引を行うことが可能となっています。

ガバナンストークンの1INCHを発行している

1inchの最後の特徴として、ガバナンストークンの1INCHを発行していることが挙げられるでしょう。

先ほども少しご紹介しましたが、ガバナンストークンとはその名前の通り、コミュニティや組織のガバナンス(統治・管理)を行うために発行された暗号資産です。

ユーザーは1INCHを保有し、プロトコル内でステーキングを行うことで、その数量・期間に応じたガバナンスの影響力を獲得することができます。

このように特定のリーダーが組織を運営するのではなく、ガバナンストークンを活用した分散的な運営を行っている組織は、一般的にDAO(自律分散型組織)と呼ばれています。

DAOについてさらに詳しく知りたいという方は、【完全版】DAO(自律分散型組織)とは?特徴や今後の課題、有名なDAOまで徹底解説の記事もぜひ参考にしてみてください。

1inch(ワンインチ)の始め方

1inchを利用するためには、暗号資産の準備やMetaMaskの作成など、いくつかの手順を踏む必要があります。

ここでは、1inchを始めるための手順を実際のスクリーンショットとともに解説していくので、始め方がわからない方はぜひチェックしてみてください。

  • 暗号資産取引所でイーサリアム(ETH)を購入する
  • 暗号資産ウォレットのMetaMaskのアカウントを作成する
  • イーサリアム(ETH)をMetaMaskに送金する
  • 1inch(ワンインチ)とMetaMaskを接続させる

暗号資産取引所でイーサリアム(ETH)を購入する

1inchを利用するためには、まず最初に暗号資産取引所でイーサリアム(ETH)を購入していきましょう。

ここまでご紹介したように、1inchでは様々な機能を提供していますが、スワップやイールドファーミングなどをするためにも、原資となるイーサリアム(ETH)を準備する必要があります。

なお、今回はイーサリアム(ETH)を利用する手順をご紹介していますが、BNB Chainなど他のチェーンのDEXを使いたいという方は、そのブロックチェーンのネイティブトークンを準備するようにしてください。

暗号資産ウォレットのMetaMaskのアカウントを作成する

国内取引所などでイーサリアム(ETH)を購入できたら、次に暗号資産ウォレットに送金していきます。

1inchは複数のウォレットに対応していますが、特にこだわりがない方であれば多くのユーザーが利用しているMetaMask(メタマスク)がおすすめです。

まずはMetaMask公式サイトにアクセスし、Google Chromeなどの普段から使用しているブラウザにダウンロードします。

あとは画面に沿ってパスワードを設定し、シークレットリカバリーフレーズをメモすれば、MetaMaskの作成は完了です。

もう少し詳しい作成手順が知りたい方は、初心者でもMetaMaskが使えるようになる。設定から送金方法までわかりやすく解説。の記事も参考にしてみてください。

イーサリアム(ETH)をMetaMaskに送金する

MetaMaskのアカウントを作成したら、アドレスをコピーしてイーサリアム(ETH)を送金していきます。

また、コピーする際は表示しているアドレスが「イーサリアムメインネット」となっているか必ずチェックするようにしてください。

送金手続きに不安がある方は、一度少額でのテスト送金を行い、無事に着金するかを確認しておくとよいでしょう。

1inch(ワンインチ)とMetaMaskを接続させる

ここまでの手順が完了したら、最後に1inchとMetaMaskを接続していきます。

まずは1inch公式サイトにアクセスし、画面右上にある「Launch dApp」をクリックしてください。

別タブで画面が開いたら、赤枠で示した「Connect wallet」を選択します。

画面が切り替わるので、まずは利用規約にチェックを入れます。その後、利用するネットワーク(ブロックチェーン)とウォレットの種類を選択しましょう。

今回は例として、「Ethereum」と「MetaMask」を選択します。

自動的にMetaMaskが立ち上がるので、「次へ」をクリック。

最後に「接続」をクリックすれば、1inchとの連携は完了です。

1inch(ワンインチ)の基本的な使い方

1inchとMetaMaskを接続できれば、暗号資産のスワップやイールドファーミングなどができるようになります。

次に、1inchの基本的な使い方を以下の3つの項目に分けてご紹介していきます。

  • 1inch(ワンインチ)で暗号資産をスワップする方法
  • 1inch(ワンインチ)でイールドファーミングをする方法
  • 1inch(ワンインチ)で1INCHトークンをステーキングする方法

1inch(ワンインチ)で暗号資産をスワップする方法

まずは、1inch(ワンインチ)で暗号資産をスワップする方法を確認していきましょう。

画面上部にある「Trade」→「Simple mode」の順番にクリックします。

なお、今回は最も基本的な「Simple mode」でスワップする方法を解説していきますが、前述の指値注文をしたい方は「Limit order」から行うことができます。

画面が切り替わったら、まずはスワップする通貨ペアを選択していきます。上記画像の赤枠で示した箇所をクリックしてください。

ここでは、1inchで取引できる暗号資産が一覧で表示されるので、スワップしたいトークンを選択しましょう。

最後に交換する数量を入力し、矢印で示したボタンをクリックしてください。

あとは立ち上がったMetaMaskの画面に沿って承認をすれば、スワップをすることができます。

1inch(ワンインチ)でイールドファーミングをする方法

1inchでイールドファーミングを行う場合は、まず「Earn」→「Pools」の順番にクリックします。

通貨ペア別にPool(プール)が一覧で表示されるので、利用したいものが決まったら、赤枠で示した「+」のアイコンを選択してください。

流動性を提供したい暗号資産の数量を入力し、赤枠で示したボタンをクリックしましょう。

MetaMaskの画面に沿って手続きを行えば、LP(Liquidity Provider)の証明となる「LPトークン」をもらうことができます。

次に、獲得したLPトークンを1inchに預け入れていきます。この手順を行わないとLPトークンから利回りを獲得できないので注意してください。

トップページに移動し、「Earn」→「Farming」の順番にクリックします。

画面が切り替わり、預け入れられるLPトークンが一覧で表示されます。自分が流動性を提供した通貨ペアの「Deposite」をクリックしましょう。

あとは画面に沿って数量を入力し、取引を承認すれば手続きは完了です。

なお、1inchではサイト上で募集されているLPトークンしか預け入れることができません。

そのため、確実にLPトークンから利回りを得たい方は、どの通貨ペアが募集されているのか確認してから流動性を提供した方が確実かもしれません。

1inch(ワンインチ)で1INCHトークンをステーキングする方法

最後に、ガバナンストークンである1INCHをステーキングする方法を確認していきましょう。

上記画像のように、まずは「DAO」→「Staking」をクリックします。

上記のような画面が表示されるので、ステーキングしたい1INCHの数量を入力します。

次に、「Lock time」の箇所でステーキングする期間を選択していきます。ロック期間が長いほど獲得できるUnicorn powerが増えるので、期間についてはしっかりと考えることをおすすめします。

最後に矢印で示したボタンをクリックすれば、1INCHのステーキングは完了です。

1inch(ワンインチ)を利用する前に知りたい注意点・リスク

記事の最後に、1inchを利用する前に知っておきたい注意点・リスクを2つご紹介していきます。

1inchをはじめとしたDEXを使う方には必見となる注意点なので、ぜひ詳しく確認することをおすすめします。

  • インパーマネントロスが発生する可能性がある
  • ハッキングされる危険性がある

インパーマネントロスが発生する可能性がある

1inchでイールドファーミングを利用する際に知っておきたい知識として、インパーマネントロスの存在が挙げられるでしょう。

インパーマネントロスとは、ユーザーがスワップの際に使用する暗号資産が溜められた流動性プールのリバランス時に発生する損失のことです。

先ほども少しご紹介しましたが、この流動性プールには2種類以上の暗号資産が常に同じ割合で保管されているため、トークンの価格変動があるたびにリバランスが行われます。

この説明だけでは少しわかりにくいので、以下で具体例を出して解説していきます。

インパーマネントロスが発生する事例

具体例として、1inchにある「ETH – USDT」のプールに流動性を提供するケースで考えていきます。

また今回は、全ての供給量の10%に相当する「1 ETH:1,000 USDT(合計2,000ドル)」を流動性として提供したと仮定しましょう。

ユーザーが「1 ETH:1,000 USDT」の流動性を提供した後に、ETHのトークン価格が急上昇し、1,000 USDT → 4,000 USDTに変動してしまいます。

そうすると、流動性プールの中では「1 ETH = 1,000 USDT」から「1 ETH = 4,000 USDT」の割合にリバランスされてしまうため、プールの中に存在していたETHの数量が大きく減少する形となります。

自分の資産 価格レート プール全体の流動性
流動性提供前 1 ETH + 1,000 USDT

(合計2,000ドル)

1 ETH=1,000 USDT 9 ETH:9,000 USDT
流動性提供後 1 ETH + 1,000 USDT

(合計2,000ドル)

1 ETH=1,000 USDT 10 ETH:10,000 USDT

(10%をシェア)

価格変動 1 ETH=4,000 USDT 5 ETH:20,000 USDT

(10%をシェア)

流動性解除 0.5 ETH + 2,000 USDT

(合計4,000ドル)

1 ETH=4,000 USDT 4.5 ETH:18,000 USDT

リバランスが発生した後、ユーザーが流動性提供の解除をすると、返還される金額は「0.5 ETH + 2,000 USDT(合計4,000ドル)」となります。

もし、流動性の提供を行わずにトークンをそのまま保有していたら、ETHが値上がりしたことで「1 ETH + 1,000 USDT(合計5,000ドル)」の資産となっていました。

結果的には、そのままトークンを持っていた方が1,000ドル分得していたので、1,000ドルのインパーマネントロスが発生した計算となります。

このように、イールドファーミングを利用する際には、トークンの価格変動によって損失が発生してしまう可能性があることは知っておいてください。

ハッキングされる危険性がある

1inchを利用する際の注意点・リスクとして、ハッキングに遭ってしまう危険性もあります。

1inchをはじめとしたDeFiのプロトコルは、基本的にプログラミングコードをオープンソース(一般公開)としているため、悪意のあるハッカーにコードの脆弱性を発見されてしまう可能性があります。

直近では、2022年12月にSolanaブロックチェーンを基盤としているDEX、Raydium(レイディウム)がハッキングを受け、約3億円もの資金が流出しました。

ソラナ(SOL)ブロックチェーン基盤の分散型取引所(DEX)「Raydium」で、16日にハッキングによる暗号資産(仮想通貨)の不正流出が発生したことが明らかになった。

Raydiumは16日23時(日本時間)過ぎに被害を報告。スマートコントラクトの管理者権限がハッカーにより侵害されたことを認めた。権限は既に停止処置を取られたが、取引エンジンである「AMM(自動マーケットメイカー)」と資産をロックアップする「流動性プール(LP)」に影響を及ぼしている。

引用元:ソラナDEX「Raydium」ハッキング被害、約3億円が不正流出

1inchで暗号資産のスワップをするだけなら問題ありませんが、イールドファーミングやステーキングなど、資産をプロトコルに預け入れる場合にはハッキングの被害を受けてしまう危険性があります。

しかし、ユーザーの立場としてはハッキングを防ぐことはできないので、大きな金額は預けない等のリスク管理が大切になってくるでしょう。

DEXアグリゲーター1inch(ワンインチ)の特徴や使い方まとめ

今回の記事では、様々なDEXを比較して最適なレートを提示してくれるDEXアグリゲーター、1inch(ワンインチ)の特徴や使い方などを詳しく解説してきました。

1inchは、EthereumやBNB Chain、Polygonなどの主要なブロックチェーンに対応しており、合計300種類以上ものDEXと連携しているプロトコルです。

また、フロントランニングを防止する機能が実装されているなど、ユーザーとしても安心して利用することができるでしょう。

いくつかあるDEXアグリゲーターの中でも最も人気が高いプロトコルなので、興味のある方はぜひ一度利用してみてはいかがでしょうか?

GM

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2017年から仮想通貨投資を開始し、2020年から本格的にweb3.0の世界に参入。現在はフリーランスとして暗号資産やブロックチェーン、NFT、DAOなどweb3.0に関する記事を執筆。NFT HACKでは「初心者にもわかりやすく」をモットーに、読者の方々に有益となる記事の作成を行なっている。
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