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アプリケーションチェーン(Appchain)とは?個別のアプリケーションに特化したブロックチェーンについて解説

解説系記事

現在の暗号資産(仮想通貨)市場では、ブロックチェーン上にアプリケーションを開発する場合、イーサリアムなどのパブリックチェーンを利用するのが一般的です。

しかし、ここ最近では個別のアプリケーション開発のためにカスタマイズできる「アプリケーションチェーン(Appchain)」が大きな注目を集めています。

そこでこの記事では、アプリケーションチェーンとはどういったものなのか?という概要・特徴や、dApps開発に利用するメリットなどを解説していきます。

記事の後半では、アプリケーションチェーンを構築できるブロックチェーンについてもご紹介していくので、興味のある方は最後までご覧ください。

アプリケーションチェーン(Appchain)とは?

アプリケーションチェーンとは、個別のアプリケーションにカスタマイズされたブロックチェーンのことを指します。

現在、dAppsを開発する際にはイーサリアムやBNBチェーンなどのパブリックチェーンを使うケースが多いですが、アプリケーションチェーンは特定のdAppsの開発・運用に特化した特徴を持っています。

アプリケーションチェーンを利用する詳しいメリットは後述しますが、柔軟性を持ってdAppsの開発ができたり、アプリ自体のパフォーマンスを高めることができます。

英語では「Appchain」や「application-specific blockchain」と呼ばれており、有名なサービスとしてはCosmos SDKやAvalanche Subnetsなどが挙げられるでしょう。

アプリケーションチェーンを利用する3つのメリット

ここでは、アプリケーションチェーンを使ってdAppsを開発するメリットをご紹介していきます。

以下の3つの項目に沿って、確認していきましょう。

  • Performance(パフォーマンス)
  • Flexibility(柔軟性)
  • Sovereignty(統治性)

Performance(パフォーマンス)

アプリケーションチェーンでdAppsを開発するメリットとして、Performance(パフォーマンス)つまり処理能力の向上が見込まれることが挙げられます。

イーサリアムなどのパブリックチェーンでは、様々な種類のアプリケーションが開発・運用されていますが、イーサリアム自体のトランザクション処理能力には限界があります。そのため、特定のアプリケーションのトランザクションが膨大に増えた際にはガス代の高騰や送金詰まりなどが発生し、他のアプリケーションにも大きな影響を与えることが考えられるでしょう。

実際、イーサリアム上で発行されているCryptoKitties(クリプトキティーズ)というNFTが2017年に大流行しましたが、最盛期には当時のイーサリアムにおける総取引の12%を占めるまでトランザクションが増加し、ガス代の高騰を招いてしまいました。

しかし、アプリケーションチェーンはあくまで単一のdAppsに特化したブロックチェーンなので、他のプロジェクトとストレージの競合をすることがなく、パフォーマンスを向上させられると期待されています。

Flexibility(柔軟性)

通常、ブロックチェーン上でdAppsを開発する際には、基盤となるブロックチェーンによって開発環境が制限されます。イーサリアムを基盤とするdAppsであれば、Solidityなど限られたプログラミング言語で開発を行わなければいけません。

しかし、アプリケーションチェーンであれば、開発者はFlexibility(柔軟性)を持ってdAppsの開発を行うことができます。

例えば、アプリケーションチェーンを構築できるCosmos SDKでは、Googleが生み出した「Go言語」などでブロックチェーンの開発を行うことが可能です。今後はさらに言語選択の幅が広がるとされており、より柔軟性を持った開発ができるようになるでしょう。

また、まだ未成熟なスマートコントラクト言語を使用しなくてよいため、セキュリティ面の向上を期待できるメリットもあると言えます。

Sovereignty(統治性)

アプリケーションチェーンは、ブロックチェーンのSovereignty(統治性)という観点でも大きなメリットがあります。

例えば、様々な分散型アプリケーションが運用されているパブリックチェーン上でdAppsの開発を行ったとします。その後、ブロックチェーンのコードにバグが見つかったとしても、アプリケーションの開発コミュニティにはコードを修正・改善する権限は与えられていないことが一般的です。もし、ネットワーク自体を運営するコミュニティが行動を起こさなかった場合、バグを修正することはできないでしょう。

このように、パブリックチェーンではアプリケーションのガバナンスと、ネットワークのガバナンスが一致しないというケースがあります。しかし、アプリケーションチェーンであれば一つのdAppsに特化してカスタマイズされているため、アプリ開発を行うコミュニティがブロックチェーンそのものをコントロールしています。

エコシステムの中にある他のdAppsに影響を与えるということがないため、もし何かしらの問題が発生したとしても迅速に対応することができるでしょう。

アプリケーションチェーンを構築できるブロックチェーンネットワーク

記事の最後に、アプリケーションチェーンを構築できるブロックチェーンネットワークをいくつかご紹介していきます。

  • Cosmos SDK
  • Avalanche Subnets
  • Polygon Supernet

Cosmos SDK

画像引用元:Why application-specific blockchains make sense

2019年から運用が開始されたCosmos(コスモス)は、ブロックチェーン間の相互運用を目指すプロジェクトです。そんなCosmosでは、「Cosmos SDK(Software Development Kit)」というアプリケーションチェーンを構築できるオープンソースの開発キットが提供されています。

すでに多くのアプリケーションチェーンがCosmos SDKで作成されており、有名なものとしてはBNB Smart ChainやOsmosisなどが挙げられるでしょう。

画像引用元:Anatomy of a Cosmos SDK Application

上記の画像は、Cosmos SDKの仕組みをわかりやすく表したものです。Cosmosのブロックチェーンには、「アプリケーション」「コンセンサス」「ネットワーク」という3つの階層が存在しています。

この階層の中でも「コンセンサス」と「ネットワーク」を一つにまとめたものがTendermint Coreと呼ばれており、ブロックチェーンの合意形成部分をまとめて処理してくれます。このTendermint Coreを活用することで、Cosmos SDKを使って個別のアプリケーションにカスタマイズしたブロックチェーンの構築ができます。

少し難しいですが、簡単に解説すると合意形成部分を一つにまとめたパッケージのようなものにすることで、ブロックチェーンを容易に開発できる仕組みを提供していると言えるでしょう。

また前述の通り、Cosmos SDKは開発言語を選ばないので、Go言語などでブロックチェーンを構築できるメリットもあります。

Avalanche Subnets

画像引用元:Subnets Overview|Avalanche Dev Docs

レイヤー1ブロックチェーンのAvalanche(アヴァランチ)では、「Avalanche Subnets」という独自のブロックチェーンが作成できる機能を提供しています。

非常に柔軟なカスタマイズができる特徴を持っており、サブネット内では独自のルールやネイティブトークン、トークンエコノミクスを構築することができます。また、EVM(イーサリアムバーチャルマシン)をはじめとした好きなVMを搭載できるだけでなく、完全オリジナルのVMを使用することも可能です。

他にもパブリックチェーンだけでなく、プライベートチェーンを構築することもできるので、特定の企業間でブロックチェーンを運用したいといったニーズにも応えていると言えるでしょう。

すでにAvalanche Subnetsで構築したアプリケーションチェーンで動くNFTゲームなどがリリースされており、今後も様々なdApps開発に利用されていくと考えられます。

Polygon Supernet

画像引用元:Introducing Polygon Supernets, Powered by Polygon Edge; $100M Ecosystem Fund

イーサリアムのサイドチェーンとして有名なPolygon(ポリゴン)でも、「Polygon Supernet」と呼ばれるアプリケーションチェーン作成機能があります。前述した2つのサービスと同様、特定のアプリケーションに特化した独自のブロックチェーンネットワークを構築することが可能です。

Polygonはこれまでにも「Polygon Edge」というブロックチェーン構築ネットワークを提供していましたが、「Polygon Supernet」はさらに機能を改善したサービスとなります。

具体的には、shared security(共有セキュリティ)レイヤーを導入したことで、Supernetで発生するトランザクションの検証作業をPolygonのバリデータに行ってもらえるようになりました。つまり、アプリケーションの開発コミュニティとしてはPolygonの強固なセキュリティを享受できるため、開発作業にのみ専念できるというメリットがあります。

今後は、Supernet同士の接続やEthereumとの連携機能も提供する予定であり、より広範なエコシステムを構築できるようになっていくでしょう。

アプリケーションチェーン(Appchain)まとめ

今回の記事では、特定のアプリケーションにカスタマイズされたアプリケーションチェーン(Appchain)について解説してきました。

ご紹介したように、アプリケーションチェーンを利用することで柔軟性のあるdApps開発ができるなど様々なメリットがあります。

今後、ブロックチェーンがさらに普及することで、アプリケーションチェーンにもさらなる注目が集まっていくと考えられるでしょう。

GM

gm

2017年から仮想通貨投資を開始し、2020年から本格的にweb3.0の世界に参入。現在はフリーランスとして暗号資産やブロックチェーン、NFT、DAOなどweb3.0に関する記事を執筆。NFT HACKでは「初心者にもわかりやすく」をモットーに、読者の方々に有益となる記事の作成を行なっている。
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