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NFTプロジェクト「Nouns」から読み解く究極のDAOの姿とは?

解説系記事

NFTやメタバースなどのweb3関連キーワードと共に、耳にする機会が増えたのがDAO(自律分散型組織)です。

DAOは、人類の経済活動において中心的な役割を担う組織形態と思われてきた株式会社などに取って代わる可能性があると言われる新しい組織形態です。

DAOの概念はまだ固まり切っておらず、ゆえに様々な形のDAOが存在しています。そのため、「真のDAOと呼べるのはBitcoinだけである」という論説もあります。
その中でも「DAOの究極形」とされるのがNouns(ナウンズ)と呼ばれるNFTプロジェクトです。

この記事では、一般的にDAOと呼ぶにあたって必要とされる要素、及びNounsの概要について確認をした上で、Nounsこそが究極のDAOであるとされる理由について解説します。

DAO(自律分散型組織)とは?

DAO(Decentralized Autonomous Organization)はweb3時代の新しい組織形態であり、日本語では「自律分散型組織」と呼ばれています。

DAOの定義はまだ明確に定まっていませんが、いくつかの共通した特徴を持っているとされています。

そこでまずは、本記事の内容をより理解するためにDAOが持つ基本的な3つの特徴について解説します。。

中央集権的な管理者が不在

DAOが持つ1つめの特徴は、中央集権的な管理者が不在であることです。

「中央集権的な管理者」とは、ピラミッド型組織において意思決定を行うリーダーのような存在をイメージするとよいでしょう。

会社などの大規模なものから、個々のプロジェクトチームのような小規模なものまで、生産活動を行うピラミッド型組織にはまずリーダー(=中央集権的な管理者)が存在し、そのリーダーの意思決定や指示に基づいて組織は動いていきます。

ところが、DAOにはリーダーにあたる存在がいません。

DAOを立ち上げた人物をファウンダーと呼びますが、ファウンダーは従来のピラミッド型組織におけるリーダーとは位置づけが異なります。

DAOでの活動はファウンダーの指示のもと動いていくのではなく、個々の組織員が自律的に動くことによって進められます。

ファウンダーもあくまでDAOの一員として組織活動に参加することになり、リーダーとして意思決定や指示をすることはありません。

このように組織内に中央集権的な管理者が不在であること、それに伴って組織員が自律的に動いていく点が、DAOの特徴の1つです。

匿名で参加できる

DAOの2つめの特徴は、匿名で参加できる点です。

一般的にDAOの構築にはブロックチェーン技術が用いられますが、このブロックチェーンのおかげで私たちは匿名のままDAOでの活動に参加することができます。

DAOの参加者間でやりとりされる情報はブロックチェーンに刻まれ、その情報はブロックチェーンが持つ特性上、第三者が勝手に改ざん・削除することは基本的にできません。

やりとりの履歴自体が「勝手に書き換えられることがない、紛れもない事実」としてブロックチェーンに残るため、私たちは匿名の状態(つまり、やりとりの相手が何者であるかもわからない状態)でも「そのやりとり自体は真実」であると信じてDAOに参加し、コミュニケーションや取引を行うことができます。

意思決定は投票で行う

DAOの3つめの特徴は、ガバナンストークンによる投票で意思決定を行う点です。

これは、株式会社における意思決定の仕組みと比較すると理解しやすいでしょう。

株式会社において、経営方針などの重要事項について決定権を持っているのは株主です。

株主総会にて株主の投票に基づいて意思決定が行われるため、より多くの投票権が割り当てられる大株主であるほど自己の意見を投票結果に反映させやすい仕組みになっています。

そしてDAOも、これによく似た仕組みで意思決定を行っています。

DAOで投票に用いられるのはガバナンストークンです。

ガバナンストークンとは一般的には各DAOが発行しているトークンであり、組織としての意思決定を行う際の投票に用いられます。

株主総会での投票と同じように、ガバナンストークンを多く保有している者がより強く意見を反映させることができます。

ちなみに、ガバナンストークンは取引方法も株式と非常に似ています。

証券取引所に上場している株式であれば証券会社を通じて自由に売買ができるのと同じように、上場済みのガバナンストークンであれば私たちは市場で自由に売買をすることができます。

NFTプロジェクト「Nouns」とは

引用元:Nouns

DAOの基本的な特徴を踏まえた上で、次はNounsについて理解を深めていきましょう。

Nounsは一般的なジェネラティブNFTとは大きく異なる特徴を持ったNFTプロジェクトです。

自動生成されるジェネラティブNFT

1つめの特徴は、毎日1体の新しいNFT作品が自動生成される点です。

通常のNFTコレクションはリリース時点での発行点数が決められており、数千〜数万点の作品を同時に発行するケースがほとんどです。

一方、Nounsは今も毎日1体の新しい作品が自動生成されるように予めプログラムされています。

総発行量は決まっておらず、24時間ごとに新たな個体が永久に生成され続ける仕組みになっています。

1日1体がオークションによって落札される

2つめの特徴は、新たに生み出された個体は自動的にオークションにかけられ、24時間以内に落札者が決まるという点です。

新たな個体を発行する手段は他になく、このオークションシステムだけが唯一、Nounsを発行できるプロセスになっています。

1日1体が自動生成されるという発行プロセスには以下のような特徴があります。

  • NFT価格の急激な乱高下が発生しにくい
  • クリック競争によるガス代の高騰が発生しにくい
  • 中央が存在しない真に分散的なDAOを形成しやすい

フルオンチェーンである

3つめの特徴は、フルオンチェーンのNFTであるという点です。

フルオンチェーンとは、画像データなども含めすべてのデータがブロックチェーンに直接記録される形式を指します。

一般的にNFTは「ブロックチェーンに記録されたデジタルデータであり、一切改ざんができない」とされていますが、この特徴に該当するのはフルオンチェーンのNFTのみです。

フルオンチェーンではないNFTの場合、画像データはブロックチェーンに記録されておらず、代わりにAWSのようなクラウドサービスや、IPFSなどの分散型ストレージに保存されています。

つまり、ストレージ内の画像を後から差し替えることで、NFT作品の見た目が変わってしまうということが起こりえます。

一方、フルオンチェーンのNFTは画像データも含めたすべてのデータがブロックチェーンに直接記録されているため、真の意味で改ざんすることができなくなっています。

そしてNounsもこのフルオンチェーンのNFTに該当しています。

Nounsが「究極のDAO」とされる理由

引用元:Nouns

Nounsの大まかな特徴を理解した上で、ここからはDAOの基本的特徴と照らし合わせながら、なぜNounsが究極のDAOとされているのかについて解説します。

創業者が利益を受け取っていない

理由の1つめは、創業者が利益を受け取っていない点です。

これはDAOの「中央集権的な管理者が不在」という特徴と合致しています。

株式会社の場合、事業で生み出された利益は株主のものになります。

つまり、「利益=中央集権的な管理者のもの」という構図が成り立っています。

ところがNounsの10名の創業者はこの利益を受け取ることを放棄しています。

利益を受け取る代わりに、毎日発行されるNFTを10日に1回の頻度で受け取る仕組みになっており、これにより自らを中央集権的な管理者ではなく「他のメンバーと同じNounsホルダー」と位置づけてDAOに参加しています。

創業者が利益および中央集権的な管理者の立場を放棄してコミュニティに参加していること。

これが、Nounsが究極のDAOであるとされる理由の1つです。

売上がトレジャリーウォレットで管理されている

2つめの理由は、NFTの売上がトレジャリーウォレットで管理されている点です。

こちらも「中央集権的な管理者」に依存しないという意味において、非常にDAO的な要素だと言えます。

創業者が放棄したNFTの売上は特定の個人のものにならず、DAOのメンバーが共同で管理するウォレットに入ります。

この共同管理のウォレットをトレジャリーウォレットと呼びます。

ここに保管された売上はコミュニティ全体の軍資金のような扱いとなり、創業者であっても勝手に使いみちを決めたり、資金を移動させたりすることはできません。

創業者も含めて全員が匿名でコミュニティに参加できる

3つめの理由は、創業者も含めて全員が匿名でコミュニティに参加可能である点です。

これはすでに述べたDAOの特徴そのものです。

創業者10名のSNSアカウントは知られていますが、本名ではないため、創業者さえもが匿名でNounsに参加していることになります。

もちろん他のメンバーも実名を明かす必要は特になく、完全に匿名の状態でNFTの落札やコミュニティの活動に参加できます。

売上の使途は投票で決定される

4つめの理由は、売上の使途は投票で決定される点です。

これもDAOの特徴にとてもよく合致しています。

一般的なDAOで投票に用いられるガバナンストークンは、実はNounsには存在しません。

代わりにNounsのNFT自体がガバナンストークンの役割を果たしています。

ホルダーはNouns1体につき1票を投じる権利があり、この投票権を行使してDAOとしての意思決定に参加できます。

「ガバナンストークンか、NFTか」の違いはありますが、意思決定を投票で行っている点はまさにDAOであると言えるでしょう。

マルチシグによる資金管理

5つめの理由は、資金の管理にマルチシグが採用されている点です。

これは「中央集権的な管理者に依存しない」という要素に関わってきます。

Nounsでは、トレジャリーウォレットから実際に資金を移動させる際に「マルチシグ」が採用されています。

マルチシグとは、資産移動時に複数名の署名を必要とする仕組みです。

一般的に暗号資産ウォレットから資金を移動する際は、ウォレットの保有者自身が署名をすれば資金を動かすことができます。

しかし、トレジャリーウォレットでも同様の仕組みにすると、最初に署名をする1人の判断のみで資金を動かせてしまいます。

この事態を防ぐために、Nounsではマルチシグを用いています。

これにより、特定の中央集権的な管理者の権限のみで資金を勝手に動かすことはできず、複数名の合意によって資金を取り扱うことが可能になっています。

Nounsの現状の課題

引用元:Nouns

DAOとして理想的な形で機能しているように見えるNouns。しかし今はまだ様々な課題が残っています。

ここでは具体的に2つの課題を紹介します。

強いリーダーシップがない

1つめは、組織を引っ張る強いリーダーシップがないことです。

トレジャリーウォレットに貯まった資金の使途などを、特定の管理者に依存せず投票で分散的に決定できる点はまさにNounsのDAOらしい点です。

しかし、これは裏を返せば「チームに強いリーダーがいない状態」でもあります。

一般的には組織運営において、リーダーが存在することで以下のようなメリットがあります。

  • スピーディな意思決定が可能
  • リーダーの権限のみで確実に決定することが可能
  • (リーダーが優秀であれば)最適な選択が可能

ところが組織運営を分散的に行っていくDAOの場合、以下のような状況に陥ってしまう可能性があります。

  • 意思決定が遅い
  • 投票結果が分散しすぎた結果、決定に至らない
  • 投票という仕組みでは、必ずしも最適な選択肢を選べるとは限らない

上記はいずれのDAOにも当てはまるデメリットであり、Nounsも例外ではありません。

ホルダー数の増加に伴う1票の重みの希薄化

2つめの課題は、Nounsホルダー数の増加に伴う1票の重みの希薄化です。

Nounsのコミュニティで投票に用いられるNFTは、自動的に1日1体、新しい個体が生成されます。

つまり、時間の経過によって発行済みNFTの数が増えると共に、1票(Nouns1体)が持つ投票権としての重みが薄れていくことになります。

Nounsホルダーが10人しかいない状況であれば、1体のNounsを保有することにより、意思決定に際して自分が及ぼせる影響力は10分の1となります。

ところが、NFTの発行が進みホルダー数が1,000人に増えてしまうと、自分が及ぼせる影響力は1,000分の1になってしまいます。

このように1票の重みが薄まることにより「Nounsを保有して投票権を行使するという行為」自体の意義も薄れてしまいかねない点が、Nounsの課題だとされています。

Nounsの今後の展望まとめ

最後にNounsの今後の展望について、プラス・マイナスの両面から見てみましょう。

今後Nounsに期待できる部分

Nounsがすでに潤沢な資金を蓄えている点は、web3界隈全体にとっても非常に期待できる点です。

Nounsはプロジェクトのスタートからすでに500日以上が経過しています。

それでもなお毎日のオークションでNFTが落札され、その度にDAOとしての資金が蓄積しているという仕組み自体は驚くべき成功だと言えます。

さらに、トレジャリーウォレットにはすでに50億円以上の資金が貯まっており、今後も潤沢に貯まっていくであろう資金があれば、今後のweb3界隈に大きな影響力を及ぼす動きを取れる可能性があります。

また、毎日生成されるNounsの落札価格は徐々に下がっているため、これまでは高くて購入できなかった人でもオークションに参加できる機会が増えるかもしれません。

課題克服が必要な部分

今後の課題は、投票による分散的な意思決定を実現してしまっているがゆえに、貯まった資金の最適な使いみちを決定しにくい点です。

50億円を超える巨額の資金を使えることはNounsの強みの1つです。

しかし同時に、資金の最適な使いみちを投票という分散的な意思決定方法で本当に決められるのか、疑問が残ります。

中央集権的な管理者に力が集まってしまう状況は避けつつも、一方で、ある程度のリーダーシップを持った存在がコミュニティにとって最善の選択を取ることができる仕組みが、今のNounsには求められています。

Sparrow

Sparrow

フリーランスのWebライター。ブロックチェーンの非中央集権的な世界観に惚れ込み、暗号資産・NFT・メタバースなどのWeb3領域に絞って記事を執筆。自らの暗号資産投資やNFT売買の経験をもとに、難しいと思われがちなブロックチェーンについて、初心者にもわかりやすい記事を書くことを心がけています。好きなNFTクリエイターは「おにぎりまん」氏。
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