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新興ブロックチェーン「Sui」とは?次世代のレイヤー1チェーンについて解説

解説系記事

Web3の世界ではイーサリアムがレイヤー1の代表格として君臨しています。しかし、「ガス代の高さ」や「処理速度の遅さ」といった課題も。利用者人口のさらなる増加を目指すには、より高性能なレイヤー1ブロックチェーンの存在が欠かせません。そこでイーサリアムよりも優れたレイヤー1ブロックチェーンを開発すべく、さまざまな組織がしのぎを削っています。

そのような中で、注目を集めるレイヤー1ブロックチェーンが「Sui」です。旧Facebookのデジタル通貨「リブラ」の流れを汲むブロックチェーンであり、「イーサリアムキラー」として期待されています。

この記事では「Sui」の特徴やメリット・デメリットに焦点を当てつつ、エコシステムで展開されているサービスについて紹介します。

L1ブロックチェーン「Sui」とは?

Suiは、Sui Foundationによって開発が進められているレイヤー1ブロックチェーンです。2023年1月時点でテストネットしか公開されていないものの、大きな期待を集めています。このSuiブロックチェーンへの注目は、以下の理由が考えられます。

ディエムの開発陣が手掛けるレイヤー1のブロックチェーン

「Sui」が大きな注目を集める理由は、ディエム(旧リブラ)の開発メンバーが携わっているプロジェクトだからです。ディエムとは、Facebook社(現:META社)がかつて研究を進めていたデジタル通貨。通貨の発行目前まで達していたものの、規制当局との折り合いがつかずプロジェクトは中止となってしまいました。

そこで開発に携わったメンバーはFacebook社を離れて、独自のプロジェクト「sui」を立ち上げました。このような背景から、suiにはディエムの基盤技術が踏襲されています。

コアプログラミング言語「Sui Move」で構築されたプラットフォーム

Suiには、独自のプログラミング言語「Sui Move」が採用されています。このSui Moveは、Facebook社が開発したプログラミング言語「Move」をベースとして開発されました。

Sui向けに最適化するために、Sui Moveでは新たなルールやプログラムが数多く追加されています。これによって、複雑なスマートコントラクトの設計も可能になりました。

トランザクションの並行処理が可能で、即時決済にも対応

Suiでは複数のトランザクションを並列して実行できるため、高速なデータ処理が可能です。プログラミングにおける自由度が高く、因果関係のないトランザクションであれば複数の処理を同時に実行できます。

データの並行処理によって高速化を実現したため、即時決済にも対応します。これによって、Eコマースのようなデジタル決済への活用も可能です。

パブリックトークン「SUI」を発行

Suiにおけるパブリックトークンが、「SUI」です。SUIはガス代として用いられるほか、コミュニティ内での意思決定の際にはガバナンストークンとして機能します。SUIの供給量は100億トークンが上限であり、所有数に応じて投票権限が拡大されます。

L1ブロックチェーン「Sui」のメリット

イーサリアムキラーとして開発が進められているSuiは、イーサリアムの弱点を克服する設計がなされています。ここでは、その中でも代表的なメリットを紹介します。

ガス代が安いため少額決済も可能

suiではガス代がほとんど掛からないため、少額決済にも対応できます。一般的なブロックチェーンの場合、トランザクションごとに一定のガス代が必要です。そのため、少額の送金に対してはコストメリットが合いません。

一方でsuiでは、複数のユーザーから寄せられたトランザクションを一括して処理します。これにより、一件あたりのガス料金を低コストに抑えられました。従来のブロックチェーンでは避けられてきた少額決済も、suiブロックチェーンでは採算性が合う設計になっています。

「Move Prover」によりセキュリティ性能が高い

suiでは、「Move Prover」によって高いセキュリティを確保しています。このMove Proverとは、スマートコントラクトの安全性を検証する自動化ツールです。スマートコントラクトの実装にあたっては、常にバグやハッキングの危険性と向き合わなければなりません。このようなセキュリティ上のリスクを回避する仕組みとして、Move Proverが機能します。

Move Proverでは、数学的な手法を用いてプログラムの脆弱性や問題点を洗い出します。スマートコントラクトの安全性を簡易的に検証できるため、エコシステム全体のセキュリティ向上に寄与しています。

「Sui SDK」によりDapps構築が容易

Suiには「Sui SDK」が用意されており、容易にDappsを構築できます。このSui SDK(Software Development Kit)とは、Suiのエコシステムにおけるソフトウェア開発キットです。使用頻度の高いプログラミングコードがあらかじめ用意されているため、開発者はコードの組み合わせによってソフトウェアを制作できます。

さまざまなプログラミング環境や目的に沿えるように、Sui SDKには以下のパッケージが用意されています。

  • Sui Rust SDK
  • Sui TypeScript SDK
  • Sui API Reference

Sui SDKを活用すれば、プログラミングを一から設計する必要はありません。加えて、専門家が作成したコードを利用できるため、バグやエラーの低減にも寄与します。このように開発者にとって工数の削減に繋がるため、アプリの迅速な開発を可能にします。

L1ブロックチェーン「Sui」のデメリット

注目を集める一方で、Suiにはいくつかの懸念事項も存在します。投資や開発に乗り出す際には、Suiブロックチェーンのデメリットについて冷静に考慮しなければなりません。

システム構成が複雑である

Suiブロックチェーンのデメリットは、システム構成が複雑で開発の難易度が高い点。設計における制約が少なく自由に設計ができる反面、一般的なブロックチェーンよりも複雑になりやすい特徴があります。

例えば、Suiブロックチェーンでは複数のトランザクションを同時並行で実行できます。その際に、プログラマーは処理の順番に関わらずコードが正常に機能するかを判断しなければなりません。このようにプログラマーの裁量が大きい分、エコシステム全体として複雑な設計になりやすく、開発者に高い技術力が求められます。

エコシステムの規模が小さい

Suiブロックチェーンはまだ開発段階であり、エコシステムの規模が小さい点も課題です。2021年ごろより、「イーサリアムキラー」と呼ばれる新興ブロックチェーンが数多く登場しました。そのような状況下でSuiが覇権を握れるかは不透明です。

特にSuiの場合は、「アプトス(Aptos)」というライバル関係のブロックチェーンが脅威です。「アプトス」と「Sui」は、どちらも旧Facebookのデジタル通貨から派生したプロジェクトです。双方ともに「Move(ムーブ)」言語を基盤に開発されているため、多くの共通点を持っています。

このように競合の新興ブロックチェーンが多いため、Suiのエコシステムが生き残れるかはわかりません。

「Sui」における代表的なプロジェクト

Suiのエコシステムでは、さまざまなプロジェクトが進行中です。ここでは、そのなかでも有名なサービスを取り上げます。

omniBTC

omniBTCは、複数のブロックチェーンに対応したDEXサービスです。ブロックチェーンを跨いだ資産の貸し借りが可能であり、エコシステム間での資産の相互運用を実現します。

omniBTCの基盤システムはsuiブロックチェーン上に構築されており、各ネットワークの中核として機能します。そのためビットコインなどの大型エコシステムからの資金流入も期待できるプロジェクトです。

Sui Name Service

Sui Name Serviceは、Suiブロックチェーンにおいてドメイン名を付与できるサービスです。Sui Name Serviceを活用すると、英数字の羅列であるウォレットアドレスから「.sui」を冠したドメインに差し替えができます。

また「.sui」ドメインに加えて、Sui Name Service上のプロフィールを経由した送金も可能です。プロフィールを作成すれば、誰でも無料で簡単にトークンの取引ができます。このようにSui Name Serviceは、Suiエコシステムにおける送金プラットフォームとしても機能しています。

Shinami

Shinamiは、SuiブロックチェーンにおけるAPI(外部システム用のアクセス機能)です。suiを基盤とした外部アプリを構築する際に、ブロックチェーンとアプリの橋渡しの役割を担います。Shinamiは、以下の2つのAPIから構成されています。

  • WebSocket API・・・ブロックチェーン上のリアルタイムイベントの読み込み
  • Sui API・・・ブロックチェーンへのリクエスト送信

Shinamiを活用してアプリを構築した場合、アプリ開発者によるノードの運用や保守は必要ありません。加えてShinamiではアプリの駆動用にガス代を供給しているため、エンドユーザーはガソリン代を気にせずにサービスを利用できます。

Blue Move

Blue Moveは、SuiブロックチェーンにおけるNFT取引所です。このBlueMoveの特徴は、NFT取引によってトークンを得られる点。NFTの売買に応じて、ガバナンストークン「MOVE」が配布されます。取引所の収益が利用者にも分配される設計になっており、NFTの活性な売買を支えています。

MovEX

MovEXは、Suiブロックチェーンにおいて最初に登場したDEXサービスです。MovEXではAMM(自動マーケットメーカー)と指値注文を組み合わせたハイブリッド型の取引が可能です。このほかにも資本効率を最大化できるように、自動で流動性を調整する機能も備えています。

Coming Chat

ComingChatは、Suiのエコシステムにアクセスするためのポータルサイトです。スマホやパソコンからアプリをインストールすれば、誰もが簡単にweb3のサービスにアクセスできます。ComingChatには暗号資産(仮想通貨)ウォレット、SNS、DeFiなどの機能が集約されており、アプリひとつでSuiのさまざまなサービスが利用できます。

「Sui」の特徴や注目される理由のまとめ

本記事では、L1ブロックチェーン「Sui」の特徴や注目の理由について解説しました。この「Sui」は、2023年1月時点でテストネットのみが公開されています。本格的な始動は2023年の夏以降を予定しており、今後のプロジェクトに注目が集まっています。

既に「Sui」ブロックチェーンを基盤とした多くのプロジェクトが進行しているため、ぜひその動向に注目してみてください。

段巴亜

dan

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